いま考えていること 171(2004年05月;6月;7月;9月)
――これからの年金――
たった今ラジオは福田官房長官が国民年金掛け金未納で、国民の信頼を失った責任を取って辞任した事を報じました。福田氏に於いては単なる未納に留まらず、プライバシーを錦の御旗に自分の未払いを公にすることを避けようとした卑劣さが明らかになるに連れて、もはや辞任は避けられないと覚ったからに他なりません。閣僚や高額の議員年金を受け取る議員が相互の支え合いを標榜する国民年金未納では、現在でも47.8%(免除・猶予対象者を含む)の対象者が未払いと言う国民年金はますます払わない人が増えてくることは目に見えています。ましてこれから2017年まで毎年掛け金が上がっていく今度の改訂では馬鹿らしくて払う人がどんどん減るでしょう。標準世帯で現役世代の50%は支給するといっても財源がますます逼迫しますから、とても守られるはずがありません。少子高齢化時代に入り、政府の赤字も絶望的ですから現行方式の年金システムは維持できないことは目に見えています。自民公明案も計算の根拠になっているデータが例えば出生率は1.33から1.39に上がるなど全く架空のことで、希望的前提でスタートしていますから信じる方がおかしいのです。厚労省は1.306で底を打って、以後上昇することを前提条件としているのですが、2003年の出生率の現実は、1.29でした(6月10日追記)。自民党の人たちでもこのことが分かっている人はいると思うのですが、参議院選を控えて、公明党の顔を立てて応援してもらわないと自民党は維持できませんから、公明党案を政府案としているのに過ぎません。
企業も厚生年金の掛け金の半額負担ですが、現状もはや、負担は限界に来ており、負担を減らす為に正社員の採用を止めて委託やパートに切り換える流れです。厚生年金加盟者は2000年度は3,430万人ですが、5月20日参議院厚生労働委員会で吉武年金局長でも2005年には3,180万人、2025年度では2,120万人になると答弁しています。それどころか法人の違法な未加入が増えており、社会保険庁が把握している2002年度に新しくできた95,995法人のうち、巡回指導を行った法人からでも17,193法人が厚生年金に未加入でした。17.9%になります。また企業では厚生年金基金の解散が進み、確定拠出型年金(401K)への転換も現実に進んでいます。
この年金の現状と年金の基礎となっている諸前提条件を考えれば、もはや今までになかった新しい発想で根本から制度を立て直すしか道はありません。共産党は一律5万円の最低保障年金を提案し、その財源については次のようです。
5兆円の財源を確保するためには、公共事業費や軍事費など歳出のいっそうの見直しとともに、歳入の見直しが必要です。この間に引き下げられた法人税率や所得税の最高税率を見直し、法人税にゆるやかな累進制を導入し、外国税額控除などの大企業向け優遇税制をあらためることで、安定した年金財源を確保します。そのさい、中小企業の負担は、現在の負担より重くならないようにします。
政府や財界は、企業負担を増やすと国際競争力がなくなるといいますが、わが国の国民所得は約380兆円(2000年度)、うち企業の税負担は18・6兆円、社会保険料の事業主負担は28・2兆円であり、「税と社会保険料」全体の負担は国民所得比で12・3%にすぎません。イギリス16%、ドイツ17・7%、フランス23・6%など、ヨーロッパ諸国にくらべて、日本の企業負担はきわめて低い水準です。月額5万円の最低保障年金を実現するための財源を、仮に法人税などの増税でまかなうとしても、この比率は 1%程度上がるだけです。 |
この提案も国民にとって優れたものですが、現在の政界での共産党のウエイトを考えると、共産党案を実施させることは残念ながら考えられません。なお、共産党案では従来の厚生年金、共済年金、国民年金はそのまま残し上積み分とする考えのようです。
緊急を要する年金制度の改革を思いますと、ヨーロッパ(2002年1月現在スエーデン25.96%・デンマーク25.96%・イタリア20.96%・フランス19.6%・イギリス17.596%・中国17.96%・ドイツ16%)に比べ消費税率の低いわが国でも税率の引き上げは早晩現実のものとなるでしょう。経済同友会の提案は一考に値すると思います。同友会案を参考にして、私なりに設計しますと、議員も含めて全国民に共通の基礎年金として65歳以上に月額7万円を一律に支給します。その財源は保険料徴収ではなくて、全額税率9%の年金目的消費税とするのです。この方式ですと保険料の未収といった問題は無くなります。消費税の増税になりますが、今までの国民年金保険料は無くなりますし、米などのどうしても生活に欠かせないものには免税・減税を適用する必要はあります。上積み分の所得水準に応じた報酬比例部分は確定拠出型つまり401K方式にして現行の13.58%を据え置いて企業の負担分6.79%を今後も拠出し、勤労者自身の負担する6.79%と併せて、この部分は私的年金積み立て運用でその運用は勤労者が考えなければならなくなります。議員年金も国:議員個人=50:50にし、確定拠出型の私的運用にします。
自営業者は経営者なのですから、自分で上積み分の用意はするべきですが、税制上の利点を持つ401Kに加入できるようにし、自分の力に応じた積み立て運用をして、老後の年金の上積みを計ればよいと思うのです。加入は自由な意志に任せればよいのです。所得捕捉の問題は生じません。
2006年からは現在の「65歳以上の年金受給者の公的年金等控除の上乗せ措置」が廃止され、われわれ老高齢者の所得税住民税が大幅に増税されます。さらに年金目的消費税が出来ますと老齢者も消費に応じて次世代の年金を負担することになり、辛いことですが、少子高齢をにらむとそれも仕方がありますまい。一番問題は年金勘定の大きさを眺めると、ここに書いた案のように上積み部分を民間に委ねることは、官僚にとっては認めることの出来ない領域侵犯、領域解放ですから、猛烈な抵抗、郵政民営化どころでない猛烈な抵抗を呼ぶだろうと思います。また現在の年金受給と著しく変わりますから、移行措置の組み立てが大問題です。これについては専門の官僚諸君にまず頭を絞ってほしいと思います。もちろん国民の立場に立って。
(7月3日追加)経済同友会案と共産党案は共通点が見られ、貧富の差を軽減する所得再配分の面からも望ましい案だと思いますが、決定的に異なるのは財源です。また共産党はヨーロッパの人たちは年金を享受し老後に年金生活に入ることを楽しみにしている、それはいわば共産党案のような仕組みになっているからだといっています。しかしヨーロッパで20%あるいはそれに近い消費税が課せられていることには触れず、消費税増税反対をスローガンの一つにしています。ヨーロッパの社会保障の在り方に消費税が高いことも寄与しているのではないのでしょうか。公共投資が日本ではヨーロッパに比べて多くこの財源を社会保障に振り向ければ財源はあり、不足分は大企業や富裕層からの増税で賄おうと言うのですが、インフラ整備の現状の分析をきちんとして議論しないと独断になり、他党の反対で国会でも否決されて、結果的に年金制度の具体的改革を実現できないままになるくらいなら、消費税も財源にして全国民に老齢になれば5万円程度の基礎年金は支給する方が具体的な方策です。低所得者への消費税の負担のウエイトが重いから消費税増税に反対だといいますが、生活必需品への消費税免除で対応できると思います。その上に現在の厚生年金、共済年金のような企業も負担した拠出年金を納付額に応じて上積み支給すればよいのです。消費税反対にこり固まっているから硬直しているのかも知れません。消費税増税を認め、低所得者の負担を如何に税制上軽減するかの議論に共産党も参加してほしいものです。
(2004年09月20日追記)「生活必需品への消費税免除で対応できると思います。」と書いたのですが、三菱総研は、MRI
マンスリーレビューで消費税率10%と、食料品など生活必需品を減税した複数税率(10%と5%)の年収に対する消費税負担率を試算。「低所得の年収307万円の場合、税率10%と複数税率の負担率は1.3%、約4万円しか差がなく、低所得者層には効果が薄い」としていますす。導入しない場合より税収は3兆円ほど落ち、官民ともに税金を集める事務作業も複雑化するので単一税率がよいとも指摘しています。
|