1
昨年のことは常に美しい。
[意味]
今まさに被害を経験していると、
そのひとは過去の名声を思い起こすだろう。
2
びっこのそばに住めば、おまえは足を引きずることを学ぶだろう。
[意味]
よこしまな連中といっしょにいると、おまえは連中に似た者になるだろう。
3
黄金は、その気のあるダナエー注8)を口説いた。
[意味]
"timaria"は知者をさえ手下にする、
放縦めあてに、金銭で武装して。
4
幸せであれ、しかしてわれを罵るがよい。
[意味]
富裕者たちは貧乏人たちの習慣を笑う。
ぼろは見えても、その大胆さ(tolna)を見ないからである。
5
ワニが言った、「わしは自国のお役に立つオリーヴ油売りだった」。
[意味]
よこしまで性悪な連中が愛するのは、
大家の血筋と美しき評判を得ていると言われることである。
6
ヘビが脱ぐのは皮であって、けっして考え方ではない。
[意味]
〔Sententia48〕 悪行者は、性格を変えず、欺瞞の型を取り替える。
7
面相を見たら、考え方を穿鑿するな。
[意味]
造りの悪い面相がしばしば明らかにするのは、
ひねくれた魂の左巻きの性格である。
8
これはヘルメースでもなし、これはヘーラクレースでもなし。
[意味]
自慢好きな者は、いつも悪人たちを非難しながら、
自由な舌で傷つけるのがならいである。?
9
動物は動物たちを眺める。
[意味]
命あるものらがお互いを眺めるのは当然である。
死者たちは生者たちに見えないからである。?
10
美しい言葉は硬骨を砕こう。
[意味]
おだやかな性格や、やさしい物言いは、
どんなに石のような人たちをも軟らかくするすべを知っている。
11
不眠の盗みに価値なし。
[意味]
〔Sententia47〕 骨折り労苦は相応の利得をもたらすことなく、
辛労者たちにいつも落胆を与える。
12
人生は総じて灯芯〔のごとし〕。
[意味]
人生の衆目をあつめるような贅沢も、すべて
極言すれば終わりを有する。
13
胡椒を持っている者は、レンズ豆の中にまでふりかける。
[意味]
金銭を物惜しみしない人間は、
異様な調味料を使う。
14
引き下ろす者を引き上げる者。
[意味]
貧乏は富裕を非難したことがある
裁きの票決でうつむくとして。?
15
驢馬とごろつきはひとつ運命を持っている。
[意味]
家僕よりもはるかに奴隷的な男は、
快楽のために辛労を堪えしのぶ。
16
頭蓋骨をしてあらしめよ、脳みそまで失わないように。
[意味]
自分の所有物を奪われた者は誰しも、
美しく思慮することさえもともに奪われる。
17
太股は内から臭う。
[意味]
災禍はたいてい内側から、〔つまり〕はっきり謂えば、
悪行者たちの考えから生まれる。
18
おまえが隠していることが、市場で触れまわっている。
[意味]
世評になって万人に取り沙汰されているようなしくじりを
悪人は包み隠すよう強いられる。
19
父親とは育てた者、けっして生んだ者ではない。
[意味]
父親と呼ばれるのは、養育を与えた者である。
生んだ者は快楽に隷従したまでだから。
20
多くの人たちは、人生のよしなしごとに満足する。
[意味]
徳のことに真剣になる人は少ない。
たいていの人たちは正反対のことに秋波を送るからである。
21
そこからわたしが水を飲めない泉は、涸れているのである。
[意味]
運命(Tyche)が分け与えたものをして、共有たらしめよ。
されど、富の共有なかりせば、何びとも満ち足りることなかるべし。
22
足を持っているなら、おまえは通風をも望め。
[意味]
享楽にはどんな場合も苦痛が伴うものだ、
運命(Tyche)がどこかで味方として助けてくれないかぎりは。
23
慣習(synetheia)は第二の自然。
[意味]
わずかの間に何らかの慣習が出来あがるのは、
意外にも、自然を模倣しているからだ。
24
医者を友とせよ、しかしけっしてそれを必要とするな。
[意味]
知恵ある医者たちを、あらゆる友の前に立てよ
その術知は……けっして必要としないよう祈れ。
25
蝸牛も、煮られれば、ぶつぶつ言う。
[意味]
寛容でどんなにおだやかな人たちでも
悪行者たちのやり方は怒りをひきおこす。
26
喜劇役者は大口を開けても、咬みつきはしない。
[意味]
貧乏人たちは富裕者たちを悪罵するのみ、
言葉以外に力を持たないからである。
27
幸せにめぐりあっても、レンズ豆を忘れるな。
[意味]
富裕にして衆目の注視するところとなっても、おまえの乳兄弟の貧しさを忘れるな。
28
扉を閉ざそう、そして真実を話そう。
[意味]〔Semtemtia37〕
おまえの敵に対する非難は内に持ち、
好機(kairos)が呼んだとき、おまえは真実を言うべし。
29
宝物も羊の中に。?
[意味]
いかなる場合も知者の分別を咬む、と言い伝えられる、
反対者たちが考えもなく大喜びするのは。?
30
悪は悪に触れず。
[意味]
勤勉な男(philoponeros)は迷妄(plane)を歓愛して
性格的に等しい者に対して自衛しない。???
31
狼は笑いながら法を定める。
[意味]
悪行者は吹き出しながら訓告するだろう
自分が行った当のことを若者たちがしないようにと。
32
狼は数を恐れずわがものとする。
[意味]
盗人のたくらみを阻止したものはいまだない
票決も、印鑑も、閂を差すことも。
33
猿がおのれの子を見て謂った、「この子は美しくない」。
[意味]
愚か者でも、感性に打たれれば、そのときは
自分の行ったことが不正であったと気づくものだ。
34
<欠損>
[意味]
悲嘆の苦しみは涙を結晶させるが、
空腹で泣くことは鞭をふりあげさせない。
35
沈黙の河は、地下において、深い。
[意味]
悪行者が隣人たちにおだやかな人に見えるのは
隠された悪徳の奸計を持っているからだ。
36
神とともに両手をも動かせ。
[意味]
運命(tyche)を見ても、眠ろうとしてはならない。
幸運(eutychia)は男にとって行動の中にあるのだから。
37
神は口を閉ざした報復者。
[意味]
思慮によって寛容を尊ぶ者は
敵たちを相手に神から助けを得られよう。
38
われは汝を尊ぶ、されば汝は気づくことなし。われは汝を侮蔑する、汝が気づくようにと。
[意味]
美しき人たちに無思慮な者たちが親切にしないのであれば、
おまえは考えを改めて悪しき者たちに恩知らずの考えをいだけ。
39
一文無しは全祭のとき悪霊に近づく。
[意味]
市場で持ち金の2倍ぶらつく者は誰しも、
誰を見てもいたずらに心を病むのみ。
40
悪しき借金取りからはヤハズエンドウさえ生える。
[意味]
万事において明らかな罪があるとき、
最少のものを得たらヘルメースの賜物〔僥倖〕と呼べ。?
41
運を天にまかせて愛し、いたずらに憎むことなかれ。
[意味]〔Sententia50〕
出会った者たちをも、もし必要なら、友となせ。
しかし敵たちには、おまえに対する憎しみを許すな。
42
求められる者〔となれ〕、憎まれる者ではなく。
[意味]
友たちのもとにしょっちゅう通おうとしなければ
歓愛される者となる、憎まれる者となるのではなく。
43
自分の痒みを隠す者は、それを2倍にする。
[意味]
多くの人たちにとって出来事が大きくなったのは、
無思慮な理性がいたずらに忘れようとしたからである。
44
眼の誕生祝いは魂の苦悩。
[意味]
他人の祭りを見て喜ぶのは
魂にとっては苦痛と多くの嘆きをもたらす。
45
ひねくれ者よ、おまえの耳はどこにある?
[意味]
腹を立てた者は何ひとつまっすぐなことを考えないから、
あらゆる手だてで著名な人たちと争う。
46
おまえは夢を見、おまえの航海をめぐる。
[意味]
運命(Tyche)は人間どもに航海の夢を見させ
目覚めたときの先見に通じさせる。
47
汝の息子を保護せよ、井戸に落ちて、神が突き落としたなどとぬかさぬように。
[意味]
神は理性をおまえの守護者として与えたもうた、
何を思慮するのがふさわしいかを自分で守れるようにと。
48
すみやかさは感謝される。
[意味]
贈り物をすることを愛する者たち(philod[o]roi)は、感謝される者となる、
あらゆる贈与をすみやかに失ったとしても。
49
葡萄の房は葡萄の房を見て称讃していた。
[意味]
何らかの辛労者たちはお互いを見て
熱心な気持ちになって為すべきことをしとげる。
50
内にライオン、外に狐。
[意味]
悪行を大胆不敵さに混ぜれば、明らかに、
一人ではないことを示し、おまえは得たものを隠そうとする。
51
この卵はあの大烏から。
[意味]
果実が明らかな吟味の因となろう
いかなる果樹も、持って生まれた自然本性にしたがって生えるのであるから。
52
豚は大麦の夢を見る。
[意味]
どんな人でも夢に見るのは、
自分の考えが傾いている方向のこと。
53
田舎者は魚を食って発狂した。
[意味]
贅沢に無経験な者は、たまさか贅沢を享受するや、
理性を失ってあまりに威張りくさる。
54
馬は血筋の中に駈けこむ。
[意味]
後裔は自分たちが血を引く祖先に対し、
同族のしきたりを護持する。
55
素人は船に薬。
[意味]
海の波が船体を支配するところ、
そこでの無経験はすこぶる難儀。
56
生まれよき馬はいななかず。
[意味]
自然本性上の生まれのよさを享受する者は、
性格のおだやかさゆえにそれを護持する。
57
医者と法律家には真実を言え。
[意味]
身体の受難も、病時の症状も、隠すのはよろしくない。
58
尺度の<欠損>[意味]
富を尊重して金銭のたっぷりある者たちは、
いつでも貧乏に別れを告げる。
59
篩を通して見ない者は盲目である。
[意味]
理解するための材料を持っている者が、
思慮しないのは、盲目と非難される。
60
はらわたがみな笑う。
[意味]
冗談好きの言葉は無教養を
少しの間よろこばせる。しかし、いつまでも続くと、苦痛になる。
61
エロースは梯子をのぼらず。
[意味]
飲酒は快適である、辛労の2倍
飲酒者たちの所有が増えるのなら。
62
他人にとって悪人がいないなら、他人に美しい人は生じない。
[意味]
時間〔時代?〕は各人に各様にめぐりくる
ある人には富を取り上げ、ある人には植えつけ。
63
牛がくたばり、万人はおのれの剣を執った。
[意味]
誰に対しても不機嫌な富裕者には
隣人の不幸をよろこぶ(chairekakos)貧乏人たちがおそいかかる。
64
はらわたが争う、分裂するのではなく。
[意味]
子どもたちは両親に対して裁判を起こす、
自然本性の好意は変えることなく。
65
着こなしよければ誉められ、着こなしよろしからざれば誹られる。
[意味]
器量よしの者たちは、そのおかげで果報を得るだろう
しかし不器量な者たちは難癖を呼びこむ。
66
食卓に短い手はとどかない。
[意味]
贅沢三昧できるようにと思慮する者は、
失敗を恐れていろいろな仕事に手をだす。
67
犬はあせると盲目の仔を産む。
[意味]
持って生まれた自然がとどまるのは適宜の間だけ、
急いで為されると、災禍を分かち与える。
68
ここでは何もできない、家で探す。
[意味]
自分で自分がわかってない者は
詮ないことに手を出す。
69
美しいことは何もしないか、あるいは、美しくこしらえるか。
[意味]
確約のすることは、むしろ選ぶこと
何かを悪く為すよりは、全然何もしないことを。
70
美しさは家族を養わず。
[意味]
美しさが苦痛となるのは、美しさのために
財産の支出が飢えをもたらすときである。
71
困窮するまでの物惜しみ。
[意味]
飽くなき妬み心に狂って、
貧乏人にたちにさえ物惜しみで武装する者がいる。
72
おまえは美しきことを為すべからず、〔さもなければ〕悪しきことを受けざるまじ。
[意味]
悪人たちに善くするのは、慎みあることとはわたしには思われまい。
最悪の者たちは、いつもおまえに悪く為すのだから。
73
好機が引き上げ、好機がまた引き降ろす。
[意味]
時は死すべき者たちに対して両方のことをする、
富の所有も貧しさの病も。
74
犬が飼葉桶の中に転落すると、自分も食えず、驢馬の邪魔もする。
[意味]
恥知らずな人のよこしまさの証拠は、
自分の関係のない食べ物について他人の邪魔をするということ。
75
弁論は弁論家のもの、行動は雄鶏のもの。
[意味]
虚言者たちは、空しい弁論によって反駁される、
巨人たちの話をいたずらに持ち出して。
76
おまえの心臓の<欠損>
[意味]
よろこんで忘却せよ、すなわち万人に
心を傾注することを拒め。
77
不幸せであることはできる、気にせぬことはできぬ。
[意味]
運命(tyche)の結果を身に受けている男は、
考えることに無頓着であることをのがれるべきである。
78
<欠損>[意味]
行動において無頓着であろうとする者は
暗く苦痛に満ちた人生を送るだろう。
79
善き神に乳香の樹は生え出ず。
[意味]
悪人たちにとっての習いは、善人たちを
神的な栄誉によって報いることを拒むこと。
80
汝、為政者たちを追い払え、そうすれば、連中が党争することはあるまい。
[意味]
悪しき政権が動乱を阻止せんとしていると知ったら、
悪しき混迷も、おまえはその長き道を歩むことになろう。
81
極端な者たちはまた平等な者たち。
[意味]
多くの富と大きな貧しさは
思慮の停止を等しく有する。
82
老婆は<欠損>おまえに出会うだろう。
[意味]
知者も過失に陥る
耳を無駄話に邪魔されることなく。?
83
人の特徴は言葉でわかる。
84
雀の魂は穀粒のそば。
[意味]
人間が精神を奪われるところ、
そこで快楽の享受も横たわる。
85
思慮しているように喋るか、喋るように思慮するか。
[意味]
貧乏人は舌を、金持ちは衣裳を、
大烏は孔雀の羽で飾る。
86
駱駝がその母親に言った、「ぼくは踊れる」。するとくだんの母が、「坊や」と謂う、「おまえのはぶらぶら歩きだって美しいよ」。
[意味]
身過ぎの辛労によって生活が妨害されている人たち
この人たちにとって、享楽と共に生きることは断念されているとせよ。
87
おまえはわたしの眼で、わたしはおまえの背骨で。
[意味]
おまえが打ちたいと思うことを、美しく為すのではなく
<欠損>
88
駱駝からもカローンへの手紙。
[意味]
理性を持たぬ男は獣じみた打擲によって
手に落ちた者たちを墓穴に引き渡す。
89
オレステースよ、誰がおまえを破滅させたのか? 「わたし自身の良心が」。
[意味]
悪い行いに対して負うべき責めのおのおのは、
これを性格が暴露し、明らかにする。
90
彼は小便する。おまえは獣皮の下に小便する。
[意味]
向こう見ずな難癖を高みへ投げ上げようとする者は、
頭上に報復を受けることになろう。
91
酒は酒を解消する、しかし両方は人間を〔解消する〕。
[意味]
悪事を悪事でもって治そうとするやつらは 死にかけの人間を危険の中に突き落とす〔ようなもの〕。
92
河の前で引き返すな。
[意味]
訴訟相手に平気ですがりつくやつら、
そういうやつらにとって、おまえを法廷に引きずり出すことはよくあること。
93
たっぷり喰らえ。おまえの家にたっぷり持って帰ろうとするな。
[意味]
おまえは胃袋にたっぷり与えて喜ばせ、
お節介なやつを贈り物で脅かせてやるがよい。?
94〔Cf. Proemiae10〕
おまえは砂で縄をなうことを始めた。
[意味]
悪戦する人間が次々と問題に行き詰まると 出来もしないことをしようとしはじめる。
95
矯正されたひねくれ者。
[意味]
最大の愚かさは、水腫を患った者が
脾臓で助かると約束してもらうとき。?
96〔Paroemiae11〕
まるめられたことを話せ、そうすれば、転がりもしよう。
[意味]
いつも嘘を尊重し慣れているとしたら、
駆け抜ける無駄話をおまえはしたことであろう。?
97
シュリア人は風さえ善くない。
[意味]
自由な舌で悪人たちについて言え
血筋を見るまでもなく、極悪人だと。
98
ひとはパンを喰うことができなくても、付け合わせを求める。
[意味]
食い物もないくせに贅沢三昧を求めるような者は、
万人の嘲笑の的となる。
99
おまえの見るべきは、洗い張り屋が何を身につけているか〔あるいは、どうふるまっているか〕ではなく、そこからどういうふうに運び出されるかである。
[意味]
他人の衣裳で着飾っている者は、
死の出棺のおり、笑われよう。
100
「わたしは知らない」を獄につないではならない。
[意味]
最悪の事態すべての否認は、
人間たちに危険なき人生を守ってくれる。
101
術知(techne)は病気にはしても、死なすことはない。
[意味]
運命(tyche)によってはかなき人間には術知が与えられているとわたしは主張する。
だから、暫時〔運命が?〕廃れても、再び生き返らせる。
102
おまえの友を試そうとするなら、酔っぱらうか暴慢にふるまうかせよ。
[意味]
酒も暴慢も、友だちの性格を
友だちに暴露することを知れ。
103
権力(exousia)へのまったき乗り気、熱意への怠慢。
[意味]
「恋(eros)」は存在しないものらを求めがちである。
てもとにあるものらへの渇望は眠っているからである。
104
夜の仕事は、昼間は、嘲笑の的。
[意味]
夜、恥ずべき者らによって隠されていること、
これが光の中で喋られると、危難をもたらす。?
105
不幸せな者は、羊さえこれを咬んだ。
[意味]
「運(Tyche)」がよろこんで見捨てたような者は、
善き人たちからさえ鞭をくらう。
106
身体を考えること、骸(ptoma)を考えないこと。
[意味]
<欠損>暴慢の譬え、
しかし<欠損>屍体が横たわっていよう。
107
おしゃべり駝鳥は高価に売れる。
[意味]
いたずらにたわごとをいう連中や大騒ぎする連中を、
馬鹿な男どもは高い地位につける。
108
必然の時いたらば、ラミア注9)を母と呼べ。
[意味]
必然の時に危機にとらわれたら、
獣のような男たちをも父親と呼べ。
109
友だちを持て、〔ただし〕その欠点とともに。
[意味]
勘定すべきは、友たちに親愛であること。
しかし、その誹謗を証言に持ち出すこと。?
110
運命(Tyche)は術知を称讃しよう。
[意味]
運命(Tyche)が、はかない人間たちのために共闘しようとも、
幸運には悲運をさしむける。
111
盗人は強記でもなくてはならない。
[意味]
何か恐るべきことをなそうとする記憶を持っているのである
悪行者たちが他人のものを強奪するときは。
112
その気のある牛を追え、気のないものは放置せよ。
[意味]
辛労を愛する職人たちを汝の味方につけ、
労苦を憎む連中には永の別れを告げよ。
113
おまえは肌の色を持ち、おまえは土地を持っている。
[意味]
豊かさへ至る道 破廉恥な道を
示したのは、不敬な連中。
114
おのれのシラミをしてわれを喰らわしめよ、他人の〔シラミ〕ではなく。
[意味]
所有物は外人たちにではなく、わたしの身内によって
(それが敵とみなされようとも)、守ることをわたしは望む。
115
おまえが笛吹くように、おまえのためにわたしは踊る。
[意味]
跳躍は<欠損>
116
田舎者の関心は、1年の問題。
[意味]
無教育な理性は、何ごとも容易には考えられないから、
人生の諸事を考えることはけっしてない。
117
一人は無、二人は多数、三人は群衆、四人は全祭。
[意味]
単独は孤立、第二番目の人ができたら、
三番目の人と交わって、安全に生活できよう。
118
わたしには部屋に陶器さえない。
[意味]
運命(Tyche)は多くの人たちに幸運を分け与える。
しかるにわたしには、渇望しても墓さえない。
119
雄鶏がコケコッコーと鳴かなければ、われわれは時刻がわからない。
[意味]
弁論家たちがみなわたしたちを説得するのは、いつも、
おのれの舌の2倍生きることはできないってこと。
120
おまえの外套(pallion)の下で、おまえの両足ものばせ。
[意味]
所有物に対する適度の使用をいつも〔心掛ければ〕
おまえは難癖を免れて、凪の中を生きられよう。
121
門からいつ出てゆけばよいかを知らなければ、御者は無意味。
[意味]
非難は支配者の玉座を手に入れようとする全員のもの、
もしも、法の前に歩み出られないなら。
122
<欠損>[意味]
悪行に享楽を感じられるのは、行動において
悪人に悪人が悪行をはたらくときだと考えよ。
123
美しいことを行うことにも意をそそげ。
[意味]
有為の士たちには善くし、悪しき者たちには憐れみをかけるな。
〔悪人たちは〕羊の贈り物に狼を隠しているのだから。
124
"kypson"を、飲め、1杯。"kypson"を、喰え、一切れでなく。
[意味]
食い物は辛労の2倍調達できるわけではない、
たとえ自然が酒盛りを惜しまないとしても。
125
悪しき頭に白髪の償い。
[意味]
若者が法の責めを受ければ、
老年まで償いをし続けることになる。
126
クレータ人のように話す〔=嘘をつく〕。
127
あんたはわたしを知っている、わたしもあんたを知っている。
[意味]
あんたの以前の運命をわたしが知っているのを知って、
眼を伏せよ、尊大になるな。
128
いったい誰がライオンに言うか、「あんさんの口は臭い」と。
[意味]
僭主のたくらみを、貧乏人が非難することは、
できない。自分がしばしばあやまちをおかす場合には。
129
狼と羊との旅行団とは、いかなるものか?
[意味]
やさしい慣習は、獣じみた性格に
正反対だと自然が叫ぶ。
130
「急いでやって来ます」ではなく、「美しくやってきます」であれ。
[意味]
行動するさいに、速さは驚嘆しつつよく考察せよ、
考えに従うことがおまえにあるときに、速さを持ち出せ。
131
神は蟻を知りたもうゆえに、これを二つになさった。
[意味]
悪人たちを神格ははっきりと予見して、裁きの前にいつも懲らしめてやっつけるのだ。
132
蛇に咬まれたことのある者は、縄さえ怖れる。
[意味]
僭主支配していた者が被害の経験を持てば、
死者たちの墓さえ恐れて逃げ出す。
133
受難は医者。
[意味]
受難が経験を与えるのは、普通の人間たちによりも、むしろ術知者たちに対してである。
134
物わかりのよい者は、他人のものの主人。
[意味]
物わかりのよさを人生において尊重する人は誰しも、
いかなる財産を望もうと、その主人となる。
135
友はおまえを打つだろう、しかし憎む者はおまえにへつらうだろう。
[意味]
へつらう者たちは若者たちを欺き、
好意を持った者たちをいつも憎む。
136
強制(bia)があるところ、法は弱し。
[意味]
ひとはみな法を忘却する、
悪行者たちの環境に強制されて。
137
井戸にはいつも土器が入って行くわけではなく、固いものも行く。
[意味]
人生は変わり易し、養う者たちに
終わりまで幸運を守ることを拒む。
138
老人が走るのを眼にしたら、童子に遊ばれているのだと考えよ。
[意味]
幼童の迷いは老年を咬み
笑いながら走るよう説得する。?
139
足らざるもののあるところ、余りあり。
[意味]
不足は貧乏人に潤沢さをもたらし、
飢餓も飢えたる者たちに惜しみなさを〔もたらす〕。
140
輝く者は生きた、笑う者は死んだ。
[意味]
富裕者は贅沢さに浮かれて死んだ、
貧乏人は空腹のため光の中で生きる。
141
カローンは一人を受けとる。
[意味]
人間は誰一人として、だた一度以上は死なぬ、
自らも過剰を免れるように。
142
人間は万事を、人間は無を。
[意味]
〔Sententia36〕 恋しきひとや神的な動物も、
突如、死に引き渡されて破滅する。
143
ある時は牛、ある時は牧草。
[意味]
地上を歩み、明らかに 者は
百姓らに食べ物を与えて、地中に横たわる。?
144
不愉快の初め。「ご機嫌さん、禿頭よ」。
145
畑は種まかれず、家政者は不行き届き。
146
怠惰な調理人によってはすべてが煮られる。
147
怠惰な者は砕かれて云った、「わが祈りは
成就せり」。?
148
怠惰な農夫は鎌を変える。
149
わたしは風呂を持ち、彼は入浴しない。彼が持っていたら、彼は入浴した。
150
禿鷲は大烏の保証人になる。
151
おまえはわたしに笑う者を云った。おまえはわたしに悪人を云った。?
152
老婆が騒ぎを眼にして云った、「わしにも男をおくれ」。
153
恐怖の母は叫ばず。まして親切もせず。
154
贈り物は神々さえ説得した。
155
おまえの気に入ることを云え、そしておまえの気に入らぬことを聞け。
156
幸運な者には足枷をつけるべからず。若々しさを滅ぼすがゆえに。
157
先ずは生きよ、しかるのちに、そのように求めよ。
"107*"
おしゃべり駝鳥は高価に売れる。
158
山羊に仔山羊が言った、「お父っつぁん、肉屋たちが死んじまった」。すると父山羊が、「嘆かわしいかな、坊よ、素人の手にかかってくたばりたいとはなぁ」。
159
おまえのものでないものを恵むな。
160
かつてパラティウム丘を見た者が自分の家に火を放った。
161
かつて、やむにやまれずわが子を売った者は、ほかの時にも正直にそれを商った。?
"48"
速やかさは感謝もされる。
162
おのれに害悪を見舞う者がいようか?
163
禿頭が牡羊の前に座って居眠りをした。?
164
走る者の陥穽を見よ。
165
大儲けは大損を招来する。
166
暴慢(hybris)は恋(eros)を幻滅させる。
167
静止した水は臭い。
168(Paroemiae15)
ライオンをしてわれを喰らわしめよ、狐ではなく。
169
禿頭よ、いかにしておまえは毛が抜けたのか?
170
有害な友は敵と異ならず。
171
友と馬は必要なときに試される。
"114*"
仲違いをしてわれを喰らわしめよ、他人ではなく。
172
友たちを持て、財産ではなく。
"2*"
びっこのそばに住めば、おまえは足を引きずることを学ぶだろう。
173
借金持ちは腱を持たず。
"116"
田舎者の関心は、1年の問題。
174
田舎にいる者は酸っぱい酒を飲め。
175
犬の踊り、ライオンの名前。
176
おお、好機よ、何故おまえは笛を吹かぬのか?
177
生の、しかしわたしのもの。
178
ひとつの季節の仕事は、1年の気がかり。
179
炎熱はひとつであるごとく、万事も下方に。?
180〔Paroemiae1〕
青銅なくしてポイボスは予言せず:これは〔神の〕賜物の強力さを意味する。
181〔Paroemiae2〕
ここかしこに嘆きの声あり、諸々の害悪に取り囲まれた者たちには。
182〔aroemiae3〕
足萎えたちの中にも走る者あらん:眼の見えぬものも明視する。
183〔Paroemiae4〕
ヘルメース〔像〕を彫らんとして、わたしは〔尾長〕猿を彫った。
184〔Paroemiae5〕
ゼウスであれ、カローン注10)であれ:幸福者の生であれ、臨終であれ。
185〔Paroemiae6〕
長い希望〔pl.〕をわたしは憎む。
186〔Paroemiae7〕
ゼウスに近き者は、雷艇に近し。
187〔Paroemiae8〕
いかなるやな(kyrtos)も、好機をつかめば、外れることなし。
188〔Paroemiae9〕
いったい、アルテミスが舞踏しなかったような所があろうか?
"96*"
まるめられたこと注12)を言え、そうすれば、転がりもしよう。(sic)
"105*"〔Paroemiae12〕
不幸な者(hos atyches)は、羊でさえこれを咬む。
189〔Paroemiae13〕
運命(tyche)が泥を塗った者に対しては、〔運命は〕どんなことからでも鞭(mastix)〔複数〕を見つけ出してくる。
190〔Paroemiae14〕
長所(Ta prolemmata)は勝利(nikemata)。
"168*"〔Paroemiae15〕
ライオンをしてわれを喰らわしめよ、狐ではなく。
191〔Paroemiae16〕
われを呪詛し悪罵するがよい。
192〔Sententia28〕
老いたる人の顎は杖である。
193
クレータ人にむかってクレータ人の真似をする〔=嘘をつく〕。
[意味]〔Sententia30〕
この世の悪徳においては、悪しき獣たちではなく、悪しき人間たちの方がむしろ勝っている。
194〔Sententia31〕
重量を有する胃袋を
狭い入口は受け入れることあたわず。
[意味]〔Sententia"31a"〕
おとなしい男は胃袋の横柄さ(koros)注14)に堪えられぬであろうが、
獣じみた自然本性はあまりに堪えすぎる。
195〔Sententia32〕
碧眼に羞恥は宿らず。
196〔Sententia34〕
悪しき者たちにも獲物は与えられている。
197〔Sententia35〕
<欠損> 奴隷である者の奴隷になることをおまえは恐れよ。
なぜなら、耕す牡牛は軛を忘れているのだから。
198〔Sententia38〕
豊かに暮らしているときに死もまた忘れるな。
199〔Sententia49〕
<欠損> 左巻きの人間は美しきことに悪しきことを結びつける、
だからして危なっかしい生き方をすること明らかである。
200〔Sententia52〕
<欠損>
[意味]
貧しき者はおとなしくせよ、尊大になることなかれ。
〔さもなければ〕おまえが知慮深くある場で自分で自分を損なうことになるからである。
2003.06.06. 訳了 訳了