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ギリシア語錬金術文献集成

TLG1379

錬金術断片集

001
錬金論(断片集)





[テキスト]

 1828年にエジプトのテーベで、古代の墓地を発掘したところ、ミイラの石棺の副葬品の石のつぼや陶器のつぼから、ギリシア語で書かれたパピルスが、たくさん出てきた。当時アレクサンドリアのスウェーデン政府の副領事をしていたヨハン・アナスタシが、これらを全部買いとって、1829年にオランダのライデン図書館に売りつけ、1832年にその残りを王立スウェーデン考古アカデミーに寄贈した。
 (ダンネマン/安田徳太郎訳・編『大自然科学史』第2巻、訳註、p.285-286)

 ライデンのコレクションは,スウェーデンのアレキサンドリア駐在副領事である貴族アナスタシによって,19世紀の前4分の1世紀に編集された,古代エジプトのコレクションに基づいている。このコレクションは,1828年,オランダ政府によって買い取られた。このコレクションは,他のものに混じって,パピルスに書いた100以上の写本,布に書いた24の写本,銅に書いた一つの写本などである。これらのパピルスには,ギリシア語で書かれたものが20,2か国語で書かれたものが三つあった。これらのパピルスは,ライデン博物館の館長ルーベンスにより,ルトロヌ氏への手紙(3巻)という書面で一般的な解説書として1830年,ライデンで印刷された。博物館長の職をルーベンス氏から継いだレーマンス氏は,自分が管理しているコレクションから引きだしたパピルスの多くの続編を1840年来,出版している。しかし,その中には,問題にしているギリシアのパピルスについては少ないので,われわれは,主としてルーベンスの手紙によってのみ,それを知るのである。しかし,われわれにとって一つの興味深いものがレーマンス氏によって与えられた。それは民衆が書いたパピルスの複写で,それは,医学と錬金術上の言葉をいくつか含んだ,ギリシア語への転写である。そのことについてはルーベンス氏がすでに発表している〔『ライデン博物館のエジプト古文書』p.85〕。これからの報告の大部分は,ルーベンス氏とレーマンス氏の出版物から引用している。
(ベルトゥロ『錬金術の起源』p.77-78)




錬金論(断片集)
(Tractatus alchemicus (fragmenta))

(P. Leid. 10)



"t".1
ライデン・パピルス(Papurvs Leidensis)


1.1
 鉛の精錬(kavqarsiV)と硬化(sklhvrwsiV)
 これ〔鉛〕を熔解させ、割れた〔薄片状の〕明礬と銅の花(cavlkanqon)〔硫酸銅〕を粉末にして、ひとつにしてふりかけよ、そうすれば、硬化したものとなるであろう。

2.1
 錫の他の〔方法〕
 鉛と錫を白化させ、瀝青(pivssa)とアスファルトを精錬せよ、明礬、カッパドキア産の塩、マグネーシアがふりこまれると、硬くする。

3.1
 アセーモス(ajshvmoV)の混和のために投入される錫の精錬
 あらゆる〔夾雑物〕を除いた清浄な錫をとって、熔解せよ、そして冷えるままにせよ、そしてオリーブ油を塗って、浸したうえで再度熔解せよ。次いで、オリーブ油、アスファルト、塩をすり潰して、塗って、三度目の熔解をせよ、そうして熔解したら、きれいに洗ってから〔錫を〕保管せよ。というのは、〔錫は〕銀のように硬化したものであろうから。しかし、銀製品の代用として、天然に見られないような、銀の硬さを有するように制作したいのであれば、銀4に〔錫〕3を混合せよ、そうすれば銀製品のように思われるものが出来るであろう。

4.1
 錫の精錬
 湿った瀝青とアスファルトを一対一とって熔解させ、掻き交ぜよ。ある人たちは、乾燥ピッチ〔Dsc.I-97〕20#101〔ドラクマ〕、アスファルト12#101の〔割合で〕。

5.1
 アセーモスの製法
 錫12#101,水銀4#101,キオス島の土〔Dsc.V-174〕2#101。錫を熔解して、すり潰された土を追加投入せよ、次いで水銀を〔追加投入せよ〕、そうして鉄で掻き交ぜて、〔この合金を〕用いよ。

6.1
 アセーモスの倍化(divplwsiV)
 アセーモスの倍化は次のようにすると起こる。錆を除かれた銅40#101、アセーモス8#101、ボタンの錫(kassivteroV bouvlla)40#101。先ず、銅が熔解され、二度の加熱の後、錫が、次いでアセーモスが熔解され〕、次いで、両方が軟らかくなったら、何度か熔解しなおし、上述のこしらえ方によって冷却させよ。次いで、同じ処理法によって増してから、軽石で磨きなおせ。三倍化も同じ処理法、先に述べられたのと等しい配分法によっておこる。

7.1
 無尽蔵のマーザ(=AnevkleiptoV ma:za)注2)
 無尽蔵のマーザ(ajnevkleiptoV ma:za)は、次のようにしてこしらえ方される。もう一度、倍化と同じ処理によって、マーザ8#101から抽出したければ、砕いて、アセーモス4#101の等量の〔マーザ〕を熔解しなおし、3度熔解せよ、さらにもう一度、次いで冷やして、軽石粉(koufovliqon)の中に保管せよ。

8.1
 アセーモスの製法
 滑らかで軟らかい錫を取って、4度精錬せよ、そしてその4と、精錬された白い銅3と、アセーモス1を取って熔解せよ。そして熔解されると、何度も研磨し、望むものをこしらえ方せよ、最初に、術者たちさえ気づかないほどのアセーモスができよう。

9.1
 液状アセーモスの製法
 キプロス産の銅ムナ〔-〕#101、錫の紐〔?〕1ムナ、マグネーシア10#136〔スタテール〕#101〔10+1/2ドラクマ?〕、水銀8#101,ポーロス大理石〔Plin. HN36.132〕20。銅を熔解して、錫を追加投入し、搗き砕いた後マグネーシアを、次いでポーロス大理石を、その後水銀を〔加え〕、鉄で掻き交ぜ、型の中に空けよ。

10.1
 アセーモスの倍化
 キプロス産の銅を取り、錆を除き、アムモーンニア産の塩4#101,明礬4#101を等量加え、熔解して、等量のアセーモスを混ぜよ。

11.1
 アセーモスの製法
 鉛を、瀝青とアスファルトで注意深く精錬し、もちろん錫も〔精錬して〕、カラミン、密陀僧を、鉛と等量混ぜ、混和し硬化するまで掻き交ぜよ。自然のアセーモスのように用いよ。

12.1
 アセーモスの製法
 薄片の砕片を取って、酢と割れた白い明礬に浸し、7日間浸したまま放置し、そして時至って、キオス島の土8#101、サモス土8#101,カッパドキア産の塩1#101、割れた明礬1#101を、銅の1/4に熔解せよ。ajtravmentonを加え、混ぜて熔解せよ。

13.1
 混和(kravsiV)の作法
 ガラティア産の銅8#101、錫の紐12#101、マグネーシア6#101、水銀10#101、アセーモス5#101。調合のための合金の製法。銅1ムナを熔解して、ボタンの錫(kassivteroV bouvlla)2ムナを追加投入して、そういうふうにして制作せよ。

14.1
 金の着色(crw:siV)
 使用に適するよう金を着色すること。金の精錬から生ずるミシュ、塩、酢を、すべて混和し、上述の金を薬剤の入った容器に投入し、ぶちまけ、しばらく放置し、容器から引き上げて、石炭にかけて加熱せよ、そうしてもう一度これを、上述の薬剤の入った容器に投入し、これを何度も、使用に適するまで繰り返せ。

15.1
 金の増量(pleonasmovV)
 金をより多くすること。トラキア産ないしガラティア産の板状カラミンを取って、混合せよ。

16.1
 金の紛い物
 ミシュと、シノーペー産の〔赤土〕とを、金と等量。金が炉(kavminon)にかけられ、きらきらするようになったら、それぞれを振りかけ、出して冷えるにまかせよ、そうすれば金が2倍になる。

17.1
 アセーモスの製法
 錫10ムナ、キュプロス産の銅16、マグネーシアの土32/1〔?〕、水銀2スタテール。銅を熔解し、先ず錫を投じ、ついでマグネーシアを、次いで同じものら熔解して、白く美しいアセーモス8を割合に応じて。次いで、混合し、すでに冷えたら、最後に水銀をいっしょに熔解せよ。

18.1
 他の〔方法〕
 キュプロス産の銅4#136〔スタテール〕、サモスの土〔Dsc.V-173〕4#136、割れた〔薄片状の〕明礬4#136、普通の塩2#136、黒変した?アセーモス2#136、より美しくしたいなら4#136。銅を熔解し、サモスの土と割れた明礬をふりかけ、いっしょに搗き砕かれたら、混合するまで掻き交ぜ、それからアセーモス熔解して、これを〔以下、未訳〕

19.1
 他の〔方法〕
 プトレマイオス期のスタテール〔銀貨〕を取り、〔以下、未訳〕

20.1
 硬いアセーモスの灰吹法(i[asiV)
 硬いアセーモスが、純粋の金属にも純白にもなるべき法。ヒマ〔学名 Ricinus commnis。Dsc.IV-164〕の葉を取って、1日、水に浸せ、次いで、〔?〕熔解の前に水に浸せ、そして二度熔解し、炭酸ナトリウム(ajfronivtron)で拭い〔?〕、鋳造のために明礬を染料に投入して用いよ。効能を制御し、美しいからである。〔?〕

21.1
 他の〔方法〕
 あらゆる腐敗したアセーモスの救済。カナクソ、モルト(buvni)、野生のペーガノン〔ムクロジ目の植物。Dsc.III-53。ヘンルーダのことかも知れない〕を取って、酢に浸して、塩、アントラクスをも注げ。これらを炉(kavminon)にかけよ、たっぷりふくらませた上で、冷めるにまかせよ。

22.1
 銅の白化
 銅を白くして、等量のアセーモスに等量混ぜると、欠点のないものとなること。キプロス産の銅を取って熔解せよ、この1ムナに、鉄分を含んで気の抜けた鶏冠石2#101、割れた明礬5#101を入れ、熔解せよ。2度目に熔解するとき、ポントス産の蜜蝋4#101が投入される、そうでない場合は、加熱し凝固される。

23.1
 錫の硬化
 錫を硬くすること。割れた明礬と緑礬水を1つずつふりかけよ。

24.1
 金の塗布(katavcrisiV)
 金の塗布は、金色に光る金のもうひとつの精錬だということ。ミシュ4、明礬4、塩4を水といっしょにすり潰し、金に塗りこめて、泥にかためられた陶器の容器に入れて、前述の薬剤が消尽するまで、炉(kavminon)のかけよ。そして取り出して、このうえなく注意深く洗浄せよ。

25.1
 銀の精錬
 ひとがあらゆる銀を精錬し、光り輝かせること。銀1と、鉛の等量を取って、炉にかけて、鉛が消尽するまで溶融せよ、そうすれば、これはしばしば光り輝くまでになる。

26.1
 銀の着色
 銅製品を銀製品にすること。錫の紐2#101、水銀4#101、キオス島の土〔Dsc.V-174〕2#101、錫を熔解せよ、すり潰した土を、次いで水銀を投入、鉄で掻き交ぜ、粒の形につくりなおせ。

27.1
 金色に輝く銅の製法
 クミン〔Dsc.III-69〕をすり潰し、水を加え、いっしょに搗き砕いて3日間静置し、4日目にかきまぜて塗布せよ。お望みなら、孔雀石を混ぜ合わせるがよい、そうすれば金に見えるであろう。

28.1
 液状アセーモスの製法
 キプロス産の銅1、錫1、マグネーシア1、粉末にされた生のポーロス大理石〔?〕#101。先ず、銅が熔解され、次いで、錫が、次いで、マグネーシアが熔解され〕、次いで搗き砕かれたポーロス大理石が加えられ、鉄で掻き交ぜ、坩堝に渡される。

29.1
 アセーモスの製法
 錫1#109、ガラティア産の銅#109#101、銅をあらかじめ熔解し、次いで錫を鉄といっしょに掻き交ぜながら、乾燥ピッチ〔Dsc.I-97〕を、飽和状態に達するまで加えよ、次いで空けて、もう一度、瀝青と同様、割れた明礬を使って熔解せよ、そして空けよ。錫を最初に熔解しようとする場合、最初に指定された銅のやすり屑は、同じ明礬と同じ手引きに従う。

30.1
 金化合物(crusokovllon)のこしらえ方
 金化合物は次のようにしてこしらえ方される。キプロス産の銅4、アセーモス2、金1。熔解されるのは、先ず銅、次いでアセーモス、次いで金片。

31.1
 錫が紛いかどうかを判別すること
 これ〔錫〕を熔解し、パピルスを広げて、空けよ。〔パピルスが〕燃え尽きれば、紙は鉛を含んでいる。???

32.1
 金細工師の使う膠の製法。金細工師の使う膠を金片にするには、いかにしたらよいか
 金片2、銅1を粉末にして熔解せよ。照り輝くようにしたい場合は、銀少々をいっしょに熔解せよ。

33.1
 クリュソグラピア(Crusografiva)
 金文字を書くこと。水銀をとって、綺麗な容器に空け、それに金の薄片をいっしょに投入せよ。金片が水銀の中にいっしょに溶融しきったと思われたら、よくよく掻き交ぜよ、コムミの黍〔Dsc.II-119〕粒ぐらい小さいのをいっしょに投入、そうやって安定するにまかせ、金文字を書け。

34.1
 他の〔方法〕
 金を含有する密陀僧1、明礬2。

35.1
 黒いアセーモスを黒曜石(ojyianovV)のようにすること
 アセーモス2、鉛4、新しい陶器に入れ、3倍の火を通さぬ硫黄を追加投入、炉(kavminon)にかけて、熔解し、取り出して打て、そして好きなものをつくれ、つくりたい小像が延性があっても溶融していても、そのときもやすりをかけ、刻め。とにかく錆びにくい。

36.1
 アセーモスの製法
 有用な錫1を熔解し、乾燥ピッチ〔Dsc.I-97〕を錫の1/3をぶちこめ、そして掻き交ぜて、瀝青が、なくなるまで泡だつままにし、次いで、錫が冷めたら、もう一度熔解し、錫13#101に水1#101を追加投入し、掻き交ぜて、冷めるままにし、アセーモスのように働かせよ。

37.1
 銅製品が金製品に見えるようにする。そして、火によっても、〔試金〕石でこすっても、難癖をつけられず、とりわけ指輪を美しく見えるようにする
 そのこしらえ方は以下のごとくである。金と鉛の板を、〔金〕1に対して鉛2の割合で小麦粉のようにすり潰し、次いでコムミに混ぜて混ぜ合わせ、これを指輪にかぶせ、次いで加熱する。これを数回、金色になるまで繰り返す。すると、〔試金石に〕金の痕跡をつけるし、加熱されると、鉛は溶け出させるのに、金はそうではないと難癖をつけるのは難しい。

38.1
 クリュソグラピア(Crusografiva)
 金文字。サフラン、川の亀の胆汁。

39.1
 アセーモスの製法
 白くてこのうえなく滑らかな錫を取って、4度精錬せよ、次いでその4、綺麗な白い銅1/4、アセーモス1を取って熔解せよ。熔解したら、塩で何度も磨き、飲み物であれ、あなたによいと思われるかぎりのものであれ、好きなものをこしらえ方せよ。術知者たちさえ気づかないほどのアセーモスが初めにできるだろう。

40.1
 他の〔方法〕
 銀2、精錬された錫3、銅〔-〕#101を熔解せよ、次いで取り出して、研磨し、最初の銀製品のように供せよ。

41.1
 銅の塗擦(crivsiV)
 銅が銀色を持つようにしたいなら、銅を注意深く精錬し、水銀と白鉛を塗りこめよ、そうすれば、水銀そのものだけを塗りつけさせられる。

42.1
 金の審査(dokimasiva)
 金を精錬したければ、熔解しなおすか火にかけよ、そうして、精錬されたものなら、火にかけても同じ色を保ち、貨幣と等しく精錬されたものである。より白く見えれば、銀を含んでいる。よりぎざぎざして硬い場合は、銅と錫を、黒いが軟らかい場合は、鉛を〔含んでいる〕。

43.1
 銀の審査
 銀を熱するか、金のよう熔解して、白くぴかぴか光る場合は、精錬されたもので、滓をもたない。しかし黒く見える場合は、鉛を含む。硬くてオレンジ色(kirrovV)注3)に見える場合は、銅を含んでいる。

44.1
 クリュソグラピア(Crusografiva)
 金文字を書くこと。金細工師の使う膠で、好きな言葉を酢とともに書け。

45.1
 銅製品の硬化
 セウトリオン注4)を美しく煮立てて、銅製品や銀製品を硬化せよ。セウトリオンは水で煮立てられる。

46.1
 金色に輝く銅
 銅の色が金色に見えるようになること。クミンを水の中ですり潰し、3日間注意深く安定させ、4日目にたっぷり浸して塗りつけ、また何でも望むことを書きつけよ。塗りつけられたもの、あるいは、書かれたものは、等しい形相を有するからである。

47.1
 銀製品の硬化
 きついハルメーにつけた〔銀?〕を、メーリス産の羊毛で磨き、磨いた上で、甘い水を用いよ。

48.1
 銀の鍍金
 銀製、ないし、銅製の用具を、箔なしに鍍金すること。火色の硝石と、いっしょ熔解された塩を、水と混ぜ、上塗りせよ、そうすればできる。

49.1
 クリュソグラピア(Crusografiva)
 雄黄を、コムミ、水といっしょに搗き潰し、第二に篩にかけ、第三に書け。

50.1
 銀の鍍金
 ミシュと鶏冠石を辰砂といっしょにすり潰して、銀を塗りつけよ。

51.1
 金文字で書くこと(Crusografiva)
 金板を薄切りにして、コムミといっしょに搗き砕いて書きつけよ。

52.1
 湿った金のこしらえ方
 金の薄片を乳鉢に投入し、水銀をいっしょにすり潰せ、そうすればそのようになるであろう。

53.1
 金の着色
 銀を金にするには、どうすべきか。辰砂を明礬といっしょに搗き砕いて、白い酢を注ぎ、軟膏の濃さにし、何度も拭き取り、夜通し立つにまかせよ。〔?〕

54.1
 金の製法
 アセーモス1スタテール、ないし、キュプロス産の銅3〔スタテール〕を、金4スタテールといっしょに同時に熔解せよ。
 〔いいかえると、24カラットの金を19カラットまたは10カラットにせよということである。これは、たんにたとえば金と銅の合金とは考えず、金の質を犠牲にして量を増大させる処方と考えられたらしい。
 (テイラー『錬金術師:近代化学の創設者たち』p.33)〕

55.1
 他の〔方法〕
 銀を永遠に金にとどまらせること。水銀を取って、金の薄片を蜜蝋のようにせよ、また銀の用具を取って、これを明礬で磨け、また蜜蝋状の〔金〕から取って、これに艶出し剤を塗れ、これが凝固するにまかせよ。これを5度行え。これを、糠で艶出ししないため、綺麗な麻布で保持せよ、そして石炭の粉を取って、艶出しで艶出しし、コムミの用具のように用いよ。試験済みである。

56.1
 クリュソグラピア(Crusografiva)
 金を含有した雄黄20#101、水晶の削り屑4#136ないし卵の白味2#136、白いコムミ20#136、サフラン〔-〕、書いて、乾燥させ、歯で磨け。?

57.1
 アセーモスの製法
 アセーモスも、当の銅2ムナ、錫(kassitevros bouvlla)1ムナによってできる、前もって銅を熔解し、別の錫に、いわゆるクレータの軽石1ムナに半ムナを投入、掻き交ぜて、銀が熔解しなおされると同時に、クレータ産の〔〕も、散らされて、銀だけが後に残された後にも、冷やして、真実のとは異なったアセーモスとして使え、〔未訳〕

58.1
 他の〔方法〕
 無尽蔵のアセーモスは、次のようにしてこしらえ方される。美しいアセーモス1スタテールに、錆を除去した銅から2をぶつけ、2ないし3回熔解しなおせ。

59.1
 錫の白化
 錫を白くすること。明礬と硝石をいっしょに加熱して熔解せよ。

60.1
 アセーモスの書字(grafhv)
 緑礬水、イオス〔緑青〕、硫黄を、酢で練って、きつく記せ。

61.1
 クリュソグラピア(Crusografiva)
 ベニバナ(knh:koV)の花、白いコムミ、卵の白味を、ムラサキガイ〔の色〕になるまで混和し、カメの胆汁を目分量で混ぜ、顔料のように用いよ。また小牛の非常に苦い胆汁も肌色に役立つ。

62.1
 アセーモスの審査
 アセーモスが紛いかどうかを判別すること。熱いハルメーの中に置け。紛い物を含んでいると、黒くなる。

63.1
 錫の研磨
 石膏(guvyoV)を布切れにつけて研磨せよ。

64.1
 銀の研磨
 湿った明礬を使え。

65.1
 アセーモスの染色(katabafhv)
 辰砂1、割れた明礬1、キモロスの土1を海〔水〕に浸して使え。

66.1
 銅の軟化(mavlaxiV)
 加熱して鳥の糞の中に入れ、冷めたら打て。

67.1
 金の染色
 焙焼されたミシュ3、割れた明礬、クサノオ1ずつ。これらを、堕落していない小児の尿ですり潰し、火の用具(skeu:oV)〔?〕を塗って、冷水の中に浸けよ。

68.1
 クリュソグラピア(Crusografiva)
 審査に通った金の1/4を、金細工師の使う坩堝で熔解せよ。そして熔解したら、鉛1ケラティオンを与え、混合して、取り出して冷却し、試金石の乳鉢を取って、熔解されたものを同様に入れ、硝石1ケラティオンを加え、3日間、医療用小丸薬のように、きつい酢で注意深くいっしょに練れ。次いで、練りあがったら、割れた明礬1ケラティオンを混ぜ合わせ、書字したうえで磨きをかけよ。

69.1
 クリュソグラピア(Crusografiva)
 少量の金片を、水銀といっしょに乳鉢ですり潰し、そうやって墨汁のように書字にに用いよ。

70.1
 他の〔方法〕
 火に通さぬ硫黄〔〕リトラ、割れた明礬、コムミの〔リトラ〕、コムミを水で湿らせて。

71.1
 他の〔方法〕
 火に通さぬ硫黄〔〕リトラ、明礬〔リトラ〕、乾燥した樹皮の内側、そして樹皮、硫黄、粉にした明礬をよくすり潰し、注意深く混ぜてすり潰し、海水ブドウ酒〔Dsc.V-27〕に溶いて、書画家の墨のようにして用いよ。紙や皮(difqevra)に書け。

72.1
 他の〔方法〕
 金を使わぬクリュソグラピア(Crusografiva)。クサノオ〔Dsc.II-211〕1、綺麗な松ヤニ〔Dsc.I-92〕1、金に似た雄黄1 — これは割れたもの — 、綺麗なコムミ、カメの胆汁1、卵の湿〔?〕5、すべて乾燥したものの〔重量〕ホルケー〔=ドラクマ〕20#136、次いで、これらにキリキア産のサフラン4#136を加えよ。すると、紙や皮の上ばかりでなく、きらめく大理石の上にも、何かの美しいものを描いたり作画したりしても、金のようにする。

73.1
 鍍金(cruvswsiV)
 同じようにする鍍金。割れた明礬、緑礬水、金を含有する密陀僧、水銀、トラガンタ〔マメ科ゲンゲ属の植物。Dsc.III-23〕、ヤギの胆汁と等量をいっしょに練ったうえで、内側を取り出せ。???

74.1
 他の〔方法〕
 金属のミシュ3#136、金属の明礬3#136、クサノオ1#136、堕落していない子どもの尿を注ぎ入れ、膠状になるまですり潰し、染色せよ。

75.1
 他の〔方法〕
 クミン(kuvminon)を取って、練って、3日間、水に浸けたままにしておき、4日目に引き上げて、銅製品ないし望むものに塗りこめよ。しかし、3日間は蓋を閉めておくこと。

76.1
 クリュソグラピア(Crusografiva)
 金の薄片をコムミですり潰し、乾燥させた上で、書字家の墨のようにして使え。

77.1
 アルギュログラピア(ajrgurografiva)
 銀文字を書くこと。密陀僧4#136を鳩の糞と巣といっしょに練り、熱された硬筆で書け。

78.1
 アセーモスの染色
 辰砂、キモロスの土、湿った明礬の等量を海水で溶かして、加熱し、何度も染色せよ。

79.1
 銀の着色
 火によらなければ消えることもなくなる。孔雀石(crusokovlla)〔Dsc.V-104〕、白鉛、キオス島の土、水銀をいっしょに練って蜂蜜を垂らし、用具をあらかじめ硝石で拭った上で塗りこめよ。

80.1
 錫の硬化(sklhrasiva)
 これを熔解し、割れた明礬と緑礬水を混ぜて、1つにして、粉末にしてふりかけよ、そうすれば硬くなるであろう。

81.1
 アセーモスの製法
 有用な錫1ムナ、乾燥ピッチ〔Dsc.I-97〕13#136、アスファルト8#136を新しい壺(cuvtra)に入れて泥で覆って熔解せよ、次いで、あらかじめ冷やした上で、ザラメ状になった銅20#136と最初のアセーモス3#136と粉になったマグネーシア12#136。熔解して好きなものをつくれ。

82.1
 アイギュプトス人のアセーモスの製法
 サイス人ピメーナスはどうしたか。キュプロス産の銅の熔けたのを取って、酢と塩と明礬で洗浄せよ、次いで、洗浄した上で熔解せよ。その際、これらの20#136に、紛い物のまじっていない白鉛3#136と金を含有する密陀僧2#136を加える。白くなるであろう。次いで、最も柔らかくて非の打ち所のないアセーモス2を加えよ。???

83.1
 他の〔方法〕
 アセーモスの真の製法は、真実、アセーモスよりもすぐれたものとなる。山の銅(ojreivcalkoV)〔黄銅鉱〕をまるまる1取って、熔解するまで坩堝に入れ、アムモーン産ないしカッパドキア産の塩4#101をぶつけ、さらに熔解せよ、そして割れた明礬をまるまる、アイギュプトスの豆〔ハス(学名:Nelumbium speciosum)のこと。Dsc.II-128〕〔の大きさ〕を加え、さらに熔解せよ、そして、鶏冠石 — 金を含有しているのではなく、白くて腐敗したの — 1を加え、次いで、あらかじめキオス島の土で塗りこめられた別の坩堝に移し替えよ、次いで、熔解して、欠点のないものの1/3を加えて用いよ。

84.1
 他の〔方法〕
 錫12#101、水銀4#101、キオス島の土2#101を取り、錫を熔解せよ、粉末にされた土を投入せよ、次いで、水銀を。鉄で掻き交ぜよ、粒の形につくりなおせ。

85.1
 金の倍化
 金を、金の総量よりも重くすること。〔金の〕1/4〔の重さの〕カラミンをいっしょに熔解せよ、そうすれば〔金は〕重く、硬くなるであろう。
 〔カラミンは、銅、亜鉛、砒素などの卑金属からなる酸化物の不純な混合物で、銅の製錬所の煙道から得られる。この製法を実施すると、これらの酸化物をそれと混合する金属に熔錬することになり、質は落ちて、金の重さを増す。
 (テイラー『錬金術師:近代化学の創設者たち』p.34)〕

86.1
 他の〔方法〕
 金は、ミシュやシノーペー産の〔赤〕土による増加(au[xhsiV)で、等しい重さになる、 — 先ず、炉に投入され、それが熔解してきらきらすると、それぞれが割合に応じて追加投入される結果、2倍になる。

87.1
 他の〔方法〕
 硫黄水〔=神的な水〕の発見。アスベストス1ドラクメー、硫黄のあらかじめ粉末にされたもの等量を合わせて、きつい酸ないしは堕落していない者の尿の容器に保持せよ。送られた湿り気が血のように見えるまで焼け、おりを綺麗に漉したものを用いよ。

88.1
 アセーモスは次のようにして蒸留される
 薄片にされ、水銀を塗布され、薄片があらかじめ研磨されたときに、ピュリテース(purivthV)〔黄銅鉱〕が次のように処理されてふりかけられ、乾燥させられるかのように石炭の粉の上に置かれると、薄片の色が変化するのが観察される。すなわち、水銀が褪色し、薄片が蒸留され、この熔解に金1、銀4が混合され、これらが混合したとき、容器の金を含有した雄黄に加えよ、ピュリテース〔黄銅鉱〕、アムモーン産の塩、銅鉱石(calki:tiV)、クアノス(kuvanoV)〔Dsc.V-106〕なしに、硫黄水〔=神的な水〕によって搗き砕かれ、焙焼し、水銀をふりかける。

89.1
 アルカンナ(a[gcousa)〔Dsc.IV-23〕の定着
 羊の尿、あるいは、コムマリ(kovmmari)〔学名:Comarum palustre。これの根から採られる赤の染料〕、あるいは、ヒヨス(uJoskuavmoV)〔学名:Hyoscyamus niger。Dsc.IV-69〕は、55もの点において等しい。

90.1
 アルカンナ〔Dsc.IV-23〕の溶解(a[nesiV)
 アルカンナが溶解されるのは、松かさ酒〔Dsc.II-150〕によって、クルミ〔?Dsc.I-178〕の実によって、アンドラクネー(ajndravcnh)〔学名:Portulaca oleracea。Dsc.II-150〕によって、セウトリオン(seutlivon)〔Cf. Dsc.II-149〕の液汁によって、焼き酒石(faivklh)〔Lat. faecula〕によって、ラクダの尿によって、シトロンの木の内側によってである。

91.1
 アルカンナの定着。
 コテュレードーン〔ベンケイソウ科キリンソウ属の植物。Dsc.IV-92〕と、明礬を等量混ぜて、搗き砕き、アルカンナを加えよ。

92.1
 収斂剤(Favrmaka stuptikav)
 黒色染料(melanthriva)〔Dsc.V-118〕、焼かれた緑礬水、明礬、銅鉱石、辰砂、アスベストス、柘榴の樹皮〔Dsc.I-153〕、茨の小角(ajkavnqhV keravtia)、アロエー(alovh)〔Dsc.III-25〕入りの尿、これらは染色に役立つようである。

93.1
 紫(porfuvra)の製法
 プリュギア石〔Dsc.V-141〕を砕き、粉末にして煮沸し、羊毛を浸して、冷めるまで放置。次いで、海藻1ムナの入った容器に入れ、煮沸し、羊毛を投入、冷めるにまかせて、海〔水〕で濯げ、ところで聞いたところでは、前濯ぎ(provklusiV)としては、プリュギア人も砕く前に、紫色になるまで焼くという。

94.1
 紫の染色(bafhv)
 アスベストスを水といっしょに浴びせ、1夜、安定するままにし、祓いきよめた上で(ajposirwvsaV)〔?〕1日、羊毛を湿の中に置き、取り上げて乾燥させよ、そしてアルカンナを浴びせ、酢で煮よ、そしてそこに羊毛を加えよ、そうすれば、紫の染まった〔羊毛〕があなたによって上げられるだろう。さらにまた、水と硝石によって煮られて、紫色を溶融させる。次いで、これを乾燥させて、その場に浴びせかけよ。海藻を水で煮よ、そして〔染料が〕尽きたら、紫色になるよう、緑礬水を少量、目分量で加えよ。それから、羊毛を浸けよ、そうすればできる。緑礬水を入れすぎると、黒っぽくなる。

95.1
 他の〔方法〕
 クルミ〔Dsc.I-178, 179〕をすり潰し、これといっしょに美しいアルカンナをも〔すり潰し〕、次いでこれを実行したら、きつい酢を加えよ、そしてもう一度すり潰せ、ここに柘榴の皮を入れ、3日間放置せよ、そして3日後、ここに羊毛を入れよ、そうすれば冷染(yucrobafhvV)されたものとなろう。しかしながら、紫色の植物染料(paiderwvtinon)は紫色にし、クルミの代わりに少量の〔マケドニアの〕ベレニケー産の硝石といっしょに同じ作用をする、と言われている。

96.1
 他の仕方
 羊毛をサボンソウ〔Dsc.II-193〕で晒せ、割れた明礬と、没食子(khkivV)〔Dsc.I-146〕の外側〔殻〕を用意せよ。すり潰して、明礬といっしょに、壺に入れよ、そして加えて、少しの刻限、そのままにせよ、そして取り上げて、乾燥するにまかせよ。この手引きがあなたによってあらかじめ行われていること。酒石をすり潰して、容器に入れ、水を加え、かきまわして、安定するにまかせよ、次いで綺麗な水を別の容器に入れて、祓いきよめた上で(ajposirwvsaV)〔?〕用意せよ。さて、アルカンナを取って、酒石の水に混ぜよ、注意深く濃くされて、砂状になるまで。それから、アルカンナの指定された水から、手ですり潰しながら、容器に加えよ。次いで、膠状になったら、これを小壺に入れて、アルカンナの残りの水をさらに加えよ、そして、これを温かくするまで放置せよ、それから羊毛を浸けて、わずかな刻限静置せよ、そうすれば紫色がとどまっているのを見いだすであろう。

97.1
 他の仕方
 ラオディキア産のアルカンナを取って剥け、そしてその皮を乳鉢に取って、スティムミ〔=硫化アンチモン〕のように粉末にすり潰せ、そして水っぽい水蜜を加えて、もう一度すり潰せ、次いで、これがすり潰されたら、容器に入れ替え、煮沸せよ。さて、温かくなったと見たら、羊毛を入れ、寝かせよ。ところで羊毛は、没食子で晒され、媒染されたものでなくてはならない。それからこれを取って、アスベストスの水に入れ、水分を充分吸収させる。次いで、あまり海〔水〕に浸けすぎないよう取り上げて、冷まして、濡れたままなのをもう一度アルカンナに入れて、寝かせよ。

98.1
 他の仕方
 アルカンナから上方の血を取って、未熟なブドウの実の搾り汁〔?〕をオーブンで焼いて、小さな硫酸銅といっしょにすり潰し、その血に混ぜて、煮た上で、紫色を浴びせよ。

99.1
 青色の染料の代用(=AntiglaukismovV)
 青色にする代わりに、熔解した鉄の浮き滓を取って、石鹸のようになるまで、注意深く砕け、そして、硬くなるまで酢で煮よ、そしてあらかじめ没食子で晒され、媒染された羊毛を浸けよ、そうすればそれが紫色になっているのを見出すであろう、あなたが持っている染料を使って、そういうふうにして染めるがよい。

2009.09.07. 訳了。

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