いま考えていること 102(2002年06月)
――老いと病気――
別段お腹が痛いのでもない。熱も出なくて36.0度前後。食欲もまずまずある。困るのは便秘が続き、ガスを出すと一緒に綺麗な無色の粘液だけが出てくるのです。こういう状態が1日から29日までは完全に続いていました。昨日から少し快復の兆しがあって、粘液が出てこなくなったようです。この間仕方なくお尻に尿パッドを当てた生活なのです。先ず食あたりかと細菌検査をしてもらいましたが異常はなく、S字結腸付近までのシグモイド検査で内視鏡的に見てもらいましたが、10年くらい前に大腸切除をして縫合した部分にタダレが見られました。粘液はこの部分から出ているらしいのです。ただれた部分の組織検査をしてもらった結果は悪性のものではないというのです。来月初めさらに大腸全体の内視鏡検査を受けます。この検査はあらかじめ2リットルの下剤を飲んでお腹の掃除をせねばならず、これが苦しいのですが止むをえません。この全腸検査が終わらないと何とも言えないのですが、この1ヶ月苦しみました。しかも原因がはっきりしないので薬としてはラックーBという整腸剤だけでした。細菌が原因なら抗生物質の投与でしょうが、細菌性でないとすると抗生物質の投与は腸内の微生物バランスを崩してしまいますから
、これで良かったのかも知れません。
医師の方は潰瘍性大腸炎や虚血性大腸炎なども一応疑ってみられたようですが、症状から両方とも候補から消えています。潰瘍性大腸炎はどちらかというと若い人に多いのですが難病に指定されています。若い人にも見られますが老人に多いのは虚血性大腸炎のようです。こちらは動脈硬化によって腸管に血液が流れず壊疽(えそ)を起こすのです。時に腸の心筋梗塞ともいわれているようです。こちらも腸を休ませ抗生物質投与以外これといった薬はないようです。老人にはそんなに珍しくはないとの話しです。こういうわけで、もしこのまま治ればはっきりした病名もつかず、薬らしい薬も呑まずに治ることになります。それにしても治れば幸いです。昨日は世界禁煙日でしたが、永年の喫煙が年を取るとその害を現してきて肺ガンになる人も多いのです。ところが老人のなかには若いときと同様に医師にかかり薬を呑めば病気が治ると信じたり、網膜が駄目になったり水晶体が老化しているのに良い眼鏡さえかければまたよく見えるようになると考えている人もあります。薬で治るのなら老化も死もないはずで、釈迦の生老病死の悩みもなかったのです。老人に必要なのは自分のありのままの状態をしっかり見つめて、その状態で何が可能かを知ることです。不可能なことを願っても仕方がないでしょう。結局は自分自身の持つ本来の治癒力が衰えておればどうにも仕方がないので、この治癒力を日頃から維持する努力こそが必要だと今度のつまずきで教えられました。
(6月3日追加)午後全腸内視鏡検査を受けました。去る15日にただれていた部位もかなり良くなっているようです。その他の部位にはとくに変化はないようでした。このまま消化の良いものを取って節制すれば自然に治るということでした。手術で吻合した箇所は血流が必ずしも十分でないようです。もうしばらく様子を見ます。病名は虚血性大腸炎に属するもののようです。
(8月7日追加)S状結腸までの内視鏡検査を受けました。ほとんど全治しているとのことで安心しました。もう何を食べても良いのです。手術吻合部でのこのような炎症はまれにみられるようですが、手術でその付近の血管網がこわれて、その補完が十分でないためのようです。薬らしい薬は何も摂っていませんでしたが、自然治癒力の賜物です。
(9月2日追加)食道や胃、大腸などの消化管の粘膜が炎症を起こしたり、潰瘍になったりすると、骨髄中の細胞が救援に駆け付け、患部を修復することを東京医科歯科大の渡辺守教授(消化器内科)と慶応大のグループが突き止め、八月二十六日付の米医学誌ネイチャー・メディシン(電子版)で発表されました。この“レスキュー細胞”は、さまざまな組織や臓器の細胞に成長する力がある体性幹細胞とみられています。自然治癒力と観念的にいっていたものの本質の一端が明らかになったような気がします。
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