いま考えていること 164(2004年02月;5月)
――中曽根さんの憲法論議(サンデープロジェクトでの発言)――
現在の憲法が、日本国の危険な動きに、あるいはアメリカの日本の取り込みに大きなブレーキの役割を演じてきたことは否定できない事実だと思います。かなり現実から離れて空想的理想論と化してきた印象も否定できない現憲法を修正する考えに、危険な動きへの防波堤としての現行憲法の効用から、徹底的に第9条を始め「憲法改正反対」の人たちも多数見られます。ただ現実の明確な認識からスタートする自然科学者の一人として生きてきた私からは、現実から目を背け、実情を無視した論議見解は空論であっていただけないという基本的な考え方があります。
いま考えていること 165(2004年02月)
――拉致問題――
この問題については今まで例えば「いま考えていること 117(2002年11月;2003年4月)――曽我ひとみさんのこと――」とりわけ「いま考えていること 160(2004年01月)―年頭の夢―」に書いてきましたが、今回の外務省高官の訪朝は事態の深刻さを物語るものとなりました。北朝鮮はやはり日本が五人の帰国時に約束した2週間程度という約束を無視したことに最大の侮辱を感じているようです。元々拉致した事実が無法なもので、けしからぬことは言うまでもないことです。しかし折角平和裏に平壌宣言を交わした直後に公的な約束を破るようでは外交は成り立ちません。拉致された人を故国に帰し、留め置くことに文句があるかというのは『情』の次元のことです。国と国との約束の世界は別の冷徹な次元のことです。冷徹に約束を守らなくては交渉は成り立ちません。直面する核武装の問題を理性を保って6者で解決しようとすれば、問題の所在を曖昧にしかねない『情』のからむ拉致問題は6カ国会議からは外さなくてはなりますまい。福田官房長官は外務省の訪朝高官に6カ国会議で拉致問題を折衝するように命じたと報道されましたが、長官は一体何を考えているのでしょう。核問題の重要性が長官自身に本当に意識されておれば、拉致問題は議題にするなといって当然です。来るべき6カ国会議でアメリカは日本を支持して拉致問題解決を冒頭主張すると報ぜられていますが、これはアメリカの真意は核問題を今回解決する意志はなく、むしろ拉致問題をプッシュすることで会議の失敗を仕掛けているとみるべきでしょう。政府は相変わらず当初の拉致問題への対応の誤りを認めることをしませんが、まず拉致被害者5人の帰国時に、北朝鮮が主張するように滞在期間の了解をしていたのなら、それを破った我が方の誤りを認め、謝罪することから始めるべきだと思います。6カ国の合意特にアメリカの応援を期待して拉致問題の解決を図ることを考えているのなら、とても解決は望めません。根本的な姿勢の誤りがあります。『外交』に『情』をミックスしてはならないのです。拉致事件の存在を金正日が認めたことで公的な二国間での拉致問題折衝の機会を折角得たのですが、これを壊したのはどうも日本政府のようです。お互いに約束したことは守りながら折衝しておれば、今までに五人の家族全員の帰国問題はおろか拉致問題の全貌解明についても、もっと進んでいたことでしょう。イラク占領参加問題、靖国参拝による中国との首脳交流阻害と並ぶ小泉内閣の三大外交失政だと思います。そのいずれも日本の将来にとって限りなく重要なテーマですが、小泉さんが首相である限り、これらの泥沼から我々は脱出出来ないのです。
いま考えていること 166(2004年03月)
――フリーター考――
今夜のNHKの番組でフリーターの増加に纏わる番組が放映されていました。フリーターというのはフリーアルバイターの略語でしょうが、おそらく日本では歴史的にはかっての高度成長のさなかでも発生していたと思うのです。決して失業者と同意語ではなかったと記憶します。もっともっと誇り高い選択をした若者を意味していたと思います。今夜の番組ではしかし失業者の同意語かとも思える内容でしたし、当該の人たちにもかってのような誇り高い姿は窺えませんでした。フリーターは社会の束縛から身を自由に保ち自分の納得のいく歩みをするのだという自負があったのですが、もはやそういうものは失われ、社会に責任を転嫁して企業の利潤追求を非難し社会的責任を迫る声が出演の第三者の一人からは聞こえました。わたしなどの目から見ると、宗教団体が布教のために援助創立する会社ならいざ知らず、企業はやはりまず利潤を挙げるために出資を求め、その返礼に社会に受け入れられる製品・サービスを世に送り出し、正当な利潤を確保して出資者にも報いるのが使命だと思うのです。決して社会奉仕、雇用そのものを目的とするものではありません。またフリーターの道は自由な境涯を守りながら、ほどほどに働いて生活の糧を得、自分のしたいことを実現するのが最終目的であったと思うのです。それは崇高な選択であり立派な選択だと思います。どうか自己発現の目的を苦心しながら達成してほしいものです。
いま考えていること 167(2004年03月)
――米大統領選挙世論調査(3月8日現在)――
年頭いま考えていること 161(2004年01月)に「資金面では圧倒的な優位を語られる共和党ですが、大統領選挙ではなんとか今年、ブッシュの落選が現実化してほしいと夢見ます。」と書きました。その時の心境では「しかしブッシュが勝つだろう」と思っていました。ところがワシントンポスト−ABCが共同して3月4日から7日にかけて行った1202人を対象とする世論調査では次のような結果になっています。調査大項目は39、さらに小項目に分かれているものもありますが、紹介するのは私が関心を持ったものだけに留めます。
◆ブッシュの大統領としての仕事ぶりは如何ですか 是認(%) 50 承認できない(%) 48 意見なし(%) 2 ◆ブッシュの「経済問題」のやり方(手口)は如何ですか 是認(%) 39 承認できない(%) 59 意見なし(%) 1 ◆ブッシュの「イラク問題」のやり方(手口)は如何ですか 是認(%) 46 承認できない(%) 53 意見なし(%) 1 ◆ブッシュの「社会の安全」のやり方(手口)は如何ですか 是認(%) 38 承認できない(%) 55 意見なし(%) 7 ◆ブッシュの「健康保険」への取り組みは如何ですか 是認(%) 32 承認できない(%) 62 意見なし(%) 6 ◆ブッシュの「テロ撲滅キャンペーン」のやり方(手口)は如何ですか 是認(%) 63 承認できない(%) 34 意見なし(%) 3 ◆ブッシュの「連邦歳入不足対策」のやり方(手口)は如何ですか 是認(%) 30 承認できない(%) 65 意見なし(%) 5 ◆今年の大統領選に対する関心 大いに(%) 33 多少(%) 42 あまりなし(%) 18 全くない(%) 7 意見なし(%) 0 ◆仮に今日大統領選が実施されたらどちらを選びますか ブッシュ(%) 42 ケリー(%) 47 ネダー(%) 5 棄権(%) 3 意見なし(%) 2 ◆ブッシュ支持者に:支持の程度は 強く(%) 86 強くではない(%) 14 ◆ケリー支持者に:支持の程度は 強く(%) 66 強くではない(%) 32 意見なし(%) 2 ◆投票にあたって重視する問題は(多い方から少し挙げます) 仕事の創出(%) 81 憲法の権利と自由の尊重(%) 81 経済(%) 79 テロ反対キャンペーン 78 イラク 69 財政赤字 68 以下略 ◆今後2,3年の間にアメリカが直面する主要な問題にどちらが有能と思いますか ブッシュ(%) 44 ケリー(%) 49 意見なし(%) 2 ◆主要問題の処理手腕でブッシュがケリーを上回った項目は整理しますと 次の2項目だけでした ブッシュ ケリー テロへのキャンペーン(%) 57 36 同性愛結婚(%) 44 43 ◆国の経済状態は現状如何ですか 良好(%) 39 不振(%) 60 意見なし(%) 1 ◆国の経済状態をどう見ますか よくなる(%) 34 悪くなる(%) 29 変わらない(%) 36 意見なし(%) 1 ◆ブッシュが大統領になった2001年よりも多くのアメリカ人は経済的に裕に なったでしょうか よくなった(%) 17 悪くなった(%) 43 変わらない(%) 38 意見なし(%) 1 ◆イラク戦に払ったコストと戦争で得た利益をどう評価しますか 戦っただけのことはあった(%) 52 利益はない(%) 44 意見なし(%) 3 ◆ブッシュ政権はイラク処理の明確なプランを持っているのでしょうか はい(%) 43 いいえ(%) 53 意見なし(%) 3 ◆イラク戦は長い目で見てアメリカの安全に貢献しますか はい(%) 57 いいえ(%) 40 意見なし(%) 3 ◆ブッシュ政権はイラク開戦前、イラクが大量破壊兵器を持っている証拠を 誇張したと思いますか はい(%) 55 いいえ(%) 43 意見なし(%) 2 ◆ブッシュ政権になって4年、わたしたちはブッシュとは異なる方向を目指す 大統領を選ぶべきだと思いますか。 はい(%) 57 いいえ(%) 41 その中間 1 意見なし(%) 1 ◆次の4氏について大統領候補としての意見を聞かせて下さい ふさわしい ふさわしくない 意見なし ケリー 54 26 20 ブッシュ 47 46 7 ネダー 23 43 34 チェニー 35 43 23 ◆ラルフ ネダーの立候補をどう思いますか 是認(%) 39 承認できない(%) 52 意見なし(%) 10 ◆ホモのカップルの結婚を合法的と思いますか はい(%) 38 いいえ(%) 59 意見なし(%) 3
となっていますから、必ずしも皇太子に男子の子どもがいなくても良いのですが、現在の皇太子が将来即位された後、その次の天皇を考える場合、深刻な問題が現状では発生することが考えられます。先頃誕生された愛子内親王が女帝として即位されることが皇室典範の改定によって認められるようになれば、良いではないかと愚考していたのですが、それでも問題は複雑です。
いま考えていること 168(2004年04月)
――女帝問題――
おそらく現在皇室や日本政府の頭を悩ませている問題の一つに皇太子に男子の子どもがいないことだろうと思っています。皇室典範によりますと
第一章 皇位継承
第一条【資格】
皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する。
第二条【順序】
1
皇位は、左の順序により、皇族に、これを伝える。
一
皇長子
二
皇長孫
三
その他の皇長子の子孫
四
皇次子及びその子孫
五
その他の皇子孫
六
皇兄弟及びその子孫
七
皇伯叔父及びその子孫
いま考えていること 169(2004年04月)
――イラクでの人質問題――
昨夜から今日も日本中が人道支援ボランティアとライターの拘留問題で衝撃の渦の中にいます。この事件を聴いて今、頭に去来するのは、まず米英占領軍もイラク警察も治安維持ができていないのだなあ、50年前の日本占領時にはそんなことはなかったなあということ。もう一つはいくら日本政府が自衛隊は人道支援復興支援にイラクに派遣されていると強弁しようと、イラクの民衆は自衛隊派遣の本質はアメリカ支援、占領支援の軍隊だという本質を見破っているのだなということです。航空自衛隊の津曲幕僚長は現にクエートのアリ・アルサレムで、空自の輸送部隊が武器を携行した占領軍兵士の輸送を行っていたことを、4月8日明言しています。イラクではスンニ派シーア派のいずれに対してもアメリカ軍はイスラム教のモスクを含む掃討作戦を展開し、シーア派の穏健派指導者でさえがアメリカの暴挙を非難する声明を発表しています。拘束といえば、既に韓国の人の拘束も見られ、拘束したスペイン人とイラク反米指導者ムクタダ・サドル師側近でアメリカ軍が拘束しているムスタファ・ヤークビ氏との交換を求めているとも報ぜられています。類似の現象は当分避けられそうもありません。
訪日したチェイニー米副大統領が12日、小泉首相と会談しイラクの日本人人質事件解決の為日本に協力することを約束したニュースは、アラブ諸国の各メディアでも大きく取り上げられた。・・・特に人質事件で米国と日本が協力することを強く印象づける内容だった。これに対し、人質事件の犯人グループが拠点にしているとされるファルージャの部族長の一人は「ファルージャでは今月、イラク人が600人以上、米軍に殺害されている。この時期に米国との協力を強調することは、日本がイラク人の敵であることを示すものだ」と強い口調で日本政府を批判した。
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酒井啓子さんは人質問題の焦点はアメリカによるファルージャ包囲と人々の無差別殺害にあると今朝のNHKラジオで話されていましたが、この状況下でのチェイニー米副大統領との会談については部族長の一人と私も同感で、小泉さんの基本的な姿勢に危惧を持たざるを得ません。