いま考えていること 95(2002年02月)
――小泉首相への決別――

田中前外相の参考人質疑が今日ありました。田中発言は小泉さんに対する幻想をうち砕くに十分のものでした。小泉首相の真実の姿がこれほどはっきりと描き出されるとは予想しなかったことでした。小泉首相はこれで急速に“信”を失って行くでしょう。“信”無くしてはすべては失敗します。現在の日本の状況を見ればすべての面で改革を迫られていることは厳然たる事実なのですが、小泉改革の前途には暗雲が立ちこめてきました。かといって従来の自民党の路線の復活ではますます私たちの将来は暗くなります。大変な事態に直面しています。小泉さんが失脚しても経済はそれ自身の法則に沿って何らかの改革の路線を歩み続けるでしょうが、その方向の把握をする指導部が無くなるので、当面大変な事態に突入するでしょう。野党がしっかりしておれば政権交代が次の局面として現れるでしょうが、残念なことですが、現在の野党には信頼できる政党がありません。こういっても民主党の医療改革プランなどかなり良くできているとは思っているのですが、鳩山さんに政権をゆだねようと言う気にはなりません。困ったことですね。今日の質疑は大きい意味を持っています。

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いま考えていること 96(2002年03月;07月;2003年03月;6月;9月;10月;11月;2004年01月;02月;06月;11月;2005年04月;05月;2006年9月;2008年9月)
――インターネット 2――

以前にもインターネットについて書きましたいま考えていること 16が、かなり時間も経ちましたので内容的に古さが見えます。2002年3月6日にNielsen/NetRatingから新しい報告が出ましたので、概要を報告します。

まず地域別に家庭のパソコンでインターネットに接続している人の数と昨年第4四半期に第3四半期と比べてどれだけ増えたかという統計です。

 
          	      接続者数	     対第3四半期比伸び
アメリカ/カナダ	    1億9,170万人	610万人
ヨーロッパ/中東/アフリカ	1億3,470万人	630万人
アジア太平洋	        1億1,010万人	580万人
ラテンアメリカ	          2,070万人	  70万人
その他	              4,100万人	510万人
		
合計	                        4億9,820万人    2,400万人
   	
この増加速度は前期に比べると約2倍になっています。ヨーロッパ、アジア太平洋地域とも高学歴の人の接続が主だということです。

Nielsenの調査は2001年10月から12月にかけて行われましたがUS、カナダ日本については十分な調査ができなく残念ながらデータはあげられていません。(ビデオリサーチ社の発表によりますと2002年4月現在、日本のインターネット利用者は5,310万人、内自宅からの利用者は4,621万人ということです。)全家庭の何パーセントがパソコンでインターネットに接続しているかのデータもあります。




                        	%
アルジェンチン	                20
オーストラリア          	51
オーストリア            	38
ベルギー/ルクセンブルグ	32
ブラジル	                21
デンマーク              	51
フィンランド            	42
フランス                	20
ドイツ	                        35
ホンコン                   	56
アイルランド            	34
インド	                         7
イスラエル              	35
イタリヤ	                34
メキシコ                   	14
オランダ                	52
ニュージーランド	        52
ノルウエー	                47
シンガポール	                60
南アフリカ	                17
韓国	                        58
スペイン	                18
スエーデン                      57
スイス	                        43
台湾	                        50
英国	                        38
50%以上の國と20%以下の國とは数字の色を変えておきました。昨今IT不況がいわれていますが、まだまだ今後インターネットは普及する余地は大きいと見られます。

3月11日Computer Industry Almanacが世界の6地域51カ国のコンピューター台数について次の調査結果を発表しました。

          		    パソコン使用台数(億台)		
	            1995年    2000年    2001年    2007年
  全世界        	2.29	       5.3	       6.03      	11.5
     家庭使用パソコン%	35.2    	43.5	         45.1	          52.3
  アメリカ      	0.935          1.62	       1.75	         2.51
     家庭使用パソコン%	36.9	        49	         50.4	          54.6
  ヨーロッパ	        0.624	       1.39	       1.58              2.85
     家庭使用パソコン%	39.2	        48.5	         49.9             52.9
  アジア太平洋地域	0.436	       1.39	       1.66              3.67
     家庭使用パソコン%	29.3	        35.8             38.3	          53.9

表は今後ヨーロッパとアジア太平洋地域ことにアジア太平洋地域での大幅な伸びを予測しています。アメリカでは2010年過ぎには3億台に達して飽和状態になりますが、その後も年間6000万台の買い換え需要が続くと推定されています。
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ブロードバンド使用者の統計が最近アメリカのeMarketerから発表されました。全世界で2000年には2000万人でしたが、2004年には9000万人になるという予想です。当のアメリカでは940万から5800万人に増えると見られています。現在アジアでは韓国の普及率が飛び抜けており、ヨーロッパではベルギー、デンマークでの今後の著しい普及が予想されています。アメリカRHKによりますと、ブロードバンド中xDSLについては全世界の加入者の内44%はアジア太平洋地域が占め、今後も日本、中国、韓国が世界でリードを続けると見られています。
関連した国内事情レポートとして総務省の2002年7月末現在の「インターネット接続サービスの利用者数等の推移」があります。これによれば、ADSL、光ファイバーなどのブロードバンドで接続しているユーザー数は500万人を突破している反面、ダイヤルアップのユーザーは4月末以来、ほぼ横ばいであり、国内インターネット接続環境のブロードバンド化が浮き彫りになっています。

内訳は、ADSLが361万199、光ファイバーが8万4,903、CATVが171万、ダイヤルアップが2,160万5,000人などで、ADSL、光ファイバー、CATVのブロードバンド環境のユーザー数は合計で約540万に上り、先月比べると40万人余り増えています。これに対して、ダイヤルアップのユーザー数は4月末以来、ほとんど横ばいの状態です。

同じく総務省の2003年4月末時点速報値ではADSLが702万3,039件(前月比 43万3,172件増))、光ファイバーが30万5,387件(前月比 4万2,243件増)。

2003年5月末時点では、ADSLが790万7000件、光ファイバーが39万8000件、CATV218万3000件。国際電気通信連合の調査結果ではブロードバンドサービスの「料金の安さ」と「速度」では日本が世界のトップ、人口比普及率は13位といいます。

総務省の2003年8月末時点速報値ではブロードバンド回線の利用者は1179万3084(先月1135万5672回線)で先月よりも43万7412回線(先月の増加は41万6261回線)の増です。xDSLが888万1039件(前月比 33万9699件増))、光ファイバーが60万8045件(前月比 7万6713件増),CATVが230万4000回線(前月比 2万1000件増)。CATVの伸び率はほぼ一定ですが、伸び率で見ますと、CATVの増加率が鈍っているのに比べxDSLと光ファイバーの躍進ぶりが目立ちます。

総務省の2003年12月末時点速報値ではブロードバンド回線の利用者は1364万1311で先月よりも48万6603回線の増です。xDSLが1027万2052で先月よりも36万0746回線の増で遂に1000万を超えました。光ファイバーが89万4259で先月よりも7万8857回線の増で、増加率は先月よりも上がりました。CATVが247万5000で先月よりも4万7000回線の増で、CATVの増加率は次第に下がってきています。

2003年12月24日の米連邦通信委員会(FCC)の発表ではアメリカのADSLは770万回線で、同期の日本のADSL回線826万回線よりも少ない。11月末では日本は991万回線で今年中に1000万回線を超えると思われています。
アメリカはCATV回線利用者が多く、ブロードバンド全体の数は6月末ではアメリカ1630万回線、韓国1110万回線、日本1100万回線となります。中国はこのとき900万回線ですが、月60万回線のペースで増加していますから近い将来韓・日両国を追い抜くと見られています。

2004年7月発行のインターネット白書2004によると2月現在の日本のインターネット人口は6,284万4,000人、世帯普及率は初めて半数を超え、52.1%になりました。自宅接続者のブロードバンド利用率は48.1%。このうち65.3%はADSLを使い、次に多いのはCATVの14.5%光ファイバーは12.2%になっています。ADSL接続業者のトップはヤフーBBでした。なおインターネット接続で迷惑行為を被った人は37.0%ですが、その内「コンピュータウイルス」被害を挙げた人が48.2%、個人情報の漏れを経験した人が24.9%あるようで、注意が必要ですね。

MM総研は、2005年3月末時点のブロードバンド回線事業者における加入者数の調査結果を公表しました。同調査によると、ADSL/FTTH/CATVインターネットをあわせたブロードバンドサービスの加入者総数は1,930万件。

 同調査によれば、ADSLの加入者数は2005年3月末で1,273万9,500件。2004年度下半期の増加数は96万件で、2003年度上期より4期連続で増加ペースが鈍化傾向にあります。事業者別のシェアではYahoo! BBが34.9%で1位となり、以下NTT東日本が20.7%、NTT西日本が17.3%、イー・アクセスが13.5%、アッカ・ネットワークスが9.4%となりました。

 FTTHの加入者数は、2005年3月末で266万2,000件。2004年3月末の加入者数が114万5,300件でしたから、1年間で加入者数が約2.3倍まで増加しました。MM総研では、FTTHのシェア増加については各事業者が新築/中古を問わず集合住宅向けに積極的なプロモーションを行なった結果としており、また、FTTH加入者数は2005年度末で535万件、2006年度末で905万件、2007年度末で1,390万件に拡大すると予測しています。  FTTHの事業者別シェアでは、NTT東日本が33.3%で1位を維持。以下は、NTT西日本が29.3%、ユーズコミュニケーションが10.6%、ケイ・オプティコムが8.3%となりました。NTT東西のBフレッツの合計シェアは62.6%ですが、2004年9月末と比較すると9.3ポイント減となり、FTTH事業者の競争が本格化している様子が伺えます。  CATVの加入者数は、2005年3月末で294万件。前期比14万件増となりましたが、純増ペースは頭打ち傾向です。なお、事業者別ではジュピターテレコムが約27%のシェアを確保しています。また、1Mbps未満の回線接続サービスを利用するのナローバンドユーザーは、2005年3月末で1,796万件でした。  MM総研では、2005年度はFTTH加入者数の増加ペースが加速し、ADSLとCATVについては増加ペースが一層落ち込むと推測しています。また、ADSL/FTTH/CATVの3サービスの合計加入者数は、2005年度末には2,360万件、2006年度末には2,800万件、2007末には3,275万件に増加するとの予測です。

 野村総合研究所(NRI)は、2010年までのブロードバンド市場7分野、放送市場6分 野、セキュリティ市場4分野の市場規模予測結果を公表しました。  ブロードバンド市場は、個人で利用するインターネット接続回線がADSLからFTTHへ と緩やかに移行していくと予測。また、総務省の情報通信審議会で光ファイバとIPを 利用した地上デジタル放送再送信が認められる方針が出されたことから、今後は映像 配信サービスの普及がFTTHの普及を牽引していくとしています。  これにより、個人向けFTTHサービスは2010年に加入世帯数が1,488万世帯に、市場 規模は2005年度の2,113億円から6,483億円へと拡大すると予測しています。また、 個人向けIP電話サービスでは同番移行が可能なサービスが提供されており、ブロード バンド市場の普及に伴って、2010年には1,600万加入に達すると見込んでいます。  一方、ADSLは2005年度の5,566億円から、2010年度には4,234億円へと市場規模の 縮小を予測。それ以外の分野ではCATVインターネットが1,837億円から1,745億円に、 公衆無線LANが92億円から376億円に、ISPが7,113億円から7,353億円に、IP-VPNおよび 広域イーサネットが5,364億円から7,640億円になるとの予測です。  放送市場では、地上デジタル放送の普及世帯数が2010年に3,512万世帯に、市場規模 が1兆8,507億円になると予測。また、ネット放送分野では現在の90億円から940億円へ と10倍以上の伸びを見込んでいるほか、VOD分野に関しても90億円から620億円へ 市場規模が拡大するとしています。

  2006年9月総務省の調査が発表されました。この調査は、2006年6月末時点での契約者数の調査結果です。

ブロードバンド接続サービスの利用調査では、合計は2421万7012件で、このうちFTTHが630万5597件でした。FTTHは3月末に比べて84万799件増でしたが、ADSL/xDSLは2万6865件減の1449万994件でした。
2008年9月の総務省発表では6月末のブロードバンド通信の総契約数は2934万件でそのうち光回線は1308万件、ADSLは1228万件で初めて光回線の方が多くなりました。

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いま考えていること 97(2002年03月)
――ちょっと良い話――

今晩(2002年3月15日)の毎日新聞夕刊のコラム「風の響き」欄に“油断する人生”と言う小さい記事が出ていました。目の赴くままに読んで見ましたが、印象に残る内容でした。劇作家 鈴江俊郎という方の文章です。全文を読んでいただきたいのですが、それも著作権問題にもなりましょう。

氏はこう書かれています”演技術の秘伝は一つだけ・・・・「油断せよ」。
大勢の人の前に立たされて、なにがしか台詞を喋べらなくちゃいけない局面に来ると、人は普通こう考える「頑張るぞ。ぼんやりしちゃいかん。かっこよく、普段の自分とは見違えるような姿を演じるぞ」と。(中略)たいていの舞台上の人は緊張していて見苦しい。
つまりコツは力を抜く、ということしかない。ぼんやり油断する方がむしろかっこいいという逆説。そしてその方こそ実は習得が難しかったりする。(中略)
人の身体は力を抜けば水に浮くように生まれついている。溺れるのは不安になってもがき、力を無駄に入れてしまうからだ。それと同じだ、と。
そういう確信を得てから、私はちょっと生きるのが楽になった。これは人生そのものにも当てはまる原則ではないかと感じるからだ。演劇に、感謝、だ。

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いま考えていること 98(2002年03月;5月)
――「チェリビダッケの庭」――

チェリビダッケはレコード録音を避けた指揮者でした。彼が1996年になくなってからは次第に彼の演奏もCDで聴かれるようになりましたが、フルトベングラーが「録音技師が変えてしまった」と怒鳴ったように、彼も録音したものは本来の演奏での音楽とは全く別のものだと思っていたのです。

近頃HMVから購入したフランス映画「チェリビダッケの庭」はDVDで提供されていますので、家庭で簡単に観ることができます。この映画は5時間にわたりますが、チェリビダッケが若い指揮者の卵を指導していく様子を中心にしています。激しい痛烈な批判を投げかけていきますが、いつも温かい心がにじみ出ています。指揮をしているときも満足しているときはほれぼれするような穏やかな笑顔が見られます。

若い指揮者たちとの対話の中に彼の音楽への考え方が随所に伺えます。彼の考えは、指揮も演奏も曲そのものが秘めている本質を読み、忠実に演奏者の自我を捨てて音楽そのものを伝えることにつきるということかも知れません。この映画の中のチェリビダッケは全く譜面を開かないのも驚異でした。映画は題名が示すようにチェリビダッケの庭と彼とのかかわりがテーマになって展開されていくのですが、それは最期の方で『神の庭園は無限に広くそこにはいつも音楽が生まれているのだが』という彼の言葉を象徴しているようにも思えます。レコードについては、まことの音楽と全く違ったものだと考えていたと書きましたが、それは景色そのものとその写真との関係だともいっています。確かに世の中はITやカメラ録音装置などとどんどん便利なものができてきますが、それらは本当のものから私たちを遠ざけ、感受性を鈍らせて、昔の人たちよりも受け取るものは貧しくなっているように思えます。私も視力が落ちて来て疲れるということもあるのですが、昔のように本を読まなくなりました。昔は楽しみの一つが読書でしたが、今ほど便利な仕掛けが無かったからこそとも思えます。やはり本から受け取るものは密度が濃く、著者の人間著者の考え方を直接感じます。長男が話していましたが、フランスの人はグローバリゼーションといわれるものはアメリカライゼーションだと警戒しているそうです。真の文化を重んずる国フランスで、インターネット普及率が低いのもこの現れかも知れません。便利なものの多くは道具であり、道具以上のものではありません。道具を生かすも殺すも“人”です。人としての修行は苦労多く時間もかかるものです。私達は修行の道をまず求めなければならないと思うのです。ITを絶対視しては誤ります。しかし道具としては大いに利用したい道具です。

少し脱線してしまいました。ごめんなさい。

チェリビダッケに興味を持たない方でも音楽をたのしみにする人に本当にお勧めします。音楽とは?指揮とは?今までの私の甘い認識に鉄槌を下すような映画でした。

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いま考えていること 99(2002年03月;4月;5月追記)
――改革、進展と思う――

いま考えていること 95―小泉首相への決別―に田中外相更迭の失望と小泉首相の改革の頓挫を記しましたが、1ヶ月が過ぎてもう一度考えてみますと、小泉改革は遅々としてはいますが方向はそう変わっていないと思うようになりました。すべて現実の進行は革命でもなければ「ご破算で願いましては」というわけには行かず、妥協もしながら進めざるを得ないことは私もわかっているつもりです。また改革ですべてが解決されるわけでもなく、改革が新しい問題を生み出すことも避けられません。しかし当面問題を生じている局面には大胆なメスをまず入れなければなりません。自民党内の族議員の反対を押し切って改革の種を蒔き発芽させた部分はこれまでの内閣には見られなかったものがあります。郵政事業の見直し、道路公団の見直し、国立大学の法人化、ペイオフの断行、健保制度の見直しどれを取ってみてもそうです。民間の郵便事業参入についても全国に9万9千以上のポストの設置を条件とする認可基準について小泉首相は直ちに最初から参入を妨げるような厳しい制約は設けないように指導しました。議員秘書の給与を巡って表面化した政策秘書問題にも積極的な改革の意向が伺えます。靖国神社についての小泉さんの態度は全くいただけないのですが、今年の夏は少しは考えを改められるでしょう。田中外相問題はありましたが、派閥の顔を立てたり議員個人に栄誉を与えるようなこれまでの大臣交代の空気もありません。こう見てきますと、総合的には私の見るところでは改革に対し合格点を差し上げて、今しばらく見守る気分です。

(追記:4/28)有事法制、個人情報保護法案は全くいただけません。先ず上にあげた諸問題を現実のものとして改革してほしいと思います。有事法制、個人情報保護法案は法案としても十分検討された案とは言えませんし、何よりも国家権力を強化して「自由」を制限し、政府が情報を管理する性格があります。敗戦後の日本は国民の自由を保障する憲法を持ち得たところに大きな犠牲の代償があったと思うので、國は国民の自由を守ることを第一義としなければなりません。この二つの法案はこれに背き、戦前の体制の復活を意図するように思えます。国際紛争を起こさない外交努力、国際交流を強化すれば有事法制など要りません。私はどのような形でも「自由」を圧死せしめる動きには反対します。やるべき改革はスローガン倒れのままで放置し、「改革」の名に隠れて、これを機会に実は国家権力の強化を図るのが小泉さんの本当の目的であったのかとさえ疑わせる動きです。
(追記:5/12) その後の国会での答弁を聴き、また有事法制、個人情報保護法案以外の早急にやるべき改革への良く言えば慎重、悪くいえば怠慢な取り組み方と国会を延長してでも有事法制は通すという取り組みとを較べるとき、いよいよ支持を撤廃するときが来たという気持ちです。小泉さんと自民党の退場を望みます。
(追記:5/21)瀋陽領事館問題で民主党の調査が新しい調査結果を出したところ小泉さんは「自虐的だ」といい、後ろから鉄砲を撃つようなことはするなといって世論を日本政府見解に一致させようとする「挙国一致」的発想が見られます。この手の発想はかっての軍国時代の発想で私の全く嫌いなものです。いつの時代でも、戦時といえども、反対意見のなかに真理があることも多く、大戦の惨禍を取り除いた終戦の決定も、政府とは相容れない意見から生まれたのです。
今朝の報道では防衛庁長官は米軍への武器弾薬の供与も有事法制は含むものだといっています。これでは米軍への支援法制だという発言にも一理があります。歯止めが効かなくなることを恐れます。

小泉さんさようなら。

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いま考えていること 100(2002年04月)
――第100回になりました――

徒然草ではありませんが、折りにふれて考えたことを綴って来ましたが、今日は第100回目の節目となりました。現在の世界も日本も毎日暗いニュースが絶えません。世界では、やはりイスラエルとパレスチナの紛争が一番大きい問題ですが、テロ撲滅をスローガンに世界の警察官気取りのブッシュアメリカ大統領の独りよがりの独断が、イスラエルの蛮行を許しています。我が国では政治屋とでもいうべき連中が金への欲望につまづきの連鎖劇を見せてくれていますし、不良資産の処分も出来ない銀行がただ合併しても内容が伴いませんから、コンピューターシステムも使いこなせず、惨めな姿をさらけ出しています。国際的にも信用は失なわれる一方で、わが国国債の格付けはG7最低の状態です。

自戒の気持ちを込めて考えますと、やはり怖いのは「お金」を主とする欲が人間を誤らせるという想いと、かっては第二次大戦でナチズムの非人間的欲望に悲痛な想いを味わったユダヤ人達が、未だに國を持てないパレスチナの人たちに温かいまなざしを注ぐどころか、ナチ同様の蛮行を平気で犯す姿に人間の持つ愚劣さを思わずにはおれません。

私は11年間同志社に勤め毎朝聖書の朗読と礼拝に参加しました。礼拝時にはいろいろな方のお話を聞く機会に恵まれました。その後の30年ほどは本願寺系の学校に勤めていましたから、浄土真宗の考えを聴く機会が与えられました。いま考えるとキリスト教の説く「愛」といい、真宗のいう「我を捨てて阿弥陀仏に任せきる」という思想も突き詰めれば「自分本位でなく他人のことを何時も考えて生活しましょう」ということになるのではないでしょうか。正月の初詣から始まって私達は神仏に参るとき、自分の幸福と幸運を願うのでしょうが、そういう祈りは誤りだし効果もないだろうといいたいのです。また神社などもお参りすれば良縁、合格など良いことがありますよということに力点を置き、宗教家と称する人達も大部分それを通じてお金儲けを計っているというのが今の日本ではないでしょうか。“心だに誠の道にかないなば祈らずとても神や守らん”という歌は広く知られていますが、私はこの歌中の“誠”の字を“真”に替えて“心だに真の道にかないなば祈らずとても神や守らん”と考えています。真の道にかなわぬ祈りはいくら神社仏閣に頭を下げ、賽銭を奉納しても無意味だという事ではないでしょうか。真の道とは現在私の頭にあるのは「利他」ということです。利するといってもお金や物のことではありません。優しい言葉、微笑みかけでよいのです。他人の為によかれという発想で行為すれば「我」は去れますし、「愛」の行動になります。すべての仕事がそうなのですが、ことに宗教家、医師、看護師、介護師、弁護士、教員の仕事は「利他」の仕事であることを、これらの人たちは何時も意識していなくてはならないのではないでしょうか。

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いま考えていること 101(2002年05月)
――「備えあれば憂いなし?」――

小泉総理は有事法制の審議でよく「備えあれば憂いなし」という言葉を使われる。どこかで聞いた言葉だと思い返してみますと、大戦中の標語なのです。議員も戦後生まれの人が増えたのか、こういうことを指摘する人はありませんが、私にとっては亡霊の復活です。日本の軍隊は沖縄戦で完敗し、住民に多くの犠牲者を出しました。沖縄では避難していた住民を壕から追い出して逃げ込んだ兵士さえあったと聴いています(沖縄県北中城村議会が採択した有事法制関連三法案に対する意見書には次のような記述があります。「沖縄戦で軍隊は住民を守らないことを体験し、戦争になれば軍人より一般住民の犠牲が大きかったことが明らかになった」(毎日新聞大阪2002.06.23)。前の戦争でも勢いよく「本土決戦」の言葉が日常化していましたが、原爆の投下で急速に終戦に向かいました。この狭い国土でたとえ強力な自衛軍を持ち、米軍の援助があっても住民の犠牲を伴わない長期の抗戦はかっての沖縄と同様不可能でしょう。万が一にもミサイルによる核攻撃を受ければ広島の何百倍もの被害を受け反撃機能も壊滅するでしょう。現憲法が交戦権を放棄しているのはこういう過去の痛ましい経験の反映です。何よりも戦争を起こさないという確たる哲学と緻密な分析に基づく、きめ細かな外交、テロを発生させない国内外のストレス状況の解決への普段の努力こそ平和の保証であることを、戦争を知らない人たちも知って欲しい。「予測」「おそれ」に対し自衛権の発動可能の考えは、長距離ミサイルの装備、さらには核装備へとエスカレートする道を準備しかねません。「備えあれば憂いなし」は妄想に過ぎません。願い下げたいものです。米軍は先制攻撃を展開しかねず、日米協力の大義でわが国の米軍協力への障害をあらかじめ取り除いておく目的を内包しているという批判も故なしとしません。

「有事」という考えには一見国民の「有事」を想定しているかの錯覚を抱かせますが、極言すれば国民を惨禍から守るという考えは見られません。かって天皇制を守り国体を守ることを第一義に考えた 敗戦直前の政府の発想がよみがえります。この狭い国土の上で戦争を展開すること自体が国民に最大の惨禍をもたらします。一体小泉さんは何を守ろうというのでしょうか?かっての経験を基に言えば軍隊は国民を守るよりも国体と天皇制を守るという名目で自らの組織と権益を守る組織でした。日本は今でも対外的には天皇制という政治制度の国で、元首は天皇であり、在外公館には菊の紋章が相変わらず輝いています。「日本は天皇を中心とした神の国」という森首相発言があったのも記憶に新しいことです。

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