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いま考えていること 331(2008年08月)
――北京オリンピック――

今回のオリンピックはわたしの年齢になると次のオリンピックの時には生きていないかもしれないという思いもあるので、少し今までと違った想いで見ました。世界中から現れるは現れるは204の国や地域恥ずかしながらこの年になっても初めて聞いた名前もありました。

わたしは北京は訪れたこともありませんが、マラソンでは選手たちの力走に心打たれると同時に北京の町の美しさに目を奪われました。緑も多いし、近代的な立派な広い道路に驚くとともに、昔ながらの宮殿が町の歴史と品格を漂わせ、躍進する中国の偉容を感じました。おそれられていたテロを始めこれといったトラブルもなく、テレビの取材、放映内容ともすべては順調に進行してしているように見えました。新聞などの報道では規制もあったようですが、このような国家的行事ではどの国でもある程度の規制は避けられないものでしょう。まして中国は共産主義を目指した社会主義国家なのですから、いわゆる自由主義国家とは異なったところがあっても不思議ではないでしょう。

参加した各国の選手たちは人種の違いはあってもみな明るく、勝利の喜びも敗北の無念さも人類共通なのだなあと感じました。 折しもグルジア紛争も起こり、血なまぐさい話も地球を覆いましたが、やはりオリンピックは平和を願い、人々の友好を示すかけがえのない人類の智慧の結晶だと思いました。「人類みな兄弟」をいろんな場面で見せてくれました。

都市の主催とはいえやはり国家の威信をかけた行事であり、一つの都市の能力では今日のスケールをこなすことはもはやできないのでしょう。そういう意味ではオリンピックは国家の実力が反映しています。目下のブッシュアメリカの凋落、日本の経済力の凋落と比べ中国のウエイトは否定できないものでした。これからの中国の経済はとても今までの高い水準のままで推移できるとは思いませんが、中国のアジアにおけるウエイトの今後の増進と日本の影響は限られた分野以外では期待できなくなっている現状を見ないわけにはいきませんでした。こんどのオリンピック開催で中国指導者の目もより国際的になり今までにない新しい社会主義国を造っていってほしいと願うのです。

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いま考えていること 332(2008年09月)
――福田首相辞任――

一言で言えば福田さんも首相の器ではなかったということです。自公政治の終焉を意味するものでしょう。やはり選挙の洗礼を受けずに政権を維持することの不可能の証明だと思います。麻生さんが次の自民党総裁に選ばれるかもしれませんが、麻生さんといえどもこのまま総裁になっても結果は何もできないということになるでしょう。やはり一度国会を解散して民意を問うことが不可欠であることを事態は示していると思います。ともかくこの不況の襲来時、首相を失った国内の経済的混乱はいっそう大きいものになることを覚悟しておかなければならないでしょう。次期総裁のやるべきことは国会解散です。

国民目線の政治の基礎を築いたと福田さんは言いますが、道路特定財源の一般財源化、消費者庁の創設にしても自分が自負するところがあるならばその実現までは自分の手で責任を持って果たすべきだったでしょう。無責任の感を否めません。然し元々首相の器ではなかったのですから、このような逃げ腰の辞任も当然の結果だと思っています。とりあえず私の考えを書いておきます。

(2008年9月2日追記) 一夜明けてこれからの成り行きについて書きたくなりました。国会解散で私は必ずしも民主党が勝つことを望んでいるわけではありません。最大の理由は民主党の構成が旧民社党、旧社会党、旧自民党とあまりにも雑然としていること、何よりも私は小沢氏の人柄に信頼を置いていないからです。では誰が総理として望ましいか?福田氏と共同責任を負うべき公明党は論外となりますし、その主張には共感するところもありますが現在の政治地図では共産党、社民党、国民新党は所詮刺身のつまというところでしょう。では自民党を支持するのかというと、その気はありません。現在の国の財政の大きな赤字はこれまでの自民党のバラマキ政治、利権政治の産物ですからとても支持する気持ちにはなれません。しかし、麻生さんは多少おもしろいという気はあります。麻生さんには失言も多いのですが、自分の考えが見て取れる人ですし、ヤンチャ坊主の率直さもあります。何よりも性格が陽です。麻生氏は財政再建を遅らせる考えのようですが、現在の世界的不況という非常事態を見ると、この際多少財政再建を後回しにして赤字国債を発行してでも、必要な財政面からの政府のサポートが必要に見えてきました。嘗ての総裁選挙での麻生氏の演説には歴史についての洞察も見られました。安倍さんとも共通するような右翼的な要素に拒否反応を感じるのですが、おもしろい人だと思っています。衆議院選挙で、片や小沢片や麻生の構図も一応さまになります。自民党内での選挙で麻生氏が総理に結果的になってもそれに安住しては安倍、福田と同じ野垂れ死にの道をたどるでしょうから、先ず解散総選挙でおのれに対する国民の信をまず問えと言いたいのです

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いま考えていること 333(2008年09月;10月)
――投機の潮流の変化――

株式市場から逃げ出した投機資金は金・原油などに流れ、価格の高騰を招いたと言われましたが、このところ原油は連日価格の低下が報ぜられています。価格の高騰に伴い消費の抑制が起こって来たこと(当然ですが)、アメリカでもファンドの投機抑制の動きが議会を中心にみられだしたことなどが理由に挙げられています。今後OPECなど原油生産の抑制が見られるようですから、このままどんどん安くなるわけではないでしょうが、ひとまず世界的に安心が広がってきています。原油や金の市場から引き上げられた資金は、膨大なもので、今後も利潤を求めて新しい対象を求めていくでしょう。コントロールを失っている資本主義の予期しない現れなのかもしれません。

17日の毎日新聞朝刊の記事に「産油国の政府系ファンドの関心は、米投資銀行から中国などアジアの銀行や、企業への出資や買収、発展途上国の農地買収などに移った。」という文字が見られます。確かに今回のアメリカ金融界の騒動は、ここしばらく見られた金融資本主義の結果であろうと思います。不動産にしろローンにせよこれを証券化し、その市場へのバラマキが事態を複雑化し、証券売買の過程で利潤をあげるあり方に対して市場がNOを突きつけているようです。その機能を担っていた証券会社が続々行き詰まり、米政府も直接公的資金を投入するよりも破産させる道を選んだのは、一つの見識とも見られます。

一方で金融不安を抱えてしまった世界の経済は株式市場に大きなダメージを及ぼし、ロシア、中国、インドなど新興国の株式にも大きな含み損をもたらしています。事業を起こし、発展させるために金融の円滑な運営があたかも動物の血液のように不可欠です。おそらくこれからはもう少し健全な投資が展開されるようになるでしょう。投資銀行壊滅の米金融界の再生にはかなりの時間が必要であろうと思いますが、産油国などの政府系ファンドはその間、豊富な資金の運用として産業界などへのまじめな投資を進める一つのきっかけになるかと思います。

当面日本の株価はまだまだ低下の道をたどると思いますが、日本の場合はまだしも金融のマネーゲーム化・証券化の度合いは低く、アメリカの証券化金融不毛を経験したこれからはより慎重になるでしょうから、技術に根幹を置く産業が健全な我が国では健全な投資の再生は案外急速かもしれません。ただ不動産業界へは外資系投資銀行から相当な資金が入って活性化していたようですから、不動産の証券化が失速する今日、深刻な影響が避けられないでしょう。株式も外人の投資に大きく依存していましたから、市場の縮小は避けられないでしょう。それにしてももう少しまともな為政者はいないものでしょうか?

(参考)【シカゴ18日時事】米ヘッジファンド調査会社ヘッジファンド・リサーチ(HFR)が18日明らかにしたところによると、今年上半期の世界のヘッジファンドの清算本数は350本と、前年同期比で15%急増した。世界的な金融市場の混乱で運用成績が悪化しており、ヘッジファンド業界も冬の時代を迎えつつあるあるようだ。

(追記2008年9月20日)昨日米政府は80兆円〜50兆円の資金を投入して金融機関から不良資産を買い取ることを明らかにしました。実現には議会での法案成立が必要ですが、この措置は現在の金融危機にかなりの安心をもたらします。おそらく金融システムの再建が促進されると思いますが、投資銀行の行った証券化がどんなに弊害をもたらしたか深い反省と分析を伴った根本的な出直しが必要だと思われます。この額の支出はイラク戦争の予想される数年分の戦費ですから、戦争にもかなり影響するのではないでしょうか。

(追記2008年10月04日)昨日米議会を「金融安定化法」は通過しましたが、アメリカの株価はまだ低下を続けています。日本の株価もまだまだ低落の道を辿るでしょう。今回の騒動でこれまでの投資銀行路線は基本的には崩壊するとは思いますが、何しろ経済の根底に新自由主義が温存されているアメリカですから、この危機が一段落するとまたとんでもないシステムが提案されてくる危険があります。この新しい提案が現れる兆候が見られたら、私たちはよほど慎重に吟味しなければまた危ない道に誘い込まれかねません。1929年の世界恐慌のさなかに生まれた私としては、基軸通貨国アメリカの引退と新しい世界の金融システムの構築をこの目で確認してから、この世を去りたいというのが正直な気持ちです。

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いま考えていること 334(2008年09月)
――おすすめしたいレポート――

今日入ってきたJMMレポート497extra edition 2はご一読を勧めます。題して「人生の最後をどう迎えるか」(高田ケラー有子:在デンマーク)。ここには日本の高齢者医療の現況やどのように死を迎えるかについて若い人にも年寄りにも考えて頂きたい事柄が吐露されています。

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いま考えていること 335(2008年09月)
――伊藤和也さんのこと――

私はユニセフ大使黒柳徹子さんカンボジアで井戸掘り運動を進めておられる東大寺一如庵の内田弘慈さん、中村哲さんのペシャワール会の活動に毎月1,000円ずつ拠金しています。お三人のような活動はしたくても自分ではできませんので敬意の印にわずかですが拠金しているのです。2008年8月26日このうちのペシャワール会で悲劇が起こりました。それは現地の伊藤和也さんがアフガニスタン・ダラエヌールで武装グループによって命を落とされたのです。

伊藤さんについてペシャワール会事務局長福元満治さんは会報で次のように書かれています。

彼は二〇〇三年六月、事務局を訪れ、その年の十二月からアフガンで活動を始めることになった。面接の時はまだひ弱さの残るシャイな感じだったが、二〇〇四年の春に会った時には、用水路工事護岸の植樹担当で、日に焼けて逞しくなっていた。静岡県の農業高校から農業専攻の短大を卒業した彼は、もともと農業志望で、お母さんの話によると、小学二年の時「将来は食べ物を作る仕事をやりたい」と作文に書いていたという。
その彼がダラエヌールの農業支援に活動の場を移してからは水を得た魚で、相変わらず口数は少なかったが、肩の力が抜けて生き生き年ごとをしていた。
今年の三月に会ったときには、農家の子どもたちにまとわりつかれ、なんだか土地に根を生やしつつあるのを感じた。冗談で「お前さん、嫁さんでももらうんじゃないか」と聞くと、「母親もそういうんですよ」とはにかんだ。

2008年9月9日アフガニスタン・シェイワで開かれた約800人参集の葬儀でペシャワール会現地代表・中村哲医師が述べられた弔辞をここに採録します。

弔辞

まず、ダラエヌール、シェイワ、シギのすべての人々が伊藤君の捜索活動や遺体搬送に協力し、そして今日、こうして多くの方々が哀悼の意を表して下さることに、心からの感謝を申し上げます。
伊藤君の遺徳については、多くの方が様々に生前のことを述べられたので、私がくどくどと申すことは無用かと存じます。ダラエヌールの小さな子どもやご婦人方に至るまで、悲しみを表し、私たちPMSへの同情と感謝を改めていただいたことは、悲しみの中にあっても、光栄という他、ありません。
伊藤君を殺したのはアフガン人ではありません。いまやアフガニスタンを蝕む暴力であります。政治的なものであれ、物取り強盗であれ、心ない暴力によって彼は殺されました。
不幸にして世の中には、伊藤君の死を政治目的に利用しようとする者もいます。また、アフガニスタンという国の文化を知らず 、PMSと皆さんとの交誼をを知らず、様々な噂や論評が横行いたします。その中には聞くに堪えない無理解、戦争肯定が少なからずあります。そうして生まれる武力干渉が、現在のアフガニスタンの混乱を招いてきました。このことを否定する者は、今日集まられた方々の中には居ないと思います。私たちはもう、戦争に疲れました。
私たちPMSは極力アフガンの文化を尊重し、アフガン人がアフガンのふるさとで、アフガンのやり方で生活ができるように、平和なやり方で、事業を進めてきました。繰り返しますが、「平和に」です。戦争と暴力主義は、無知と臆病から生まれ、解決にはなりません。
いったい、イスラム教徒であることが罪悪でしょうか。アフガン人が自らの掟に従って生きることが悪いことでしょうか。私はキリスト教徒であります。しかし、だからとて、ただの一度としてアフガン人から偏見を持たれたことはありません。良いことは誰にとっても良いことで、悪いことは誰にとっても悪いことであります。現に、このようにして全てのクズクナールの人々が集い、異教徒である伊藤君の死を悼んでいるではありませんか。心ない者はどこにもいます。今回の事件でアフガン人と日本人との間に亀裂があってはなりません。
アフガン人も日本人も、親として、人としての悲しみに、国境はありません。命の尊さに国境はありません。「困ったときの友こそ、真の友だ」といいます。いまアフガニスタンは史上最悪のときを経ようとしつつあります。五百万人以上の人々が飢餓に直面し、無用な戦争で多くの罪のない人々が命を落としています。
かって六十年前、日本もまた、戦争で国土が廃墟となりました。二百万の兵士と、百万人の市民が死に、アジアの近隣諸国にはそれ以上の惨禍をもたらしました。私も、生まれた直後の様子を良く覚えております。外国人はいつでも逃げることができます。しかし、この廃墟と化した土地にしがみついて生きなければならぬアフガン人は、どこにも逃げ場所がありません。
であればこそ、私たちPMSは、変わらずに事業を継続して、皆さんと暗くを共に致したいと思います。それがまた、伊藤君への追悼であり、過去の戦争で死んだ人々の鎮魂であります。皆さんの協力と要望がある限り、PMSの活動を止むことなく継続することを誓い、弔辞と致します。

二〇〇八年九月九日

アフガニスタン・シェイワにて       ペシャワール会現地代表・中村哲

(追記:2008.10.02)asahi.comから転載

伊藤さん悼む550のともしび 「アフガンを憎まない」

 アフガニスタンで8月、武装グループに拉致、殺害されたNGO「ペシャワール会」の伊藤和也さん(当時31)を追悼する集会が1日、名古屋市中区の栄広場であった。ペシャワール会名古屋などの主催。

 午後6時半、日が落ちて暗くなった広場に、会のスタッフらによる手作りのろうそく550個が並び、ほのかに周囲を照らした。「私たちは決してアフガニスタンを憎んでおりません。和也も同じ気持ちだと思います」などという伊藤さんの父正之さんのメッセージが読みあげられると、集まった人たちは静かにうなずいていた。

 会場では、現地の菜の花畑で少女らが花を摘んでいる様子を撮影した伊藤さんの写真が展示されたほか、現地で作業にあたる伊藤さんの姿のスライド写真がスクリーンに映し出された。

 岐阜県多治見市の水野由之さん(61)は「危険な所で若い人が自分をささげていた。尊敬に値する」と話した。

国連事務総長アフガニスタン特別代表のカイ・エイデ氏は2008年10月6日首都カブールで記者会見し、同国内のタリバンなど反政府武装勢力との紛争について、軍事対応では勝利出来ないとの考えを表明しました。ハリリ・アフガン副大統領もタリバン最高指導者オマル師と具体的な和解交渉を始めていることを認めました。副大統領は「支援国の中には(タリバンと)戦え戦えという国があるが、受け入れられないと暗に米国の姿勢を批判。「戦闘だけでは永遠に勝てない。交渉は国造りに不可欠だ」と、国際社会に理解を求めた。ということです。(毎日新聞2008年10月8日朝刊)

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いま考えていること 336(2008年09月)
――麻生内閣の性格――

本日国会での投票が終わり、麻生内閣が誕生しました。いろいろな方が大臣のポストに就かれましたが、その方々は各省の官僚を基盤に行動されるでしょうから、そのポストについて特別の感慨はありません。今のように首相も閣僚もめまぐるしく変わるようでは、政策の一貫性は守屋事件にも見られたように多くの弊害や問題を抱える官僚機構に依存せざるを得ません。しかし、内閣の最終的な決定判断は閣議の共同意志決定で行われると思うので、その中心的顔ぶれには大変関心があります。安倍さんこそ入閣されませんでしたが、一言で言えば保守党の錚々たる右翼的な人物が揃いました。早くも近隣諸国から危惧が伝えられていますが、私もこれでは顔ぶれは福田内閣の方がましだと思っています。人柄という点では麻生氏の明るさ、開けっぴろげな所は小沢さんより好きなのですが、根本的に右翼的なところは私の好みではありません。社民党や共産党は今の議席数ではどうにもならず政権担当には程遠いので、さて来るべき衆議院選挙には誰に投票するかというところです。

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いま考えていること 337(2008年10月)
――帰する所みな平等――

昨日大学の同期会がホテルで催されました。私は家内の看護から手が抜けないので京都で催される時だけ、家内の調子が安定している日だと出席させてもらっています。友人の皆さんの近況を伺えるのも楽しみですが、もう一つの面は紛れもなく同年令の方達の健康状態も観察出来ることも挙げることが出来ます。私たちはもう78歳前後の年になっている上、同窓会にはこれ迄からご無沙汰という人もいますから、30名あまりの卒業生のうち昨日集まったのは9名でした。2,3年前に出席した時には話を交わした同窓も今回は鬼籍に移っていて出席出来ない人も3人あり、さびしく思いました。目立ったのは耳が遠くなった人が何人か現れたことでした。こもごも近況を話すのを聞いていますと集まれた人はどちらかといえば生活にも健康にも恵まれている人たちですから、絵に傾倒していてそのうち奥さんと合同の個展を志し、月に一度はゴルフを年に一度は海外に旅行するという人もあれば、一見健康そうに見えるのに膀胱も前立腺も除去してストマをつけて生きている人、ガンで昨年9月胃を全部摘出して抗ガン剤で頭髪が抜けたのを気にしながらもお酒も煙草も少量は楽しむ人、また地域の人望を集め老人会の会長をしている人、歴史探訪会の会長をしている人、体は不自由でも日々読書を欠かさず新しい知識の習得に努めている人、あるいはコンピューターの操作の指導をパソコンでしている人もあり本当にさまざまでした。

楽しい時間を過ごしましたが、上記の元気な歴史探訪会長をしている人も消化器系の不調で内視鏡検査を受けていて、結論的にはみんな78年の歴史の中で平等に年はとっているということを思います。出席者の一人が、年をとって時間にも暮らしにも余裕が出来れば旅行を楽しんだり、自分のしたいことをしようと思っていたが、年を取ると取ったで体力的に出来なくなると言っていましたが、私も同感です。若い人は苦しくてもやりくりしてその時々にしたいことをしておくべきだと思います、このホームページの初めの方に記した水上勉さんの「而今」という言葉が頭をよぎりました。

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いま考えていること 338(2008年10月)
――嵐のような半月――

この半月は嵐のような日々でした。しかもまだこの嵐は収まる兆候も見えません。9月26日に先月の資産の状況をチェックしてから10月11日までの間に含み資産は1,050万ばかりマイナスになっています。株式が低下を始めるとあっという間に奈落の底に突き落とされることを実感しました。私はずぶの素人ですから、空売り・信用取引などというテクニックは使いません。その代わり追い証なども生じませんから、実際上のお金がなくなったわけではありませんから、静かに成り行きを眺めているだけで済んでいますが、換金の必要でも生じると手元に入ってくる金額は半月前に比べて1,000万円少なくなるので、怖いものだと思います。家内や私名義の投資信託も恐ろしく値崩れしていますし、外貨預金も円高の進行でマイナスが日々増えているのが現状です。

日常の生活費は2,3日後、年金日を迎えますが今のところ変わりなく振り込まれると思うので、それで賄えるので心配はありません。完全に金融機関が機能しなくなると年金の振り込みにも支障が出てくるでしょうから、現状ではまだ金融恐慌が身近には起こっていないといえるでしょう。来月末からは株式中間配当も入ってきます。来年はともかく今年は予告通りの金額が入れば年末の貴重な助けになります。
現状、資産運用と生活費を区別しないで生活しているために大変ななことになっている人も出ていることでしょう。

株価の低落を見ていますと表面的には過去の日本のバブル崩壊の時に見られたのと同等の現象ですが、今回の金融不安は国内だけの問題ではなくまた一時的な現象でもありません。本質的にはこれまでのアメリカのあり方に対する否定なのです。それはギャンブル資本主義でした。今後これに代わる資本主義哲学が何になるのか暗中ですが模索の結果これに代わる何者かが分かるまでは混乱は続くでしょう。規制もなく好きなように不動産ローンを高金利の証券化してバラマキ、AGIのように保険会社までそれに乗じて自分の資産内容を超えた保証をして稼ぐというようなギャンブル資本主義の今回の結末ですから、根は深いと思います。公的資金の導入で当面を乗り切れても、たとえば投資ファンドの解散などしばらくは収まらないでしょう。根本的な出直し経済体制が世界に組まれるまでには長い年月が必要でしょう。のんきに不毛なイラク戦争やテロ戦争を続けている余裕などないと思うのです。

2008年 10月 24日 12:54 JST

 [ロンドン 24日 ロイター] 欧州の主要ヘッジファンドのGLGパートナーズ(GLG.N: 株価, 企業情報, レポート)のエマニュエル・ローマン共同最高経営責任者(CEO)は、世界的に最大30%のヘッジファンドが消滅するとの見通しを示した。
 複数の英紙で同氏は、多くのヘッジファンドはつぶれるか、あるいはわずかな利益では割にあわないと考えるようになるだろうと指摘。「ダーウィンの進化論のようなものだ。多くのヘッジファンドは消えていくだけだ」と述べた。
 同じ英紙報道で、米住宅バブルの崩壊を最初に警告したニューヨーク大学のノウリエル・ロウビニ教授は、多くのヘッジファンドが破たんする見込みとし、監督当局はパニックに対処するために市場の閉鎖を余儀なくされる可能性があると指摘した。

[ニューヨーク 24日 ロイター] 米国株式市場は大幅下落。世界経済の減速が予想以上に深刻であることを示唆する経済指標や企業の業績見通し悪化が嫌気された。
 オーバーナイトでは特に下げがきつく、米株価指数先物が3指数とも米国での先物取引開始前に値幅制限一杯まで下落した。
 アナリストによると、へッジファンドやミューチュアル・ファンドが、投資家の大規模な解約に対応するため手元資金の調達を迫られ、清算を余儀なくされたことが株安に拍車をかけた。

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いま考えていること 339(2008年10月)
――馬鹿を見ないために――

北朝鮮にテロ支援国家指定解除が行われました。アメリカの核に対する態度も対インド政策に見られるように矛盾だらけですが、現在の6カ国会議のテーマは北朝鮮の非核化であることは明らかです。いったん保有し交渉の切り札としてもっとも有力な武器である核兵器を簡単に北朝鮮が放棄することは考えられないのですが、政権末期のブッシュ政権は大統領選挙も控えて、形のある成果を持ちたいものですから「テロ支援国家指定」も日本の拉致問題を無視して解除に踏み切ったのでしょう。私は北朝鮮の非核化交渉と拉致問題とは元々次元の違う話で、やはり交渉は非核化に的をしぼって進めるべきだと思っていますから、テロ支援国家指定解除は賛成です。拉致問題については小泉さんの訪朝時の金主席との談合と平壌宣言の締結を無視することはできませんから、本来なら国会でも小泉さんを招致してその時のいきさつを当然調査すべきだと考えられるのですが、小泉さんを招致・調査すると北朝鮮にある種のメッセージを公的に送ることになるのでとても出来ないのでしょう。このように当然のことも建前から出来ない陰の部分がどこの国の政策にもあるのでしょう。私たちは表面に出てくる意見を政党についても政府についてもマスコミについても信じていると馬鹿を見ます。今回の金融危機についてもアメリカのイラク戦争の経済的負担と金融不安対応を論じたものはどこにも見られないのです。アメリカに対する配慮がまともな議論すら妨げています。

アメリカの不況は円高も招き、日本の輸出は前途収縮を予想され、内需拡大が叫ばれています。この意見にも条件を無視すれば正しい点がありますが、現在の日本は石油・食糧・工業原料など輸入に頼る面も多く、その代金を賄うためにもやはり外需に応えて輸出して稼がなくてはならないでしょう。私は経済に暗いのですが、全面内需で国を賄うには、先ず人口を減らして半分以下ににする覚悟と、個人の生活も昔の王侯貴族をも凌ぐ現在の便利な電化生活から江戸時代並みの生活、或いは戦争中の生活にバックする覚悟が要ります。私の意識の中でもっとも大切な人類の発明品は「石けん」ですが、戦争中は全く入手出来ず苦労しました。口先で外需から内需へと言うのは簡単ですが、外需を全く否定した場合に起こる生活の変化を、みんなが覚悟することが出来るでしょうか。一つ一つの言葉の意味も深く考察しないと空論に過ぎないのです。議論はよほど慎重に吟味しないと時間の浪費以外の成果は期待出来ないのです。すべてそのまま軽々しく納得しては馬鹿を見ます。

長い私の経験から、政府が戦争に走ると国民は嫌でもその結果を背負わさせられますから、政治がどちらの方向に向かっているかは重要で、私たちは政治に無関心であってはならないとは思っているのですが、さりとて政治には陰の部分がありますから、表面に現れたことのみで判断すると馬鹿を見ます。個人の生活を守るものは基本的にはその人個人です。他に救いを求めても一時的に援助を得られるかも知れませんが、最終的に信じられるのは自分自身の考えだと言えるでしょう。福沢諭吉は自主独立を説きましたが、他に頼るものは他に裏切られるかも知れません。個人としても自主独立を旨としたいものです。北朝鮮との拉致問題の解決も平和のうちに国交を回復し、正常な外交関係を樹立して後、6カ国討議にゆだねることなく、日本と北朝鮮の間で外交のルートを通じて自主的に過去の拉致問題の解決交渉を展開しなければなりません。

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いま考えていること 340(2008年10月)
――Warren Buffettに学ぶ――

2008年10月17日のニューヨークタイムズには著名な投資家Warren Buffett氏の意見が載せられています。目下の金融危機の中で株式投資について考えを述べています。私も持ち株がだいぶん値崩れしていますので、だいぶん参考になりました。このところの株価の低迷下でも長く保持してきた神戸製鋼株はまだ売却利益もありますので、一部を売りその代金で日本製鋼株を買うことにしたのもこのBuffett氏の意見を読んだことがきっかけとなっています。Buffett氏は世間のムードに流されることなく“投資は長い目で”ということ、当面各国政府は支出を増やすのでそのお金がインフレを招くと教えてくれています。訳文に自信がありませんので、後ろに原文を載せておきます。興味のある方はチェックしてください。

では肝心と思われる部分の訳文を記すことにします。

アメリカ株を買おう

金融の世界は、アメリカでも海外でも困った状況にあります。更に問題は一般の経済にまで及んできて、噴出するような勢いです。最近では雇用も悪化して経済活動も鈍っています。ニュースの見出しも暗いものです。
それでも・・・私はアメリカ株を買い続けています。この論文は私の言っていることの説明です。以前私はアメリカ国債しか持たなかったのです(このことは慈善事業をしている私のBerkshire Hathaway Holdingsについては例外です)。値段さえ魅力があれば他の部門でもアメリカ株を買いまもなく資産の100%に達するでしょう。
これは何故でしょう?
私が株を買う時のルールは次のようなものです:他人が貪欲になっている時は買うのを恐れましょう、そして他人が怖がっておれば貪欲に買いましょう。
一番確かだと思えるのは今は恐れが蔓延し、年季の入った投資家までそういう気持ちになっています。確かに投資家が高いレベレージのかかった代物やポジションの悪いビジネスに用心深いのは理解出来ます。しかしこの国の健全な企業にまでその長期にわたる繁栄を心配するのはナンセンスです。こういう企業も今はありがちな収益の乱高下に悩まされています。しかし今から5年先、10年先、20年先で見れば大抵の主な会社は新しい高収益を納めるでしょう。
もう一点だけはっきりさせておきましょう:株式市場の短期の動きを予想することは私には出来ません。株式が今から1ヶ月?或いは1年?の間に上がるのか下がるのかは、ぼんやりした考えさえ浮かんできません。しかし、感情や経済が立ち直るより先に市場は持ち直すでしょうし、おそらくその上昇幅は相当大きいでしょう。コマドリが来るのを待っているだけでは春は終わってしまうのです。

ここで少し歴史を振り返ってみましょう:大恐慌の時にはダウは下がりに下がって1932年7月8日には41ドルにまで下がりました。フランクリン D.ルーズベルトが1933年3月に事務所を開設するまで経済情勢は低下を続けましたが、その時までに株価は既に30%あがっていました。第二次大戦の初期のことを思い返すとアメリカはヨーロッパでも太平洋でも戦況は悪くなる一方でした。1942年4月には株価は底を打ちましたがこれは連合国の運命が好転するより前のことでした。更に、1980年代の初めには株の買い時はインフレが猛威をふるい経済は凍結状態にありました。言葉を変えると、悪いニュースは投資家にとっては良い友達なのです。その時はアメリカの将来の一コマを安い市況で買えるのです。
長い目で見ると、株式市場は好調なのです。20世紀でもアメリカは二つの世界大戦その他煩わしい金のかかる戦争に耐え、;恐慌とか、数多くの経済不況や金融パニック;オイルショック;インフルエンザの流行;悪いことをした大統領の辞職も経験しました。それでもダウは66ドルから11,497ドルまで上昇したのです。
驚異的なゲインが見られた世紀ですから投資家が金を失うことなどあり得ないと思われるかも知れません。しかし失った人もいたのです。こういう不幸な投資家は自分の気持ちの良い時だけ株を買って、ニュースの見出しを見て不快感を持つと売り飛ばしていたのです。
今日現金もしくはすぐに現金化出来る証書など持っている人は 気分良く暮らしています。でもそれは続きません。なぜなら長い目で見るとそのような資産は頼りにならないからです。この資産では支払いも出来なくなり価値も下がるからです。政府が現在の金融危機を和らげる目的で取ろうとしている政策はおそらくインフレを誘発し、現金の価値を減らしてしまうのを促すからです。
これからの10年では株が現金以上の効果、それも相当大きい効果を発揮することになるのがおそらく確実でしょう。今現金に執着している投資家はそこからなかなか抜け出せないでしょう。良いニュースが来るのを待つというのではあの有名なホッケー選手Gretzkyの言葉を無視しているのです。:”僕はこれからパックが飛んでいく方にスケートしていく。パックがこれまであった場所に滑っては行かない”。
株式市場のことに見解を述べようとは思いません。もう一度強調して言っておきたいのは短期間に市場が何をするかについてこれといった考えは私にもないのです。でも、倒産した銀行の建物に開店したレストランで見た”お金が出来たら次はお口の方へ”という宣伝文句ではありませんが、私のお金も私の口から出る言葉もどちらもいま株だと言っているのです。

Warren E.Buffettは多様な会社を経営しているBerkshire Hathawayの最高経営責任者。

Buy American. I Am. COMMENTS (101) SIGN IN TO E-MAIL OR SAVE THIS PRINT SHARE By WARREN E. BUFFETT Published: October 16, 2008 Omaha Enlarge This Image Brad Holland Related Times Topics: Warren E. Buffett Readers' Comments Readers shared their thoughts on this article. Read All Comments (101) ≫ THE financial world is a mess, both in the United States and abroad. Its problems, moreover, have been leaking into the general economy, and the leaks are now turning into a gusher. In the near term, unemployment will rise, business activity will falter and headlines will continue to be scary. So ... I’ve been buying American stocks. This is my personal account I’m talking about, in which I previously owned nothing but United States government bonds. (This description leaves aside my Berkshire Hathaway holdings, which are all committed to philanthropy.) If prices keep looking attractive, my non-Berkshire net worth will soon be 100 percent in United States equities. Why? A simple rule dictates my buying: Be fearful when others are greedy, and be greedy when others are fearful. And most certainly, fear is now widespread, gripping even seasoned investors. To be sure, investors are right to be wary of highly leveraged entities or businesses in weak competitive positions. But fears regarding the long-term prosperity of the nation’s many sound companies make no sense. These businesses will indeed suffer earnings hiccups, as they always have. But most major companies will be setting new profit records 5, 10 and 20 years from now. Let me be clear on one point: I can’t predict the short-term movements of the stock market. I haven’t the faintest idea as to whether stocks will be higher or lower a month ? or a year ? from now. What is likely, however, is that the market will move higher, perhaps substantially so, well before either sentiment or the economy turns up. So if you wait for the robins, spring will be over. A little history here: During the Depression, the Dow hit its low, 41, on July 8, 1932. Economic conditions, though, kept deteriorating until Franklin D. Roosevelt took office in March 1933. By that time, the market had already advanced 30 percent. Or think back to the early days of World War II, when things were going badly for the United States in Europe and the Pacific. The market hit bottom in April 1942, well before Allied fortunes turned. Again, in the early 1980s, the time to buy stocks was when inflation raged and the economy was in the tank. In short, bad news is an investor’s best friend. It lets you buy a slice of America’s future at a marked-down price. Over the long term, the stock market news will be good. In the 20th century, the United States endured two world wars and other traumatic and expensive military conflicts; the Depression; a dozen or so recessions and financial panics; oil shocks; a flu epidemic; and the resignation of a disgraced president. Yet the Dow rose from 66 to 11,497. You might think it would have been impossible for an investor to lose money during a century marked by such an extraordinary gain. But some investors did. The hapless ones bought stocks only when they felt comfort in doing so and then proceeded to sell when the headlines made them queasy. Today people who hold cash equivalents feel comfortable. They shouldn’t. They have opted for a terrible long-term asset, one that pays virtually nothing and is certain to depreciate in value. Indeed, the policies that government will follow in its efforts to alleviate the current crisis will probably prove inflationary and therefore accelerate declines in the real value of cash accounts. Equities will almost certainly outperform cash over the next decade, probably by a substantial degree. Those investors who cling now to cash are betting they can efficiently time their move away from it later. In waiting for the comfort of good news, they are ignoring Wayne Gretzky’s advice: “I skate to where the puck is going to be, not to where it has been.” I don’t like to opine on the stock market, and again I emphasize that I have no idea what the market will do in the short term. Nevertheless, I’ll follow the lead of a restaurant that opened in an empty bank building and then advertised: “Put your mouth where your money was.” Today my money and my mouth both say equities. Warren E. Buffett is the chief executive of Berkshire Hathaway, a diversified holding company. More Articles in Opinion ≫A version of this article appeared in print on October 17, 2008, on page A33 of the New York edition. Past Coverage

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grenz

いま考えていること 341(2008年10月)
――ビジネス ウイーク記者の金融崩壊の分析――

ビジネス ウイークの2008年10月18日号のNews Analysisで二人の記者は 今アメリカでは金融危機の犯人捜しが国民の間で新しい気晴らしになっていると述べています。この分析には今回の危機の原因が語られています。この論文は現在の日本の経済にも大きな警告をしているように思いますので、その要点を紹介しておきましょう。

最近のアメリカ経済にはいろいろ危機的兆候があったにもかかわらず、詰まるところ「欲」で、システムに潜む弱点を故意にか無意識にか見逃し遂に破綻になったというように思われます。システムに潜むリスクを過剰に取りすぎているにもかかわらず目先の利益に溺れたといえるでしょう。金融関係者は投資利益に基づいて驚くほど大きい報酬を受け取っていたため更に大きなリスクを短期で取ろうとしたのです。法的には一九九九年、投資銀行と商業銀行の厳格な分離を定めていたグラス・スティーガル法が自由化の名の下に緩和されたのが原因で商業銀行も証券業務に乗り出し投資銀行がレバレッジを効かせヘッジファンドのような行動を取りだしたのです。「短期の借り入れで長期の融資や投資をしてはならない」という金融の基本原則を無視したために資金が不足し短期市場への資金供給が出来なくなっているのです。
ウオール街には多くの頭脳明晰な人材が集まり証券化商品を開発したのですが住宅の資産価値が急落した場合にどんな事態が起こるかは考慮されていなかったというのです。資産の証券化、デリバティブ(Buffett氏は「金融大量破壊兵器」と評しています)、契約上の債務を売買するクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の持つリスクには眼をつむって、リスク軽減の側面だけを誇張していたのです。商品があまりにも複雑なために価値の評価が困難になっていたのです。金融システム全体が大きなギャンブルシステムになっていたと言えます。

先ずアメリカの住宅市場のバブルです。誰にも自分の家を持ちたい気持ちがあります。しかしそこにどんなに借金してもバブルによって住宅価格が上がるから容易に借金は返済出来、それどころか更に借金をふくらませても大丈夫という気分が生まれたのです。2006年には住宅ローンは平均世帯収入の4.6倍に達し、住宅所有者の40%以上が所得の30%以上を住宅費に費やしていました。それでも殆どの関係者が住宅価格はいつまでも上がり続けるので大丈夫という幻想を持っていたのです。
もう一つ事を大きくしたのは「証券化」という新たな金融手法でした。FF金利は2000年には約6.5%でしたがその後2%に下落しました。低金利が横行していた中でより大きな金利を求めていたウオール街にとって高金利の住宅ローン債権を買い取りこれを証券化して投資家に売り込んだのです。この結果住宅ローンの拡大を求める強い圧力を生じ、信用を厳格に審査することもなくサブプライム層に金融機関は安易に資金を提供しました。しかし今、住宅の上昇気流は失速しバブルがはじけました。
ウオール街の投資銀行はこの証券化プロセルに積極的に関与していました。リーマンやベア・スターンズはこの証券の10%程度を扱っていたものですから、バブルの崩壊と共に経営破綻しました。
事情を更に悪くしたのが危険の軽減を図るために契約上の債務を対象にして担保力をオーバーした保証を売買し大きい利益を収めていた幻想の時代が過ぎるとAIGのような破産状況がやって来たのです。レバレッジを自己資本の30〜40倍の規模で効かせていたのです。以前の10〜15倍というレバレッジ規制が2004年に緩和されていたのです。ウオール街は連邦議会や大統領立候補者に多額の政治献金をして規制監督当局が「自由放任の市場経済」にGoを出すよう働きかけてきたのです。

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grenz

いま考えていること 342(2008年10月)
――アメリカ大統領選の行方――

私は村上龍のJapan Mail Media で送られてくるアメリカ在住の冷泉彰彦氏のレポートを愛読していますが2008年10月25日に送られてきたレポートによるともはやオバマの勝利は確実なようです。このレポートから受ける印象では、最大の原因はマケインの自滅と現在アメリカを覆っている金融危機の環境にあるようです。一時もて囃されたペイリンも自分で軽薄さを露呈して、とてもいざというときにアメリカ大統領が勤まる人物ではないことを証明してしまったようです。共和党を支持する「自由放任経済と低低税率を求める富裕層」と「価値観の守護者であることを求める宗教保守」の間にも分裂を生じているようです。後者の非難するアメリカの社会主義的政府の資金投入に対しても前者であるジェネラル・エレクトリックの元会長ジャック・ウエルチまで「オバマは中道主義の良い大統領になる」「マケイン陣営の物言いで許せないのは、オバマがやろうとしているのは、国家による経済への介入で、それは社会主義だから脅威なんだという言い方です。そんなことを言っている場合じゃない。アメリカでは危機に対しては国家が入っていく、で良くなったら出て行く、そういう風に政府が出たり入ったりするところに強さの秘密があるんで、今回はまさに入って行かなくちゃいけない局面ですよ、オバマはそれが分かっているから、左に寄りすぎて妙なことにならないと思いますよ。」と言っていると言います。これがアメリカの空気を表しているのではないでしょうか。パウエル前国務長官やマクレラン元大統領報道官まで推しているところにもオバマ優位が見られます。「ブッシュのアメリカ」が路線を変換し「戦う大統領」というイメージから離脱しているところにもマケイン路線が成り立たなくなっていることが見られるのではないでしょうか。

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grenz

いま考えていること 343(2008年11月)
――さあ総選挙を――

明日の昼頃には米大統領選挙の結果が判断出来るでしょう。これでアメリカも一段落つきます。金融不安に伴う経済のあり方についての見通しは数年後にならないとつかないと思いますが、重要な政治の鍵を握る大統領が誰になるかは結論が出るわけです。
日本でも麻生さんの当面の経済対策が示されたわけですから、緊急の対策は一段落ついたと言うべきでしょう。これまで二人の総理大臣が国民の選挙による信任を得ないままに総理に就任し、結局国民の信頼を得られずいわば野垂れ死の末路を迎えたことを思うと、一日も早く国会を解散して国民の信を問う時が来ていると言うべきでしょう。自民党であれ民主党であれどちらにしても国民の信がなくては総理は勤まりません。私は民主党が勝ってもそんなに大きい変化が見られるとは思っていないのですが、ともかく国民の信を問わないと政治をになうことは不可能なことを悟って、麻生さんは国会解散に踏み切るべき時を迎えたと思います。

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