いま考えていること 163(2004年02月)
――このままでは――

最近の国会中継を見ていると腹がたってきて、見るに堪えない感じです。小泉首相はじめ石破防衛庁長官、川口外相、いずれも立場上止むを得ないのかとは思うのですが、発言に論理的な説得性がなく、虚言としか思えないことが平気な顔から出てくるのです。破れかぶれな言葉です。日本人なら言霊の大切さはわかっていると思うのですが、言葉の使い方がまずおかしいのです。

例えば政府は自衛隊の派遣はそれ自身完結した生活が可能な組織で、他のNGO組織などではそれが確保できないと自衛隊派遣を正当化するのですが、自衛隊は軍事の専門家であっても、人道支援活動に欠かせない国際政治やイラク国内の民族問題、さらに社会学、民衆心理についての知識・専門性では致命的な欠陥を持つことは間違いのないことでしょう。

ブッシュ大統領が「イラク攻撃ありき」から始めて、その理由付けに大量破壊兵器を虚構しアメリカの人々を国際法無視のイラク戦争に導き、今日なおアメリカの青年達をイラクで無駄死させる結果に追いやっているのと同様に、現内閣・自民党・公明党の人たちの頭はまず「イラク派兵ありき」で、その理由付けを捏ち(デッチ)上げたとしか言いようがありません。小泉政権発足当時、私は疑いなく小泉さんを支持したのですが、イラク派兵の虚構性はじめ三位一体の改革の真実が、単なる地方への補助金の削減に過ぎないことは明らかですし、年金制度の改革も驚異的な掛け金の引き上げと、給付はその時の年金財政にあわせて削減を自動化しようとするプランなのですから、これでは少子化の未来、はっきりと将来の年金制度は破綻すると宣言する方がましです。ここでも虚言で国民をだますやり方が見られます。円高をカバーするために円売りドル買いを20兆円もして、結果的にアメリカの赤字をカバーする役割を演じるなどもいただけません。アメリカがやり方を変えない限りアメリカの破綻が目に見え、その結果直接日本の経済的破綻になるからです。イラク派兵をめぐっては、現地の情報と国内世論のコントロールの動きも見られます。これではいずれ自衛隊は命を賭けて出かけているのだから、みんな賛同せよ、批判はするな、機密を冒すなとさえ言いかねません。自由社会への挑戦です。この首相のリーダーシップのもとで政治が進められると、わたしたちの将来に、再びかっての暗黒の時代の到来さえ予想されるのです。太平洋戦争当時に味わった我々の世代の経験と反省は抹殺される運命にあるのでしょうか?

危険な芽は早くつみ取っておかないとどんどん成長していきます。

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いま考えていること 164(2004年02月;5月)
――中曽根さんの憲法論議(サンデープロジェクトでの発言)――

現在の憲法が、日本国の危険な動きに、あるいはアメリカの日本の取り込みに大きなブレーキの役割を演じてきたことは否定できない事実だと思います。かなり現実から離れて空想的理想論と化してきた印象も否定できない現憲法を修正する考えに、危険な動きへの防波堤としての現行憲法の効用から、徹底的に第9条を始め「憲法改正反対」の人たちも多数見られます。ただ現実の明確な認識からスタートする自然科学者の一人として生きてきた私からは、現実から目を背け、実情を無視した論議見解は空論であっていただけないという基本的な考え方があります。

今日のサンデープロジェクトで中曽根さんの考えを聴く機会がありましたので、今私の頭の中にはこの問題が駆けめぐっています。中曽根さんは発言の中で憲法前文の修正すべき箇所に「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」というのではなくて「自主独立」をうたうべきだと発言されていました。日本をめぐる世界の諸国は当然のことながら理想社会ではありませんから、現実は我々の希求した『公正と信義の世界諸国』からは程遠いものであることは事実です。世界の国々のイメージとして理想像を空想し、そのイルージョンに依拠して我々の進路を決めることは、やはり不十分なものと言えるでしょう。

第9条についても中曽根さんは「戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」とした第1項はそのままでよい。しかし第2項は自衛のための戦力保持と自衛権の存在を明確にすべきだ。さらに第3項を設けて国連などの平和のためへの国際貢献に自衛隊の参加をうたうべきだと言っておられましたが、現状を見るときもっともだと思えます。

中曽根さんの憲法改正簡素化についてはいただけません。というのは現憲法では「各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。」となっているのですが、「三分の二」を「二分の一」とし、「各議院の総議員の三分の二以上の賛成」があれば国民投票を必要としないと改めたいといわれるのですが、国の基本法典である憲法の改正にはやはり民主的に「国民投票」は不可欠ですし、国会による発議も「三分の二」はほしいものです。

次第に憲法改正の議論が俎上にのぼってくるでしょうが、私の心境はやはり憲法は理想論やお題目ではないのですから、現行憲法の防波堤的役割だけを期待して改正を一歩も認めないという態度ではなくて、現実を直視して多角的に検討し、環境問題も含めて国民に有利な方向で改めるべきは改めるのがよいと思います。
(5月3日憲法記念日に追記)憲法に違反する状況を、新しい法律を作って糊塗したり、内閣法制局の解釈でつじつまを合わせていく慣例になっている現在の手法は、憲法の権威を低め、国民の憲法に即したまともな判断をできなくしてまう危険さえ感じます。

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いま考えていること 165(2004年02月)
――拉致問題――

この問題については今まで例えば「いま考えていること 117(2002年11月;2003年4月)――曽我ひとみさんのこと――」とりわけ「いま考えていること 160(2004年01月)―年頭の夢―」に書いてきましたが、今回の外務省高官の訪朝は事態の深刻さを物語るものとなりました。北朝鮮はやはり日本が五人の帰国時に約束した2週間程度という約束を無視したことに最大の侮辱を感じているようです。元々拉致した事実が無法なもので、けしからぬことは言うまでもないことです。しかし折角平和裏に平壌宣言を交わした直後に公的な約束を破るようでは外交は成り立ちません。拉致された人を故国に帰し、留め置くことに文句があるかというのは『情』の次元のことです。国と国との約束の世界は別の冷徹な次元のことです。冷徹に約束を守らなくては交渉は成り立ちません。直面する核武装の問題を理性を保って6者で解決しようとすれば、問題の所在を曖昧にしかねない『情』のからむ拉致問題は6カ国会議からは外さなくてはなりますまい。福田官房長官は外務省の訪朝高官に6カ国会議で拉致問題を折衝するように命じたと報道されましたが、長官は一体何を考えているのでしょう。核問題の重要性が長官自身に本当に意識されておれば、拉致問題は議題にするなといって当然です。来るべき6カ国会議でアメリカは日本を支持して拉致問題解決を冒頭主張すると報ぜられていますが、これはアメリカの真意は核問題を今回解決する意志はなく、むしろ拉致問題をプッシュすることで会議の失敗を仕掛けているとみるべきでしょう。政府は相変わらず当初の拉致問題への対応の誤りを認めることをしませんが、まず拉致被害者5人の帰国時に、北朝鮮が主張するように滞在期間の了解をしていたのなら、それを破った我が方の誤りを認め、謝罪することから始めるべきだと思います。6カ国の合意特にアメリカの応援を期待して拉致問題の解決を図ることを考えているのなら、とても解決は望めません。根本的な姿勢の誤りがあります。『外交』に『情』をミックスしてはならないのです。拉致事件の存在を金正日が認めたことで公的な二国間での拉致問題折衝の機会を折角得たのですが、これを壊したのはどうも日本政府のようです。お互いに約束したことは守りながら折衝しておれば、今までに五人の家族全員の帰国問題はおろか拉致問題の全貌解明についても、もっと進んでいたことでしょう。イラク占領参加問題、靖国参拝による中国との首脳交流阻害と並ぶ小泉内閣の三大外交失政だと思います。そのいずれも日本の将来にとって限りなく重要なテーマですが、小泉さんが首相である限り、これらの泥沼から我々は脱出出来ないのです。

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いま考えていること 166(2004年03月)
――フリーター考――

今夜のNHKの番組でフリーターの増加に纏わる番組が放映されていました。フリーターというのはフリーアルバイターの略語でしょうが、おそらく日本では歴史的にはかっての高度成長のさなかでも発生していたと思うのです。決して失業者と同意語ではなかったと記憶します。もっともっと誇り高い選択をした若者を意味していたと思います。今夜の番組ではしかし失業者の同意語かとも思える内容でしたし、当該の人たちにもかってのような誇り高い姿は窺えませんでした。フリーターは社会の束縛から身を自由に保ち自分の納得のいく歩みをするのだという自負があったのですが、もはやそういうものは失われ、社会に責任を転嫁して企業の利潤追求を非難し社会的責任を迫る声が出演の第三者の一人からは聞こえました。わたしなどの目から見ると、宗教団体が布教のために援助創立する会社ならいざ知らず、企業はやはりまず利潤を挙げるために出資を求め、その返礼に社会に受け入れられる製品・サービスを世に送り出し、正当な利潤を確保して出資者にも報いるのが使命だと思うのです。決して社会奉仕、雇用そのものを目的とするものではありません。またフリーターの道は自由な境涯を守りながら、ほどほどに働いて生活の糧を得、自分のしたいことを実現するのが最終目的であったと思うのです。それは崇高な選択であり立派な選択だと思います。どうか自己発現の目的を苦心しながら達成してほしいものです。

終身雇用が常識であった昔から、その道を選ぶことを拒否して苦労の多い道を選び、これを達成していった人たち−−小説や芸術で一家をなした人たちも数多く見られました。現役の建築家安藤忠雄さんなどもその例でしょう。近隣諸国から見て普通の仕事に対する報酬が日本は高く、社会保障に対する企業の負担も高いのですから、外国との平準化を拒否できない現状では、これからも賃金引き下げの手段として、パートやアルバイトの形の雇用は進むと見なければなりません。終身雇用という昔の雇用形態も決して満足すべきものではなく、奴隷的にその企業に絶対服従し、その企業から一歩外に出るともはやキャリヤーそのものが通用しないという悲劇的な側面も持っていました。わたしの父の一生にもそういう面が見られたものですから、わたしはもっと一般に通用するライセンスを得るために学校に進み、それを獲得してそれを生かして一生の安定を得たのです。いわば常識的な安易な道を選んだのです。フリーターの道を選んだ人たちはわたしなどよりもっと真摯に人生を歩もうとする勇者であったはずです。ただ時間をつぶすために大学に進学したり、自由を味わう目的で進学して、さて卒業して失業者と宣言する代わりにフリーターを称するのでは、真のフリーターからすると詐称だということになります。人生の見方が甘いのです。やはり何か広く世の中に通用するライセンスを取得してそれを生かした職業に従事するか、徹底的に初心を貫徹してフリーターの誇り高い生活をしながら、他人には出来ない自己実現で世の中に存在を問うゴールに辿り着いてほしいものです。要は、志があるのか、志を守りきろうということです。誇り高く生きましょう。

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いま考えていること 167(2004年03月)
――米大統領選挙世論調査(3月8日現在)――

年頭いま考えていること 161(2004年01月)に「資金面では圧倒的な優位を語られる共和党ですが、大統領選挙ではなんとか今年、ブッシュの落選が現実化してほしいと夢見ます。」と書きました。その時の心境では「しかしブッシュが勝つだろう」と思っていました。ところがワシントンポスト−ABCが共同して3月4日から7日にかけて行った1202人を対象とする世論調査では次のような結果になっています。調査大項目は39、さらに小項目に分かれているものもありますが、紹介するのは私が関心を持ったものだけに留めます。

今後の推移が注目されます。

ブッシュの大統領としての仕事ぶりは如何ですか
    是認(%)           50          
    承認できない(%)        48     
        意見なし(%)       2
  
◆ブッシュの「経済問題」のやり方(手口)は如何ですか
    是認(%)           39          
    承認できない(%)        59     
        意見なし(%)       1
◆ブッシュの「イラク問題」のやり方(手口)は如何ですか
    是認(%)           46          
    承認できない(%)        53     
        意見なし(%)       1
◆ブッシュの「社会の安全」のやり方(手口)は如何ですか
    是認(%)           38          
    承認できない(%)        55     
        意見なし(%)       7
◆ブッシュの「健康保険」への取り組みは如何ですか
    是認(%)           32          
    承認できない(%)        62     
        意見なし(%)       6
◆ブッシュの「テロ撲滅キャンペーン」のやり方(手口)は如何ですか
    是認(%)           63          
    承認できない(%)        34     
        意見なし(%)       3
◆ブッシュの「連邦歳入不足対策」のやり方(手口)は如何ですか
    是認(%)           30          
    承認できない(%)        65     
        意見なし(%)       5
◆今年の大統領選に対する関心
    大いに(%)          33          
    多少(%)                42     
        あまりなし(%)     18
    全くない(%)            7
        意見なし(%)       0 
◆仮に今日大統領選が実施されたらどちらを選びますか
    ブッシュ(%)       42          
    ケリー(%)              47     
        ネダー(%)         5
    棄権(%)                 3
    意見なし(%)             2
◆ブッシュ支持者に:支持の程度は
    強く(%)           86          
    強くではない(%)        14     
◆ケリー支持者に:支持の程度は
    強く(%)           66          
    強くではない(%)        32                    
        意見なし(%)       2
◆投票にあたって重視する問題は(多い方から少し挙げます)
    仕事の創出(%)         81          
    憲法の権利と自由の尊重(%)  81     
        経済(%)            79
        テロ反対キャンペーン     78 
        イラク                69
        財政赤字           68
             以下略 
◆今後2,3年の間にアメリカが直面する主要な問題にどちらが有能と思いますか
    ブッシュ(%)           44          
    ケリー(%)                  49     
        意見なし(%)           2
◆主要問題の処理手腕でブッシュがケリーを上回った項目は整理しますと
次の2項目だけでした
                       ブッシュ    ケリー
    テロへのキャンペーン(%)            57            36  
    同性愛結婚(%)                  44       43
◆国の経済状態は現状如何ですか
    良好(%)           39          
    不振(%)                60     
        意見なし(%)       1
◆国の経済状態をどう見ますか
    よくなる(%)         34          
    悪くなる(%)           29     
        変わらない(%)      36
        意見なし(%)        1  
◆ブッシュが大統領になった2001年よりも多くのアメリカ人は経済的に裕に
なったでしょうか
    よくなった(%)       17          
    悪くなった(%)          43     
        変わらない(%)           38
    意見なし(%)        1
◆イラク戦に払ったコストと戦争で得た利益をどう評価しますか
    戦っただけのことはあった(%)   52          
    利益はない(%)                    44     
        意見なし(%)                 3
◆ブッシュ政権はイラク処理の明確なプランを持っているのでしょうか
    はい(%)           43          
    いいえ(%)              53     
        意見なし(%)       3
◆イラク戦は長い目で見てアメリカの安全に貢献しますか
    はい(%)           57          
    いいえ(%)              40     
        意見なし(%)        3
◆ブッシュ政権はイラク開戦前、イラクが大量破壊兵器を持っている証拠を
誇張したと思いますか
    はい(%)           55          
    いいえ(%)              43     
        意見なし(%)        2
◆ブッシュ政権になって4年、わたしたちはブッシュとは異なる方向を目指す
大統領を選ぶべきだと思いますか。
    はい(%)           57          
    いいえ(%)              41     
    その中間        1        
    意見なし(%)        1
◆次の4氏について大統領候補としての意見を聞かせて下さい
        ふさわしい    ふさわしくない   意見なし
ケリー       54         26        20
ブッシュ            47                  46                 7
ネダー              23                  43                34
チェニー            35                  43                23
◆ラルフ ネダーの立候補をどう思いますか
    是認(%)           39          
    承認できない(%)        52     
        意見なし(%)       10
◆ホモのカップルの結婚を合法的と思いますか
    はい(%)           38         
    いいえ(%)           59     
        意見なし(%)        3

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いま考えていること 168(2004年04月)
――女帝問題――

おそらく現在皇室や日本政府の頭を悩ませている問題の一つに皇太子に男子の子どもがいないことだろうと思っています。皇室典範によりますと
第一章 皇位継承

第一条【資格】
     皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する。 
第二条【順序】
1
     皇位は、左の順序により、皇族に、これを伝える。

    一
         皇長子 
    二
         皇長孫 
    三
         その他の皇長子の子孫 
    四
         皇次子及びその子孫 
    五
         その他の皇子孫 
    六
         皇兄弟及びその子孫 
    七
         皇伯叔父及びその子孫 

となっていますから、必ずしも皇太子に男子の子どもがいなくても良いのですが、現在の皇太子が将来即位された後、その次の天皇を考える場合、深刻な問題が現状では発生することが考えられます。先頃誕生された愛子内親王が女帝として即位されることが皇室典範の改定によって認められるようになれば、良いではないかと愚考していたのですが、それでも問題は複雑です。

NHKのラジオ深夜便は昨日までの3日間三笠宮崇仁親王とのインタビューが放送されました。お話の主題はオリエント学に関するものでしたが、皇室に纏わるいくつかの興味あるお話も伺えました。新憲法が発布されたときには枢密院がまだ存在していて、宮様も議員でした。宮様は男女同権になったのだから女帝も認めるべきだとのお考えで、その提案を枢密院に提出されたようです。そういう経歴をお持ちでしたから、インタビュアーは現在の宮様のお考えを質していました。宮様のお答えは「現在は華族制度がないので、女帝と結婚される男子がおられるかどうかがあやぶまれる」とのことでした。確かに仮に愛子天皇が出現しても、その連れ合いが見つからないと、皇統は危機に瀕します。女帝問題も単純なものではないと思いました。

宮様のお話にはほかにも興味のあるお話が伺えました。例えば昭和天皇は本当は歴史がお好きで歴史の勉強を志されたが、天皇が歴史を研究するとどうしても政治との接点が出てきてまずいというので、生物学を学ばれたとのことでした。皇族というのは自由を享受できない窮屈なものだと痛感しました。

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いま考えていること 169(2004年04月)
――イラクでの人質問題――

昨夜から今日も日本中が人道支援ボランティアとライターの拘留問題で衝撃の渦の中にいます。この事件を聴いて今、頭に去来するのは、まず米英占領軍もイラク警察も治安維持ができていないのだなあ、50年前の日本占領時にはそんなことはなかったなあということ。もう一つはいくら日本政府が自衛隊は人道支援復興支援にイラクに派遣されていると強弁しようと、イラクの民衆は自衛隊派遣の本質はアメリカ支援、占領支援の軍隊だという本質を見破っているのだなということです。航空自衛隊の津曲幕僚長は現にクエートのアリ・アルサレムで、空自の輸送部隊が武器を携行した占領軍兵士の輸送を行っていたことを、4月8日明言しています。イラクではスンニ派シーア派のいずれに対してもアメリカ軍はイスラム教のモスクを含む掃討作戦を展開し、シーア派の穏健派指導者でさえがアメリカの暴挙を非難する声明を発表しています。拘束といえば、既に韓国の人の拘束も見られ、拘束したスペイン人とイラク反米指導者ムクタダ・サドル師側近でアメリカ軍が拘束しているムスタファ・ヤークビ氏との交換を求めているとも報ぜられています。類似の現象は当分避けられそうもありません。

私はシンガポール、カザフスタン、スペインなどますます撤兵する国は増え、イラク民衆はアメリカ・イギリス・日本などあくまで占領を続ける国々に焦点を絞り込んで攻撃を強め、完全な選挙に基づくイラクの主権回復の追求を強めると予想します。

(追記)4月13日の毎日新聞夕刊に次のような記事があります。

訪日したチェイニー米副大統領が12日、小泉首相と会談しイラクの日本人人質事件解決の為日本に協力することを約束したニュースは、アラブ諸国の各メディアでも大きく取り上げられた。・・・特に人質事件で米国と日本が協力することを強く印象づける内容だった。これに対し、人質事件の犯人グループが拠点にしているとされるファルージャの部族長の一人は「ファルージャでは今月、イラク人が600人以上、米軍に殺害されている。この時期に米国との協力を強調することは、日本がイラク人の敵であることを示すものだ」と強い口調で日本政府を批判した。

酒井啓子さんは人質問題の焦点はアメリカによるファルージャ包囲と人々の無差別殺害にあると今朝のNHKラジオで話されていましたが、この状況下でのチェイニー米副大統領との会談については部族長の一人と私も同感で、小泉さんの基本的な姿勢に危惧を持たざるを得ません。

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