[出典] MEDICAL ASTROLOGY AND ASTROLOGICAL MEDICINE
医療に適用される占星術は、たとえばインド、中国およびエジプトにおいて非常に古くからのルーツを持っているが、ヨーロッパ中世後期から1450年から1700年頃かけての近世初期にかけてのヨーロッパにおいてその最盛期に達した。占星術の影響は、アラブ諸国からヨーロッパの医学にも入った。基本的に、占星術はその期間中にすべてを支配し、したがって多くの知識システムが占星術に依存し、それと共生し、または彼らの世界観でそれを参照したと言っても過言ではない。医学の場合、占星術師は、身体の一部を支配する星座、臓器やシステムを支配する惑星、病気や薬を支配する惑星を割り当てた。したがって、システム全体は、与えられた支配権の複雑なシステムに基づく観察と解釈の1つである。
諸惑星に与えられる病気の特徴は以下のとおり:心臓と脊柱の不調は太陽により;切り傷、負傷や打撲は、赤みや熱を伴う熱病や発熱同様火星による;肝臓の不調は木星による;拡張や過剰の病は太陽ないし木星による;月経や乳腺の故障や浮腫[体液停留]は月による;尿の愁訴は金星による;衰弱病、虚脱、消耗、禁断や収斂の病は土星による;中毒は土星による;震え、神経症、精神障害は水星により、消化不良は金星による 医療占星術(Medical Astrology)
最初に宮を取ると、それらは以下の仕方で身体と結びつけられる
惑星は、自分たちが支配し、その高揚を持っている宮に対応する部分を統治する。
諸宮に関連する病気は次のとおり 諸々の宮の病気の性格
白羊宮:活力が神経と精神の均衡を超えることしばしばで、最大の長患いはその原因をこのような暴力行使と怒りの爆発のなかに有する。牡羊座生まれの人間は、いかなる努力をはらってでも毒を探すだろう。 惑星に共感する植物:太陽:食品 米、調味料として用いられる蜂蜜とアロマティック・ハーブ。 花 マリーゴールド、ヒマワリ、牡丹など。 樹木 月桂樹、胡桃とナツメヤシ。 月: 食品 キャベツ、メロン、キュウリ、カボチャ、カブ、マッシュルーム、レタス、クレソン。 花 主に夜に成長する品種。 樹木 -伝統的に、ほとんど樹液が豊富なもの、例えばカエデやシカモア・イチジク。 水星: 食品 多くの種子をもった植物;にんじん、パセリ、大部分のナッツ。 花 野生の品種。 樹木 ハシバミ、クルミおよびその他の実の成る樹木。 金星: 食品 スグリおよびその他の漿果類、小麦およびほとんどの薬味。 花 ラッパズイセン、アキノキリンソウ、スミレ、バラ、ユリ等々。 樹木 リンゴ、ナシ、モモ、イチジク、アーモンド、トネリコ、ヒノキ、そして大抵のブドウの木。 火星: 食品 現実的に生姜や胡椒のようなあらゆる”熱い”食品、および、玉葱、ニンニクのような味の強いもの等々。ホップも火星の下にある。 花 珍しくて、かなり荒削りの明るい花。 樹木 ヒイラギ、モミ(?)およびすべてのとげのある樹木あるいは低木。 木星: 食品 セージ、ネギなどの野菜;アスパラガス;ダイオウ;ミント;およびイチゴやスグリなどの果物。 花 デイジーや同様の花。 樹木 ライム、バーチ、桑、トネリコ、オーク、バーチ。 土星: 食品 ジャガイモなどのほとんどの野菜。サトウニンジン、ほうれん草、大麦。 花 関連が知られているものはほとんどないが、満開のさまざまな低木はここに配置されると考えられる。 樹木 松、イチイ、ヤナギ、ニレ。 天王星と海王星は、それぞれ金星と月に似ている。 [Lyndoe, 1938, pp.337-8 による]
薬草の幾つかの例は、カルペパーの中で与えられるように、惑星によって支配される、それは以下の如くである: 健康に対する惑星の影響について:
古代では、薬用化合物の健康に対する特定的・一般的な効果に関する知識は、今日に比べて非常に貧弱にしか理解されておらず、それらが実際に薬用に使用される前の、材料の形状、色、味、および質感に基づくこと屡々であった。これはしばしば「照応の教義」[または「用法表示の教義」]と呼ばれた:全能者が大地の植物に秘密の押印と素性を刻み、それによってそれらの薬効をひとが確認することができると仮定した。例としては、肝臓の不調のための黄色い顕花植物、発熱や出血のための赤と胡椒のハーブなどがある。 「スズラン(lily of the valley)は……水星の統治下にあるので、脳を強化し、弱い記憶を動員し、これをもう一度強くする」[Culpeper, 1652, p.149] それでも、Convallaria [Lily of the Valley] は脳の兆候をほとんど、あるいは「水星的」兆候をまったくもたず、[獅子宮に支配されて]主に心臓の状態に使用される。当時の薬は主に、今日では憶測や推測の形式とみえるものに基づいて使用されていた。 何世紀にわたって、薬の薬効は、惑星の支配者への言及など、占星術の考慮事項によって決定されていた。例えば、果物、ナッツ、その他の栄養価の高い、または甘い香りの植物は、金星によって支配されていると見なされた;赤みがかった胡椒の植物は火星によって;黄色またはオレンジ色の植物は木星によって;暗くて有毒で苦いハーブは土星によって支配された;銀色、白、水っぽい[多肉]植物は月の支配下に置かれた [see Culpeper]。 「パラケルススもまた「用法表示の教義」を固く信じ、その例証として、St. John's Wort [Hypericum perfotratum] のすべての部分を、この信念に基づいて説明した」……葉の穴は、このハーブが皮膚の内側と外側のあらゆる開口部に役立つことを意味する……血の形相をした赤い花は、傷に適している証拠であり、肉を治療する必要がある場合に使用する必要がある」[Griggs, 1981, p.50] ほとんどの Herbal Materia Medica は、したがって、試行錯誤によって編集された。ハーブは、有史以前の時代に遡り、半神話的な方法である伝統によって使用された。これは地球上のほぼすべての文化に当てはまる。 しかも、驚くべき数のこれらのハーブの「推測」は、ホメオパシーの証明によって明らかに確認された。肝臓の愁訴には Chelidonium [Yellow Poppy] が、眼の愁訴には Euphrasia [Eyebright] が、気管支炎には Pulmonaria [Lungwort] が〔効く〕という例が含まれている。おそらく、これらの特性は、「用法表示」からよりは、その臨床使用から最初に発見されたのであろう。 「Hahnemann は、われわれが Chelidonium のことを読むその『Materia Medica Pura』の中で、間違いなく[用法表示の法則]を拒否している……。古代人は、この植物の汁液の黄色が、胆汁性疾患におけるその有用性の指標(用法)であると想像した……人間の健康の重要性は、諸々の薬品のそのような不確実な方向性を何ら認めていない。病人の枕元で、そのような当て推量に満足して休息することは、犯罪的な軽薄さだろう」。[Hahnemann quoted in Hobhouse, pp.137-8]現代のほとんどの医療関係の著述家たちもまた、この占星術をすべてたわごととみなしている。 「19世紀初頭の草本医学 (botanic medicine) は、伝統的な草本主義 (herbalism) の背後にあり、[パラケルススの著作にあるように]相互浸透的なホリスティック宇宙論を表現した「用法表示の教義」の直接的な証拠はほとんど闡明しなかったが、間接的な連携は、占星術への文献の言及、および生命力への普及した疑似ヘルメス主義的言及の中に見出され得る」[Cooter, p.66] Shryock とその一派にとっては不幸なことだが、この議論は非常にご都合主義的で、幾分破廉恥であって、ニュートン自身が占星術を含むオカルトの熱心な探求者であったという事実を無視している! 「ニュートンは錬金術の熱心な探求者でもあった;そして彼はダニエルの予言と黙示録、創造の歴史、そしていくつかのパンフレットについての注目に値する手稿を残した」 [Chambere's, p.1077]王立協会のフェローから、なぜ占星術や他のそのような不合理なナンセンスを信じたのかと尋ねられたとき、彼はやり返したと云われている:「まあ、君、私は問題を研究した、が、君はしなかった!」。 しかしながら、Shryockは続ける:
そしてまた: 「18世紀の思想家たちの主な成果は……迷信と神学に対する拒絶……一言でいえば、彼らは真の社会科学 錬金術を化学から、占星術を医療から、早々と排除した人々によって成就されたそれに類似した貢献 の開始の道を闡明したのである」[Shryock, 1936, p.140] ヨーロッパにおける黒死病の起源に関して: 「パリの医学部で学んだ医師たちが占星術の証拠を探したとき……彼らはそれを見つけた:「1345年3月20日午後1時、土星、木星、火星の合が宝瓶宮に起こり……紛れもなく引き起こしたのが死と病気……大気中の疫病……そして大地と水から邪悪な蒸気を吸い上げると計算された……」 [in Griggs, 1981, p.30] 「パラケルスス医学では、Coulter が指摘しているように、病気は「占星術的な影響に従う……」 [Coulter, Vol. II, p.33]。病気の原因として疑いもなく列挙されているのは、「毒、不健康な食べ物、魔女の呪文、流行と占星術的な影響[「星の炎」]等々」を含んでいる [ibid., p.36]。 Sydenham もまた、人体器官への一連の不健康な影響について推測した。「……空気が汚染されているか、または天体のいずれかの特異な結合によって引き起こされた何らかの変化によって大気が変化したかどうか……」[ibid., p.199]。彼の人間の「体質」理論は、「したがって幾分かを占星術に、幾分かを粒子説に負っていた」 [ibid., p.200]。しかし、ホメオパシーの創設者である Hahnemann は、医学へのこの古来のアプローチを完全に拒否した。 「彼はまた、化学、植物学、署名、占星術、または物理学に依存する先験的な方法を拒否した……」[ibid., p.356] 惑星は、世界の内なる活力やエネルギーをゆるやかに表す;病気も同様にエネルギーによって表される;したがって、平行が描かれ、この体系の中では一方が他方を表すようになる。病気は、これらの惑星のエネルギーの現れと大いに叙述されるようになった。それらは同じ性質と属性を共有していたので、お互いを置き換えることが容易にできた。このことが、医療占星術(medical astlogy)の基本的な基盤の1つを構成する。 医療占星術師(medical astrologer)の方法は、先ず、患者の出生のチャートを作成し、別のチャートを患者の病気またはそのおおよその発症時間のチャートを作成することであった。これらを見ると、占星術師は問題の根底にある惑星エネルギーの何らかの過剰または不足を特定することができる。そして、一般的な予後もこの段階で行うことができる。基本的には、患者の問題は占星術の言葉に翻訳され、そこからその経過と治療法が解明される。 使用された薬もさまざまな惑星に分類されたため、適切な薬を使用することで、過剰なエネルギーを冷却および中和することができた;同様に、不足しているエネルギーは、その器官またはシステムをより良く機能させるように刺激することが知られている薬を使用することによって後押しすることができる。使用された薬は主に植物由来であるが、いくつかのミネラルも使用された。システム全体は、正しく機能していない特定の臓器やシステムに対処することにより、身体機能を調和させ、規則化しようとする。システム全体は、正しく機能していない特定の臓器やシステムに対処することにより、身体機能を調和させ、規則化しようとします。それは、同様の「機能の調和」が中心的な治療目的である、その全体的なアプローチにおいて、鍼治療、アーユルヴェーダ、および中国の漢方薬に酷似している。 けれども、医療占星術は間もなく評価を落とした。それは複雑なシステムであり、誰かを適切に扱うために多大な時間と思考を必要とする。近道をして、システムをトリミングすることで、一部の偽開業医はそれをスピードアップすることを望んでいた。これは元のシステムの堕落を引き起こし、かくしてそれは一般的に1750年代以降、占星術とともに不評に陥った。それが機能しなかった、役に立たなかった、または、まったく合理的な根拠がなかった、ということではない。
Sources 2021.05.14. 訳了。 |