断片1
Plinius H.N. VII, 2〔12〕:
ニカエアのイシゴヌスによれば、われわれが前に、北の方、ボリュステネス河〔ドゥニエプル河〕から10日行程のところにいると述べた食人族は、人間の頭蓋骨で酒を飲み、毛付きの頭皮をナプキンとして首のまわりに懸けているという。同じ大家が述べているところでは、アルベニアのある住民は鋭い灰色の眼をして生まれ、子どもの時から禿頭で昼間よりも夜間によく目が見えるとのことである。また彼の言うところでは、ボリュステネス河の向こう13日行程のところにいるサウロマタエ族はつねに2日に1食するだけであるという。
断片2
同 H.N. VII, 2〔16〕:
イシゴヌスとニュムポドロスの報告によれば、アフリカの同じ部分に魔術を行う一族がいて、祈りをあげると牧場は干上がり、木々は枯れ、子どもは死ぬという。イシゴヌスはこう付け加える。トゥリバリ族とイリュリア人の中に同じ種類の人々がいて、これがまた一睨みで魔法をかけ、彼らが長いこと、とくに怒りの目つきで見つめていることで人々を殺す。そして彼らの凶悪な眼は大人にきつく作用する。さらに著しいことは、彼らがひとつの眼に二つの瞳をもっていることである。
断片3
同 H.N. VII, 2〔27〕:
イシゴヌスによれば、キルニのインド民族は140歳まで生きるとのことだ。彼はまた、そのことは長寿のエティオピア人、中国人、アトス山の住民についても言えて、この最後のものの場合は、彼らがヘビの肉を食うからであって、それが身体に有毒な動物から、彼らの頭と衣服が害を受けないようにしているのだという。
断片4
Cyrillus C. Julian. III:
Kitteus〔キュプロス島南部の古代都市"Kition"人? それにしても、イシゴノスはニカエア市出身である〕イシゴノスの主張によれば、ロドス島にいるゼウスの牡牛は、日々の〔原語"λογγου"?〕と無縁ではないという。???
断片5
Tzetzes. Hist. I, 468:
ヒツジ〔probata〕はどこかに黄金色の羊毛を身につけているとイシゴノス(lib. Hesig.)が書いているのを、レーギノスが紹介している。
断片6
Sotion『泉と湖について』c.1:
テーバイに近いポトニアイにある泉 これから馬たちが飲むと狂うと、イシゴノスが『信じられないこと』の第2巻の中に記録している。
断片7
同 c.8:
〔シケリアの〕パリコイ市にある泉 この泉は6ペーキュスの高さまで、水を吹き上げ、隣接する場所を浸水せんとするかのような印象を与える。しかしまったく溢れ出すことはない。地元の人たちは、最も大事な事柄に関する誓いをこの泉にかけて行うと、イシゴノスが『信じられないこと』の第2巻の中に記録している。
〔アリストテレス『異聞集』57〕
断片8
同 c.43:
リュディアにタラ(Tala)(ラテン語ではカラミネー(Kalamine))と呼ばれる泉がある、ニュムペーたちの聖なる泉である、これが多数のアシと、その真ん中に、地元の人たちが王と呼ぶ1本とを運んでくる。彼ら〔地元の人たち〕は年に1度の供犠の祝祭を挙行して、宥める。これがすむと、水際に音楽(symphonia)のざわめきが起こり、アシたちが全員で合唱舞踏し、王も彼らといっしょに合唱舞踏しつつ、水際へと現れる、そして地元の人たちはこれを頭帯で冠し、送り出すのである、この旅そのものにも、また自分たち自身も、豊年満作の徴のあるところにたどり着けますようにと祈りつつ。イシゴノスが第2巻の中に記録しているところである。
断片9
同 c.2:
クラゾメナイにある泉 これから家畜(thremma)が飲むと、羊毛を色付きとすると、前述のイシゴノスが記録している。
断片10
同 C.9:
テッサリアのスコトゥサあたりに小さい小泉(krenidion)がある、これはどんな傷でも、言葉なき動物のでも治療する。この中に人が木を、砕きすぎたのではなく、断ち割ったのを、投げこむと、もとどおりにする。それほどこの水は粘着性があると、イシゴノスが主張している。
断片11
同 c.11:
イシゴノスの主張では、アタマスに泉があるという、この泉の水は冷たいが、上部は非常に熱く、そのため、薪を上に置くと、たちどころに燃えあがるという。
断片12
同 c.12:
クレイトール人たちのところに、同じ人の主張では、泉があり、この泉の水を飲んだひとは、酒の匂いに堪えられなくなるという。
断片13
同 c.13:
同じ人の主張では、イタリアはレアテ野〔レアテはローマの北方、サビニ族の都市〕に、メンテー(Mente)と名づけられている泉があり、上に述べられたのと同じような〔泉〕だという。
断片14
同 c.14:
同じく、コセー(Kose)〔?〕の近くに泉があり、口からあふれるほど酒を満たした陶器をこれに置くと、どんな粗酒もたちどころにきつい酒になると、同じ人が記録している。
断片15
同 c.21:
シュカミナイ市〔「桑(sykaminos)族の市」の意。フェニキア南部、プトレマイオス市近くの都市〕に泉があり、その水で沐浴したり、その水を飲んだ人たちは、髪が抜け、言葉なき動物たちの蹄は抜け落ちると、イシゴノスが記録している。
断片16
同 c.27:
イタリアのアリパノには深い井戸(phreation)があり、その水は見えるのだが、縄をいくらおろしても、水に接することがなく、何か熱いものによって妨げられると、イシゴノスが主張している。
断片17
同 c.36:
〔中部〕イタリアのタッラキナ〔ラティウム沿岸の都市〕あたりには、イシゴノスの主張では、ミュクライアと呼ばれる泉があり、これの傍の都市は無人である、この都市の住民は、水の多さのために都市を奪われたという。
断片18
同 c.40:
スウシアネー〔紅海北端、スウサを都として広がる地域〕にある水は、話では、メーデイアのもので、腐食性の毒薬によって魔法にかけられる〔施薬される〕という、この水はある水源から流れ出ており、地元の人たちによって守られている。これはまた次のような力を持っている。すなわち、これを塗られたり、これに濡れたものは、動物であれ道具であれ、遠くから火が見せられると、〔その火を〕自分の方に引き寄せ、たちどころに発火する。で、〔この水は〕ナプタ(naphtha)と呼ばれるのだが、しかしながらこの地から持ち出されるとその力を失うと、イシゴノスが記録している。 〔液状アスファルトについては、Str. XVI, 1_15; LXX. Da. III_46〕
断片19
Tzetzes Lyc. 10214:
クラティス〔南イタリアのタラント湾に注ぐ河、トゥーリオイのすぐ南を流れる〕 イタリアの河、沐浴する人たちの髪の毛を火色に染めると、歴史家イシゴノスが主張し、ソーティオーンやアガトステネースといった哲学者たち、また悲劇作家エウリピデースも〔主張している〕とおり。
エウリピデース『トローアデス』227/228