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ギリシア語錬金術文献集成

TLG1016

マゴス僧の錬金術師オスタネース

001
ペタシオスに宛てて:
神聖にして神的な術知に関して



[人物]

 オスタネースはデーモクリトスの師匠,デーモクリトスに秘伝をさずけた人とみなされている。オスタネースとデーモクリトスの2人の名は,わが国立図書館の写本におけると同じように,プリニウス,ライデンのパピルスにも関連があるものとされている。彼は注目するに値する。

 メディア人であり魔術師であるオスタネースには,実際に奇妙な伝説が結びつけられている。へロドトスは,クセルクセスの妻アメストリスの父であるオスタネースという名のペルシア人のことについて話している。このペルシア人は,王子に従ってギリシアへの遠征に参加したのである。後,キリスト紀元の初期,この人に,魔術師の伝統が結びつけられた。プリニウスは,クセルクセスとともにギリシアにきたこのオスタネースを,デーモクリトスに科学を教えた魔術師であったと語っている〔L, XXX, II章〕。

 2番目のオスタネースは,アレキサンドリアの時代に生存していたらしい。このオスタネースの名前は,魔術師に特有な一種の名称として使われていた。この名前は,キリスト信者であり,同時に異教徒であった2,3世紀の著作家たちによって,魔術師の名として,しばしばよばれている。オリゲネスは,この魔術師オスタネースについて語り,テルトゥリアヌスは彼を引用している〔De anima, L, VII章〕。同じように,聖キプリアヌス〔de Idolorum vanitate〕,アルノビウス〔Adversus gentes, I, 1.〕,ミヌキウス・フェリックス,タティアヌス〔Oratio contra Groecos〕,聖アウグスチヌス〔Conter les Donatistes〕などを引証している。Theologoumena arithmeticae〔算術神法〕の著者ゲラサのニコマクスは,ゾロアスターとならべて,バビロニアのオスタネースの名をあげている。したがって,彼は権威あるたいへん有名な著作家であったといえる。彼をデーモクリトスに比較しているライデンのパピルスに,彼が何度も言及されるのをみても,驚くにはあたらない。たとえば,ルーペンスによって書かれた典礼儀式書75番の中によくみられる。最も古い錬金術師たちは,まさしく,不可思議な科学の師匠,魔術師オスタネースと,デーモクリトスの伝統に関係するのである。パノボリス人のゾーシモス,シュネシオス,オリュンピオドーロスのような最も古い錬金術師たちにはまったく歴史的な性格を与えることが許されている。たとえばシュネシオス〔写本2327, 31葉〕は,8世紀の著作家,一侍僧が一部複写している一節で,哲学者デーモクリトスはエジプトへの旅の間,すべてのエジプトの僧とともにメンフィスの寺で偉大なオスタネースによって秘伝をさずけられた,と報告している。

 こうして4世紀の末以来われわれは,事実か,ありうべき話としてか知らないが,デーモクリトスの秘伝を受けたことと不可思議な科学についての知識とに結びつけられた彼のエジプトへの旅の思い出を見出すのである。

 シュネシオスは,その中でさらにデーモクリトスが,金,銀,石,紫の染色について4冊の本を書いたとつけ加えている。彼はまた,オスタネースがこれに関係した最初の人であるともいっている。というのは,オスタネースがはじめて公理《自然は自然の中で楽しみ,自然は自然を支配し,自然が自然にうちかつ,など》を書きしるしているからである。これもまたオスタネースの弟子がいっていることであるが,オスタネースは,エジプト人の方法,すなわち注入と蒸発の工程を使わなかったのである。彼はペルシア人の習慣に従い,外側から物質を染色し,火でおおった。この最後の節は,聖なるわざにおいてエジプトで行なわれた方法と,ペルシア,すなわちカルデアとバビロニアからきたであろう方法との間にあるなんらかの対立を示している。

 ゾーシモスはオスタネースを最も古い作家として引証し〔写本2327, 169葉〕,鷲についての説明を語っている〔写本2327, 173葉〕。これらの古い著作家たちの謎の言葉の概念を得るために,いくつかの文章を写してみよう。たとえば,ゾーシモスによれば,オスタネースは《ナイルの流れに向かっていけ。そこに一つの石がある。石は精神をもっている。それをとって二つに割れ。そして手の中に入れ,そこから心臓を取りだせ。なぜなら,その魂は,その心臓の中にあるから》といっている〔写本2327, 169, 170葉〕。この特異な暗示は,賢者の石と賢者の水銀に関係するようである。

 オスタネースの作であるとされた典拠不明の書,経典外がある。そこには奇蹟的な特性をそなえた聖水についての報告がしるされている。

 《聖水はすべての病気をなおす。聖水により,めくらは見え,耳の聞こえないものは聞こえ,口がきけないものは話すようになる。ここに聖水の製法がある。この水は死者を生き返らせ,生きているものを殺す。この水は闇を明るくし,あかりを暗くする,など》〔写本2249, 75葉V〕

 中世において,たいへん大きな役割を果たした万能薬が,このようにして錬金術のギリシア起源から引き続いて現れている。万能薬は,その源はカルデア,すなわちバビロニアであろう。
 (ベルトゥロ『錬金術の起源』p.154-157)

 ペタシオスはエジプトの錬金術師(ベルトゥロ)。デーモクリトスの偽作『神聖なる技術について』の中に名前を挙げられている。「友よ、制作者たち(錬金術師たち)の名前も知りたまえ。プラトーン、……、テオプラストス、アルケラオス、ペタシオス……」。



[底本]
TLG 1016
OSTANES Magus Alchem.
vel Pseudo-Ostanes
(A.D. 1-2)
1 1
1016 001
=Ostavnou filosovfou pro;V Peravsion peri; th:V iJera:V tauvthV kai;
qeivaV tevcnhV
(e cod. Venet. Marc. 299, fol. 66r), ed. M. Berthelot
and C.É. Ruelle, Collection des anciens alchimistes grecs, vol.
5
2. Paris: Steinheil, 1888 (repr. London: Holland Press, 1963): 261-262.
(Cod: 292: Alchem., Epist.)





哲学者オスタネースからペタシオスに:神聖にして神的な術知に関して
(=Ostavnou filosovfou pro;V Peravsion peri; th:V iJera:V tauvthV kai; qeivaV tevcnhV)




2.261."9t"
trismegistus.jpg哲学者オスタネースからペタシオスに
2.261."10t"
神聖にして神的な術知に関して

2.261.11
 自然の不易性(a[trepton)は、わずかの水を歓ぶ。なぜなら、永続的な本質(uJpostavsiV)の諸々の混合(kravseiV)が、それ〔水〕を歓ぶからである。というのは、この慕わしい神的な水によって、あらゆる病が治療されるからである。〔すなわち〕盲人たちの眼は見えるようになり、聾者たちの耳は聞こえるようになり、どもりたちははっきりとしゃべるようになる。

 神的な水にこのような備え(skeuhv)があることは当然である。オリュムポス山かリバノス山かタウロス山の山中で、8月を過ごすオーク蛇の卵を取り、新鮮なうちに、1リトラをガラスの容器にあけよ。硫黄水そのものを加え、とにかく加熱せよ。生の硫黄を天に引き上げること4度、紫色そのものの油状になるまで〔加熱せよ〕。石綿13#106〔ウンキア〕,血をもつ二枚貝9#106,黄金の翼をもったタカの卵――リバノス山の杉の近辺で見つけられる――5#106を取れ。これら、石綿と二枚貝と卵という種類を、石製の乳鉢の中ですりつぶし、すべてがことごとく一様になるようにする。その後で、7度列福(ejxwraivzein)して、ガラスの蒸溜器に入れよ。第二の調合物の後で、第一の調合物を取り出し、3日間水簸せよ。完了したら、ことごとく水簸されたものをすべてガラスの容器に加えよ。そして、海水の中に1日埋葬(qavptein)せよ。そうすれば、神的な水の完成である。

 この水は、死んだものらをよみがえらせ、生きているものらを死体となし、暗くされたものらを光らせ、光るものらを暗くさせ、海水をとらえ、火を解放する。しかも、わずかの滴りによって、鉛のような〔卑金属〕から黄金のような〔貴金属〕をつくりだす――不可視で万能の力能(dunavmiV)と知恵(sofiva)とを用いるものが共働し、ありとあらゆるものらが非有から有へと導かれ、誕生し、形成されるよう命じるときに。力ある業こそがとどまらねばならないかた――唯一の、普遍的にして真実な「神」そのものに、わたしたちの生命と救いの生命支配者、イエースゥスのクリストスとともに、叡智的にして指導者である「聖霊」とともに、栄光(dovxa)と崇高さ(megaloprevpeia)が、終わりなき永遠の永遠にいたるまでありますように。アメーン。

2006.06.13. 訳了。

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