ノッシス(NossivV)(盛時、前300年頃)

 南伊のエピゼピュリオイ・ロクロイ出身の女流詩人で、メレアグロス(盛時、前100年頃)ギリシア詞華集『花冠』に採録された12編の詩の作者。多くは奉納物と技芸をうたっている。彼女は自らをサッポーと比較し(AG. VII_718)、V_170 では、恋愛詩を書いたことを示唆している。
 (OCD)




[底本]

W. R. Paton, Greek Anthology I, Loeb Classical, Harvard, 1992
W. R. Paton, Greek Anthology II, Loeb Classical, Harvard, 1993

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AG. V_170
「恋よりも甘きものはなし、いかな栄華も、みな
次善。わたしは蜜さえ口から吐き出した」
かく言うはノッシス。なれど、キュプリス〔=アプロディティー〕が愛したまわぬ者、
その者は、薔薇の花がいかなるものかも知らず。

AG.VI_132
ブレッティアの男たちが武運つたなき両肩から棄てた武具がこれ、
戦い巧者のロクロイ人たちの手に撃たれて。
武具は彼らの有徳を讃える――神々の総帥のもとに横たわり、
自分たちの残した臆病者の  もせず。

AG. VI._265
とうときヘーラさま、しばしば天界より降りたまいて、
ラキニオン神殿に没薬をみそなわす、
麻布の衣裳をお受け取りください、――あなたのために愛しき娘
ノッシスとともに、クレオカの娘テウピリスが織りしもの。

AG. VI._273
アルテミスよ、ダロス〔デーロス〕を領したまう恋しきオルテュギアよ、
聖なる弓はカリスたちの膝に置きたまいて、
イノーポスの泉に御身を清めたまい、ロクロイにいでましたまえ
アルケティスを陣痛の苦しみより救い出したまえ。

AG. VI_275
おもうに、アプロディタ〔アプロディーテー〕は長髪をよろこびたもうゆえ
この髪抑えを奉納物としてサミュタより受けたもうらん。
巧みを凝らしたものゆえ、また、神酒よりも甘き香りがするゆえ、
神酒は、かの女神も美しきアドーン〔アドニス〕に油ぬりしもの。

AG. VI_353
これなるはメリンナその女(ひと)。ごらんなさい、何と優しげな顔が
わたしたちを優しく見やっているように思われることでしょう。
何と娘は母親にあらゆる点で似ていることでしょう。
子が親に似るのって、美しいですね。

AG. VI_354
ここからも、サバイティスの肖像が有名なことが知れる、
その器量よさと気高さのゆえに。
ごらんなさい、彼女のつつましを。すぐにも彼女の優しさを
眼になさることを望みます。ばんざい、女に幸あれ!

AG. VII_414
ほんにからからと笑って通り過ぎなされ、愛想のよい
言葉ひとつもわしにかけて。わしはシュラクウサイ人リントーン、
ムーサらのしがない歌鶯のひとり。とはいえ、悲劇的
茶番劇によって、独自のキヅタの花冠を摘みとりしなり。

AG. VII_718
おお、旅人よ、御身もし、舞踏場も麗しきミュティラナ〔ミュティレーネー〕に航(ゆ)きたもうなら、
美神らの花サッポーを燃えあがらせしかの地に
伝えてよ、――ロクロイの地もまたムーサらに愛でられ、彼女にも
等しき女を生みぬ、してその名はノッシスと。お行きなさい。

AG. IX_332
神殿に行って、アプロディタの木像を
見ましょう、どれほど黄金で巧みにこしらえられているか。
これをこしらえたはポリュアルキス、すこぶる多くの持ち物を、
自らの身体の輝きから取り出して。

AG. IX_604
この画板にあるは、タウマテラの肖像。まなざし優しい彼女の
素敵さ、あでやかさがよく描かれている。
家番の子犬も、あなたを眼にしたら、じゃれつくことであろう、
わが家の女主人を見つけたと思って。

AG. IX_605
カッローは、金髪のアプロディタの社に
どこもかしこも等しく描かれた肖像画を奉納した。
何と優雅に立っていることか。優美さの咲きにおう大きさをご覧なさい。
ご機嫌よう。人生にいかな欠点もないのだから。

forward.GIFメリンノー