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back.gif鉱石誌

オルペウス作品集

リティカ・ケーリュグマタ



[底本]
TLG 0579
ORPHICA 012
Lithica kerygmata
Nat. Hist.
R. Halleux and J. Schamp, Les lapidaires grecs. Paris: Les Belles Lettres, 1985: 146-177.



t.

オルペウスの『リティカ・ケーリュグマタ』

(1.)
万人に周知のリトス・クリュスタッロス(LivqoV kruvstalloV)〔水晶石〕。これがそう名づけられる所以は、水晶のような透明な外観からである。自然本性としてもそのような活動を有する。もしひとがこれを乾燥した松明、あるいは、他にも何か出火しやすい材料や、すぐに火のつくものに対して、これをその上にかざせば、太陽が反対側からそれを光線で眩くさせ、先ず初めにこれ〔太陽〕がほんの少しの光線を手前にある材料に送り出す。次いで、煙さえ起こし、その後でおびただしい炎さえ起こす。そうして古のヘッラス人たちも、これを聖なる火とも名付けた。しかしもっと驚くべきことは、炎の原因となった当の石を、ひとが発火した材料から取り除いても、初めのとおり冷たいのを見出すことだ。謂われているところでは、腎臓とも結びついていて、それを病む者を治癒させるという。〔Plin. HN 37.23〕

(2.)
リトス・ガラクティテース石(LivqoV galaktivthV)〔チョーク、Dsc.V-150〕、これを古の一部の人たちも、ある人たちは無主石(ajnaktivthV)、ある人たちは忘却石(lhvqaioV)と異称したが、ガラクティテース〔母乳石〕と〔呼んだのは〕、こすられると母乳のように体液を流れ出させるからであり、無主石とか忘却石と〔呼んだのは〕、ひとがこれを身につけて親らの主人たちに近づいて交わっても、彼らが好意を持ち、自分の度重なる諸悪も失念しているのを見出すからである。ヘッラス人たちも、神々の犠牲に接近する際には、これによって神性を宥めるべく、これを身につけた。さらに別の一種の働きをも有している。〔つまり〕山羊たちとか羊たちがしばしば消えたり、乳が涸れたとき、ひとがこれをこすって滑らかにし、塩と混ぜてその群に入念にふりかけると、それら〔家畜〕の乳がすらすらと出て、母親たちは元気に跳びはね、自分たちの生子たちに乳房を含ませるようになる。
 さらに〔人間の〕女たちにとっても、磨り潰して飲用されると、母乳で育てるために同じ効能を有すると言われる。しかのみならず、花嫁たちの頸飾りとして結びつけられると、あらゆる嫉妬を防ぎ、その花嫁を無病、悪巧みを受けないよう守り通し、また、これを身につけた者を王たちは恥じ入り、民衆も裁判官たちも支配者たちも、たとえ余所余所しく族民であろうとも、〔恥じ入り〕、万人にとって端的に快適と思われる、と謂われる。ところで、色は灰色だが、磨り潰されて、水といっしょに塗布されると、眼の出来物や流出にも効く。

(3.)
樹のアカテースとも〔言われる〕リトス・エウペタロス(LivqoV eujpevtaloV)。かく名づけられる所以は、その中に、あたかも連続する枝を持った樹木の葉のように透けて見えるからである。自身の中に透けて見える帯を有する。さらに外側には蜂蜜の一部と枝の別の形をも有するが、内側には白みがかった小木が透けて見える。扱う者たちには、事態がうまくゆく。というのは、手にした者を説得的にして創意に富んだ者となすからである。また、畑に種蒔く者たちにも助けとなる。これを手や喉に巻きつける。これを持った種蒔く人は、幾度も耕せるであろう。また、簡単に言えば、この石は大いなる益を持っている。身につけた者にさらなる善通を与える。この石には、左手に財布、右手に書物、足許には、祈る人のように両手を差し伸べたマントヒヒを連れた成人のヘルメースを刻むがよい。

(4.)
リトス・エラポケラティテース(LivqoV ejlafokerativthV)〔鹿角石〕。これもまた見てくれにちなんで名づけられた。というのは、鹿の角に似ていて、角なのか石なのか、これを手に持って、反射や硬さから真実を認識するまでは、見ても判別は容易でないからである。これの活動は驚嘆すべきものだと謂われる。例えば、いいつたえでは、これを磨り潰して、オリーヴ油と混ぜ、禿げ頭に塗れ、ふさふさした髪が新しく芽生え、人は禿げ頭から長髪となり現れるであろう。いや、新しい花嫁たちにも、お互いに対する恋心を植えこみ、相思相愛となり、老齢まで彼らに思慕を持ち続けさせる。

(5.)
ザムピラピスと呼ばれる石(LivqoV oJ kalouvmenoV zampivlapiV)、これはエウプラトス河の土手に生じ、その結果、その河の流れに曝かれて現れるものである。だが、葡萄樹に結びつけられると、これを葡萄房のいっぱいついた豊作とする。

(6.)
リトス・イアスピス(LivqoV i[aspiV)〔碧玉Dsc.V-160〕、誰にとっても明々白々な石。これも妊婦たちの安産に効能があルと謂われる。しかのみならず、ヘッラス人たちの言によれば、干魃から彼女たちに雨を降らせるという。機能障害を防ぐこともできるとは、多衆の証言どおりである。〔Pli. HN 37.115〕

(7.)
リュクニテースとも言われるリトス・リュクニス(LivqoV luvxniV)。これこそは、最も益がある石と言われる。というのも、霰や、畑に生じるかぎりのあらゆる弊害を防ぐからである。しかのみならず、水晶のように、これもまた火なくして火を点ける。さらに、相反する効能も有すると〔いわれる〕。というのは、釜が煮え立っているとき、その中に投入されると、それをぬるくするが、逆に、冷水の時は、同じものをたちまち沸騰し煮え返らせる〔といわれる〕からである。〔Plin. HN 37.103〕

(8.)
リトス・トパジオス(LivqoV topavzioV)、これはトパゾスとも呼ばれる。これが貴重にして高価なのは、めったに見つからないからである。しかしインド地方には産する。水晶に似て、水晶のように透明である。しかしながらトパジオス石は緑色で、フダンソウ〔Dsc.II-149〕の色にはあまり似ておらず、硬く、緻密で、透明。これが雄石であって、雌石のほうはより軽く、光線も、雄石に比して太陽のより快適な光線を反射する。総じて、雄石や雌石にはすべてにわたって一つの観点がある。つまり、男たちには男の護符を、女たちには女のそれを与えなければならないということである。されば、眼前にある石をとって、これにポセイドーン — 馬の牽く戦車に乗り、左手に戦車の手綱を握り、右手に麦の穂を〔握って〕いるの — を彫りつけ、アプロディーテーもその上に立たしめよ。これが完成され、身につけられれば、所持する者たちに数多の愛餐をまといつかせ、数多の善の与え手となる。さらにまた海においても、身につけた者を危険なき者として救い通し、金回りよく大いなる利得をもまといつかせる。しかのみならず、眼を病んでも、あらゆる眼病を治療する。他には、これについて語るに足ることは何も述べられていない。しかし、護符としては最強である。そして、水占いにとっても最上に有効である。ひとあって海の葡萄樹の酒を飲み、占いに向かう場合、この石を砥石の上で磨り潰して、占われる者に水といっしょに与えよ。そして彼の喉にこの石を当てよ、そうすれば癒やされるであろう。また、身につけた者を仲間にとって優美にさせ、言説においてより雄弁となす。〔Plin. HN 37.80〕

(9.)
リトス・オプシアーノス(LivqoV ojyianovV)〔黒曜石〕。これは、古の人たちが将来のことをこれによって予見したり占ったりしたことにちなんでその呼称を採っている。というのは、これを磨り潰し、同時にまた芳香が最高の没薬と混ぜて、その動きと脈動に合わせて、脈動によってのように火にふりかけてる人たちと、将来のことの肝臓占い師たちは、目的を達するだろう。またこれは押しつけられると神経の難儀な症状も癒し、鱗が拭い去れると言われる。〔Plin. HN 36.196, 37.177〕

(10.)
太陽の〔黄金の髪〕とも称されるリトス・クリュソトリクス(LivqoV xrusovqric)。これには2種類あり、ひとつは水晶に似ている — ただし、一種の光線とか毛髪のようなものがそれに植えこまれているかぎりは除く —、もうひとつは全体的にクリュソリトスに似ている — ただし、毛髪が一種光線のように照っている場合は除く。だからまた、或る人たちは毛髪にちなんでそれらを黄金の毛髪と名づけ、或る人たちは太陽の光線にちなんで太陽の石と〔名づけた〕。さて、これらが身につけられると、その人たちをよりふさわしく尊敬される者、万人から尊敬に値する者とさせる、と謂われる。〔Cf. Plin. HN 37.181.〕

(11.)
リトス・マグネース(LivqoV mavgnhV)〔天然磁石〕は、マグネーティスとも言われるもので、その自然と活動はそれぞれ、空気を通して鉄を、あたかも自分を恋するかのように自分の方へと引きつけ、自分の方へひったくるところに見ることができる。これは、他人の夫に対して清らかな女と姦婦とを識別する力を有すると謂われる。例えば、ひとがこれをこっそり敷物の下に置いておけば、清らかで夫を愛する女は、この石の一種の力で自然に夢にとらわれ、夫に向かって両手を広げ、抱きしめる。しかし、他方の女が眠りに落ちると、汚れた異様な熱情にとりつかれて寝床から叩き出され、転落する。それどころか、二人の兄弟がこれを身につければ、あらゆる喧嘩と愛勝からみずからを解放し、同心させる。また、民を魅了し説得する際も、最も重要なものとして携行ないし胸につけられる。他にもすこぶる数多くの力を有している。また女たちを誘惑するにも、著名な男たちを集めるにも有用であり、さらにはどんな交易においても儲けをもたらす。女がこれを身につけていれば、望む男を自分に恋させられよう。また、左手で男の裾を引き、右手で山羊を示しているアプロディーテーをこの石に彫れ。この石は男たちと女たち、兄弟たちと親友たちに同心をつくり、さらにはありとあらゆる優美な事柄においても、これを身につけている者たちを温順な者に仕立て、社交的な者とする。弁論家たちにとっては、顕著な働きをする、造物者たちにも、また言説によって競い合う人たちにも。説得と適性をつくり、言説の創建者だからである。勝利と力を万人に与え、しかのみならず、魔術によって生ずる事をも美しく整えるからである。〔Dsc. V-148, Plin. HN 37.126-130〕

(12.)
リトス・オピエーティス(LivqoV ojfih:tiV)〔雌蛇石〕。これは粉末にされると、どんな出来物や傷に当てられても、健康にする、と謂われている。〔Dsc. V-162, Plin. HN 36.55-56.〕

(13.)
もうひとつのリトス・オピテース(LivqoV ojfivthV)〔蛇石〕。これは、ヘビ類の解毒剤にちなんで、古の人たちによって名づけられた。また霞んだ眼にも鋭い視力をもたらし、頭痛を止め、難聴をも浄化して、その結果、これを身につけた者は以後、交際の欠如?聞くことができるようになる。また、性愛の衝動のない者や不感症な者も、これのおかげで衝動や欲望へといたることになると謂われる。また燻べられると、あらゆる爬虫類を、近くのものらのみならず、それらの巣穴から遠くはなれたものらをも追い払うと〔謂われる〕。

(14.)
いわゆるリトス・オストリテース(LivqoV ojstrivthV)は、粉末にして、葡萄酒といっしょに飲用されると、疼きを止める、あるいはどんな歯の痛みも鎮痛させる。〔Plin.HN 37.177〕

(15.)
これらと兄弟のエキティス(LivqoV )も、クサリヘビ〔蝮〕にちなんで名づけられ、これは、いいつたえでは、古の人ピロクテーテースの膝 — その長患いで不治の傷にずっと苦しんできた — を癒やしたという。

(16.)
リトス・シデーリテース(LivqoV oJ sidhrivthV)〔鉄石〕、これは一部の人たちも有魂の山石(e[myuxon ojreivthV)と呼ぶものである。これも自然にちなんで、それどころかその場における発見に?ちなんで名づけられた、というのは、発見されるのが山中だからである。しかし置き具合は球形ないしやや球形であるが、自然本性はぎざぎざで、硬く、やや黒く、緻密である。皺ないし文字に似た腱が至る所これを取り巻いている。これはあらゆる爬虫類除けに最も有用であり、水なく毒獣に満ちたリビュエーを渡る人たちはといえば、これを携行し、あたかも完全武装した者たちのように、毒獣の只中を敢えて進んだ。さらに占い石であるとも謂われ、また断食し、おのれを清浄に保つ者がいて、その人がこの石を清浄な水で洗うばかりでなく、白い亜麻府に包み、しかる後に燭台に点火すれば、突如、生まれたばかりのような赤児の声を聞き、ひとが質問すれば答えるが、ついには有魂のもののように呼吸すると〔謂われる〕。しかしそれはギリシアの子どもたち、被造物に奉仕しようとし、ダイモーンの声を聞くことに熱心な者たちのことである。これに対してわれわれは、????。というのは、植物の根ができるかぎりのことは、鉱石の自然も〔できる〕と謂われるからである。なぜなら、このシデーリテースはそれだけの力を持ち、そのおかげで、どんな爬虫類が或る人にいっせいに襲いかかっても、この石を携行する者は、害されることなくそれらの真ん中を突き進んでも、害されることがないばかりか、逃れられると謂われるからである。というのは、それら〔爬虫類〕はみな、その〔石の〕自然な呼吸と力を携行していない逃亡者にすぐに突進すると〔謂われている〕からである。?また、狩猟に従事する際にも、荒野とか山中で、必殺の蛇や蠍のただ中で寝まざるを得ない場合にも、この〔石〕を身につけていれば、それらから何の被害も受けないだろう。また、蛇のどんな咬み傷を撒き散らされ、しかのみならず、どんな種類の傷 — 刀傷であれ何か別の原因での傷であれ — に対しても解毒剤となる。また、石女にも、結びつけられると、多産をもたらす。〔Plin. HN 36.127, 37.58, 176,181〕

(17.)
リトス・ガガテース(LivqoV gagavthV)〔黒玉炭、Dsc.V-146〕。いいつたえでは、これも同じことができ、燻らせられると、その香気があらゆる毒を追放するという。色は、灰のように煤けているが、見かけは大きくなく、平らである。松のようにすぐに火がつき、瀝青のように重い香気を発する。そして神聖病を判別すると謂われる。というのは、この者たちがこれを嗅ぐと、すぐにたまらず地に倒れ、女たちは、薫かれたそれの香気を受けて、隠れた病気や、彼女らの脾臓から流れ出た悪い胆汁を癒やされると〔謂われる〕。同様にまた爬虫類は、それの前から追い払い、他にも一種驚くべき働きをもつ。リュキアでは、ガガンと言われる河の、海に注ぐ河口に産する。

(18.)
爬虫類と同名のリトス・スコルピオス(LivqoV skovrpioV)〔サソリ石〕、これはサソリに対して効能を有する、と謂われている。

(19.)
いわゆるリトス・コルシテース(LivqoV oJ legovmenoV korsivthV)。そのように名づけられるのは、kovrshつまり人間の頭に似ていることに由来する。これはニンニク〔Dsc.II-182〕といっしょに磨り潰されて、飲用されると、サソリの咬み傷の解毒剤になると謂われる。また、バラ油といっしょに塗布されると、頸まわりの痛みを止め、また蜂蜜と混ぜて飲用されると、腹の下剤となり、水腫や腺を空にして癒やすと〔謂われる〕。

(20.)
リトス・コラリオス(LivqoV koravlioV)〔珊瑚、Dsc.V-139〕。これも蛇に、とりわけコブラの咬み傷に最高に有用であり、魔除けとなると謂われる。それに関して報告されていることは驚くばかりである。というのは、ひとつの種から別の種へと変化すると〔謂われる〕からである。すなわち、最初は黄緑色の植物として生まれるが、陸地にではなく、アオサ(bruvon)と同じく、海中にである。しかし老齢になるにつれ、病み衰え、葉はすっかり枯れて落ちると〔謂われる〕。しかし軽い本体の方は深みを泳ぎ、ついに陸に至って浪から吐き出されると〔謂われる〕。しかしわたしたちの大気に満たされると、乾燥してますます硬化すると〔謂われる〕。さらにもっと時が経過すると、岩となり、手で潰されると完全に石だとわかると〔謂われる〕。その恰好は、植物であったときのように初めからのもの — 枝や樹皮の恰好 — を守り、まるで藪あるいはまたはっきり樹のような石であり、見る者たちに不快でない喜びをもたらすと〔謂われる〕。またこれには別の一種の神的な力が内在すると言われる。というのは、携行する者を戦争や喧嘩から、また荒野を旅する者には長旅を、害されない者として守り通し、またあらゆる悪のお守りにして厄除けであると〔謂われ〕、盗賊たちの危険を免れさせる。また、戦争や喧嘩の際にこれを手にとれば、敗れざる、念願成就する、驚倒せざる、無怖のお守りとなるだろう。また、これが一部の人たちによってさえゴルゴーン石だと気づかれないのは、この中にゴルゴーンを彫りこみ、金ないし銀で閉じこめているからである。また完成されると、あらゆる恐怖と、邪悪な人間どもの攻撃に対する、とりわけ旅の際の邪悪なものらの侵入に対する、またありとあらゆる爬虫類に対する、最大のお守りとなる。この石がヘルメースのものだからである。また夢にも効き目があり、特有の反作用で幻想を追い出す。また、主人の怒りに対しても、その中にヘカテーの神像ないしゴルゴーンの前半身が刻まれると、最大のお守りである。また、これを携行する者は、薬の術中に陥ること断じてなく、雷霆とか稲妻とか、あるいは邪悪なダイモーンに撃たれることもない。また、これを携行する者を苦痛なき者となし、しかのみならずあらゆる汚れや監禁からの贖罪符である。家中では、この石はダイモーンたちや諸々の幻想や雷霆の祓いを為す。また、生の葡萄酒といっしょに飲用されると、様々な薬の予防剤となると〔謂われる〕。さらに、水といっしょに飲用されると脾臓をほぐし、吐血に効く。また肉の孔も塞がる。そればかりか、これをアザラシの皮で(kalxhvsion)と呼ばれるものを分けて船に乗れば、あらゆる危険も海難も防ぐ最善のお守りとなろう。というのは、諸々の風、波浪や、あらゆる種類の混乱に反発するからである。そればかりか、細かく砕かれ、種と混ぜられ、地に撒かれると、畑からあらゆる害と、破滅をもたらすあらゆる嵐を防除する。また、日照りや雹や、あらゆるそういったものらを防ぐ力を有するばかりか、貪り尽くすものらや、?で汚すものらすべてに対する消耗剤、破壊剤となると〔言われる〕、地虫や(ijpw:n)、その他の大気や、黴、バッタ、蛙?、しかのみならず、まさに鳩、雷霆、また葡萄やオリーヴにおいても、撒かれると同じ効き目をもつと言われる。〔Dsc.V-139〕

(21.)
リトス・アカテース(LivqoV ajxavthV)〔瑪瑙〕。これは恰好はいろいろである、というのは多色で、ある点ではイアスピスに類似し、ある点ではサルディオスに、ある点ではスマラグドスに〔類似し〕、イアスピスに似たものはガラス質を有し、サルディオスに似たのは血のような色、スマラグドグに似たのはきらきらして明るい。他にはその中に真紅や赤色、赤土のようなもののみならず、色がしばしば銅に似たのもあり、時には林檎に〔似たもの〕もある。しかし、人々が何にもまして選抜するのは、ひどく赤くて血のような姿を有する〔石〕で、これを「赤茶けたもの」(davfoinon)とも呼ばれ、それにちなんで古の或る人たちはこれを獅子皮(leontodevrhV)と呼ぶものである。しかし当のこれは、ライオンのように火色の斑点、あるいは白や黒や緑色の混ざった様々な色の斑になっていると謂われる。これはサソリの咬み傷に最も有益と〔謂われる〕。例えば、ひとが傷のせいで卒倒しても、これを彼のまわりにぶら下げるか、あるいはまた最初に砕いて押し当てれば、すぐに短時間で苦痛を和らげ、ぐったりした者を救うだろう。さらにまた、謂われるところでは、惚れ薬で、欲情する男を女たちに、女たちを男たちにまとわりつかせ、交際において誰でも充分な者として魅了し、要望を逸することがないようにさせるという。またどんな病気に対しても、端的に最も有用なものとして見出され、三日熱にも四日熱にもそのようなあらゆる種類に対しても抜きん出ているという。しかしこれの力能のあのことも実行する。すなわち、煮沸された角あるいはまた骨にひとがこれをしばらく投入し、次いで引きあげると、すべてが簡単に消失しているのを見出すであろう。〔Plin. HN 37.85-91〕

(22.)
リトス・ハイマティテース(LivqoV oJ aiJmativthV)〔赤鉄鉱、Dsc.V-144〕が、そのように名づけられのは、その色にちなむ、つまり、姿形が血のようだからである。しかのみならず、磨り潰されて、水に浸けられると、これも血とそっくりになる。これが視力に最も有益となるのは、蜂蜜か母乳と混ぜられたものだと言われる。しかのみならず、手に掴まれたり身につけられたりして争訟の場に行くなら、大いなる勝利がもたらされることに寄与する。また、水といっしょに飲用されれば、あらゆる有毒獣に対する予防の解毒剤となり、これを身につけた者は快適で慈悲深く、万人にとっての友となると〔言われる〕。〔Plin. HN 36.144, Dsc.V-144〕

(23.)
リトス・リパライオス(LivqoVoJ liparai:oV)は、アッシュリアに産し、昔そこからトローイアに運ばれ、メムノーンからトローアスの王プリアーモスに、大いなる贈り物として献呈されたとも言われる。これはまた、アイギュプトスやバビュローンのマゴス僧たちも尊ぶと謂われる。というのは、彼らにとって胸当てや魔術に重要な役割を果たし、それゆえ蛇どももドラコーンどももおとなしくなる〔と謂われる〕からである。それどころか、この石を飲んだ者たちは、占い師、鳥占い師となり、彼らの術知のあらゆる力に、こういう〔石〕を道具として一様に用いると〔謂われる〕。

(24.)
リトス・ネブリテース(LivqoV nebrivthV)。そのように名づけられたのは、子鹿の皮をまとう古のバッコス信女たちや、信女たちやディオニューソスの随従者たちにとって重要であり、彼女たちのために占いの役割を果たしたことにちなむ。これはまた諸々の苦痛を止め、様々な蛇除けとなり、女にとっては夫を最も愛しく欲求者となすと言われる。また、コブラ除けになるとも。そしてこの色はニラの緑に似ていると。

(25)
リトス・カラジテース(LivqoV xalazivthV)〔雹石〕。さらにこの石の効能も、熱病除けの医療にも、サソリに噛まれた患者たちにとっての医療にも、また、身につけた者に未来のことを明らかにする占いとしても、最善であると言われる。


(t26-53.)

ソークラテースとディオニューシオスの『石について』

(26.)
リトス・スマラグドス(LivqoV smavragdoV)〔エメラルド〕は、最美にしてすこぶる高価な石で、あらゆる行為においてあらゆる恩恵と僥倖をにいたる力を有する。というのは、聖らかに身につけた者たちを、生と言語と行為と事情の点で生長させる。また水占いにとって効き目があり、奴隷たちには自由へと助力する。なぜなら、これを準備し完成する者は、なんでも手に入れるだろう。だが、これは次のように仕度しなければならない。この石を入手して、金剛石で黄金虫を彫るよう命じよ、次いでその窪みにイシスを立たせ、縦に孔を開けて黄金の矢を通し、指につけよ。この石はインドの、ピソーン河が楽園から出るところに産す。これは大地の緑に似た外観を有する。またこれの青みをおびた緑色のはネロ石と呼ばれる。これに加えてやや緑がかったのは†uJaktorivzwn)†スマラグドスと言われる。しかしやや緑がかったのは、これほど粗っぽくなく、†kaktwvrioV†と言われる。〔Plin. HN 37.62-75〕

(27.)
リトス・ヒュアキントス(LivqoV uJavkinqoV)。清浄なこの石の中に、右の足許に海豚、左手に三叉鑓を持ったポセイドーンが刻まれる。さて、そういうふうに完成したら、指につけて持て、そうすれば、スマラグドス石も実行するかぎりのことを実行する。いや、それどころか、海を旅する者たちを、荒波から救い出す。

(28.)
リトス・スパニオス(LivqoV oJ spavnioV)〔珍しい石〕。この石は、彫り物がなくても、身につけられると、大いなることを成就する。ただし、ひとりペルシア王以外には誰も持っておらず、そのため権威あり、自余のものに超絶している。しかしこの石の姿形はリュクニテース〔石〕のように清浄で、紫色で、陽光のように輝く。

(29.)
リトス・カルケードニオス(LivqoV oJ xalkhdovnioV)〔カルタゴ石〕は、色はアントラクスのように火色だが、硬さは珍奇石ほどではない。この石は、清浄で血のような色をしたリュクニテースであり、アントラクスである。?これは、右手に鷺(ejrwvdion)と言われる鳥を掴み、左手に兜を持った成人したアテーナーを彫りつけられ、成人後身につけられると、携行者がどんな敵勢や対抗者をも打ち負かし、優美さと利発さとで何でもでき、難破を超えることさえ遂行させるであろう。またこれは、これを柔らかい上衣で砕けば、石を検査することができる。というのは、干し草がこれに引きつけられて、問題の物質の試料となること、天然磁石が鉄を〔引きつける〕がごとくだからである。産するのは、上記のインドである。〔Plin. HN 37.104〕

(30.)
リトス・バビュローニオス(LivqoV oJ babulwvnioV)〔バビュローン石〕。ある人々はこれをサルディオン(savrdion)〔サルドス石〕と呼ぶ。しかしもうひとつのバビュローン石は、カルデア人たちのところに存す。バビュローン石の方は、燃える炭火のような光線を有する。太陽の上昇のように快い。このサルディオスはバビュローンでは白くなり、真ん中に明るく光る帯を有する。これは著名な男たち — とりわけ宮廷の者たち — によって身につけられると、彼らを大いなる栄光で称えられるようにする。成人したアルテミスと、その横に立つ鹿を持つよう彫られると、携行する者を男らしく、覇気のある、高貴な、豪毅な者となす。さらに、弱い者たちを反対しにして、戦争で見舞われる傷も撃退し、ひとが負傷しても、これを患部に当てれば、その傷が腫れるのを許さない。また、負傷しても、身につけている者を、傷の痛みがないよう監視する。またアレース彫られるのも、この石の主人だからである。この神に奉納されるのだから。

(31.)
リトス・サルドーニュクス(LivqoV sardwvnuc)。これがあらゆるマゴス僧たちによって頸飾り(movloxoV)と言われるのは、抜きん出た人たちの力を和らげ優しくすることによる。これは身体の最大のお守りとなる。しかしアテーナイ人たちがこの石を用いるのは、念願成就するからである。またクサンティコス月〔マケドニア暦の1月、ローマ暦のaprilis〕、太陽が白羊宮にあるときにこれを採って、牡羊と、心臓を掴んだアテーナーとを彫る。これは多種の多くの帯 — あるものは半透明、あるものは色つき — を有し、しかのみならず黒色や白っぽいのや、別のもっと白いのを有する。

(32.)
リトス・オニュキテース(LivqoV ojnuxivthV)

(33.)
もうひとつのリトス・オニュキテース(LivqoV )は、その中に一部は蜂蜜色、一部は黒色、真ん中に白色を有する。これは、アポッローンとアルテミスとを彫りつけられると、念願成就させる。また、携行する者が群衆の前に出ると、その者を栄光と幸せな日々でもてなす。

(34.)
もうひとつのリトス・オニュキテース(LivqoV )、これを一部の人々は白縁石(perileuvkion)と呼ぶ。これに卵と、卵の中央に黄金虫とを刻すと、生涯捕まえられない者となるだろう。数々の財産も状況も融通の利く者となるだろう。

(35.)
もうひとつのリトス・オニュキテース(LivqoV )は、白くて、全体的に空気のように透明である。しかしこれはオニュキテースの一種である。ライオンの前半身ないし頭を持ってとぐろをまいた蛇をこれに彫りつけよ。これは、身につけられると、口が痛むことは決してない。しかのみならず、汝が必要とする糧食をよく消化する。しかし携行者はこれを手放してはいけない。

(36.)
もうひとつのリトス・オニュキテース(LivqoV )は見た目全体が黒い。こ〔の石〕は妊娠した女たちや、授乳中の女たちに有益である。これには、3つの頭を持ったクヌゥビオスが彫られる。

(37.)
湿って、透明で、明るくて、黄金のようなリトス・クリュソリトス(LivqoV xrusovliqoV)〔貴橄欖石〕。これは、身につけられていると、女たちにとってきちんとした善い男にするが、とりわけ女たちにとってこそ幸せをもたらす。そこで、アプロディーテーを彫りつけ、完成して持すべし。すると、数多くの恩恵をこしらえる。〔Plin. HN 37.126〕

(38.)
リトス・オパッリオス(LivqoV ojpavllioV)。この石は、一部の人たちによって、だが他の人たちによっては、その恰好よさから巫山戯てサルピゼーノスとと言われる。しかし紫水晶に似て??透明でガラスのようなら、万人に、特に太陽に愛される。この石は、有力者たちの要求に対しても有効で、この石が優美で尊重される。また厄除けには著しく、とりわけヘカテーに憑かれた者たちによく効く。子どもらの性欲にも効く。これに彫られるのは、
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(39.)
リトス・アカテース(LivqoV ajxavthV)〔瑪瑙〕。アカテース〔複数〕は最大の力を有する。ヘルメースの〔持ち物〕である。ライオンの皮と同色なのは、サソリの咬み傷に当てられたり、粉末にして水といっしょに塗布されると、強力である。刺された者の痛みをすぐに止めるからである。蛇に咬まれたときにも、磨り潰して咬み傷に当てられるか、酒といっしょに飲用されると、ぴったりである。また、指につけられると、つけている者を話しかけやすく、社交的で、説得されやすく、有能者で、あらゆる点で喜ばしい者、成功者にして血行のよい者となす。そこで次のように仕上げられる。銅の矢を執って、そこに次の名号「イアコー」を刻め。そうして涙の中に石を置き、捺印して携行せよ。これは真っ黄である。〔Plin. HN 37.139〕

(40.)
リトス・アンティ-アカテース(LivqoV ajntaxavthV)。形はアカテースと大いに異なるが、力能は最強である。この石は、3日周期、4日周期、他にもあらゆる周期の病を治す。そこで次のように扱われる。磨り潰して、乳香の代わりのように、燃えさかる炭火で焚くが、あまり少なすぎないよう焚かれる、そうすると、長い期間とどまって、諸感覚を通して持続して、その周期から解放される。

(41.)
リトス・デンドラカテース(LivqoV dendraxavthV)は小木を内包している。つまり、石の内に、はっきり小枝のように見えるものを内包しているのである。この石は、外側には蜂蜜の部分のような色をしたものと別の枝の形をもち、内側にははっきり白っぽい小木に見えるものを〔有している〕。事態を処理する人たちに有効である。というのは、手がける人を説得的で精通者と為すからである。畑で種蒔く人たちにも利する。これは手よか喉とかに巻かれる。これを持った種蒔く人は、幾層倍も耕せるであろう。端的に云って、大いなる益を有する。さらにはまた携行する者に豊かさをも与える。

(42.)
リトス・イアスパ-アカテース(LivqoV ijaspaxavthV)。これは水腫を療治し、意想外に渇きを止める。そして身体の健康と力強さを守る。

(43.)
リトス・サルド-アカテース(LivqoV sardaxavthV)は、あらゆる行為にとってお守りとなり、言論の創意と熱弁に利し、敵を防ぎ、恋する者の方へと誘導する。これを身につけている者は、あらゆる人たちにとって親愛となる。さらに、愛する者たちの真ん中にこれを置いたり、別の者の手中に得るようこれを与えたりすると、たちまち友だちとなる。次の図案で完成する。
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この石はシトロン色で、白い帯と、別の黄色い帯を有する。

(44.)
リトス・ポリュゾーノス(LivqoV poluvzwnoV)。これは頑丈で、緻密で、硬く、緑色がかって、火色の帯を有し、半透明で、暗く、別の白みがかった長い帯を有し、そういう長い帯からもできていて、蛇の皮に巻かれているかのようであるが、これは多くの友人たちの結社をつくり、数多くの原資から行為と儲けを与え、結びつけられていると、病気の期間や訴訟を解消する。〔Plin. HN 37.189〕

(45.)
リトス・パンクルゥス(LivqoV pavgxrouV)〔全色石〕は、てんかん患者たちや黄疸患者たちに著しく効果を発揮する。絹糸で喉に巻かれると、患者はたちまち健康となるだろう。それが真実だということを見るためには、それらの多くが等しく有用とは限らないので、色が多くて異なった ?を空の土器に入れ、強火で2時間熱し、石が真正なものなら、全体の色が蜂蜜のようになり、最美の薔薇の香油の香気を持つであろう。この石がパンクルゥスと言われ、これは数多の多彩な色を有することから、一部の人たちによって孔雀石(tawnivthV)と呼ばれる。中に孔雀のような形を有するからである。?〔Plin. HN 37.178〕

(46.)
リトス・スミュルニテース(LivqoV smurnivthV)は緑色をおびているが、磨り潰されると、没薬に似た匂いを与える。験能は大きく、とりわけ女にとって最大である。というのは、多くの者たちがこれの効能で間違いなく恋されることになるからである。患者たちには解毒剤となる。だが、調合されるのは慢性患者に対してである。

(47.)
リトス・ケリドニオス(Livqoi xelidovnioi)〔燕石(複数形)〕は、ツバメたちの頭の中にできる。これが身につけられると、何でも望むことに成功する恵みをもたらす。また、親愛な者たちを、恋しい者たちにも親切な者たちにもする。他には。燕石はツバメの腹の中に見出されるが、もっと善いものは、病気の〔ツバメたち〕から得られるものである。ところで、これには、黒いのと火色のと、2種類ある。そこで、聖なる場所からツバメたちをつかまえよ、より善いからである。さもなければ、市場か有名な公的な場所から〔つかまえよ〕、それら〔のツバメ〕ははるかに強壮だからである。さて、これら〔ツバメたち〕を取り上げ、割いて、石たちを取り出せ。月光に憑かれた〔てんかん症の〕者たち、神来状態にある者たち、水腫患者たちにとっての必需品である。また、他にも数多くの活動や必須の力能を有する。〔Plin. HN 11.203, 37.155〕

(48.)
リトス・ヒエラキテース(LivqoV iJerakivthV)〔鷹石〕は鳥類の羽に似ている。その中に銀色と金色をした線条を有し、これを、葦から採れる糸で繋いでいる。善にして、出会いにはおとなしい。しかし眼の明視には著しく有効である。 同様にハエたちに対しても、著しく逆作用する。〔Plin. HN 37.167, 187〕

(49.)
リトス・ドラコンティテース(LivqoV drakontivthV)〔ドラコーン石〕は生きた[……]から採取される。[……]長く、紫、青〔ヒュアキントス色〕、白の3つの帯によって完成される。動かされると息をして、弱視に有効である。〔Plin. HN 37,158〕

(50.)
リトス・アスパラキテース(LivqoV ajspalakivthV)は、これも息をしており、投げた者に応え、宝物の発見に役立つ。このアスパラキテースという石に彫れ — 鋤を持ち、屈んだようにして、掘っている裸の人間と、その周りに次の名号

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そしてその後ろにAPAMというこの名号を〔彫り〕、黄金のカンタロスで閉じて、汝の右小指にはめよ。そうすれば、財産のあるところが破られず不動となるであろう。

(51.)
リトス・サウリテース(LivqoV saurivthV)〔蜥蜴石〕は生きた蜥蜴から得られる。姿のよいことは最高で、アプロディーテーの巻き毛に似て2色である。愛の呪文に有用である。というのは、これに祈願すると、望む女を……として惹き寄せるだろうから。〔Plin. HN 37.67〕

(52.)
リトス・プリュニテース(LivqoV frunivthV)〔蝦蟇石〕。蝦蟇から得られる。しかしあらゆる点で亀に似ている。そなたがこの祈りを口に出すとき、これは女たちを惹きつける呪いに有効である。女はいつ何時もさまようだろうからである。

(53.)
リトス・ヒュアイニテース(LivqoV uJainivthV)〔ハイエナ石〕は大きな為事をなす。また鋭い視力をももたらす。これは動物の心臓の中に見出され、魔力をもつと数多くの活動を行い、暗闇にある事柄を出現させる。

2017.03.04. 訳了。

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