モイロー(Moirwv)

 前4世紀の末から前3世紀初めにかけてのビュザンティオンの女流詩人。わずか数編が伝存するのみ――六脚韻詩『ムネーモシュネー』からのわずか10行、2篇のエピグラム、残酷と激情の物語『アライ』〔Arai「呪い」の意〕の要約、『ポセイドンに寄せる』への言及――。
 彼女の息子ホメロスは、7悲劇作家、いわゆる「アレクサンドリア・プレイアデス」のひとり。




[底本]

 TLG 0220
MOERO Epic.
(4-3 B.C.: Byzantia)
1 1
0220 001
Fragmenta, ed. J.U. Powell, Collectanea Alexandrina. Oxford:
Clarendon Press, 1925 (repr. 1970): 21-23.
frr. 1-3 + tituli.
5
(Q: 129: Epic., Epigr.)
2 1
0220 002
Epigrammata, AG 6.119, 189.
Dup. 0220 001 (frr. 2-3).
(Q: 53: Epigr.)

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t1
ムネーモシュネー
断片1
まこと、大いなるゼウスはクレーテーに育ったけれど、まこと、その浄福のひとなるを
知るものなどいなかった。けれど、彼は至れり尽くせりの世話をうけて長じた。
まこと、彼を育てたのは、くうくう鳴く鳥〔鳩〕、いとも尊き洞窟に
オーケアノスの流れのもとから神餅(ambrosie)を運び来て。
また神酒(nektar)は、大いなる鷲がつねに岩場から汲み
智謀のゼウスに飲み物として嘴によって運んだのだ。
この〔飲み物〕によってこそ、はるかに轟くゼウスは父クロノスに勝ったので、
〔鷲を〕不死として、天界に住まわせたもうた。
同じくはまた、くうくう鳴く鳩たちにも名誉を授けたまい、
さればこそ、夏・冬を汝らに告げるものとなっている。

t2-3
エレゲイア詩集

断片2〔『ギリシア詞華集』第6巻119〕
アプロディタ〔アプロディーテー〕の黄金なす屋根の下にやすむがよい、汝
葡萄の房よ、ディオニュソスのしずくに満たされて、
もはや汝の母はいとしの枝をさしのべることもなく
〔汝の〕頭のうえに神酒のごとき〔かぐわしい〕葉を茂らせるのみ。

断片3〔『ギリシア詞華集』第6巻189〕
アニグリア〔?〕の裔なるニュンペーたちよ、河の娘たちよ、この深さを
薔薇の足もて踏むをつねとした神々しきものたちよ、
クレオーニュモスに感謝し、かつ、助けるがよい、――この美しき
木像を、汝らのために、神々しき娘たちよ、松材を使って建てしは彼なれば。

断片4
Arai』〔題名のみ。題名は悲嘆・呪詛の発語〕

断片5
ポセイドーンに寄せる讃歌』〔題名のみ〕

ほかに2篇(『エレゲイア詩集』に同じ)
back.gifアニュテー