ディオニューシオス・スキュートブラキオン(「革製武器の」の意。この説明しがたい添え名は、彼と同名の作家たちを異なることを疑いなく意味しているが、しかしその意味は伝承されていない)が著したのは、(1)シリアで書いた一連の物語。これはエウヘーメロスに倣って、遠い過去から、オリュムポスの神々を死すべき者たちとして「合理化した」ものである 有名なのはアマゾーン女人族、ディオニューソスはアレクサンドロス大王に譬えられている。(2)同じく、アルゴー号の船乗りたちの合理的説明。ヘーラクレースを彼らの指揮者とし、すべての御伽話的要素を、誤解(例えば、火を吐く牡牛は実際のタウロイ族 Tau:roi であった)と説明。後者の作品の新しい断片(PHib. 2. 186, 前3世紀末)は、少なくとも前250年頃を示唆している。彼の著作はアテーナイのアポッロドーロスに引用され、ディオドールス・シクルス3-4巻の神話の出典として伝存された。(OCD)
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SCHOL. APOLL. RHOD. III 200:「平野の小高くなった所に〔降り立った〕。その野はキルカイオンと呼ばれる」
キルケーのことを、ミーレートス人ディオニューシオスは『アルゴナウテースたちの物語』第1巻の中で、アイエーテースと、ペルセウス〔ペルセース〕の娘ヘカテーとの娘、しかしメーデイアの姉妹と〔謂っている〕。すなわち、それらの箇所で彼の謂うには、ヘーリオスに2人の息子あり、その名はペルセウス〔ペルセース〕とアイエーテースであった。このものたちがその地を領有し、アイエーテースはコルキス人たちとマイオータイ族とを、ペルセウス〔ペルセース〕はタウリケーを統治した。ペルセウス〔ペルセース〕の方が年長であって、土地の者たちの或る女を娶り、彼に娘が生まれた。その名がヘカテーである。この女は狩猟に関して男勝りとなり、初めて致命的な根を発見し、自分の父親を薬草で殺したという。この女がコルキス人たちのところに派遣されて、父の兄弟アイエーテースに娶られ、彼女から生まれたのがキルケーとメーデイアであるという。キルケーの方は、自分の母親を凌駕し、あることは彼女〔母親〕から聞き知り、あることは自分でも数多くの恐ろしい事柄を発明したという。メーデイアよりも年長である。しかし、ヘーシオドス(Th 1011)は、キルケーはヘーリオスの娘であると謂う。
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@8-III 242:「アイエーテースの子アプシュルトスが住んでいた。彼を産んだのは、カウカーソスのニンフ、アステロデイアで、それはテーテュスとオーケアノスの末娘エイデュイアが王の正妻に迎えられる前のことだった」
『ナウパクトス物語』を詩作した人(F 4 Ki)は、彼女のことをエウリュリュテーだと言う。しかしミーレートス人ディオニューシオスが、メーデイアとキルケーの母親ヘカテーのことだと〔言っていること〕は、先に述べられたとおりである。<しかし>ソポクレース(F 503)は、ネーレーイスたちの一人ネアイラのことだと。ヘーシオドス(Th. 958f.)は、イデュイアのことだと〔言っている〕。
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SCHOL. APOLL. RHOD. IV 177:
……ミテュレーネー人ディオニューシオスが謂うには、プリクソスの家庭教師(paidagwgovV)になったのは、名をクリオン〔「牡羊」の意〕という人物だった、と。
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@8-I 256:
……ディオニューシオスが第2巻の中で謂うには、クリオンはプリクソスの養育者となり、彼といっしょにコルキス人たちのもとに船出したという、それゆえにこそ、ここで牡羊の供犠のことが神話されているのである。
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@8-II 1144(=IV 119):
ディオニューシオスが謂うには、アルゴナウテースたちの中でクリオンはプリクソスの養育者となり、イーノーのたくらみがプリクソスに対して企てられたのを最初に感知し、逃亡させたという。まさにここから、牡羊によって救われたと神話されているのである
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---IV 1153:
ティマイオス(III)は、この(sc. イアーソーンとメーデイアとの)婚礼が挙行されたのはケルキュラにおいてと言っているが、ミーレートス人ディオニューシオスは、『アルゴナウテースたちの物語』第2巻の中で、ビュザンティオーンにおいてだと謂っている。しかしアンティマコスは、コルキス人たちのところにあるリュデーの川の近くで交わったという。
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---II 965:
ディオニューシオスは、第2巻の中で、彼女たち(sc. アマゾーン女人族)はリビュアに住んでいたと謂う。彼女らは体力に抜きん出、近隣の族民を撃退し、エウローペーにも進出して、そこに数多くの都市を建設し、また、リビュアで最強だったアトラース族をも自分たちに服従させたという。しかしゼーノテミス(V)謂うには、彼女らが住んでいたのはアイティオピアであり、対岸に渡ってそこの男たちと交わり、もし女児を出産したら、同じ教育で習慣づけ、もし男児なら、男たちに与えたという。
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SCHOL. APOLL. RHOD. II 207:
ディオニューシオスが『アルゴナウテースたち』の中で謂うところでは、ピーネウスがヘーラクレースに亡き者にされたのは、彼〔ヘーラクレース〕がわが子たちが荒野にあり、スキュティア女の中傷のせいでピーネウスに放逐されたと知ったからである。その女はピーネウスが求婚して結婚したクレオパトラーである。さらに、老人もヘーラクレースの前でピーネウスに対する告発者となった。だから、ヘーラクレースは、わが子たちが無実であるのを見出して、父祖伝来の館に連れもどり、ピーネウスが反抗し、子どもたちの別の者を溺死させようとしたので、これをヘーラクレースは殴り倒して殺したのである。
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[APOLLOD.] Bibl. I 118:
デーマラトス(42 F 2)は、彼(sc. ヘーラクレース)はコルキス人たちのところに航行したと伝承している。確かにディオニューシオスは、彼がアルゴナウテースたちの指導者でもあったと謂っている。
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@8 SCHOL. APOLL. RHOD. I 1289:
ミテュレーネー人ディオニューシオスが謂うには、この英雄は最高の善勇者たちといっしょに、コルキス人たちのところまで航行し、メーデイアに関する事件がイアーソーンといっしょに行われたという。デーマラトスも同様に〔謂っている〕。