プルータルコスの『断片集』2

TLG 0007
PLUTARCHUS Biogr. et Phil.
(A.D. 1-2: Chaeronensis)
148 1
0007 148
Fragmenta, FGrH #388: 3B:264-265.
(Q: 507: Hist., Myth.)

feather.gif


『断片集(Fragmenta)』

"3b, 388, F".1.1
EUSEB. P. E. 3 prooem. 5:
 いったい、どうして、わたしがこれらのことを予想する必要があろうか、当の(scil. カイローネイア人プルータルコス)本人から聞くことができるのに。『プラタイアイにおけるダイダロス祭について』を書いた本の中で、神々に関する口にすべからざる自然究理の教説ゆえに、多衆には知られないことを、ほぼ以下のように……
 [c. 1, 3]……彼らの記録によれば、ヘーラーはエウボイアで育ったが、まだ処女の時、ゼウスによって拐かされ、連れ去られて、ここ、キタイローンが彼らのために蔭深きとある奥の間、おのずとできた閨を提供したところに匿った。そして、マクリス — ほかならぬヘーラーの乳母であった — 探し求めてやって来て、見つけ出そうとしたが、キタイローンはお節介することを許さず、その場に近づくことさえも許さなかった。あたかも、ゼウスがそこでレートーといっしょに休息し、いっしょに暇つぶししているかのようなふりをして。そこでマクリスは立ち去り、そういう次第でそのときはヘーラーは気づかなかったが、後になってレートーへの感謝を思い起こし、祭壇を等しくし、神域を共にすることに決め、その結果、レートー・ミュキア〔奥の間のレートー〕にも先に供犠することになったのである。しかし、一部の人たちは、レートー・ニュキア〔夜のレートー〕と言う。しかしながら、この名前のどちらにも、秘匿されたものto; kruvfionとか逃れ去ったものdialelhqovVという意味がある。しかし何人かの人たちが謂うには、ヘーラーがそこでゼウスと交合しながら気づかれなかったのだから、そういう次第で彼女自身がレートー・ニュキアと命名されたのだと。そして、婚姻が明らかとなり、最初の交わりがそこ、キタイローンやプラタイアイあたりだということが露見したので、彼女はヘーラー・テレイア〔完全なるヘーラー〕とか、ヘーラー・ガメーリオス〔婚姻のヘーラー〕と命名されたのだと……

 [6] ……しかし、おそらく、もっとばかげた神話をも云わねばならない。というのは、ゼウスは、ヘーラーが自分と仲違いし、もはや同じところに通ってくることを望まず、身を隠したので、せん術なくなり、さまよっていて、土地生え抜きのアラルコメネウスに行き合い、いかにすればヘーラーを騙して、自分がほかの女を娶るように注目されるか、この男に教えてもらった。そこでアラルコメネウスがいっしょに協働して、彼らは真っ直ぐな木理の全美な樫の樹を伐り、これを形造して、花嫁のように飾りつけた、ダイダレーと命名したうえで。次いで、祝婚歌はしかるべく称えられ、トリトーニスのニンフたちは沐浴の水を運び、ボイオーティアは、笛と行列を提供した。さて、これらのことが執り行われたので、ヘーラーはもはや我慢ならず、キタイローンから、プラタイアイの女たちが自分について来たのだが、降り、怒りと嫉妬のせいでゼウスのもとに押しかけた。そして、作り物であることが明らかになったので、喜びと笑いとともに仲直りし、彼女自身が婚礼の行列を先導した。そして、その木像には名誉を授け、この祝祭をダイダロス祭と命名したという。しかしながらこの木像が、無魂のものとはいえ、焼かれるのは、嫉妬のせいである……以上、プルータルコス。

"3b,388,F".2.1
EUSEB. P. E. 3, 8, 1:
 とにかく、プルータルコスはどこかで、次のように、一語一句間違いなく言っている。
 「木像の制作は、どうやら、かなり始原的であり、古いらしい、すくなくとも、初めてデーロスに、エリュシクトーンによって、アポッローンのために、使節団の奉納物とされたのは木製であり、土地生え抜きの者たちによって建造されたアテーナー・ポリアスの像 — これは今に至るもアテーナイ人たちの守っているものである — は木製であるからには。サモス人たちもヘーラーの木製の座像を持っていると、カッリマコス(F 105 Schn.; 100Pf)がこう謂っている。

スケルミスのよく磨かれし作品はいまだなれど、古習によって
汝は鑿にて彫られることなき、使い古した板なるが常。
かつてはかく神々を建てたればなり。というのも、アテーナーの
石の座を、ダナオスがリンドスに据えたゆえ。
スケルミスは、サモスにヘーラーの像を最初に彫ったと言い伝えられている。リンドスはロドスの都市。ダナオスは、アイギュプトスと争い、アテーナーの忠告によって舟を建造して、50人の娘をともなって逃れる。途中、ロドスに寄港し、リンドスにアテーナーの神殿を建てた。この神像が木像であったことを言いたいわけで、訳者は多く、4行目livqonlitovnと読むが、翻訳はテキストどおりに読んだ。

 そして言われているところでは、ペイラース — 最初にアルゴリスのヘーラーの神域を築き、自分の娘カッリテュイアを女祭司に任命した人物 — は、ティリュンスあたりの森から、真っ直ぐな木理の梨の樹を伐り、ヘーラーの奉納像を形づくった。というのは、岩は硬くて、作業しにくく、無魂であって、神の姿に打つ気がしなかったからであり、金や銀は、不毛で腐敗した大地の病的な色と、火でいためつけられた打ち身のような痕跡とを開花させているように思われたからである。象牙はといえば、贅沢の多様さの一つとして、冗談で使うのがならいだった」。以上、プルータルコス。


forward.GIFアントーニーヌス・リーベラーリス『メタモルフォーシス』