1
「わたしは、おお、わが子よ、人間愛のゆえにも、また神に対する敬虔のゆえにも、何よりもまずこれを書く。なぜなら、万有を知解し、その〔万有〕ゆえに制作者に感謝を言い表す これこそわたしのしてやまぬものである 以外に、最も義しい敬虔はひとつもないからである」。
2
「いったい、ひとは何をすればいいのですか、おお、父よ、この世に真実なものが何もないとするなら、生を美しくすごすには」。
「敬虔であれ、おお、わが子よ。敬虔で或る者は、完璧に愛知するであろう。なぜなら、愛知なくしては、完璧に敬虔であることは不可能であるからだ。いかなるものであるか、いかに配置され、それは何によってか、また、何のためかを学知する者は、造物主、すなわち善き父にして、有益な乳母、信頼にたる後見人に、万物のために感謝を知るであろう。感謝を言い表す者は敬虔であろう。
3
敬虔な者は、真理がどこにあるか、それが何であるかをも知り、学知すればするほどますます敬虔であろう。なぜなら、おお、わが子よ、魂は身体の内にあり、まことの善や真実の把握をめざしてみずからを輝かせるものだから、反対へと逸脱することは決してできない。恐ろしい恋を強化し、あらゆる悪事の忘却を強化し、魂は自分の父祖を学知し、もはや善から離れることができないからだ。
4
これが、おお、わが子よ、これが敬虔の目的である。これに達すれば、汝は美しく生き、幸福に死んでゆけよう、汝の魂が、自分はどこに飛びあがるべきかを知らずとも。
5
なぜなら、これのみが、おお、わが子よ、真理に至る道であり、この道を、われわれの先祖も道行き、道行きして善を得たのである。この道は厳粛にして平坦だが、身体の内にある魂には、道行くに困難な道である。
6
なぜなら、まず第一に、彼女〔魂〕は自分に敵対しなければならず、大いなる叛乱をし、ひとつの部分によって圧倒されなければならないからである。というのは、逃げようとするものと、下に引きずり降ろそうとするものたちとの、2対1の合戦が起こり、逃げることを望むものと、捕らえようと奮闘するものたちという、相互に対するこれらの多大な争いや戦いが起こるからである。
7
そして、両者の勝利は等しくない。なぜなら、一方のものは善を目指して奮闘するが、もう一方のものらは、諸悪のもとに安住するからである。また、一方は自由になることを渇望し、もう一方のものらは、隷従を歓愛するからである。そして、2つの部分が敗北した場合は、自分自身の内に留まっており、支配からも離れている。だが一なるものが負けた場合は、2つのものによって引き立てられ追い立てられ、この世での暮らしという罰を受ける。
8
これが、おお、わが子よ、かしこへの道行きである。だから、おまえは、おお、わが子よ、先ずは終わる前に身体を見捨て、競い合いの人生に勝利し、勝利したあかつきには、このように帰昇しなければならないのだ。
2008.09.29.