エラトステネース

 エラトステネースは、前280頃キューレーネーの出身。学者、科学者。広範な関心を表明するため、「filolovgoV(学問愛好者)」と自称した最初の人。アレクサンドリア図書館長。地球の円周を驚くべき正確さで計算したことで有名。
 『諸星座(Catasterismi)』は彼の名で伝わっている。

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諸星座(Catasterismi)

1."t".1
 

獣帯の諸星座

大熊〔座〕の〔話〕

1.1.1
 ヘーシオドスは謂う、これはリュカーオーンの娘で、アルカディアに住んでいたが、アルテミスとともに山野で狩りをして生活することを好んだ。ゼウスによって堕落させられたが、女神に気づかれないでいた。しかし、その後、出産間近になり、沐浴しているところを彼女〔女神〕に見られて見破られた。女神はこのことを怒り、彼女を獣に変えた。じつにそういう次第で熊になり、アルカスと呼ばれる子を生んだ。こうして山中にいるところを、何人かのヤギ飼いたちに狩られ、赤ん坊もろともリュカーオーンに引き渡された。かなりの時を経て、足を踏み入れてはならないゼウスの[神聖な]神域に、掟を知らずに入りこんだと判断された。そこで、自分の息子とアルカディア人たちに追われ、前述の掟に従って亡き者にされようとしたので、ゼウスが縁あるゆえに助け出し、彼女を星辰の中に置いた。彼女をアルクトス〔熊〕と名づけたのは、彼女にふりかかった災難のゆえである。

 〔この星座は〕頭部に7つの暗い星、それぞれの耳に2つずつ、肩に明るいのを1つ、胸に<1つ、前足に>2つ、背に明るい星1つ、<腹に明るい星1つ>、後ろ脚に2つ、足先に2つ、尻尾に3つ、全部で24個を有す。

1.2.1
 

小熊〔座〕の〔話〕

 これはいわゆる小〔熊座〕である。たいていの人たちにはポイニケー〔「フェニキア女」の意〕と命名されていた。が、アルテミスには厚遇されていた。だが、ゼウスがこれを堕落させたと知ったことが、彼女を残酷にさせた。しかし、後には、彼女は救われて、星辰の中で別の影像と対照をなす名声が授けられ、2倍の名誉を有することになったと言われる。アグラオステネースが『ナクソス誌』の中で謂うところでは、ゼウスの養い親となったのはキュノスーラ〔「犬の尾」の意〕であるが、これはイーデー山のニンフの1人であった。いわゆるヒストイという都市(これはニーコストラトスの一統が建設したものである)には、これ〔都市〕の港と、これの位置する場所は、彼女にちなんでその名があり、キュノスーラと呼ばれたという。またアラトスは、彼女を、クレーテー出身であることからヘリケーと呼んでいる。ゼウスの養い親となり、それゆえ天界において名誉にあたいするとみなされたのだと。

 〔この星座は〕4角のそれぞれ角に明るい星を1つずつ、尻尾の上に明るい星を3つ、全部で7個を有する。下方と考えられる〔星辰〕の別の星座の下に、別の星があり、これは極(PovloV)と呼ばれ、これのまわりを宇宙全体が回転していると思われている。

1.3.1
 

ドラコーン〔座〕の〔話〕

 これは巨大な、両方の熊座の間に横たわる〔星座〕である。黄金の林檎の番人だが、ヘーラクレースによって亡き者にされたと言われている。その守備位置が星辰の中に与えられたのはヘーラーによってであり、彼女はこれをヘスペリスたちから林檎を守るに任じた。というのは、ペレキュデースが謂うには、ヘーラーがゼウスに娶られた時、神々が彼女に贈り物を携えた中で、〔大地女神〕ゲーは黄金の林檎を携えて来た。すると、〔これを〕目にしたヘーラーは驚嘆し、神々の果樹園の中に植えるよう云いつけたという。その園はアトラースのところにある。しかしあの者〔アトラース〕の娘たちによっていつもくすねとられるので、巨大な蛇を林檎の見張りに任じた。〔この星座は〕最大の形状を有する。しかし、これに襲いかかっているのがヘーラクレースの影であるのは、〔星座の〕配置をする時に、戦いの最も目立った記念としてゼウスが置いたからである。

 〔この星座が〕有する星は、頭部に明るい星3つ、口から尻尾までに、相互に等間隔に12個、<全部で15個>。[だたし、熊たちの間からは離れている]。

1.4.1

膝をついた男〔ヘーラクレース座〕

 これは、言い伝えでは、オピス〔「蛇」〕に撃ちかかるヘーラクレースである。しかし、棍棒を振り上げ、ライオンの毛皮を身にまとっていることがはっきりしている。言われているところでは、黄金の林檎を求めて旅をし、番人として配置されていた蛇を亡き者にした。まさしくそういうわけで、ヘーラクレースと抗争するよう、ヘーラーによって配置されたのであった。ここから、最大の危険を伴ったこの仕事が達成された時、ゼウスは記憶に値すると判断し、褒美としてその影像を星辰の中に置いた。だから、蛇の方は頭を天空にもたげ、これに撃ちかかっている者の方は、片膝を下に突き、もう一方の足で頭を踏みしめ、右手をば、そこには棍棒をもって、撃たんとするごとく伸ばし、左手にはライオンの毛皮を巻きつけているのである。

 〔この星座が〕有する星は、頭部に明るい星を1つ、右腕に明るいのを1つ、それぞれの肩に明るいのを1つずつ、<左肘に1つ>、手先に1つ、それぞれの脇腹に1つずつ、ただし左脇腹のは非常に明るいのを、右太腿に2つ、曲げた膝に1つ、脛に2つ、足に1つ、右手に1つ、これは棍棒(+Rovpalon)と呼ばれる、毛皮に4つを有する。全部で19。

1."5R[14]".1

冠〔座〕について

 これはアリアドネーの〔花冠〕と言われる。これを星辰の中に置いたのはディオニューソスであるが、それは、神々が婚礼の儀をいわゆるディアーで祝った時、自分たちにはっきり見えることを望んでであった。これを、ホーラたちとアプロディーテーから受け取って、最初に新妻が冠された。『クレーテー誌』を書いた人も言っているところでは、ディオニューソスがミーノースのもとにやってきた時、彼女を堕落させんと望んで、贈り物として彼女にこれを与えたのであった。これによってアリアドネーは騙された。

 これはヘーパイストスの製作品で、火と燃える黄金と印度石からつくられたものと言い伝えられている。だからこそ、テーセウスも、この花冠が炎をなしたおかげで、ラビュリントスから助かったのだと記録されている。後に、これが星辰の中に置かれたのは、両者がナクソスにやって来たときで、仲違いの印としてで、神々にもそれがよいと思われたのだった。

 獅子座の尻尾の下に見える星は、この女の房毛とも言い伝えられている。

1."5D".1

冠〔座〕の〔話〕

 これはアリアドネーの花冠と言われる。これを星辰の中に置いたのはディオニューソスであるが、それは、神々が婚礼の儀をいわゆるディアーで祝った時、ホーラたちとアプロディーテーから受け取って、新妻が冠された最初のものである。

 これはヘーパイストスの製作品で、火と燃える黄金と印度石からつくられたものと言い伝えられている。そこで、だからこそ、テーセウスは、〔この花冠が〕炎をつくったおかげで、ラビュリントスから助かったのだと記録されている。

 獅子座の尻尾の上に現れる〔星〕は、彼女の房毛とも言い伝えられている。

 冠座が有するのは円形に並んだ9つの星で、このうち明るいのは<3つ>で、熊座たちの間にある蛇座の頭部にあたる。

1."6R[15]".1

蛇使い〔座〕について

 これは蠍座の上でいっしょに構成されるもので、両手に蛇を持っている。アスクレーピオスのことだと一部の天文学者たちに言われている。ゼウスが、アポッローンに懇ろにするため、[激しい雷雨によって〔殺された〕]これにこの名誉を授けるのがよいと思われた相手である。というのは、人間界にいるとき、医術を使って、既に死んだ者たちを甦らせた。それで、〔ゼウスは〕怒って、彼の館を雷霆で撃った。しかし、これを星界に引き上げたのは、アポッローンのせいである。(finis col.)

1."6D".1

蛇使い〔座〕の〔話〕

 これは蠍座の上に構成されるもので、両手に蛇を持っている。アスクレーピオスだと言われ、これはゼウスが、アポッローンに懇ろにするため、星界に引き上げたものである。この者は、医術を使って、既に死んだ者たちをさえ甦らせたからで、その中には、テーセウスの子ヒッポリュトスも含まれており、神々がそのことに腹を立てたのは、アスクレーピオスがそれほどの仕事をやり遂げたら、彼らの罰は無効になるであろうから、ゼウスは怒って、彼の館を雷霆で撃ち、しかる後に、アポッローンを介してこの男を星界に引き上げたという。最大の星(わたしが言うのは蠍座のことだが)の上にあるので、際立った型によって見分けられるので、充分な顕現を有している。

 〔これが〕有するのは、頭部に明るい星を1つ、それぞれの肩に明るい星が1つずつ、左手に3つ、右手に4つ、それぞれの臀部に1つずつ、それぞれの膝に1つずつ、<右脛に1つ、それぞれの足に1つずつ>、右膝のはより明るい。全部で17個。蛇の頭の先に2つ***。

1.7.1

蠍〔座〕の〔話〕

 これは、大きいので、2/12に分けられる。そして、ひとつを占めるのが鋏、他を占めるのが身体と棘である。言い伝えでは、これをつくったのはアルテミスで、キオス島の丘陵から生じ、オーリーオーンを刺し、そうやって死なせたが、それは、狩りのおり、乱暴にも彼女に暴行したからである。これをゼウスが星辰の明るいものらの中に置いたのは、後世の人間どもがそれの強さと力能を知るためである。

 〔この星座が〕有するのは、それぞれの鋏に星2つずつ、そのうち最初のものらは大きく、第二のものらは暗い、また、額に<明るい星3つ、このうち真ん中の星が最も明るい、後ろ腰に>明るい星3つ、脇腹に2つ、尻尾に5つ、針に2つ。これらのうち、何よりも明るいために先導するのは、北側の鋏にある明るい星である。<全部で19個>。

1."8R[16]"."1t"

牛飼い〔座〕について
1."8R[16]"."2t"
熊守〔座〕ともいわれるところの

1."8R[16]".3

 これについて言われているのは、カッリストーとゼウスとの間に生まれたのがアルカスで、ゼウスが彼女を堕落させたとき、リュカイオン山あたりに住んでいたということである。これを我がものとした上で、リュカーオーンはゼウスを客遇し、ヘーシオドスの謂うところでは、嬰児を細切れにして、食卓に供した。このとき、〔ゼウスは〕それ〔食卓(travpeza)〕は引っ繰り返し — これにちなんで都市はトラペズゥサ(Trapezou:V)と呼ばれる — 、屋敷は雷撃し、リュカーオーンは獣に変えて、これを狼(luvkoV)にした。またアルカスの方は、再び形づくり直して、五体そろった姿にした。そして山羊飼いのもとで育てられた。さて、既に若者となったので、リュカイオン山に分け入るのがよいと思われ、知らずに母を娶ったという。その土地の住民たちは、法に従って、両者を供犠しようとした。しかしゼウスが、縁によって、彼らを取り上げ、星界へ引き上げた。(finis. col.)

1."8D[16]".1

熊番〔座〕の〔話〕

 これについて言われているのは、カッリストーとゼウスとの間に生まれたのがアルカスで、これを、リュカーオーンが細切れにして、食卓に供してゼウスを客遇した。このとき、〔ゼウスは〕それ〔食卓(travpeza)〕は引っ繰り返し — これにちなんで都市はトラペズゥサ(Trapezou:V)と呼ばれる — 、彼の屋敷は雷撃し、リュカーオーンは獣に変えて、これを狼(luvkoV)にした。またアルカスの方は、再び形づくり直して、五体そろった姿にした。そして山羊飼いのもとで育てられた。さて、既に若者となったので、リュカイオン山に分け入るのがよいと思われ、知らずに母を娶ったという。その土地の住民たちは、法に従って、両者を供犠しようとした。しかしゼウスが、縁によって、彼らを取り上げ、星界へ引き上げた。

 〔この星座が〕有するのは、右手に4つ — これらは沈むことがない — 、頭部に明るいのを1つ、それぞれの肩に明るいのを1つずつ、胸のそれぞれに1つずつだが、右胸のは明るく、その下に暗いのを1つ、右<肘>に明るいのが1つ、両膝の真ん中に最も明るいのを1つ — これこそが「熊の番人(=Arktou:roV)」と呼ばれるものである — 、それぞれの足に明るいのを1つずつ。<全部で14個>。

1.9.1

乙女〔座〕の〔話〕

  これを、ヘーシオドスは『神統紀』の中で、ゼウスとテミスとの娘で、彼女はディケー〔「正義」の意〕と呼ばれていた述べている。さらにアラトスも、彼から記録を引いて言っている。もとは不死であったが、地上に人間どもといっしょにいたこと、そして、〔人々は〕彼女のことをディケーと呼んでいたが、彼ら〔人間ども〕が邪道に陥り、もはや正義を守ろうとしないので、もはや彼らといっしょにいられず、山中に隠遁した。その後、彼らの間に党争と戦争が起こったので、彼らの完全な不正[ゆえに]を嫌悪して、天に昇ったのだと。さらに、彼女に関するもっと多くの異説も言われている。例えば、彼女は穀物の穂を持っているからデーメーテールだと謂う者あり、イシスだと謂う者あり、アタルガティスだと謂う者あり、テュケーだと謂う者がある。それは、彼女を無頭で表象することもあるからである。

 〔この星座が〕有するのは、頭部に1つ、暗い星、それぞれの肩に1つずつ、それぞれの翼に2つずつ — 右の翼にあるのは、肩と翼先との<中間に>あり、(Protrughthvr)〔葡萄の収穫を先触れする者〕と呼ばれる — 、それぞれの肘に1つずつ、それぞれの手先に1つずつ — 左手の明るいのは「麦の穂(StavcuV)」と呼ばれる — 、外衣の縁に、<暗いのが6つ>、***暗いのが1つ、それぞれの足に1つずつ。全部で20個である。

1.10.1

双子〔座〕の〔話〕

 これはディオスクーロイ〔「ゼウスの息子たち」の意。カストールとポリュデウケース(ラテン語でポルクス〕だと言われる。ラコーニア地方で育って、異彩を放ったが、兄弟愛の点では万人を凌駕していた。つまり、支配についても他の何についても争うことはなかったのである。そこでゼウスは彼らの仲のよさを記憶することを望んで、両者を等しく「双子(Diduvmoi)」と名づけて、星界に置いた。

 〔この星座が〕有するのは、蟹座の上に乗っかっている方は、頭部に1つ明るいの、それぞれの肩に1つずつ明るいの、右肘に1つ、右手に1つ、右手に1つ、それぞれの膝に1つずつ、<それぞれの足に1つずつ、全部で9つ>。〔これに〕つながっている方は、頭部に1つ明るいの、左肩に明るい1つ、それぞれの胸に1つずつ、左肘に1つ、手先に1つ、左膝に1つ、それぞれの足に1つずつ、右足の下に1つ、これはProvpouV〔大足を持つ者〕と呼ばれる。<全部で10>。

1.11.1

蟹〔座〕の〔話〕

 これが星界に置かれたのがヘーラーによってだと思われている所以は、他の共闘者たちの中でこれだけが、ヘーラクレースに対し、彼がヒュドラを退治したとき、湖から跳び出して彼の足を咬んだからだとは、パニュアシスが『ヘーラクレース物語』の中で謂っているとおりである。しかしヘーラクレースは怒って、足でそれを踏みつぶしたと思われる。ここから、12獣帯の中に算入されるという、大いなる名誉を得た。

 その中の幾つかの星は「驢馬座(!Onoi)」と呼ばれ、これを星界に引き上げたのはディオニューソスである。また「飼い葉桶座(Favtnh)」もこれら〔の星座〕の目印になる。これらの物語(iJstoriva)はこうである。

驢馬座と飼い葉桶座

 ギガース攻撃に神々が出征したとき、ディオニューソスとヘーパイストスとサテュロスたちは、驢馬に乗って進撃したと言われる。しかし、ギガースたちがいまだ彼らに目撃されないうちに、近づいた驢馬たちが嘶き、ギガースたちはその声を聞いて退散した。このゆえに、蟹座の沈む方に在るという名誉を授けられたのである。

 蟹座が有するのは、殻に明るい星2つ、これが「驢馬座」である。この中に見られる星雲が「飼い葉桶座」で、〔驢馬たちが〕これから食べているように思われる。右足のそれぞれに暗いのが1つずつ、左足には、第一のには暗いのが2つ、第2のにも<2つ>、第3のには<1つ>、口に<1つ>、右の蹄に3つ、<等しく大きくはなく>、同様に、左の蹄に大きくないのが<2つ>。全部で18個。

1.12.1

獅子〔座〕の〔話〕

 これこそ、はっきり見える星群のひとつである。ゼウスによってこの動物が名誉を与えられたのは、四足動物を嚮導するからだと思われている。一部の人たちは、ヘーラクレースの最初の功業が記憶されるためであったと謂う。すなわち、名誉愛から、彼は一人でこれを、武器によってではなく、取っ組み合いによって絞め殺した。しかし彼についてロドス人ペイサンドロスは言う。それの毛皮をも手に入れた所以は、輝かしい働きを為し終えたからであると。これは、ネメアにおいて彼に殺された〔獅子〕である。

 〔この星座が〕有するのは、頭部に3つ、胸に<1つ、胸の下に>2つ、右足に明るいのが1つ、<腹の>中央に1つ、腹の下に1つ、臀部に1つ、膝の後ろに1つ、足先に明るいのが1つ、首に2つ、背に3つ、尻尾の中央に1つ、天辺に明るいのが1つ、[腹に1つ]。<全部で19>。さらにこれの下にも、尾のところに三角形に暗い〔星が〕7つ見られ、これらはベレニケー・エウエルゲティス〔エジプト女王。前246-221在位〕の編み毛(PlovkamoV BerenivkhV EujergevtidoV)と呼ばれる。

1.13.1

馭者〔座〕の〔話〕

 これが、言い伝えでは、、ゼウスは彼が人間界で初めて[馬たちの]戦車を軛につないぐのを見て、これはヘーパイストスとゲーとの間に生まれたエリクトニオスであるが、驚いたことには、ヘーリオスのそれとそっくりの運転をし、白い馬たちを軛につないで、町に上った。最初に、アクロポリスでアテーナーのための行進を催し、かつ、これに加えて女神の神像(xovanon)を讃美して、異彩を放つ供犠を執行した。さらにエウリピデースも、彼の誕生について、次の仕方で言っている。

 ヘーパイストスはアテーナーに恋をし、これと交わらんことを望んだが、彼女の方は背を向けて、むしろ処女であることの方を選び、アッティカ地方のとある場所に身を隠した。その〔場所〕は、彼にちなんでヘーパイステイオン〔ヘーパイストス神殿〕とも命名されたと言われる。彼は、彼女を手籠めにせんと思って挑みかかったが、彼女に殴られたので、毛皮で欲望を棄てた。〔これは〕種子が大地にまかれたということである。この〔種子〕から子どもが生まれたと言われ、これが、そのことからエリクトニオス〔e[rion(羊毛)+cqwvn(大地)とから合成されたとする俗流語源説〕と呼ばれ、長じてのちこれを発明し、闘士となって驚嘆された。彼はパンアテーナイア祭と、小楯〔を持ち〕、頭に3本の羽根飾りをつけた陪乗(parabavthV)を馭者として有する戦車を、熱心に唱導した。これにちなんで模倣したのが、いわゆる(ajpobavthV)である。〔ところどころで馬から飛び降りて側を走ってはまた馬に跳び乗る競技〕

 この〔星座〕には、山羊座や仔山羊座がある。例えば、ムゥサイオスは謂っている、ゼウスが生まれると、レアーによってテミスに手渡され、テミスはこの赤ん坊をアマルテイアに与え、彼女は山羊と考えられ、これがゼウスを養った。ところで、アイクス〔「山羊」の意〕というのは、ヘーリオスの娘であるが、あまりに恐ろしいので、クロノスの御代の神々は、その少女の姿を嫌い、ゲーに、クレーテーにある洞窟の一つに彼女を隠すよう要請した。そうして、隠された彼女は、その世話をアマルテイアの手に預け、彼女の方は、あの〔少女のための〕乳でゼウスを育てあげたのである。こうして子〔ゼウス〕は年頃となり、ティーターンたちと開戦せんとしたが、武具を持っていなかった時、山羊の毛皮を武具として使うようにとの預言が下された。その所以は、それが不死身で恐怖の的であるゆえ、また、背の中央にゴルゴーンの顔をもっているゆえであった。かくて、ゼウスはこれを実行し、術知によって見かけの二倍にしたうえ、山羊の骨の方は他の毛皮に包み、これを有魂として、不死性を具えさせ、これを天界の星に[こしらえた]と言い伝えられている***

 一部の者たちが謂うには、〔それは〕オイノマーオスの馭者で、名をミュルティロスといい、ヘルメースの血を引く者という。

 〔この星座が〕有するのは、頭部に1つ、また、それぞれの肩に1つずつ、この中の一つは左〔肩〕にあって明るく、これが「山羊座」と呼ばれ、それぞれの肘に1つずつ、右手に1つ、左手に2つ、これらこそ仔山羊座と呼ばれるものである。全部で8個。

1.14.1

牡牛〔座〕の〔話〕

 これが星界に置かれたのは、エウローペーをフェニキア地方からクレーテーへと海を渡って連れて行ったことによると謂われている、そのようにエウリピデースが『プリクソス』の中で謂っている。そのために、最も異彩を放つ星群の中にゼウスによって名誉を与えられた。別の人たちが謂うところでは、これはイーオーの似像の牝牛だという。彼女のために[この星は]ゼウスによって名誉を与えられた。

 牡牛座の額は、顔とあわせていわゆるヒュアデス〔「雨を降らす女たち」の意〕が取り囲んでいる。背中の切り離しを加えて、7つ星を有するのがプレイアスである。6つしか見えないのは、7番目の星はすこぶる暗いからである。

 〔この星座が〕有するのは7つの星である。これがまさしく頭を持って自分で向かってくる。それぞれの角には付け根に1つずつ、この中で最も明るいのは左の〔付け根〕に、それぞれの眼に1つずつ、鼻に1つ、それぞれの肩に1つずつ。これらがヒュアデスと呼ばれる。前の左膝には1つ、それぞれの脛に1つずつ、右膝に1つ、頚に2つ、背中に3つ、これは極度に明るい、脇腹の下に1つ、胸に明るいのが1つ。全部で18個。

1.15.1

ケーペウス〔座〕の〔話〕

 これは順番として第四番目に配置される。北極圏がこれを足から胸まで含み、残りは、熊座圏と北回帰線との中央部まで届く。これは、エウリピデースが謂うように、アイティオピア人たちの王にして、アンドロメダーの父であった。自分の娘を、海獣に餌食として差し出したと思われている。これを、ゼウスの子ペルセウスが救出した。彼女を介して、自分〔ペルセウス〕も、アテーナーの庇護のもと、星界に置かれた。

 〔この星座が〕有するのは、頭部に明るい星2つ、それぞれの肩に1つずつ、また、それぞれの手に1つずつ、それぞれの肘に暗いのが1つずつ、帯に斜めに[暗いのが]3つ、腹の中ほどに明るい星々、右脇腹に1つ、左膝に2つ、脚の下に4つ、足先に1つ。<全部で19個>。

1.16.1

カッシオペイア〔座〕の〔話〕

 これは、悲劇作家ソポクレースが『アンドロメダー』の中に記録しているところでは、美しさをめぐってネーレーイスたちと争って、災難に巻きこまれた、つまり、ポセイドーンが海獣を送って国土を蹂躙した。そのためにこの娘は海獣に差し出された。だから、戦車の上に坐って、その家の近くにある。

 〔この星座が〕有するのは、頭部に明るいのを1つ、<それぞれの肩に明るいのを1つずつ、右胸に明るいのを1つ>、右肘に<1つ、右手に>明るいのを1つ、<左>手に<明るいのを1つ、臍に>1つ、[膝に1つ、足先に1つ、胸に暗いのを1つ]、左太腿に明るいのを2つ、膝に明るいのを1つ、<足先に1つ>、台座に1つ、坐っている戦車のそれぞれの四隅に1つずつ。<全部で15個>。

1.17.1

アンドロメダー〔座〕の〔話〕

 これが星界に横たわるのは、アテーナーのおかげである。ペルセウスの功業の記念として、海獣に差し出されでもしたように、両手を広げて。その代わり、ペルセウスに救われたので、父親といっしょに留まることはもとより、母親とも留まることをせず、自己選択で、彼とともにアルゴスへと立ち去った。エウリピデースも彼女について書かれた劇の中ではっきり言っている。

 〔この星座が〕有するのは、頭部に明るい星1つ、それぞれの肩に1つずつ、[右足に2つ、左〔足〕に1つ]、右肘に1つ、手先に明るいのが1つ、左肘に[1つ、右〔肘〕に]明るいのを1つ、<腕に1つ、手に1つ>、帯に3つ、帯の下に4つ、それぞれの膝に明るいのを1つずつ、右足に2つ、左〔足〕に1つ。<全部で20個>。

1.18.1

馬〔座〕の〔話〕

 これは臍までの前部のみが見える。なるほど、アラトスは、ヘリコーン山上で蹄で湖を作り、それにちなんで「馬の泉」と呼ばれる所以の牡馬だと謂っている。また他の人々は、ペーガソスであり、ベッレロポーンが墜落した後、星界へ翔け昇った牡馬だと謂う。しかし、翼を持っていないのだから、この言説を為すことは一部の人たちにとって説得的でないように思われる。これに対してエウリピデースは『メラニッペー』の中で謂う。ヒッペー〔「牝馬」の意〕はケイローンの娘であったが、アイオロスに騙されて堕落させられ、胎が大きくなったので山中に逃げ、そこで彼女が陣痛に苦しんでいるとき、父親が探しにやって来た。そこで彼女は、知られないよう、姿を変えて馬になることを祈った。とにかく彼女と父親の敬神ゆえに、アルテミスによって星界に置かれたという。ケンタウロスのせいで見えない所以である。なぜなら、ケイローンがそれ〔ケンタウロス座〕だと言われているからである。彼女の後半部が見えないのは、牝であることが知られないためである。

 〔この星座が〕持っているのは、鼻に2つの暗い星、頭部に1つ、顎に1つ、それぞれの耳に暗いのを1つずつ、頚に4つ、このうち頭に近いのがより明るい、肩に1つ、胸に1つ、咽の1つ、臍に極度に明るいのを1つ、前膝に2つ、それぞれの蹄に1つずつ。<全部で18個>。

1.19.1

牡羊〔座〕の〔話〕

 これはプリクソスとヘッレーを渡海させようとした〔羊〕である。ただし不滅であって、母親ネペレー〔「雲」の意〕によって与えられた。黄金の毛皮を持っていたと、ヘーシオドスとペレキュデースが述べている。ところが、彼女にちなんでヘッレースポントス〔「ヘッレーの海」の意〕と呼ばれる海洋の最も狭い地点で彼らを渡そうとして、彼女[と角を失って]を放り出してしまった — しかしポセイドーンがヘッレーを助け、交わって、彼女からパイオーンという名の子をもうけた — 。プリクソスの方は、助かったのを黒海(Eu[xeinoV povntoV「客に親切な海」の意〕に、アイエーテースのもとに渡した。そして金毛羊皮をを脱ぎさえして、記念として持つよう彼に与えた。そしてみずからは星界へ立ち去った。そのためより暗く見えるのである。

 〔この星座が〕有するのは、頭部に1つ、鼻に3つ、頚に2つ、前足の先に明るいのを1つ、背中に4つ、尻尾に1つ、腹の下に3つ、臀部に1つ、後ろ足の先に1つ。全部で17個。

1.20.1

三角〔座〕の〔話〕

 これは、牡羊座の頭の上に横たわっているもので、前者〔三角座〕がより暗いために、後者の上のわかりやすい文字 — ゼウスにちなんで、その名前の初めとして、星たちの秩序づけを行ったヘルメースによって置かれたもの — として横たわっている言われる。しかし一部の人たちが謂うには、アイギュプトスの形勢も、またネイロス〔ナイル〕河も、星界にΔがあることから、土地の周囲をそのようなものとして作られたのは、これ〔土地〕に安全さを授けられると同時に、種蒔くことがより容易に為されるとともに、実りの季節の適期の回復がもたらされるためだという。

 〔この星座が〕有するのは3つの星で、角のそれぞれに1つずつ、明るいのを3つである。

1.21.1

魚群〔座〕の〔話〕

 これらは、大魚座の子孫である。これ〔大魚座〕の歴史は、これに言い及ぶときに、もっとはっきり説明しよう。で、これらのおののは、それぞれの部分に別々に横たわっている。つまり、ひとつは北の〔魚〕、ひとつは南の〔魚〕と呼ばれる。しかし、牡羊座の前足まで括り紐を有する。

 〔この星座が〕有するのは、北の〔魚〕は12[と、麻紐に12]、南の〔魚〕は15個。ただし、これを結びつけるそれらの麻紐が有するのは、北の〔魚〕に3つ、南の〔魚〕に3つ、東の方に3つ、括り紐に3つ。全部で12個。2つの魚座と括り紐の星は全部で39個。

1.22.1

ペルセウス〔座〕の〔話〕

 これについて記録されているのは、名声ゆえに星界に置かれたということである。すなわち、ゼウスは黄金〔の雨〕としてダナエーと交わって、彼を生んだ。そして、ポリュデクテースによってゴルゴーン退治に派遣され、犬皮〔の兜〕と、それを履くと空中を進むことのできるサンダルとを、ヘルメースからもらった。またヘーパイストスからは、金剛で作った鎌をももらったと思われる。また、悲劇作家アイスキュロスが『ポルキュスの娘たち』の中で謂っているところでは、ゴルゴーンたちはグライアイ〔「老婆たち」の意〕を護衛役として持っていた。そして、この〔グライアイ〕は、1つの眼を持ち、見張っている間、これをお互いにやりとりしていた。そこでペルセウスは、やりとりしている間、見守っていて、これを取ると、トリトーニス湖に投げ捨て、かくて、寝入っていたゴルゴーンたちのところに侵入して、メドゥーサの首を奪い取った。これをアテーナーは自分の胸に付け、ペルセウスには、星界での位置を決めた。そこから、ゴルゴーンの頭をも持っているところが観られるのである。

 〔この星座が〕有するのは、[頭には1つ]、それぞれの肩に明るいのを1つずつ、右手の先に明るいのを1つ、肘に1つ、左手の先に1つ、この〔手〕にゴルゴーンの頭を持っていると思われる。ゴルゴーンの頭に1つ、腹に1つ、右臀部に明るいのを1つ、右太腿に明るいのを1つ、膝に1つ、向こう脛に1つ、足に1つ暗いの、左太腿に1つ、膝に1つ、向こう脛に2つ、ゴルゴーンの巻き毛あたりに3つ。<全部で19個>。ただし、頭部[8つ]、鎌、[5つを有する]、が無星に見られるが、一部の人たちには雲状の集まりで見られると思われている。

1.23.1

プレイアス〔座〕の〔話〕

 牡牛座のいわゆる後腰の分け目にプレイアス座はある。これが7つの星に集められているのは、アトラースの娘たちだからと言われている。それゆえ、7星(eJptavsteroV)とも呼ばれる。ただし、見えるのは7つではなく、6つである。その理由は、ほぼ次のように言われている。すなわち、言い伝えでは、6人は神々と交わったが、1人は死すべきものと〔交わった〕からだと。たしかに、3人はゼウスと交わり、エーレクトラーは、彼女からダルダノスが、マイアーは、彼女からヘルメースが、ターユゲテーは、彼女からラケダイモーンが〔生まれた〕。また、2人はポセイドーンと交わり、アルキュオネーは、彼女からヒュリエウスが、ケライノーは、彼女からリュコスが〔生まれた〕。またステロペーはアレースと交わったと言われており、彼女からオイノマーオスが生まれた。しかし、メロペーは死すべき者たるシーシュポスと〔交わったの〕であり、それゆえまったく見えない。しかし、〔彼女たちが〕人間界において最大の名声を得ているのは、季節毎に先触れをなすからである。ヒッパルコスによれば、非常にいい状態で三角形の配置を保っているという。

1."24R[12]".1

竪琴〔座〕について

 これは9つが配され、ムーサたちの持ち物である。しかし最初は、ヘルメースによって、亀と、アポッローンの牛たちから拵えられた。しかし9弦を持つに至ったのは、7惑星にちなんでか、あるいは、アトラースの娘たちにちなんでかである。とにかく、アポッローンがこれを受け取って、歌曲に調和するようにして、オルペウスに引き渡した。彼〔オルペウス〕は、ムーサたちの一人カッリオペーの息子であるから、ムーサたちの数にちなんで弦を<9本に>作り、人間界において大いに先導して[あまりに]評判を博したあまり、彼について、歌によって獣を魅了するというぐらいの評判を得ることになった。ところが、妻ゆえにハーデスの〔館〕に降り、そこがどのようであったかを見て、それまでディオニューソスのおかげで栄化されてきていたのだが、これを崇拝せず、ヘーリオスをば、神々の中で最大とみなし、これをアポッローンとさえ命名した。夜、起き上がり、早朝、パンガイオンと呼ばれる山に登り、日の出を待ったのは、ヘーリオスを最初に見るためであった。ここから、ディオニューソスは怒り、彼にバッサリスたちを送ったと、悲劇作家アイスキュロスは謂っている。彼女らは、彼を引き裂き、四肢をそれぞればらばらに棄てた。しかしムーサたちが取り集め、いわゆるレイベートロイに埋葬した。しかし竪琴は、与えるべき相手を持たなかったが、あの者とこれらの記憶を星界に置くようゼウスに要請した。彼が承知したので、そのように置かれた。しかし季節にしたがって沈んで、あの者の悲運の標識となる。

1."24D".1

竪琴〔座〕の〔話〕

 これは9つが星界に配されているが、ムーサたちの持ち物である。しかし最初は、ヘルメースによって、亀と、アポッローンの牛たちから拵えられたが、弦を9本持つに至ったのは、アトラースの娘たち(=AtlantivdeV)にちなむ。とにかく、アポッローンがこれを受け取って、歌曲に調和するようにしたうえで、オルペウスに与えた。彼〔オルペウス〕は、ムーサたちの一人カッリオペーの息子であるから、ムーサたちの数にちなんで弦を9本に作り、人間界において大いに先導して評判を博したあまり、彼について、歌によって樹木や鳥類や獣を魅了するという、そのような評判を得ることになった。彼〔オルペウス〕は、ディオニューソスは崇拝せず、ヘーリオスをば、神々の中で最大とみなし、これをアポッローンとさえ命名した。また、夜の間に起き上がり、早朝、パンガイオンと呼ばれる山に登り、日の出を待ったのは、ヘーリオスを最初に見るためであった。ここから、ディオニューソスは怒り、彼にバッサリスたちを送ったと、悲劇作家アイスキュロスは謂っている。この女たちは、彼を引き裂き、四肢をそれぞればらばらに棄てた。しかしムーサたちが取り集め、いわゆるレイベートロイに埋葬した。しかし竪琴の方は、与えるべき相手を持たなかったが、星界に置くようゼウスに要請したのは、あの者とこれらの記憶を星界に置くためである。彼が承知したので、そのように置かれた。しかし季節にしたがって沈んで、あの者の悲運の標識となる。

 〔この星座が〕有するのは、それぞれの「櫛」に1つずつ、それぞれの「腕」の先に等しく1つずつ、それぞれの「肩」に1つずつ、「軛」に1つ。「底」に1つ、白くて明るいの。全部で8つ。

1."25R[13]".1

鳥〔座〕について

 これは大〔鳥〕と呼ばれ、これを〔人々は〕白鳥になぞらえる。ゼウスはこれと同じ姿になって、アッティカ地方のラムヌースに舞い降り、そこでネメシスを堕落させた。彼女の方は卵を生み、これから生まれたのが、クラティノスが記録したところでは、ヘレネーだという。それで、この方は変身したのではなく、白鳥の型を採って、こういうふうに天上へと飛び立ったので、星界を飛び渡るものとして置いたのである。(finis col.)

1."25D".1

白鳥〔座〕の〔話〕

 これはいわゆる大〔鳥〕で、これを〔人々は〕白鳥になぞらえる。言われているところでは、ゼウスはこの生き物と同じ姿をとって、ネメシスを愛したのは、彼女が、処女性を守るためにありとあらゆる姿に変わるので、この時も白鳥になったのであった。こうして彼もこの鳥と同じになって、アッティカ地方のラムヌースに舞い降り、そこでネメシスを堕落させた。彼女の方は卵を生み、これから孵って生まれたのがヘレネーだと、詩人クラティノスが謂っている。それで、彼は変身したのではなく、こういうふうに天上へと飛び立ったので、白鳥の方をも星界に置いた。このとき在ったとおり、飛んでいるところである。

 〔この星座が〕有するのは、頭に明るいのを1つ、首に明るいのを1つ、右翼に5つ、左翼に5つ、身体に1つ、尾羽に1つ、これは最大のものである。<全部で14個>。

1.26.1

水甕〔座〕の〔話〕

 これは、行為にちなんで、「水甕」座と呼ばれていたと思われる。すなわち、柄杓(oijnocovh)を持って立ち、水からの数多の汲み出し(ejkcuvsiV)を為すのである。さらに一部の人たちの言うには、ガニュメーデースその人であり、あたかも柄杓で注いでいるかのように影像が表象されることが、充分な徴であるという。また詩人〔ホメーロス〕からも典拠が引用されるのは、詩人自身が言っているからである、これ〔ガニュメーデース〕は、美しさに抜きん出ていたので、神々が彼を価値ありと裁定し、酌をするために、ゼウスのもとに運び上げられたと、また、人間どもに知られていない不死性に与ったということも。さらに、行われる酌は、神々によっても飲まれるネクタルと想像されるのは、神々の述べられている飲み物の証拠に基づいて、それと〔人々が〕推測するからである。

 〔この星座が〕有するのは、頭に暗い星2つ、それぞれの肩に1つずつ、どちらも大きい、それぞれの肘に1つずつ、右の手先に明るいのを1つ、それぞれの胸に1つずつ、それぞれの胸の下の箇所に1つずつ、左臀部に1つ、それぞれの膝に1つずつ、右の船に1つ、それぞれの足に1つずつ、<全部で17個>。水の汲み出しは31この星から成り、これが有する2つの星は明るい。

1.27.1

山羊角〔座〕の〔話〕

 これは恰好が山羊足のパーン(Aijgivpan)に等しい。つまり、後者から生まれたのである。で、獣の下半身と、頭に角を持っている。〔星界に〕置かれたのは、ゼウスといっしょに育った乳兄弟だからである。『クレータ誌』を記録したエピメニデースは言っている、ティーターンたち攻撃に出征したとき、イーデー山に彼といっしょにいたと。ところで、彼は巻き貝を発見したと思われており、これで共闘者たちを完全武装させたのは、エーコーの恐慌(Panikovn)のためである。これをティーターンたちは避けた。かくて、<ゼウスが>支配を引き継いだ後、彼と母親の山羊を星界に置いた。しかし、巻き貝は海で見つかるので、魚の<尾>という標識を持っている。

 〔この星座が〕有するのは、それぞれの角に1つずつ、<鼻に1つ>明るいの、頭に2つ、首の<下に>1つ、胸<に>2つ、前足<に>1つ、<足先に1つ>、後ろ腰に7つ、腹に5つ、尾に2つ明るいの。全部で24個。

1.28.1

射手〔座〕の〔話〕

 これは射手である。これをたいていの人たちはケンタウロスだと言うが、別の人たちが否定するのは、彼が四脚とは見えず、立って弓を射ていると〔ころに見える〕からである。ケンタウロスなら、弓を使うものは一人としていない。ところがこちらの方は、人であり、馬の足と、ちょうどサテュロスたちのように尻尾を持っている。だからこそ、後者には説得的でない、むしろ、ムーサたちの養母エウペーメーの息子クロトスだ、と思われたのである。かれはヘリコーン山に住み、暮らした。ムーサたちも、彼が弓術を発明して、山野から食糧を得させたとは、ソーシテオスが謂っているとおりである。さて、ムーサたちと交わり、彼女たちに耳を傾け、称讃したいというしるしに拍手した。なぜなら、声の不明瞭さが、一つの拍手で表されたからである。そこから、この者を見て、その他の人たちも同じことをするようになった。だからこそ、ムーサたちは、この男の望みで名声の恩恵を得たので、敬虔な彼を顕彰するようゼウスに要請し、そしてそのとおり、手の使用によって星界に置かれたのである。象徴として弓を構えて。他方、人間界には彼の行為が存続した。つまり、船も、陸の〔仕〕事においてのみならず海洋の〔仕〕事においても、〔拍手は〕はっきりするという彼の証拠である。まさしくそういうわけで、彼をケンタウロスだと書く人たちは間違っているのである。

 〔この星座が〕有するのは、頭に2つ、弓に2つ、矢に2つ、右肘に1つ、手先に1つ、腹に明るいのを1つ、後ろ腰に2つ、尻尾に1つ、前の膝に1つ、蹄に1つ、<後ろの膝に1つ>。全部で15個。残り7つの星は脚の下にある。しかし後方のものらは等しくはっきり見えない。

1.29.1

矢〔座〕の〔話〕

 これは弓の矢弾であり、アポッローンのものと言い伝えられるものである。また、まさしくこれによって、ゼウスのために雷霆を製作したキュクロープスたちを、アスクレーピオスが原因で殺したところのものである。しかし彼はこれをヒュペルボレイオイ — ここには羽根造りの神殿もある — に隠した。しかし以前は、ゼウスが彼の殺人の罪を浄め、アドメートスのもとでの奴隷奉公 — これについてはエウリピデースが『アルケースティス』の中で言っている — をやめさせたとき持ち帰られたと言われている。で、このとき、この矢は、実りをもたらすデーメーテールによって、上天を通って運び上げられたと思われる。だが、巨大であった。ポントスのヘーラクレイデースが『正義について』の中でそう謂っている。ここからして、矢弾を星界に置いたのはアポッローンであって、自分の闘いを記念するために星座にしたのである。

 〔この星座が〕有するのは、先端に1つ、中央に1つ暗いの、矢筈に2つ。1つは最も分かりよい。全部で4つ。

1.30.1

鷲〔座〕の〔話〕

 これは、ゼウスのために、彼が酌人を持つよう、ガニュメーデースを天に運びあげたものである。星界に在るのは、はるか昔、神々が鳥類を分配したとき、これを選んだのがゼウスであったというだけの理由である。諸々の生き物の中でこれのみが、太陽に向かって、光線に卑屈にさせられることなく飛翔する。そして万物に対する統治権を有する。そこで、舞い降りるごとく、翼で空を切って飛ぶところが表象される。アグラオステネースが『ナクソス誌』の中で謂うところでは、ゼウスはクレータ島に生まれ、手を尽くして追求されたので、〔この鷲が〕ひそかに二度盗み出し、そこからひそかに盗み出されて、ナクソスに連れ行かれ、育てられて、年頃になって、神々の王座をつかんだという。で、ナクソスからティーターンたち攻撃に出陣し、鷲が彼といっしょに進むために現れ、そこでこの吉兆を自分の聖なるものとし、[星座にして]それゆえ天上の名誉にあたいするとみなしたという。

 〔この星座が〕有するのは、4つの星で、このうち中央のものが明るい。

1.31.1

海豚〔座〕の〔話〕

 これが星界に置かれたのは、次のような理由によると言われている。ポセイドーンが、アムピトリーテーを妻に得たいと望んだが、彼女は用心して、アトラースのもとに逃れた。処女性を守り通すことを熱心に求めたからである。さらにたいていのネーレーイスたちも、隠れた彼女を匿ったので、ポセイドーンは数多くの探偵を送り出し、その中に海豚も含まれていた。そして、〔海豚が〕アトラースの群島のあたりをうろついているとき、出くわし、ポセイドーンのところに報告し、連れて行った。こうして彼は彼女を娶って交わり、海における大いなる名誉をこれ〔海豚〕に定め、これを聖なるものであると名づけて、自分の組員として星界に置いた。ポセイドーンそのものに懇ろにしようとするかぎりの人たちは、善行の最大の名誉をこれにわかつために、手の中に持つ海豚を作る。これ〔海豚〕については、アルテミドーロスも、エロースについて彼によって詩作された『エレゲイア詩集』[という書物]の中で言っている。

 〔この星座が〕有するのは、口に1つ、背鰭に2つ、腹についた鰭に3つ、背中に1つ、尾に2つ。全部で9個。さらに、この生き物が音楽好きと言われるのは、ムーサたちの数の星を有するからである。

1.32.1

オーリーオーン〔座〕の〔話〕

 これを、ヘーシオドスは謂う、ミーノースの娘エウリュアレーと、ポセイドーンとの〔間に生まれた〕子であるが、これに贈り物が与えられた結果、波の上を、地上同様に進める、と。しかし、キオスにやって来た彼を、酒に酔って、オイノピオーンの娘メロペーに暴行した、オイノピオーンは知って、その横暴に腹を立て、彼を盲目にして、その地方から追放した。そこでレームノス島に赴き、真実を話してヘーパイストスと交わりを結んだ。後者は彼を憐れみ、これに、自分の[親しい]家僕ケーダリオーンを与えた。道案内を[し、彼を導く]ようにとである。これを、道を示す者として、肩に載せて運んだ。かくて日の出の方に赴き、ヘーリオス〔「太陽」〕と交わりを結んで、健康になり、こういう次第で、再びオイノピオーン攻めに出かけたと思われる。これに罰を課するためである。しかし後者は、市民たちのおかげで地下に匿われた。そこで後者へ探究をあきらめて、去ってクレーテー島に至り、漁師たちの〔守護神〕アルテミスと〔その母の〕レートーが臨在する中、狩猟生活を過ごし、取り尽くして地上に生息するあらゆる動物がいなくなるほどに思われた。そこでゲーが彼に怒り、巨大な蠍を放ち、これの針に刺されて彼は亡くなった。ここから、彼の勇気ゆえに、ゼウスが彼を星界に置いたのは、アルテミスとレートーに要請されたからであり、事件の記念となるその獣も同様である。しかし他の人たちが謂うには、この者は成長してアルテミスに恋したが、彼女の方は彼に対して蠍をけしかけ、これの一刺しで死んだが、神々は憐れんで、この事件の記念に、彼とこの獣を天界の星座としたという。

 〔この星座が〕有するのは、頭には3つ暗い星、それぞれの肩に明るい1つ、右肘に<暗い>1つ、手の先に<同じく暗いのを>1つ[暗いのを2つ]、帯に3つ、手の中に3つ明るいの、それぞれの膝に明るいのを1つずつ、それぞれの足に同じく明るいのを1つずつ。<全部で17個>。

1.33.1

犬〔座〕の〔話〕

 これについて記録されているのは、投槍とともにエウローペーに送られた守り役だということである。ただし、この両者を受け取ったのはミーノースであり、後に、プロクリスのおかげで病から健康になったので〔その御礼に〕彼女に贈り、さらに後になって、ケパロスが、プロクリスの夫であったので、これら両者を意のままにした。そして、〔テウメッサの〕牝狐退治にこれ〔犬〕を連れてテーバイに赴いた。この〔狐〕には、何ものによっても滅ぼされることはないという神託があった。そこで、ゼウスはせん術なく、後者を石化させ、前者をば、価値ありと裁定して、星界に引き上げた。しかし別の人たちが謂うには、これはオーリーオーンの犬であり、狩猟に従事する彼に付き随ったことは、生き物を狩るどんな人たちにも、この獣〔犬〕がいっしょになって手伝うと思われるとおりである。これ〔犬〕が星界に引き上げられたのは、オーリーオーンの上昇にしたがったのであり、それが尤もなことであったのは、オーリーオーンにふりかかったことの何ひとつ省略されていないからである。

 〔この星座が〕有するのは、頭[あるいは舌]には1つ、これはイシスと呼ばれるもので、またセイリオスとも呼ばれるものであるが、大きくて明るい。ところで、これらの星たちを、天文学者たちがセイリオスたちと呼ぶのは、炎の動きのゆえである。<舌には1つ、明るいの。これは「犬」と呼ばれる、首に2つ>、それぞれの肩に1つずつ暗いの、胸に2つ、前足に3つ、後ろ腰に3つ、腹に2つ、左臀部に1つ、足先に1つ、右足に1つ、尻尾に1つ、全部で20個。

1.34.1

兎〔座〕の〔話〕

 これは狩りの時に見つかるものである。生き物の中でそのすばしっこさゆえに、ヘルメースがこれを星界に置くのがよいと思った。ただし、四足動物の中で唯一、重複妊娠するように思われ、妊娠していて、さらに胎に持つと、哲学者アリストテレースが『動物研究』〔動物誌のことか?〕(579b)の中で言っている。

 〔この星座が〕有するのは、それぞれの耳に1つずつ、口に3つ、このうち後ろ腰のは明るく、後ろ足にそれぞれ1つずつである。<全部で7個>。

1.35.1

アルゴー号〔座〕の〔話〕

 これがアテーナーによって星界に配置されたのは、これこそ最初に拵えられ[初めて建造され]た船であり、声を発するもので、足を踏み入れられない海洋を最初に通過したのだが、後世の者たちに最もはっきりした手本となるためであった。ただし、星界に置かれたのは、これの影像全体ではなく、舵柄が舵とともに帆柱までである。それは、航海にたずさわる者たちが、〔これを〕見て、その功に元気になるためである。これは神々の中にあるので、その名誉は老いることなく続くからである。

 〔この星座が〕有するのは、船尾に4つ、ひとつの舵に5つ、もうひとつのには4つ、後牆の先に3つ、甲板に5つ、竜骨の下に6つ、相互に接近しているの。<全部で27個>。

1.36.1

海獣〔座〕の〔話〕

 これは、カッシオペイアがネーレーイスたちと美しさをめぐって争ったことが原因で、ポセイドーンが差し向けたものである。しかしペルセウスがこれを亡き者にしたので、それゆえ、彼の功業の記念として星界に置かれた。このことは、悲劇作家ソポクレースが『アンドロメダー』の中に記録している。

 〔この星座が〕有するのは、尻尾に2つ明るいの、だが、尾から腹の窪のふくらみまで5つ、腹の下に6つ。全部で13個。

1.37.1

河〔座〕の〔話〕

 これはオーリーオーンの左足に始点を持っている。アラトスによれば、エーリダノス河と呼ばれている。が、それについて明証は何ひとつ提示していない。別の人たちが謂うには、これはネイロス河であるのが最もただしいという。たしかに、南中方向に始原を持つのは、これのみである。とにかく、数多の星辰によって秩序づけられている。これの下には、いわゆるカノーボス星も横たわっており、この星はアルゴー号〔座〕の舵板の近くにある。しかしこれより下には何の星も見えない、それゆえペリゲネイオスとも呼ばれる。

 〔この星座が〕有するのは、[頭に1つ]最初の曲がりに3つ、第二の〔曲がり〕に3つ、第三の〔曲がり〕から果てまでに7つ、これらはネイロス河の河口と言い伝えられている。全部で13個。

1."38R[1]".1

<魚〔座〕について>

 これは、いわゆる大魚〔座〕であり、水甕〔座〕から流れ出る水の中で曲がっていると言われている。しかし、これは、クテーシアスが謂うところでは、昔、バムビュケー〔ヒエロポリス・バムビュケー〕地方のとある湖にいたと記録されている。ところが、夜、デルケトー〔アタルガティスとも言われる〕 — この地方に住んでいる人たちは、彼女のことをシュリアの神〔シュリア・テア〕と名づけていた — が転落したとき、彼女をこれ〔大魚〕が救ったと思われている。これから2匹の魚が生まれたとも言い伝えられている。これらをみな、アプロディテーの娘たる彼女ゆえに崇拝もし、星界にも置いた。また、かの地方に住んでいる人たちは、黄金と銀の魚となし、聖なるものとして、災難について完全なる敬意を払っている。

1."38D".1

魚〔座〕の〔話〕

 これは、いわゆる大魚〔座〕であり、水甕〔座〕の流れ出る水の中で曲がっていると言われている。しかし、これについて記録されているのは、クテーシアスが謂うところでは、昔、バムビュケー〔ヒエロポリス・バムビュケー〕地方のとある湖にいたという。ところが、夜、デルケトー〔アタルガティスとも言われる〕 — この地方に住んでいる人たちは、彼女のことをシュリアの神〔シュリア・テア〕と名づけていた — が転落したとき、<彼女をこれ〔大魚〕が救った>。これから2匹の魚が生まれたとも言い伝えられている。これらをみな、星界にも置いた。

 〔この星座が〕有するのは、12この星、このうち鼻にあるのが明るい3つ。

1."39R[2]".1

祭壇〔座〕について

 これは、クロノス攻撃にゼウスが出征したとき、これによって初めて神々が盟約を結んだところのものである。〔盟約を結んだ所以は〕キュクロープスたちが〔雷霆を〕拵えたのだが、雷霆の力が見られないよう、火が覆いを持っていたからである。さて、この事績に与ったため、人間どもにもこの拵えを定めたのは、お互いに共同性を選択しようとする者たちが、競い合いにおいてであれ、***においてであれ、信実(pivstiV)をこそ最高の義と定め、右手で〔これに〕触れる。それが雅量(eujgnwmosuvnh)の証とみなすからであるが、そのようにして誓うことを望んむ者たちが、これの上で供犠するためである。同様に占い師たちも、より安全な〔卦〕を見ることを望む場合には、これの上で供犠する。(finis col.)

1."39D".1

祭壇〔座〕の〔話〕

 これは、クロノス攻撃にゼウスが出征したとき、これによって初めて神々が盟約を結んだところのものである。そこで、この事績に与った彼ら〔神々〕は、記念としてこれも天上に置いた。これを、人間どもは酒宴の席にも運び込み、供犠する。誓うこともお互いに共同性を選択し、右手で〔これに〕触れる。それを雅量(eujgnwmosuvnh)の証とみなすからである。

 〔この星座が〕有するのは、焼き網に2つ、台に2つ。全部で4つ。

1.40.1

ケンタウロス〔座〕の〔話〕

 これは、ペーリオン山に住んでいたケイローンであると思われており、義しさの点ではあらゆる人間を凌駕し、アスクレーピオスとアキッレウスを教育したものである。ヘーラクレースが彼のところに赴いたのは、恋情からで、洞窟の中でパーンを崇めつつ交わりもしたと思われる。で、ケンタウロスたちのうち彼を亡き者にすることはなく、彼に耳を傾けたとは、ソークラテース派のアンティステネースが『ヘーラクレース』の中で謂っているとおりである。さて、彼らが充分な期間交際していたとき、彼〔ヘーラクレース〕の矢筒から矢弾が抜け落ちてケイローンの足に〔刺さり〕、そういうわけで彼〔ケイローン〕が死んだので、ゼウスは、敬虔と災難のゆえを以て、彼を星界に置いた。それで、祭壇座の近く、手中に獣がいる。これは、供犠するための捧げ物と思われ、これが彼の敬神の最大の徴である。

 〔この星座が〕有する星は、頭の上に暗いのを3つ、それぞれの肩に明るいのが1つずつ、左肘に1つ、手先に1つ、馬形の胸の中央に1つ、それぞれの前の武器に1つずつ、後ろ腰に4つ、腹に2つ明るいの、尻尾に3つ、馬の知りに1つ、明るいの、それぞれの後ろ膝に1つずつ、それぞれの武器に1つずつ。全部で24個。さらに、両手にの中にもいわゆる獣があり、これの形は四角をなす。一部の人たちは、これは革製の酒袋であり、これから神々のために祭壇の上に奠酒するものだと謂う。そこで、これを右手に持ち、左手にはテュルソス杖を〔持つ〕。獣が有する星は、尻尾に2つ、後ろ足の先に明るいのを1つ、<両足の間に1つ、後ろ腰に明るいのを1つ>、前足に1つ明るいのを、その上に1つ、頭に3つ。全部で10個。

1."41R[4]".1

酒和え瓶と大烏が上にいる水蛇〔座〕について

 これは、起こった明瞭な事件に由来する共通の星である。すなわち、大烏はアポッローンから名誉を得ている。というのは、それぞれの神は〔それぞれの〕鳥を持っているからである。さて、神々のために供犠が行われたとき、とある泉から奠酒を運んでくるよう派遣された。彼女〔大烏〕は、以前は、酒が現れるより前は、最も神聖な存在であった。泉のそばに未成熟な実をつけた[未成熟無花果の]無花果の樹を見て、実が熟れきるまで留まった。充分な日数が経って、それらの無花果が熟したので喰ったが、過ちと感じたので、泉にいた水蛇をも引っさらって、これを酒和え甕といっしょに運び、こいつが泉にあった水を、毎日、飲んでしまったと謂うためである。しかしアポッローンは、何があったかを心得ていて、大烏には、人間界で充分な期間渇くという罰を与えたとは、アリストテレースが『獣たちについて』の中で述べており、アルケラオスも同様に『自然の奇異』の中で謂っている。

1."41D".1

酒和え瓶と大烏が中にいる水蛇〔座〕について

 これは、起こった明瞭な事件に由来する共通の星である。すなわち、大烏はアポッローンから名誉を得ている。というのは、神々のそれぞれには、奉納されている鳥がいるからである。さて、神々のために供犠が行われたとき、とある泉から奠酒を運んでくるよう派遣された。彼女〔大烏〕は、泉のそばに未成熟な実をつけた無花果の樹を見て、実が熟れきるまで留まった。さて、充分な日数が経って、それらが熟したので喰ったが、過ちと感じたので、泉にいた水蛇をも引っさらって、酒和え瓶といっしょに運んだ。こいつが毎日、泉にあった水を飲んでしまったと謂うためである。しかしアポッローンは、何が行われたかを心得ていて、大烏には、人間界で充分な期間渇くという罰を与えたとは、アリストテレースが『獣たちについて』の中で述べているとおりである。他方、神々に対する過ちのはっきりした言及を与えるために、水蛇〔座〕と<酒和え瓶座と大烏座とは>、飲むことができず、近づくこともできないように彼は配置したのである。

 〔この星座が〕有する星は、水蛇座は頭の先に3つ明るいの、最初の曲がりに6つ、明るいのは、1つが極端、第二の曲がりに3つ、第三の曲がりに4つ、第四の〔曲がり〕に2つ、第5の〔曲がり〕から尻尾までに9つ暗いの。全部で27個。

 さらに尻尾の上には、大烏座もあり、日没の方を向いている。有するのは、嘴に暗い1つ、翼に2つ、尾羽に2つ、それぞれの足の先に1つずつ。全部で7個。

 これからは充分に離れ、とぐろから酒和え瓶〔座〕が、乙女座の膝の方に傾いて横たわっている。有する星は、酒和え瓶座が取っ手に2つ、<それぞれの耳の下に2つずつ>暗いのを、中央に2つ、底のところに2つ。全部で10個。

1."42R[5]".1

プロキュオーン〔座〕について

 プロキュオーンと呼ばれる***言われるのは、狩猟好きとして、オーリーオーンその人の傍に置かれたからである。というのも、兎座がつながり、他の獣たちも彼のそばに<いっしょに見られる>からである。(finis col.)

1."42D".1

プロキュオーン〔座〕の〔話〕

 これは、大犬座の前にある〔星座〕である。プロキュオーンと言われるのは、「犬の前」という意味である。また、オーリーオーンの犬である。というのは、彼が狩猟好きであるため、これが彼のそばに置かれたと言われているからである。というのも、兎座がつながり、他の獣たちも彼のそばにいっしょに見られるからである。

 〔この星座が〕有するのは、3つの星でこのうち1つは最初に[上昇する]明るい〔星〕である。また、〔大〕犬座と同じふるまいをする。だからこそ、プロキュオーンと呼ばれ、あのもの〔大犬座〕よりも先に昇り、沈むのである。

2."P".1

 しかし、これらに次ぐ星辰は、獣帯の圏内にあって、これをヘーリオス〔太陽〕が12ヵ月で縫って進む、だからこそ、獣帯の星座〔宮〕もこれと同数あるのである。

2.43.1

惑星たち

2.43.2
 これらは固有の動きを有するゆえに、惑星と呼ばれている5つの星たちについて。

 [で、]5人の神々のものと言われている。第一はゼウスの〔星〕で、パイオーン〔土星〕、大きい。第二は呼び名はパエトーン〔木星〕、大きくない。これはヘーリオスにちなんで名づけられた。第三はアレースの〔星〕。ただし、火のような〔星〕と呼ばれ、大きくはなく、色は鷲座の中の〔星〕に等しい。第四はポースポロス〔「光をもたらすもの」の意〕、アプロディーテーの〔星〕、色は白い。ただし、以上すべての星の中で最大である。これをヘスペロス〔「夕べの星」の意〕ともポースポロス〔「明けの明星」の意〕とも〔人々は〕呼ぶ。第五はヘルメースの〔星〕、スティルボーン〔「きらめくもの」の意〕、明るくて小さい。だたし、ヘルメースに与えられたのは、彼が最初に天の整序と、星辰の配置と、時刻の計測、四季の徴の適機を示したからである。スティルボーンと呼ばれるのは、この〔星〕がそのような見え方をするからである。

3.44.1

天の河(galaxivaV (kuvkloV))

 これは眼に見える環の内にあり、これは「乳の道」と命名されたと言い伝えられる。なぜなら、ゼウスの息子たちは、彼らのうち何びとであれ、ヘーラーの乳房から乳を吸わないかぎり、天界の名誉に与ることができなかったからである。だからこそ、言い伝えでは、ヘルメースはヘーラクレースが生まれるや、運び上げ、ヘーラーの乳房に押しつけ、彼は乳を吸った。ところが、ヘーラーが気づいて、これを振り払った、まさにそういう次第で、有り余った〔乳〕があふれだしたので、乳の環(天の河)ができあがったという。

2012.11.20. 訳了。

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