いま考えていること 20(1999年03月)
―― 時にはこういうことも――
しばらくホームページの改訂ができませんでした。Windows98をセーフモードでしか使えず、CD-ROM・プリンター・インターネットなどすべて使えなかったのです。
お正月に長男の一家が来て泊まったのですが、エアコンが故障して一向に部屋が暖まらないというのです。これが故障の始まりで、次はテレビ画面がポンと装置を叩かないと映らなくなり、風呂の湯沸かしの能力低下、電子レンジの発振器のダウン、石油ストーブの制御不能、最後はコンピューターの設定の混乱と相次ぎました。大散財!コンピューターの不調は新しく買ったコードレスマウスの受信装置をシリアルコネクターにつないだのがきっかけで起こりました。わたしの機械はPC9821Xv20なのですが、CPUをAMD製のHK6-MD366-N2に変えていたのにPC9821用の装置を組み込んだのが誤りでした。(受信装置をはずし、REGEDITでregistryを 元に戻して復活しました。)
それだけではありません。家内が突然発熱し、胆道炎の疑いありとのことで緊急入院。私も日頃の疲れもあってか風邪を引き、元気が出ませんでした。どうもこれはどうしようもなく、少々運命論的ですがそういう巡り合わせが来たとしか考えようがありません。こういうときは私のこれまでの経験からは、じたばたしてもどんどん泥沼に入り込むばかりでうまくいきません。対策はこういう時期が過ぎるのを静かに待つのみです。このことはものの考え方のところにも世阿弥の言葉と一緒に書いたのですが、今度も時たまこういう時期はあるものだと改めて考えています。久しぶりに経験しました。今どうやら一陽来復を迎えられたようです。
いま考えていること 21(1999年03月;4月;11月;2000年2月;6月増補;2001年4月)
――選挙も近い、信用保証枠!――
11年度予算の成立と共に、小渕首相は昨年10月に創設した「中小企業金融安定化特別保証制度」の保証枠20兆円に追加して必要かつ十分な枠を追加する」といち早く述べ、さらに10兆円の保証枠を設定しました。借り出す企業が多く、九月には枠が底をつくというのが大義名分ですが、見方を変えると地方選挙を控えて、公費による自民党の選挙対策と言えないこともないと思います。この枠は政府が返済を保証するので金融機関の貸し出し審査も甘く、早くも暴力団関連の“舎弟企業”で借り出してから計画倒産するものも出ているようです。また今日(1999年4月12日)のNHKニュースでは借りた金を銀行からの借り入れの返済に充てさせられている会社も多く、或いは借りた金の何倍もの利息を取って高利貸しに狂奔する連中の存在も報道されました。こういう例はまったく許せない例ですが、多くの中小企業が助かっていることは間違いなく、政府自民党は選挙を控えて党のお金を使わずに人気を挙げる良い方法と見ているのでしょう。
30兆円といっても枠なのですから、仮に10%焦げ付いても3兆円の出費ですみます。見せ金30兆円というのは宣伝効果のよいものです。恐らく甘い審査ですから、かなりの焦げ付きが出ましょう。すべて国民の負担になる金ですからいい気なものです。これからの産業という立場からは、革新の出来ない、いわば、もうついていけない構造と頭脳を持った古い体質の中小企業の、一時的な延命に手を貸すだけという例も相当出るでしょうから、回収は容易ではないと思います。銀行の延命策と同じ根の、市場からの「退散手当」ともいえるものかも知れません。それにしても気前のいいことです。
わたしの住むところは京都西陣の片隅ですが、いくら伝統産業を守れと言い、市長や知事が和服を着ても、一般の人々は普段、和服は着ませんし、自分で着付けの出来ない人がどんどん増えています。そういう状況からはもはや和服は普段着ではあり得ません。演歌歌手か伝統芸能・文化に携わっている人の服装です。需要と供給のギャップからみると生産が減少し、転業していくのも当然でしょう。長い西陣の伝統と名声を活かして、世界を相手にする、主として現代の洋服の素材としての織物産業が新しく興されるとき、始めて西陣は再生するでしょう。古いままのお店を潰さないために融資をしても一時の延命にはなっても、結果的には融資は不良資産化して当然だと思います。「能」の衣装などはやはり西陣で織られていますし、西陣でなければ出来ないのです。需要と供給がマッチしているものは、ちゃんと存続しています。「中小企業金融安定化特別保証制度」は潰れるべきものを温存して、真の新しい時代への構造改革ステップを遅らせているのかも知れません。
11月11日経済新生対策が決まりました。この中に“金融経済環境の激変への適応円滑化を図るため、中小企業金融安定化特別保証を平成13年3月末まで1年間延長し、保証枠を10兆円追加すると共に、雇用の増大等建設的努力の計画を有することを対象要件に加える。(中略)また、中小企業者・農林漁業者等に対する政府系金融機関等による金融環境に対応した融資制度及び金利減免措置の延長等を行う。”と書かれており、中小企業等金融対策ととして事業費7.4兆円程度が措置されています。世間でもこの措置を私と同じように受け取りむしろ改革を遅らせてしまうと危惧する声も聞こえます。
11月15日の報道では帝国データバンクの予想としてこれから、先の 「中小企業金融安定化特別保証制度」による借入金の返済が始まるので次第に倒産は増加するとのことです。これも焦げ付きの付けは国民に回ります。2000.10.17の状況
帝国データバンクの資料に依りますと、>年度としては昨年は不動産業を除き倒産件数は減少しました。しかし11月からまた倒産件数は増えてきていま
す。
[全国企業倒産件数]
1999年8月 1999年9月 1999年10月 1999年11月 1999年12月 2000年1月
1402 1372 1395 1372 1547 1441
[同上前年同期比増減(%)]
-8.605 -9.618 -18.278 +0.882 +32.335 +43.7
[全国企業倒産件数]
2000年3月 2000年5月
1770 1528
[同上前年同期比増減(%)]
+39.5 +12.4
経済産業省・中小企業庁は2001年4月19日、「中小企業金融安定化特別保証制度」の実績をまとめた。融資総額は約29兆円で、最終保証承諾件数は172万件、中小企業の約3割が利用した計算といいます。返済不能になり各地の保証協会が代位弁済した額は6000億円(融資額の2.2%)に上り、今後も増える見込みです。政府が20兆円の保証枠を設けて98年10月に実施。その後政治的な要請が強く働いて、保証枠が10兆円追加されたうえで延長、今年3月にうち切られました。現在の焦げ付き額は融資総額の2.2%にとどまっているが、政府は最大で10%が返済不能になることも想定。各地の信用保証協会が出資して債権回収(サービサー)会社をつくり4月から業務をはじめていますが、はじめからこの結果は予想されたことです。
貯蓄に戻る方は
いま考えていること 22(1999年03月)
――語るに落ちる――
今朝(1999年3月27日)のサンデー・プロジェクトには堺屋太一長官と加藤寛氏がでていました。経済は底を打って明るいというお二人でした。まず、堺屋長官の話では大蔵省や厚生省の役人が財政改革法案や年金改革法案を通すために、過度な悲観論を流したので経済が落ち込んだというのです。そういう側面も否定はしません。しかしその役人が政府の役人であり、それを利用した政府があったということをこれは認めた発言ですね。堺屋氏は現政府の高官であることを思うと、現在の堺屋楽観論もまた経済の流れを変えるために政府筋の意図した過度な楽観論ということにならないでしょうか。私など物心ついて以来数十年の実績から、常に政府のいうことはそのまま信じたら大変だという考えが焼き付いていますから、堺屋楽観論を信じる気は毛頭ありませんが、上に書いたようなことを人前でシャーシャーと語るようでは「語るに落ちる」の見本です。
また、加藤氏は、年金は日本では大丈夫ですと大見得を切っていましたが、ほんとうに大丈夫ならなぜ65才に支給年限を切り上げたり、支給額を減らすのですか。政府のお先棒担ぎの発言で、これまた「語るに落ちる」発言で、大丈夫発言は現在の年金改革を国会の議案から取り下げてから言ってほしいものです。アメリカは心配ないのですなどと発言していますが、アメリカでもベビーブーマー世代の年金の支給が難問だとグリーンスパン議長はいっているのですがね。知ってか知らずにかこれには触れずじまいでした。お二人のみせかけの暢気さと裏の意図にホトホト感服し、恐ろしいなと感じました。
貯蓄に戻る方は
いま考えていること 23(1999年04月)
――東京都知事選――
石原慎太郎氏のこれまでの憲法論議を見ますと、恐らく本質的には天皇制の国家体制の支持者だと思っています。サンデープロジェクトで今だに中国をシナと呼ぶ体質も私の好みではありません。しかし候補者の中では最も人間らしく政党にとらわれないで自由なビジョンを展開していた点では、私の好みです。
これに対して、アチコチと政党を渡り歩いてきたK氏は、出世欲の固まりであり、A氏は国連で活躍した人でしたが、広島の平和問題研究所とか大学の国際問題関係の教授でもするならまだしも、自民党に担がれてホイホイと平和研を放り出して東京都知事に立候補するなどは、一体何をあなたは考えているのと言いたいところでした。H氏も元々自民党的体質があり、私には魅力は感じられません。大体民主党の体質が曖昧です。またM氏は無所属と標榜しますが、彼を支持する共産党の枠から踏み出した彼独自のビジョンは遂に聴かれませんでした。
大阪ではノックさんが再選されましたが、ノックさんにはそれなりの個性的なものがあります。私は今問題になっている新ガイドラインは基本的にはアメリカの為の戦争協力体制を作り上げるものと思いますので、自民党に任せて置いてはまたとんでもない戦争に巻き込まれる怖さがあり、これにストップを掛けるためには自民党が一番いやがる共産党を強化することが必要だと思うので共産党に一票を投じるのですが、共産党の政策をすべて支持するわけではありません。またこの派の人は、よく金太郎飴といわれるように誰も同じことを言っていて、人間としての自由度と個性を感じられることがほとんどないのです。東京都知事選での石原氏の勝利は、やはり人は人の個性を愛することが立証された気持ちがしています。
いま考えていること 24(1999年04月)
――日米防衛指針関連法案――
今朝(1999年4月29日)の毎日新聞朝刊「記者の目」(北米総局・清宮克良記者)の記事にこういう記述が出ました。少し長くなりますが引用させていただきます。
日本の国内事情を知っていれば、ギルマン氏ら議会側がペリー氏に提言した北朝鮮政策案は突拍子もないものに映る。代表的なものは北朝鮮の弾道ミサイルに対抗する措置として北東アジア防衛機構(NEDO)を設立するという案だ。NEDOはユーゴスラビアを空爆している北大西洋条約機構(NATO)のアジア版といえる軍事同盟だ。この構想は米国から北東アジアに広がる地図上を想定しており、日本の立場を考慮していないことは明白だ。
米国で憲法9条と安保政策の関係を理解しているのはアジア専門家や外交担当者ら、ごくわずかだ。
日本の非武装を掲げた現在の憲法はアメリカの指導で創られましたが、戦後50年を経て日本人の中にも憲法の基本精神の理解は時間的に遠いものとなりつつあります。アメリカ人ではそういう歴史の理解も一層薄れているのは時間の経過のなせる技というものでしょう。なぜアメリカが非武装の日本の安全を保障しなければならないのか、アメリカが日本の安全を守ってやる以上日本にもその見返りとしてアメリカの軍事行動に対して、今までの枠を越えた協力をさせても当然ではないかという考えから、一般的なアメリカの軍事行動への協力を日本に強く要求しているのだろうと、この問題が国会の問題になってきてから私は考えていましたが、この記事を読んでやっぱりそうだったという思いです。小渕首相の訪米に間に合わせようとする審議は、まさにアメリカから突きつけられた宿題の答えを期日までに出さなくてはという動きでした。このガイドライン法案は、日本国憲法の精神も憲法そのものも反故にしてしまう改訂だと思います。これでは自民党はアメリカの言いなりに動く代弁者としかいいようがありません。いくら国政の遂行担当者として現実に対応して行かなくてはならない自民党の立場を考慮しても、私のような戦争を体験し、新憲法に込められた大東亜戦争(第二次世界大戦の日本の担当部分をこう呼んだ)の反省から生まれた永世平和の思想を思い返す人間からは、とんでもないというのが本音の気持ちです。5月3日は憲法記念日です。
いま考えていること 25(1999年05月)
――芸術家の寿命――
1999年5月4日 NHK「花鳥諷詠いのちを描く 画家上村淳之・白鷹図に取り組む日々」を見ていましたら、御父君の上村松篁画伯の御元気なお顔も見ることが出来ました。足腰はさすがに弱ってはおられますが97歳のお年とは思えない表情で、相変わらずじっくりと対象をご覧になって絵を描いておられます。本当に楽しそうなお顔でした。「食は芸術」を掲げる三田屋の企画広報室長、浜近峻吉さんが最近下さった手紙にこんな一節がありました。
或る時フッと日本画家に長寿のひとが多いのに気づきました。老若を不問、動物は動く物と神が定められていますので人間は動いていれば長寿を達成できるように思います。動−>頭脳、手、脚、日本画家の長寿の秘密はここにあるのかも知れません。 |
これを裏付ける次のような表もつけて下さいました。読者のみなさまも、まずじっくりとご覧下さい。
確かに芸術家の皆さんは長命ですね。浜近さんのいわれるように絵を描く時はかなりの運動を伴っています。これが長寿の原因の一つであることは否定はしません。しかし、私はもう一つこの人達が日常茶飯事に心を煩わせることなく、自然をじっくりと観察され、その間、心を自然の中に遊ばせて解放されていたことにも原因があるように思います。浄土経の教典には極楽ではいつも美しい音楽が奏でられているといいますが、音楽に心を奪われて遊ばせ、つまらないことに心を煩わせない事にも長寿のきっかけを見いだせそうに思います。日常の煩わしいことに悩まないで、いつでも自然の景物や音楽に心を遊ばせたいものです。これは、昔、平均寿命が短かった時代に禅僧の寿命が比較的長かったこととも通じるのではないでしょうか。
◆秋野不矩さんが上表から洩れていると浜近さんから連絡がありました。90歳 (明治41年7月25日生まれ)
◆東山魁夷さんは1999年5月6日老衰のため逝去。90歳
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