レウキッポスに宛てて出されたデーモクリトスの手紙 V
ボーロス 生涯と著作
[底本]
TLG 1306 004
Testimonia, FGrH #263: 3A:8-9.
(NQ: 357: Test.)
Testimonia
"3a, 263, T"
断片1
DIOG. LAERT. 9, 49(THRASYLLOS によるか?)
しかしながら、一部の人たちは、『覚え書き』の中から次のものらをも個別に取り上げて、〔デーモクリトスの著作目録の中に〕入れている。
『バビュローンにある神聖な文書について』
『メロエー〔アフリカSudan, Khartoum の250Km 下流にあるナイル河畔の古都、古代エティオピアの首都〕にある〔神聖な文書〕について』
『オーケアノスの周航』
『歴史に関する調査研究について』
『カルダイオイ〔バビュロニアの神官階級〕の言説』
『プリュギア人の言説』
『発熱と、病気が原因で咳をする人たちとについて』
『法習の起源』
『ケルニカ〔"chernika"語義不明〕ないしは防御具』
そのほか、一部の人たちがこの人〔デーモクリトス〕に帰する書のうち、あるものは彼の〔著作〕から抜粋編集されたものであり、あるものは他人の著作であることが一致承認されている。
断片2
DIOG. LAERT. 9, 34:
この人物〔デーモクリトス〕は、マゴス僧やカルダイオイといった人たちの講筵に列した、〔というのは〕大王クセルクセースが自分の父王〔ダレイオス1世〕に客遇されたとき、指南役として〔彼らを〕父王のもとに残置したと、ヘーロドトス〔出典不明〕も主張しているからである。その彼らのもとで、神学や天文学に関することを、まだ子どもの時に、彼〔デーモクリトス〕は学んだのである。
断片"3a"
DIOG. LAERT. 9, 35:
そして、デーメートリオスが『同名人録』(IV)の中で、またアンティステネースも『後継者たち』(III B)の中で、主張しているところでは、彼〔デーモクリトス〕は神官たちのもとで幾何学を学ぶためアイギュプトスへも出郷し、ペルシアのカルダイオイたちのもとにも、エリュトラ海へも出かけたという。一部の人たちの主張では、彼〔デーモクリトス〕はインディアで裸の哲人たち(Gymnosophistai)と交わったばかりか、アイティオピアにも赴いたという。
断片"3b"
SUID. "Demokritos"の項。
……一部の人たちによれば、アナクサゴラスとレウキッポスの学徒、しかし一部の人たちによれば、ペルシアのマゴス僧たちやカルダイオイの〔学徒〕でもあるという。というのは、ペルシア人たちやインドイ人たちやアイギュプトス人たちのところへも赴き、その人たちのもとで知識を教えこまれたからである。
断片"3c"
AELIAN. VH 4, 20:
そこでバビュローンのカルダイオイ人たちのところにも出かけて行き、またマゴス僧や、インドイ人たちの賢者たちのところへも〔出かけていった〕。
断片"3d"
HIPPOLYT. Refut. 1, 13:
インドイ人たちのところにいる多数の裸の哲人たち(Gymnosophistai)と出会い、アイギュプトスの神官たちや、バビュローンの天文学者たちやマゴス僧たちにも〔出会って……〕。
断片4 PLIN. NH 25, 12:
[12]だが植物学について何か注意深いものを発表したと言い伝えられている人々の最初の者はオルフェウスであった。彼の後、ムサイオスとヘシオドスがポリウムという植物に対する大いなる賞賛の辞を述べたことは前に述べたとおりだ(21巻44...145)。オルフェウスとヘシオドスは薫蒸を推奨した。[13]ホメロスはまたその他の植物の名も挙げているが、それについては適当な場所で語ろう。彼の後、有名な哲学者ピュタゴラスはいろいろな植物の性質について著述をした最初の人であったが、それらの本来の発見者はアポロン、アイスクラピウス、そして一般に不滅の神々であるとした。デモクリトスも同じような著述をした。この二人はともにペルシア、アラビア、エティオピア、そしてエジプトのマギ僧たちを訪ねた。そして古代人たちはこれらの書物にいたく驚嘆したので、彼らはとても信じられないような記述にも断固として信頼を寄せたのである。〔中野定雄訳〕
断片5
COLUM. D. r. r.〔コルメラ『農耕について』〕7, 5, 17:
されど、高名なエジプト人の著者であるメンデス人ボーロス(IV) この人の著作でありながら、ギリシア語で『ケイロクメータ(Ceirovkmhta)』と呼ばれる書が、デモクリトスの名前で誤って伝えられている ……
〔ギリシア語では"cheirokmetos"(形容詞)。アリストテレスにおいては、「手で作られた」(Cael.〔天体論〕287b16)、「人工的に作られた」(Mete. 381a30, 353b25)という意味で用いられている。
「「ケイロクメータ」〔複数形〕は「薬効ある自然物(physika dynamera)」の対立概念である。周知のように占い術においてその基礎をなしているこの二分法は、アリストテレス『自然学(Physika)』第2巻1章(192b8-30)にまで遡る」DK. 68_300〕
//END
2002.11.01.
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