マゴス僧の錬金術師オスタネース
ギリシア語錬金術文献集成
TLG1286
ヘルメース全集
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[人物]
へルメース・トリスメギストスは、エジプトの主要神トート Thot と同一視される人物で、宗教、哲学、占星術、呪術、錬金術その他の偽科学にわたる数百の書物の著者だとみなされている。この名は、「三重に最高なるへルメス」という意味で、この「三重」の解釈には、いろいろな説が唱えられてきた。
たとえば、三世紀または四世紀のゾーシモス Zosimos は、これらを「寒」と「温」と「流動」との状態だとし、宇宙統一はこれらが基になるものと考えた。四世紀のラクタンティウス Lactantius は、ヘルメースがウラヌス Uranus、サトゥルヌスSaturnus、メルクリウス Mercurius の名に恥じぬ後裔を示すものだとしている。
プリニウス Plinius (XXX. 1)は、宗教と医療と天文という呪術の三分野を示すものとして述べでいる。
さらに後世の回教圏の錬金術では、ヘルメース・トリスメギストスを三人物が合一したものとみなしている。すなわち、第一のへルメースは、大洪水以前に生きていて、アダムの孫であった。そして天地万般の知識について書き、エジプトのピラミッドを建造し、科学と数学の最初の保護者であった。第二のへルメースは、バビロンの住民で、大洪氷以後に生きていた。科学、医学、哲学、数学に長じ、ピュタゴラス Pythagoras の師であった。第三のヘルメースはエジプトに住み、、毒性動物や錬金術について著作し、また都市の設計家でもあった。なお、今日、錬金術のことを Hermetic Art, Hermetische Kunst, Science Hermétique と呼ばれるのは、むろんこのへルメースに由来している。
いうまでもなく、これらの開祖の存在や、その業績をかれらに帰する乙とができるかどうかは、きわめてあやしい。
(平田寛「古代の技術:錬金術の成立をめぐって」)
『ヘルメース全集』については、「ギリシア語ヘルメス文書」集成の「ヘルメス文書について」を見よ。
ここに紛れこんだ錬金術のテキストは、
錬金術断片集013「ヘルメース・トリスメギストスの器具」
2014.11...
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