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いま考えていること 287(2007年10月)
――これからの政治の見どころ――

昨日の福田新首相の施政方針演説は低姿勢に終始しました。これまでの政治のひずみの是正に一抹の期待を持たせるものでした。しかしよく考えてみると参議院での自民・公明の過半数割れが出現している現在このような姿勢をとるのも当然といえば当然です。福田内閣は総理としてよりも自民党の総裁として自民党の存亡を掛けた「背水の陣」をとったのです。彼には自民・公明の与党の未来がかかっているのです。これ迄の政治のゆがみを是正すると言わなくては国民の支持を完全に失ってしまいます。前の安倍さんは国民の希求するものから全く孤立し、強行採決に次ぐ強行採決で一見強そうに見えながら逆に国民から不信任を突きつけられ野垂れ死にして政権にある人のあるべき姿を教えた点では功績者と言うべきでしょう。

福田さんのソフトムードに眼をうばわれてはならないと思います。これからは政治では「自民・公明」と「野党」ことに「民主党」の違いを我々は注目することが必要です。私の思うのに外交面では対アジア外交、なかでも北朝鮮への態度、中でも北朝鮮を重視するのはやはり隣国であり、北朝鮮との国交回復をいずれは計らなければならないときがくるからです。日本は拉致問題の解決がなければ動かない姿勢ですが、平壌宣言も読み方によっては拉致問題を過去の不幸な問題の一つに含むように読むこともでき、小泉さんはそういう認識でこの共同宣言を行ったと私はみているからです。内政面では大企業、言葉を換えれば資本に対する態度です。確かに国際的に法人税が日本は高いのですが、国民からの収奪が進み、預金金利がゼロ水準の現在、資本だけを優遇して国際水準にするのかは問題ですし、また労働規制の緩和を進めるのかある程度規制を回復して格差是正に取り組むのかも問題です。最後に政治と金に対する取り組みに注目していきたいと思っています。政党の資金の流れの報告などおよそ信ずるに足りません。

これらの点では「自民・公明」と「野党」の間には支持基盤から生まれてくる絶対的なちがいがあり、福田さんのキャラとか手練を超えていて、そんなものではごまかせないものがあると思うのです。まず上に挙げたものに対する取り組みがどのように具体化されるか、実行されるものに注目していこうと思っています。

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いま考えていること 288(2007年10月)
――体育の日に――

今日は体育の日です。私は78歳ですが最近でも1ヶ月間の平均歩行数は一日10300歩前後です。小学校の時に冬でも膝を出して通学していたためか中学校に進んでから関節炎に襲われ、毎日母が庭にあったイチジクの葉を乾燥してから煎じ、たらいに座らせて腰湯をしてくれました。四条通を友達の肩にすがって歩いた記憶もあります。20年ほど前にはまた足の膝関節がガクガクになり、痛みも激しくて漢方の「糾励根」を買ってきて水で練り上げ、布切れにのばして貼り付けたこともありました。この湿布は貼り付けるとぽかぽか血行がよくなって快適でした。しかし私の皮膚が弱かったのか次第にただれを生じ皮膚科の先生に診てもらいましたら使用中止を命じられました。

このような前歴はあるのですが、そのとき歩くのも治療の一つだと考え少しO脚化していた脚を改善しようと少し内股に膝同士をすりつけるように歩くことを心がけ、実行しました。これは私には効果があり次第に関節の痛みは軽くなりました、あるいはこのころになって「糾励根」が効き目を発揮してきたのかもしれません。糖尿もそれ以前から私の持病ですが、15年前医師から毎日1万歩の歩行の必要を告げられ、万歩計をつけて朝夕の散歩を始めました。初めのうちは朝の散歩コースの半路も歩くと息もはずみしんどくなったのですが、次第にこれも薄らぎ最近では時間が来ると体の方が自然に歩行を催促するような気持ちです。無理に歩くことはしないで体の赴くままに朝はだいたい4,500歩、夕方は途中でUターンしますからほぼ3,000歩、あと近所に買い物に行ったり家の中で雑事をこなすのに約3,000歩は歩けます。雨の日でも雪の日でも欠かさず歩きます。テレビのインタビューなどで高齢社会を迎えて長寿の秘訣を問われていることもよく見かけますが、私はまず第一に「健康の秘訣は意志強くよいと思うことは続ける」ことだと思っています。
余談ですが、私の健康法の今ひとつは、今実証中ですが「毎日の排便です」。80歳になったらその善し悪しの結果を報告しようと思っています。散歩に出かける前に少量なのですが必ず一回目の排便をします。途中で催すと困るからです。10時半頃に排便本番です。私は朝は食事をしませんが、昼になって食事後、腸が蠕動してまた便意を催しますからまた排便します。これが最低の一日の排便コースで日によっては夜にまた排便します。15年前に径4センチのポリープがS字結腸部分にみられ、開腹して腸を約20センチ切除してもらってからほぼ毎年腸内視鏡検査をしていますが、再発をおそれてできるだけ腸に便を蓄えまいと思ったから、この習慣ができたように思います。前夜就寝前に緩下剤カマグ(酸化マグネシューム)を少量服用しています。排便は肝臓にも良いようで結果的に顔にも老人性のシミが少ないようです。美容を心がけておられる女性にとっても化粧品よりもまず便秘対策です。

毎日散歩していて気になるのはあまりにも歩いている人が少なく、皆さん快適げにマイカーやスクーターを走らせていることです。それで本当によいのでしょうか?歩くことも習慣化するにはそれなりの年月が必要ですから、若い元気なときから歩く習慣をつけておかないと、やがて老年を迎えたとき、脚がガクガクになっていて、それこそトイレに行くことすら、自分の力でできなくなるのではないでしょうか。子供の時から自家用車に乗る習慣をつけるのなど子供にとっても不幸なことです。歩くことは血行も改善し血栓によって脳や心臓の血管を詰まらせるエコノミークラス症候群も防ぎ、腸の動きも良くするなど脚の筋肉強化以外にも副効果を期待できるのです。体育の日を契機に自分の生活スタイルの点検をしたいものです。

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いま考えていること 289(2007年10月)
――アフガニスタンの様子――

政府は必死で海上自衛隊の給油活動の継続をアピールしていますが、アメリカ国防総省の18日の発表を見てもアフガンとイラク作戦は厳密に区別できないことを事実上認め、各地での空爆活動に日本の給油が使われているようです。発表ではイラク開戦の海自供給量は全体の19.6%、開戦後55ヶ月間の給油量は7.3%で比率は小さいと言わんばかりです。わずか7.3%であったのなら止めても影響は小さいことになりますし、給油はアメリカとの「テロ作戦」支持・一体感を示すためであることが明らかです。

今朝の毎日新聞一面は「アフガンISAFのドイツ軍」を取り上げていますが、その中でクンドウズ駐留の独軍「地方復興チーム(PRT)」の兵士の言葉が出ていました。”「気が滅入る。これが日常だ。」張りつめた空気の中、兵士の一人が力無く語った。”

現実にはあわない「テロとの戦い」の受け取り方で大事なのはアフガニスタンの人たち自身の受け取り方こそ大事だと思うのですが、現地で活動しているペシャワール会の中村哲さんがペシャワール会報No.93(2007年10月3日発行)に書かれているものを見ますと次のような文章に出くわします。、
”九月二十日現在、アフガニスタン南部・東部・北部の各州で、戦闘は激しくなっています。欧米軍は増派されて五万人以上の大兵力となり、他方「タリバーン勢力」の面の実効支配は、徐々に、かつ確実に首都カブールを包囲しつつあるように思われます。”
”毎日数百名の単位でアフガン人たちが命を落としています。公式の発表では「NATO軍、○○名のタリバーン兵殺害」と報道されますが、大半の犠牲者は普通の農民や市民たちです。”
”この急速な戦闘激化とアフガン人一般市民を巻き込む犠牲増加の背景は、
1.危険な地上戦をANA(アフガン国軍)に主に請け負わせ、欧米軍による攻撃が主として空から安易に行われるため、周囲を巻き込みやすい。
2.タリバーン勢力と一般パシュトウン農民と区別がつかず、単に支持者である非戦闘員も「タリバーン兵」と誤認される。
3.理由もなく殺害された者の肉親が、政治とは無関係に「報復」に外国軍を攻撃したり、タリバーン勢力を幇助したりで、悪循環を作っている。
4.タリバーン勢力の主力がパシュトウン農民そのもので、土着性が強い。必ずしも「イスラム過激派」とは限らない。「国際テロ組織」とは無関係に、「外国人に荒らされた郷土の防衛」という動機が強い。
5.首都の華美な風俗と貧困層の状態とのあまりの格差、外国兵の横暴、強盗、殺人事件が増える中で、旧タリバーン政権による治安の良さを懐かしむ声が強くなっている。
などがあげられますが報道されないもっとも重要な事態は、今年の大凶作です。”
”欧米諸国の軍事介入、「対テロ戦争」の結末はすでに結論が出たと言えるでしょう。武力介入は、良き何物も、もたらしませんでした。”

またペシャワールのペシャワール会医療サービス(PMS)病院の院長代理・看護部長の藤田千代子さんは次のように書いています。
”アフガニスタンを空爆している軍機のその燃料が日本の支援によるものと知り驚きます。自分達に都合の悪い人は殺さなければならないのでしょうか、昔読んだ北風と太陽の話は何かを私達に教えてくれました。今のアフガニスタンのように干魃の土地に戻って生活を営まなければならない人達に、今必要なものは何かは世界中の誰もが知っているはずです。”

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いま考えていること 290(2007年10月)
――守屋問題が意味する恐さ――

戦前の日本に生きた人なら結果的に日本の軍備は無駄であったという印象を捨てがたいと思います。莫大な建造費を要した巨大戦艦「大和」の行動は沖縄戦を迎えた当時壮烈なものではありましたが、何ら戦況に貢献することもなく乗員の方々ともども南海の藻くずとして無駄に消えていったとしか言いようがありません。軍備は建設的な物を生み出すこともなく、所詮資源と財産の浪費を平気で推し進めるのです。戦時中、私の勤労動員のわずかの給与も自分の手にすることもできず強制的に郵便貯金に振り込まれ戦費と化していきました。軍事予算は戦争があろうとなかろうと機密のベールに包まれ、その衝に当たる人達に特権を与えかねないものなのです。そのコントロールのためにシビリアン・コントロールは欠かせないのです。

守屋氏の業界との癒着、ゴルフ三昧はさすがに政府の首脳をも驚かせましたが、私の指摘したいのはこの問題を単に守屋氏の素質とかモラル感覚の問題として処理することの恐さです。戦前と変わらない軍優先の思想が防衛省の中に育っているのではないかという危惧です。その中から守屋氏の行動が生まれたのではないかという危惧です。軍の使うものは一般と異なる特殊性を持ち、また機密の名において装備の購入も随意契約がまかり通る可能性が大きいでしょう。「国の防衛」をすべてに優先する「錦の御旗」として、談合以上に予算執行におおらかでもあり得ましょう。業者としてはこんなに甘い汁は軍需関係にしかありません。契約で捻出された冗費を元に、防衛省担当者や事務次官・大臣を最高とする権力者を取り込んで巨利を得ようとする魅力が業者を駆り立てます。防衛費には一応我が国GDPの1%以下という枠はあります(87年度予算でこの枠を超えました。以後新中期防衛力整備計画で、防衛費の所用経費総額を明示することで1%枠に代わるものとされてきました。)が、平成20年度概算要求額は6,762億円に上り、世界の軍備費から見ても巨額に上ります。

防衛費も情報公開を促進し、シビリアンコントロールをますます強化しないと、昔の道をまた歩むことになりかねないというのが私の感じる恐さです。

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いま考えていること 291(2007年11月)
――自民・民主の大連立――

ときには驚くようなニュースがあるものですね。福田首相が小沢党首に大連立を呼びかけたというニュースです。私はまた小沢氏の癖が出て、海上自衛隊のインド洋派遣問題をテコに何かを最大限手に入れ最終的には派遣に賛成するだろうと思っていました。大連立の呼びかけに応じた会談もいわば密室談義で元自民党幹事長の小沢氏らしい振る舞いとも思っていました。さすがに党内に持ち帰った後は小沢氏の思惑通りには行かなかったようですが、民主党自身が旧民社党から、旧社会党、旧自由党と混成していますし、旧民社党は戦時中「産業報国会」の形で戦争に協力して来た歴史を思うと、民主党の政権奪取にも手放しで賛成する気なれないのですが、当面は唯々諾々とアメリカ政府の意向に沿う自民党政府の態度に自民党を支持する気にもなれないのです。

参議院での民主党優位も、私のように自民党の政治では困るという人達が反射的に民主党に投票した結果ですから、決して積極的な民主党支持とは思えないのです。本気で政権を取ろうと民主党が考えているのなら、現在の参議院での優位を最大限に利用して、政策的に国民を納得させるものを打ち出し、参議院で成立させて後、衆議院での自民党の出方を国民の前でテストし、どちらの政策がまともか国民に選ばせる手順をいくつか重ねてから、衆議院解散に持って行かなくてはならないでしょう。今回の福田首相の行動は「自民党は困り果てています」という告白でもあります。公明党は内心、おそらく自分の現政権での連立の重さを民主党に譲らずに済んだのでホットしていることでしょう。

小沢氏に対しては厳しく見て行かなくてはなりませんし、アフガン民衆のことは棚上げにして日本が使う石油輸送ラインの確保の上で役に立っているとか、色あせたブッシュ政治の転換期に今なおブッシュに秋波を送り、支持し続けることが国際的な信用を高めるとか、新テロ特措法を認めないのは国の利益を損なう行為だといつかの「非国民」の烙印押しつけ政治の再来のような誤った宣伝を繰り広げている福田氏の自・公連立の倒壊を願うものです。

(2007年11月4日記)本日の毎日新聞朝刊によると、「小沢氏は恒久法についての場で紙に国連決議を前提とする自衛隊派遣に関する原則を書いて、首相に渡した。」「小沢氏から連立政権の条件として財務相などのポストが話題に上った。」「関係者によると首相との会談で小沢氏は「総理、あなたから連立を持ちかけたことにしてもらえませんか」と切り出したという。首相は「その方が都合がいいのなら、それで結構ですよ」と即答した。」というのです。まず小沢氏がかねて“国連決議の下での自衛隊の海外派遣”を唱えているのは周知の事実ですが、国民の同意を得たものではありません。彼の独断です。この彼の意見をのませるために小沢氏が連立を首相に密室会談で伝えたということになります。とんでもないことです。

(2007年11月4日夜記) 小沢氏が民主党党首を辞任しました。彼らしいやり方でした。ここしばらく以前の小沢と違うマイルドな雰囲気を見せ、私も小沢氏は少し反省して態度を変えたのかと思っていましたが、人間の本性はやはりそんなに変わるものではないようです。今回の小沢氏の挙動はそんなことを思わせてくれました。この事態を民主党がどのように受け止めるか興味を持って見ています。わがままな坊ちゃんの小沢を改めて認識させてくれたおもしろい現象でした。辞表をいったん保留し慰留するようですが、新しい党首を選んで新しい体制を作れないようでは当面自民党政府の現体制の続行しかないでしょう。

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いま考えていること 292(2007年11月)
――円高という言葉――

昨日は午後5時現在円相場は1米ドル=110.65−75円になりました。近頃はテレビで見ていても円高だといわれます。 私も外貨MMFを少し持っていますので、為替の動きには関心があります。しかし考えてみるとこの円高はアメリカのサブプライムローン破綻から出てきているのですから世界の他の通貨に対して果たして円は高くなっているのか疑問を持ちます。そこで 今年念頭の為替相場に対してどういう動きをしているのか、いくつかの時点で年頭の値に対する為替相場の差を調べ何%変化したかを計算してみました。下の表に結果を示します。この計算では円高になるほどマイナス値が大きくなり円安になっているとプラス値が大きくなります

この表を見ますと4月初頭では米ドル・ユーロ・豪ドル・英ポンド・ニュージーランドドルのいずれも円安にふれましたが、9月以降最近に至るまで米ドルが円高になったことがわかります。ことに10月以降も円は米ドル以外の通貨に対してはむしろ円安が進んでいることがわかります。一般論としては円は少しも高くなってはいないのです。長い間日本の通商相手はアメリカがトップでしたから輸出を左右する米ドルに対する為替相場を頭に置く習慣が付いているのですが、そろそろ私達も頭を切り換えないと真実を見誤ります。自分の目で確かめることがいつでも必要です。現在は通商相手の主力はアメリカではないのです。アメリカ以外への輸出はむしろ円安で有利になっていると見るべきでしょう。アメリカドルに対する円高と言うよりはサブプライムローン破綻で米ドル安が異常に進んでいるととらえるべきでしょう。このような状況下では日本が保有する膨大なアメリカ国債の、評価額は円に換算すると下落しているのです。諸外国ではあるいは個人でもアメリカドルではなくユーロでの支払いを要求するケースが増えてきましたが当然の成り行きです。北朝鮮政策や米ドル政策など次第に日本の孤立化が目立ってきました。現在の低金利も国際的な日本の地位を低くしているのかと思います。

一覧表

皆さんもいつも世界の動きに注目して頂いて、自分で検討し、もし外貨保有するなら米ドル以外から選べと言っておきましょう。このデータから見る限りでは第一位豪ドル。第二位ユーロということになります。利回りも考えるとやはり豪ドルでしょう。

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いま考えていること 293(2007年11月)
――サブプライムローン騒動――

2007年11月22日金融庁は全国の預金取扱金融機関が保有するサブプライムローンを資産に組み込んだ証券化商品の残高が9月末時点で1兆3,300億円に上り評価損や売却損などの損失額は約2,300億円に達していると発表しました。サブプライムローン残高の総額は約150兆円でその約80%は証券化されているというのも金融庁の発表です。11月28日の日経速報ニュースでは08年3月期通期で合計役6000億円に達する見込みといいます日本でもこの影響で連日株価は下がり、まさに底なしの状況です。この証券化されたローンはまさにトランプのJokerで誰かがいずれはババをつかむことは少し考えれば自ずとでる答えだったと思います。中央三井ホールディングスなどは賢明にこういうババに手を出していないようですが、日本のバブルで痛手を被った経験のある多くの銀行の経営陣の頭のレベルが疑われます。もっとも金融商品に伴う危険を証券化という手段で分散する試みに賛同してその実験に一肌脱ごうということであったのなら実証成功ということにはなるのですが。現在世界のお金は株式市場を離れて商品相場へ移動しているようですが、実態を無視した投機はいずれは新しいJokerとなり誰かがいずれはババをつかむことになりましょう。

今回の騒動で「格付け」会社の信頼性も問題になっているようで、アメリカの金融政策や取り組み方にも疑念を生じ、ドルそのものの信頼が揺らいで、ドル離れが進み、産油国や各国政府の外貨保有の仕方も変化しつつあります。このように影響が極めて基本的なものになりつつありますから、この騒動の落着には少なくとも1年の日数は必要と思います。イラクでの失敗とともにアメリカへの信頼がますます弱くなり通貨の基軸国としてのウェイトにも変化が見られだしました。商品相場への投機は実生活に石油高・食糧高など深刻な影響を及ぼしますから、株式投資のバブル化による投資家のダメージよりもダメージは社会全体に広く広がります。私の見解ではいずれは商品投機から株式市場への回帰が見られ、その時日本の生産会社の技術水準の高さが再評価されることでしょう。私個人も11月にはいって手持ちの株価の評価損は現在−420万円ですが、手持ち株式の実際の売却はして居らず実損はありません。むしろ若干安値をねらって買い増しました。こういうときはあわてずに台風の過ぎるのを待つ心境が必要です。円高の昨今、私は円預金の一部もユーロMMFに移しました。

(11月29日記)ここ数日各国政府系ファンドが投資対象を変えてきたように見えます。アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ投資庁(ADIA)(推定資産:8750億ドル)が米シティグループ(最大株主はサウジアラビアのアルワリード・ビンタラール王子)に75億ドル(約8000億円)の投資を決めたのは耳新しいことです。ADIAは日本の上場企業数十社の大株主で、不動産を含め日本には計一兆円前後を投資済みといわれます。ドバイの政府系ファンド、ドバイ・インターナショナル・キャピタル(DIC)は26日、初の日本企業への投資として、ソニー株取得を発表したばかりですし、カタール、クウェートなど他の中東のファンドも、外国株への関心を強めているといいます。このほか中国政府系ファンドの日本株投資開始観測や、ロシア財務省の対外関係・公的債務・国家金融資産局のカザケビッチ副局長が日本経済新聞に語ったところによると(日経2007.11.29)来年二月から外国企業の株式、債券などを対象に運用を始める政府系ファンドの投資規模が当初180億ドル(約2兆円)に上ることを明らかにしました。株式で対象となるのは欧米企業の優良銘柄で「出資比率は3〜5%を上限とする」そうです。日本企業については「時間をかけて準備したい」と述べ、日本への投資意欲を示しました。本日はこれらのニュースで日経平均も終値359.59円の値上がりでした。

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いま考えていること 294(2007年11月)
――福田首相をこう見る――

安倍さんが自壊して本当に良かったと思っています。最近の福田さんの対中・対韓姿勢を私は評価します。小泉さんに見られた例の歴史認識の誤りも今のところ見られませんし、対米一辺倒でないところも好感を持っています。安倍さんに見られた復古調の色合いも消えました。しかし各種マスコミの世論調査でもたかだか30%台の支持しかないインド洋への給油艦派遣をアメリカの意向を国際的と言いくるめて、頑迷に推し進める姿勢には苦々しく思っています。肝心の防衛省での守屋次官を中心とする汚職には国民は腹の底から怒りを感じているのです。財務大臣額賀氏の言い逃れ作戦もいずれは底が割れ辞任に追い込まれる日が来るでしょう。これは福田政権の信頼を傷つけ、来年度予算の成立にも給油法案の審議にも決定的なマイナスとなるでしょう。こういうトゲのような問題がなく国民にとってより深刻な景気問題や年金問題に誠実に取り組める環境が現況と違って存在していたら福田首相は小泉・安倍両首相に見られなかった良い政治姿勢が見られただろうに、「残念ですね。」というのが私の見方です。

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いま考えていること 295(2007年12月)
――学習到達度調査の結果に思う――

15歳の生徒を対象にした今回科学的活用力に重点を置いたOECDの学力調査結果は参加57国中日本は6位で前回の2位から後退しました。その対策として「ゆとり教育が元凶」とばかりに改訂学習指導要領の一部繰り上げ実施が報じられています。今から30年ほど前私の子どもが小学校在学中の父兄参観日に伺って驚いたことがありました。授業は理科で乾電池を使って配線する内容でしたが一人一人の子どもが実験装置を操作するのではなく5、6人に一組しか装置はなく、ボス的な子どもが操作していて他の子どもはそれを見ているだけでした。このことは私のホームページにも以前からこれでは理科教育にならないと記してきたものです。実際に失敗をおそれずに自分でやってこそ理科教育なのです。一組の装置の経費など大した金額ではなく、教育委員会で支給することもできましょうし、親に負担を求めることだってできる程度のものです。あれから30年いまはもうこのような授業は過去のものとなり改善されて居れば幸いですが、基本的に理科教育に対する学校の姿勢が変わっていなければ、生徒の意欲も出てこないでしょうし、国際的な学力テストで好成績を収めることなどできないのです。生徒の意欲の低下は理科以外にも広く認められるようになっているというのです。生徒たちの生き生きした意欲と姿勢はNHKテレビの「ようこそ先輩」などには十分認められるのです。

これは単に教える側の学習指導要領の問題ではなく、日本の公立学校の体制に基本的な問題があるのです。「君が代・国歌」の押しつけに見られるように日本の先生たちは教育委員会をはじめとする管理体制の中で自分達自身の生き生きした教育意欲や工夫を持つことができず一言で言えば自由な環境を喪失して一番大事な個性的な教育ができなくなっていることに原因があります。教育委員会が先生たちを信頼せず、自分の偏狭な教育観を押しつけその実施を監視するような環境では生き生きした教育は期待できませんし、生徒たちに意欲の植え付けをすることもできません。教育というのは「人から人へ」しかなにも伝達できないという大原則を失ってはなりません。私は若いときに同志社高校で化学を教えていましたが、この学校では最高決議機関は教員会議であると規定され校長はそこでの決定を実施する上での最高責任者と規定されていました。人事も財政も教員から選挙で選ばれた教員が校長・教頭ともに委員会を組織して決定していました。この制度は現在どうなっているかわかりませんが、教員の学校運営への参画意欲は高く、また高い授業料を負担して頂いている父兄に報いるためにその子弟である生徒への教育意欲も高かったものです。先生が生き生きしないでどうして生徒を生き生きさせることができましょう。

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いま考えていること 296(2007年12月2008年5月)
――食糧をガソリンに変えることの疑問――

最近は少し落ち着いてきたようですが冬の灯油は配達してもらうと18リットル1995円の高値です。車の燃料ガソリンの不足、高値に備えてバイオエタノールの生産に力が入って本来人間や家畜の食糧であったトウモロコシも高騰を続けています。古風な言い方をすれば神様がくださる貴重な食べ物をそんなことに使って良いのでしょうか。考えると私の中学時代にはもう20年くらいすると原油は掘り尽くされてしまうと言われていました。あれから60年未だになくなりはしませんが、いずれはなくなる日は近いでしょう。生活に欠かせなくなっているプラスチックスや合成繊維は大抵石油を原料としています。こちらは今のところバイオエタノールで代替することはできませんし、たかだか考えられるのは高価格になりますがまだ眠っている石炭を原料として人造石油を作ることくらいしか思いつきません。プラスチックの方はまだ多少は再生して利用できますが、この貴重な石油を燃料として炭酸ガスと水にしてしまっては地球温暖化の促進にはなりますが、まさに未来に対して破滅的な設計図を実行していることになります。分裂生成物の処理に決定的な方法がない現在ではありますが、エネルギー源として考えられるのは原子力発電だと思います。しかし、小規模に安全なスケールで実現可能なのは「燃料電池」でしょう。その水素源はおそらく天然ガスでありましょうし、あるいは神戸製鋼などが実験的に取り組んでいる夜間の余裕電力を利用してリサイクル的に水を電解して水素とし、昼間これを利用して燃料電池発電することでしょう。こちらの電力は自動車や各家庭で発電できる小規模な利用が可能で、生成廃棄物は原理的には水ですから安全でしょう。現在は発電装置が極めて高価なので実用化はほとんどされていませんが、研究によっては実用が十分可能だと思います。燃料電池でエネルギーを得ることになれば貴重なトウモロコシのような食糧をバイオエタノールに変える必要はなくなります。一日も早くバイオエタノール産業壊滅の日がやってくることを念願し、全世界で「燃料電池」実用化への集中した努力が政府民間を問わず促進されることを夢見ています。

(2008年5月24日追記) 今夕の毎日新聞夕刊によりますと、EUの欧州委員会は今年1月に掲げた「2020年までに再生エネルギーの使用を20%に拡大する」方策としていた「バイオ燃料の10%目標」を「持続可能な方法で達成できない」として削減する修正案をまとめたと報じました。

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いま考えていること 297(2007年12月)
――対象の本質を知ることの大切さ――

私は化学の教師をしていたのですが、昨晩の夢は高校生に生物を教えている夢でした。教科書を前にして授業をしているのですが、自分の話していることの理解ができていないので話の中身に自信が持てず、立ち往生しているのです。結局生徒にもう一度勉強してくるから今日は止めさせて下さいと謝っている始末です。そこで夢が覚めました。苦しい夢でした。教師として人に教えるときは、化学なら化学、生物なら生物という内容の本質が理解できていないと教えることはできないのです。実生活のいろいろな分野についても同じことです。取り組んでいるものの本質を突き詰め把握していることが生きていく上で不可欠であることをこの夢で再認識したのです。

初等段階で学ぶことはすべて基礎で、画家になろうとすれば色について、構図についてなど基礎知識がいるでしょう。音楽についても楽譜をはじめ音楽史などいろいろ基礎として習得しなければならないものがあると思います。また化学を将来自分の仕事にしようとすれば化学の世界での公用語である化学記号・構造式などになじみ、それによって自分の研究した成果を発表して行く能力・手段を持っていなければなりませんから初等段階ではおもしろくなくても先生について真剣に習得する必要があります。こういう考えで初めて化学を学ぶ高校生のみなさんへという文章も書いたのです。しかし先生として生徒を指導する立場になったときや研究者として自立したときには単に手段として技術的なことを教えることも研究成果を上げることも、自分が化学の本質を把握している、あるいは把握しようという姿勢で取り組んでいなければ本当に必要なことを自信を持って教えることも研究成果をあげることもできないでしょう。それは何を何故教えるのかが理解できないと情熱を込めて教えることも仕事への情熱も燃え上がらないからです。できれば稽古事でも初心段階で本質的なことを十分把握している先生につきたい、つかせたいものです。昨晩の夢は昨晩テレビで中村勘三郎のお芝居への強烈な傾倒没入ぶりを見たからかもしれません。

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いま考えていること 298(2007年12月)
――今年の日本の政治を振り返って――

今年の政治を振り返って、いちばん印象に残るのはおよそ政治家として無能力な安倍さんが総理になって自分の信念のままに 極めて強権的に極右的な姿勢を貫こうとしましたが、現代の日本には本来適しない路線であったからでしょう、参議院選で国民の反撃に遭い大敗し、最後は自分で墓穴をほって自滅し野垂れ死にの姿でした。安倍路線の崩壊は私にとっては快哉でした。
福田さんになって参議院選敗北が現実のねじれとなり、強権的に数を頼んで自民党の論理を議会で通すことはできなくなり、インド洋での海上自衛隊の給油活動も引き上げることになりました。新反テロ対策法案を提案して相変わらずアメリカに忠義立てしようと動いていますが、国民の支持も60%には至らず、わたしはやはり中村哲先生のようなアフガニスタンへの貢献だけが現地の人達の望むものであろうと思っています。この点では民主党の自衛隊派遣プランも我が国の憲法の平和理念からすれば賛成しかねます。

ねじれの結果が国の統一した進路を妨げるとして大連立の動きも見られましたが、これは民意を無視したものでした。最近のC型肝炎訴訟を巡る福田さんの決心などを見ていますと、私はねじれの結果自民党も公明党も民主党も国民の民意を無視して強権的に政治を動かすことは不可能になって、両者ともに民意を尊重せざるを得なくなっていることが明らかになってきました。これでこそ理念上の民主主義が命を吹き返したと言えるのではないでしょうか。自民党であろうと民主党であろうと民意を尊重した政治を行うのなら大歓迎です。また民意に添った法案の審議なら与野党ともに否定はできず、真剣な話し合いもし、折り合わざるを得ないのではないでしょうか。かくしてしかるべき結論が国会で生まれることでしょう。衆参の多数派が異なることから容易に国の執るうべき道が決まらなくなったのはむしろめでたいことだと思っています。安倍さんの政治を振り返り鏡とすると、私はむしろ現状の容易に結論が出ない国会の現状こそ望ましいのではないかと思っています。本当に民意に添った提案であれば与野党ともに正面切った反対はできず、自然に話し合いや修正作業を通じて正しい結論を生み出す機会ができていることが明らかになっていくでしょう。

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いま考えていること 299(2008年01月)
――今年の決意――

かって国は地方の負担もさせて公共投資を奨励し地方が投下した資金の回収は国が何らかの形で先々保証すると言って地方での建設が華やかだったときがありました。その後小泉時代の「三位一体」の改革によって約束の履行は消えてしまい、地方交付税が減って中央と地方の格差が現在も問題になっています。政府の約束が紙くずになった経験は私の少年時代からの慣行で、およそ心から政府の方針を信ずるほど馬鹿げたことはありませんでした。格差是正の声の中で以前の様に補助金や地方交付税を増額しようと言う動きも見られますが、私はかねて別のところにも書いたように補助金行政が日本の農業の活力を失わせた一因だと考えていますので、基本的には年金も医療保険もなかった戦前のようにまず自分の生活は自分で立てることを改めて決意したいと思っています。若い頃に愛読した福沢諭吉の各著書には独立自主の気概が込められていました。明治のあの気概は今どこに行ったのでしょう。憲法25条には確かに「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」続いて「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」とあり嬉しいことですが、そこに明記されているのは「最低限度の生活」であり、「社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進」については努力規定なのです。まず要請されるのは個人の努力であり、努力しても生活経営が破綻すれば「最低限度の生活」を営む権利はあるぞということです。地方も再び政府に依存して公共事業への国の補助を当てにする姿勢をまず精算し、いかに地方が自立した繁栄を手に入れるか智恵を巡らし事業するかが大切なのではないでしょうか。私も介護老人の妻を15年間毎日世話してきましたが、戦前と違って今は介護保険と医療保険で毎月20万円以上も負担してもらっていますから本当に助かっています。妻の介護施設入所の手続きを2005年春執りましたがその後梨のつぶてで文句も言いたくなるのですが、すべてを国の施策に頼ることは財政的に無理があり、あえて当方の希望を満たしてもらうとなれば、私も国民の皆さんも支払う保険料も税も今の何倍にもなるでしょうから簡単に現状に文句を言う気はありません。いまのところ病人ではありますが私は元気で日々妻の介助が仕事になっていますが、それが私の健康の一因にもなっているように思いますし、医師の往診、介護サービスのありがたい援助が支えてくれます。今年の決意としては自分の健康についても妻の介護についてもまず私自身の努力を誓い、受ける援助をありがたいことだと受け取らせてもらおうと思うのです。

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grenz

いま考えていること 300(2008年01月;02月)
――怪物の退治はできないのか?――

昨日は日経平均が前日比468円12銭安を記録し、おそらく証券会社からの借り入れをして相場を張っていた人たちは追い証が必要になって慌てた人もいたことでしょう。私は自分の手持ち以外では投資しない主義ですから、含みが大幅に減ったものの今すぐじたばたすることはありません。

世界にまた日本にも10年ほど前には不動産バブル跳梁の時代があり、バブルがはじけて未だにその後遺症が日銀の標準金利を始めあちこちにみられます。今回のアメリカのサブプライムローンの破綻も金余りをバックとして怪物に踊らされた金融機関の過剰なお金の供給があったのでしょう。今この過剰なお金−怪物−は不動産・株式から金・原油・穀物という新しい分野に跳梁しているのです。昔はこのような眼に見える怪物は見られなかったように思うのですが、私たちはこの怪物の魔法の手の中で踊らされるといつの間にかその手中で今まで富と思っていたもののメッキがはげ落ちてある種の真実の姿をみつめなければならなくなってくるのではないでしょうか?現在の世界ではこの怪物を制御する機構はないのです。この怪物は移り気ですからいずれは原油や穀物にさよならをして新しい獲物あさりに乗り出すことでしょう。

私たちに必要なのはこの怪物とのつきあい方です。自分とこの怪物との互いの位置関係を常に冷静につかんでいなければならないとだめだと思っているのです。自分自身の見る目を待たないと経済アナリストたちに振り回されます。最近の円高というのもむしろドル安・ポンド安なのであって対ユーロで眺めるとむしろ円安です。移り気なこの怪物の動きから必然性を持っていたサブプライムローンの破綻の副産物が、今日の株価の変動だと見ると市場の混乱は必然性を持った一つの結果だと思います。こういうときは静かにこの怪物の動きを探って冷静にこの怪物の手中に陥らないでいる以外に手段はないでしょう。怪物の動きはいわば独自の路を歩み続ける経済の当然の動きで、この経済の動きに対しては基本的に政治も経済システムも現在コントロールする力は持っていないと思います。諸外国に比べて日本の株価のいまの極端な低下に日本の政治や日銀の現状が全く関係がないとは申しませんが。

(2008年2月7日記)株価は相変わらず低迷しています。過剰なお金は商品と新興国に向かっているようです。先進国である日本などでは高度の成長を今後期待できませんから、キャピタルゲインを確保することは、かっての神戸製鋼、現在の三洋電機のように存亡の危機に陥った企業以外は 期待できず、どんどん外人の投資は引き上げられ別の魅力のある方向に動いているのでしょう。サブプライムローン問題がありますが、それとは無関係に外人投資家の参加を失った場合まず現在の日本株価水準が現在の日本の状況にふさわしい水準なのかもしれません。ただ日本にはオンリーワンとでもいえる優れた技術を持った企業があることも事実です。この技術を背景にして世界と勝負し利潤を確保してこれを株主に配当していくことに活路があるのかもしれません。配当を増やすことに異論があることも承知しているのですが、そうでもなければ外人にとって日本の企業の魅力は薄れる一方でしょう。最近も配当税率の引き上げが決定され政治的にも株式軽視の動きをするなど、政治的には新しい可能性は感じられなくなっています。

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grenz

いま考えていること 301(2008年01月)
――現在の日本を考える――

不況の風が流れている今年の春闘では経団連会長も賃上げを収益の上がっている企業では認める空気で、それは結構なことだと思ってはいるのです。しかし見方を変えると問題はそれほど簡単ではないという気持ちを持っています。

その根拠はなんと言っても企業活動がグローバルになっていることです。グローバル化に伴って考えなければならないのは、賃金水準もこのグローバル化と言うことを無視して決まらないだろうと思うのです。我が国の円の価値は依然として国際的には高いレベルにあり、円を海外で使うとまだまだ価値が高いのです。日本での賃金が伸びていないために一向に民需が伸びないことは理解しているのですが、近くに安い土地や労働力を提供してくれている中国やインドあるいはベトナムという国がありそこでの賃金水準が低い内はその影響を免れることはできず、国内の賃金レベルを高くすると一時期のように工場の中国など低賃金・低地価の国々への移転を促し結果として国内での雇用を妨げてしまう心配があります。

国内での雇用機会の減少が今日のようにパートや非正規雇用の増大を招いているのではないでしょうか。これが産業が国内で人手不足を来すレベルであれば、雇用形態も自ずと正規雇用で人材を確保しようとする動きに転じていくでしょう。現在の非正規雇用は必ずしも労働法規の変化に伴うものではなく、現実の経済が要求する雇用形態に動かされているのであり、このあり方に基本的には法律が歩調を合わせて変化してきた面を感じます。

結論としてはやはり政治ではなく経済そのものの姿に変化を起こさないと政治も法律も変化しないのだろうと思っています。最近の社会保障のチマチマした改悪も基本的には我が国の膨大な800兆にも及ぶ累積赤字が効いているのであり、この瞬間にも利息はかさんで行っているのです。一軒の家を考えても膨大な赤字を抱えておれば、したいこともできないのは国も家庭も同じことでしょう。もちろん守屋事件に見られるように公金をむさぼる悪事は厳しく正して行かなくてはなりませんが、この膨大な国の赤字の解決なくして国民に温かい余裕のある政治を期待する方が無理なのではないでしょうか。ユーロ結成時にそれぞれの国の赤字に箍(たが)をはめ実現できない国には加盟を認めなかったことを考えると、我が国でも赤字解消の方策を真剣に考えればあると思うんですが。

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