抜粋(Excerptum) XXIII
Stobaeus I. 49. 44, vol. i, p.385 Wachsmuth.

ヘルメース・トリスメギストスの〔書〕。「世界の乙女」という副題をもった聖なる書より。

1
 こう云ってイシスは、先ず、アムブロシアの甘き飲み物 — 魂たちが神々<から>受けるならいのもの — をホーロスに注ぐ。そしてそういうふうにして、イシスは至聖のロゴスを語りはじめる。


 「数多なる軌道をもつ天は、わが子ホーロスよ、下界にあるものらのあらゆる自然によって、上界にあるのであり、現在全世界が有するものらの何ひとつ、いかなる場所においても失われることがないから、下界にあるあらゆる自然が、超越してあるものらによって飾られ、充満されるのは、全き必然である。というのは、いうまでもなく、下界のものらが超越界の秩序づけ(diavkosmoV)を飾ることはできないからである。だから、まさった秘儀に対しては、劣った〔秘儀〕が譲歩するのが必然である。まさしく、下界にあるものらよりまさっているのは、大気圏の配置(diavtaxiV)であり、万有に対して安全であり、死すべきものらの悟性(dianoiva)に屈服することはない。


 ここからして、下界のものらは嘆息した、絶美さと、上界にあるものらの常なる持続(diamonhv)に対する畏怖の念からである。というのは、天の美しさ観ることは観想と同時に苦悶に値することだったからである。〔天の美しさとは〕いまだ知られざる神に似た豊かさと、太陽には劣るが、鋭い光に現れる夜の荘厳さ、および、その他の〔惑星〕がひとつひとつ、時間の定められた運動と周期にしたがって、下界のものらをともに飾り、ともに生長させる一種の隠された流出によって、天を運動する神秘の〔荘厳さ〕である。


 じつにそういうふうにして、畏怖が次々と起こり、言い難い問題も〔次々と起こった〕。しかし、万有の術知者(tecnivthV)が望まぬかぎりは、無知が万有をとらえていた。だが、自分が何者であるかを明らかにしようと決心したとき、神々に恋心を喚起し、胸の内にもっていたのよりも多大な曙光を、彼らの悟性に恵んだのは、先ず第一に、彼らが探求しようとするため、次いで、発見しようと欲するため、さらにじっさい〔発見に〕成功することができるためである。


 しかし、これは、おお、驚嘆にあたいするわが子ホーロスよ、死すべき種にはできなかった、というのは、魂は天の神秘にいまだ共感を持つこともできなかったからである。そんなこと〔をするの〕は、万有を知るヘルメースのみであった。彼は、万物を見、見て洞察し、洞察したうえで説明し証明する力を持っていた。というのも、思惟したことを刻し、刻したうえで隠した。しゃべった以外のたいていのことは安全に沈黙しのは、世界の後世の者がみな、永遠にこれらを探求するためである。


じつにこのようにして、〔ヘルメースは〕親族の神々を槍持ちとして、昇って星になった。しかし、彼には後継者タトがいた、息子であると同時に、これらの学問の相続人である、さらにまた、間もなく、プターすなわちヘーパイストスの子にして、イムゥテースという名のアスクレーピオスがはからいによって〔弟子になり〕、また他に、万有の女王である摂理の望みによって、天の観想の信実を明澄に報告しようとした者たちが。


 ところで、ヘルメースは、わが子にさえ完全な観想を伝授しなかった、その所以は、まだ年齢的に若年だったからだと包摂者〔世界〕に弁明した、「わたしは知っている、上昇が起こるとき、上昇のことをすべて目撃する眼によって永遠なるものを観想し、考察する〔自分に〕ゆっくりとではあるが確実に、精確な識別(diavgnwsiV)がやってきた〔……〕世界の元素の聖なる符牒〔ヒエログリフで書かれたヘルメースの書〕をオシリスの秘め事の近くに仕舞いこみ、これらのロゴスに祝福の言葉を述べて、天に帰って行くべきだと」。


とはいえ、ふさわしいのは、おお、わが子よ、わたしがこの報告を不完全なままにのこすことではなく、この書をヘルメースが預けるときに発言したかぎりのことを云うことです。というのは、彼は次のように発言したからです。「おお、聖なる書よ、 — わたしの腐敗せざる手に与ったものら、万有(to; pa:n)の支配者が腐敗せざる薬によって塗油したもうたものらよ、全永遠の間安全なもの、時間の続くかぎり腐敗することなく存続せよ、この地の平原を通過するはずの者すべてにとって観られることなく、見出されることなくあれ、天が年老い、汝らにふさわしい組織体、つまり、造物主が魂と命名するものらが子として生まれるときまで」。
これだけのことをその書物に云い、自分の作品のために祈って、固有の帯に〔ヘルメースは〕聖別されたのです。


 しかし、中間の充分な時間が、無為のうちに<そして>隠れたままにすぎ、〔下界のものらの〕自然は、おお、わが子よ、不妊であって、ついに、天を周回するようすでに命ぜられていた者たち自身が、万象の神である王に近づき、諸有の静けさを報告し、全体が飾られるべきこと、しかもそれは〔神〕自身よりほかのものの仕事ではないことを〔報告した〕。そして、「あなたにお願いします」と彼らは言った、「今有るものら、後に必要性を有するものらを考察してくださるように」。

10
〔彼らが〕こう云うと、神は微笑し、自然あれと云った、すると女性で、善美なものが、その声から出てきた、これを観て神々は驚倒した、すると父祖たる神は、これを自然という名前で報い、これに生産的であるよう下命した。

11
しかもなお、〔神は〕あたりを見つめて発声した。
「天は、大気と霊気で満たされよ」。神が云った、するとそうなった。

12
また、自然は、自分に語りかけ、自分は父の誡めに聞き従わざるべからずと知った。

13
そこで、ポノス(PovnoV)〔「労苦」の意〕と交わって、美しい娘をこしらえ、これをヘウレシス(Eu{revsiV)〔「発見」の意〕と呼んだ。これに神は有ること(eij:nai)を恵み、恵んだうえで、すでに生出したものらを判別し、これを神秘で満たし、それらのヘウレシスに、それらに対する指揮権を恵んだ。

14
 そして〔神〕御自身は、超越界が無為であることをもはや望まず、それが気息(pneu:ma)で満たされることをよしと認め、部分部分が不動にして無為であることのないよう、そのようにこれに術策を施しはじめた、自分の仕事の生成のために聖なる有性を用いて。すなわち、気息を、自身のものから充分なだけ取り、これを理性的に火と混ぜ、〔ひとに〕知られざる別の質料のようなものと混合した。そしてこれを、有る秘密の発声によって別々に合一させ、このようにして混成物全体をよくよくかき混ぜると、ついに、この混合物〔の表面〕に、生成したもとのものよりも滑らかで、清浄で、輝かしい一種の質料(u{lh)が泡立った。これは透明で、その術知者のみが見ることができるものであった。

15
こうして完成した〔一種の質料〕は、火に焼かれても溶けるようなこともなく、まして気息に冷やされても〔凝固する〕こともなく、その混成物の組織が独特の形と独特な合成との特殊性と親密性を有することから、めでたい名前と同等性の作用にちなんで、神はこの組織を「魂(Yucaiv)」〔複数形〕と呼んだ — まさしくこの浮き泡(ejpivpagoV)から無量の充分な魂たちを〔神は〕生産したのであり、この混成物の表面に表れるものを、望む目的に合わせて、経験深さと適切なロゴスを以って、秩序よく、かつ、均等に、形づくり、その結果、

16
これら〔魂たち〕がお互いに異なることは、必然<以外には>何もなかった、というのは、神の運動から立ちのぼるこの花〔泡〕は、お互いに等しくはなく、一番目のものは二番目のものよりもより大きくより十全で、あらゆる点でより清浄であるが、二番目のものは一番目のものに十分に次ぐ〔第二位の〕ものであるが、第三番目のものよりははるかにより大きい。じつにそのようにして、全数が60の位階まで後退するのであるが、ただし、あらゆる〔魂〕たちは永遠たれと〔神が〕立法して定められた結果、ひとりご自身のみが成就の仕方をご存知の一なる有性からできているのです。これらの〔魂たち〕には、[天の]上方の自然の区分と部屋を上界に配分し、ある配置とふさわしい家政によって円筒(kuvlindroV)を回転させ、父を喜ばせるようにした。

17
じつにこういうふうにして、また霊気の全美な壇上に立って、すでに有るものらの諸自然を呼び寄せ、
 「おお」と謂う、「わが気息とわが思い煩いの魂たち、美しきわが子たちよ、わが手で分娩させて、すでにわが世界(kovsmoV)にささげた者たちよ、以下のわが言葉を法として聞き入れ、わが指示によって汝らに定められた以外の場所に触れてはならない。そこで、よく堅持するなら、汝らにとって天は再び等しくとどまり、星辰の間に配置された者は、徳に満たされた王座があろう。これに対し、わが意志に反して何か新奇なことを行った場合は、汝らを生出した素材である聖なる気息と混合物にかけて、また、魂を作ったこのわが手にかけて、汝らに誓う、遠からず汝らに束縛と懲らしめを工夫しよう、と」。

18
 これだけのことを云って、神 — わたしの主でもあるかた — は、残りの同族の元素、つまり水と地を混ぜ合わせ、同様に秘密のロゴス — 力はあるが、最初の〔ロゴス〕とは等しくないの — を唱え、よく動かせつつ、命のもと〔気息〕を吹きこんで、その混合物の表面に等しく漂う浮きかす(ejpivpagon) — よく浸ってしっかりしたの — を取って、これから人間の形をした生き物を形づくった。

19
さらに、この混ぜものの残りを、すでに先行していた魂たちに与えた、この魂たちとは、神々の領域と、星辰に近い場所に所属するものたちで、聖なるダイモーンと呼び変えられたものたちのことであるが、そのさい、『形づくれ』と言いながら、『おお、わが子たち、わが自然から生出したものたちよ。わが術知の残り物を受け取り、おのおのが自分の自然に何か似かよったものを形づくれ。そこでなおまた次のものをも、おまえたちのために範型として供しよう』、そうして、獣帯の世界を取って、

20
魂の動きに良くかつ美しく合致するように定め、獣帯の人型に合わせて一連の生き物を完成し、これに何でもできる力と、あらゆる術知のもとになる気息を、これからずっと絶えず存在することになるあらゆるものを生出するものとして授けました。

21
そして身を引かれたのです、眼に見える作品に、それらの眼に見えぬ気息を、同族の有性としておのおのに繋ぎ合わせることを約束して。こうして、それら〔魂たち〕は、以後は等しいものをもうひとつ生むだけで、もはや先に制作されたものらとは異なったものを制作する必要がないようにしたのです」。

22
 「それでは、何を、おお、生みの女親よ、魂たちは作ったのですか」。
 するとイシスが云った。
 「混成されたものを、おお、わが子ホーロスよ、〔魂たちは〕この質料から取って、先ず調査し、父の混合物を崇拝し、何から編み合わされているかを探求しました。しかし、それを認知することは彼女〔魂〕たちにとって容易ではありませんでした。探求は父の瞋恚に遭うのではないかと恐れた所以も、そこにあります、ですから、下命されたことを実行することに専念しました。

23
ここから、質料(u{lh)の上方のとりわけで軽いのからは、その上皮(ejpivpagoV)を鳥類として美形に型作りました。しかし、その中で、混合物がすでに半固まりになって、すでに堅く凝固したものからは、四足動物の種族を形づくり、あまり軽くなくて、泳ぎぬくために別の湿り気を必要とするものは魚の〔種族〕を〔形づくり〕ました。また、残りは冷えて、すでに沈んでいたものからは、爬虫類の自然を魂たちは造りなおしました。

24
〔ところが、魂たちは〕、おお、わが子よ、自分たちはひとかどのことをしたと、余計な蛮勇で武装し、言いつけられたことに反して行動し、もはや固有の区分や部屋から離れ出て、もはやひとつの場所にとどまろうとはせず、常に動き、たったひとつところになおいることは死だと考えるにいたったのです。

25
 『しかし、こんなことは』と、おお、わが子よ、ヘルメースは謂うのです、わたしのことを言っているのですが、『全体の主にして神は、彼女たち〔魂〕のしていることを気づかぬことはなく、彼女たちに懲らしめと、じっと耐え忍ぶ束縛を求めたのです。そしてとくに、万物の指揮官にして主人には、人間どもの組織体を工夫するのがよいと思われました。これ〔組織体〕によって魂たちの種族が常時懲らしめられるようにするためです。

26
まさしくこのとき、〔神は〕わたしを呼び寄せ』とヘルメースが謂うには、〔神は〕云いました。『わが魂の魂にして、わが理性の聖なる理性よ、

27
いつまで下界の自然は陰気に見えるのか。すでに生まれたものたちは、いつまで野蛮にして称讃されることなきままとどまるのか。さあ、天にある神々をみなわたしのためにただちに〔呼び集めよ〕。ヘルメースの謂うには、神は云ったのです、おお、わが子よ、そこで彼ら〔神々〕は拝命のためにやってきました。『注視せよ』と〔神は〕云いました、『地上と地上にあるすべてのものらを』。そこで彼らは、権力者〔神〕が何を望んでいるかをすぐに知りもし、理会もしました。そして、人間どものために云う彼〔神〕に共感し、

28
生まれようとする者たちに一人ひとりから何か提供できるどうか。
 太陽が言いました。
 『わたしはますます輝きましょう』。
 月は太陽の後の走路を照らすことを約束しました。おそれ(FovboV)と沈黙(Sighv)と($UpnoV)と、彼らにあるであろう無益な記憶(Munhvmh)を前もって子作りしましたと言いました。
 クロノス〔土星〕は、すでに正義(Divkh)と必然(=Anagkh)の父となったと報告しました。
 ゼウス〔木星〕は言いました。
 『来るべき部族が、戦争で完全には〔破滅してしまうことが〕ないよう、すでに彼らに(Tuvch)と希望(=ElpivV)と平和(Eijrhvnh)をもうけました』。
 アレース〔火星〕は、すでに競争(=Agwniva)と怒り(=Orghv)と争い(!EriV)の父となったと言いました。
 アプロディーテー〔金星〕は、ためらわずに、云いました。
 『あたくしは、彼らに渇望(PovqoV)と、おお、ご主人さま、快楽(+Hdonhv)と笑い(GevlwV)を彼らに結びつけました、同族の魂たちが、最も難しい有罪判決を受けても、あまりに懲らしめられすぎないためです』。
 おお、わが子よ、アプロディーテーが以上のことを言ったので、〔神は〕[おおいに]喜ばれました。

29
 『それではわたしは』とヘルメース〔水星〕は云いました、『人間どもの自然を制作しましょう、とわたしは謂ったのです、そして知恵(Sofiva)と慎慮(Swfrosuvnh)と説得(Peiqwv)真理(+Alhvqeia)を彼らに供え、発見(EuJrevsiV)の同志になることをやめず、獣帯のもとに生まれたわたしの人間どもの死すべき生をも永遠に益しよう(父にして造物主がわたしに打ち明けた獣帯は、少なくとも知慮深くて理知的なのですから)、そして、彼らに課せられた星辰の動きが一人ひとりの自然に合致した作用を有する場合には、より多く〔益しよう〕』。
 世界(kovsmoV)の主人たる神は、これを聞いて喜び、人間どもの部族が生まれることを下知しました。

30
 『そこでわたしは』とヘルメースが謂います、『〔魂を閉じこめる牢獄としての身体をつくる〕質料(u{lh)として何を用いるべきか探求し、独り支配者(movnarcoV)に援助を求めました。すると彼〔独り支配者〕は、魂たちに混合物の残りを与えるよう下知した。しかし、それを取ってみると、完全に乾燥しているのを見出した。そこで、混合する際に必要よりはるかに多くの水を用いたために、質料の組成(suvstasiV)が更新され、形づくられたものはまったく水っぽくて脆弱、無力となり、賢明であるにはなおさらに力を満たしていなかった。わたしは形づくり、〔それは〕美しく、わたしの作品を見てわたしは喜び、独り支配者に観るよう下界から呼びかけた。彼は見もし喜びもして、魂たちが身体に宿るよう命じた』。

31
 しかし、このとき彼女〔魂〕たちは、最初、自分たちが有罪判決を受けたことを知って悄然となり —

32
とはいえ、魂たちの言葉にもわたしは驚きました(心を傾注しなさい、わが子ホーロスよ、おまえは秘密の観想を耳にするのですから、 — この〔観想は〕、あらゆる仕事の覚え書き書記ヘルメースから、父祖カメーピスが聞き、<わたしは>万物の先祖カメーピスから、わたしを黒い奥義でも報いたときに〔聞いた〕ものです。そして今はおまえ自身がわたしから)。 —

33
すなわち、おお、誉れ高き最も驚嘆すべき坊や、身体に閉じこめらそうになったとき、そういうことが身に起こった獣たちの習いどおり、彼女〔魂〕たちのあるものは、自由な身が邪悪にも奴隷になりかかり、慣れ親しんだ愛する荒野から引き離されそうになった〔獣〕のように、泣き悲しみ嘆息するばかり、<また〔あるものは〕>自分たちに覇権をふるうものたちに対して戦い、逆らい、同心せず、たまたま遭遇した〔獣〕は、自分たちに襲いかかるものたちに死を見舞おうとしました。年老いた〔魂〕たちのあるものは、コブラのようにシュウシュウ鳴き、

34
また別の〔魂〕は、鋭い金切り声をあげ、言葉〔を発する〕前にたっぷりと泣き、行き当たりばったりのように何度も上へ下へと眼を交互にやりながら、『天よ』と云いました、『わたしたちの生成の始原〔原理〕(ajrchv)たる霊気と大気よ、独り支配者の神の手にして聖なる気息よ、神々の燦然と輝く眼たる星辰と、太陽と月の疲れ知らぬ光よ、わたしたちの始原の乳兄弟よ、そのすべてから引き離されて、わたしたちは惨めな目に遭うのです、かてて加えて、偉大にして輝けるものら、地のまわりに放散した聖なるもの〔atmosphere〕、多大な富、そのうえまた神々と共なる浄福なる生活から、このような不名誉で俗悪なる天幕〔身体〕の送りこまれるとは。

35
惨めなわたしたちに、こんな目に遭うどんな醜行があったというのですか。こんな懲らしめにあたいする何があるというのですか。臆病なわたしたちをどれほどの過ちが待ち設けていることか。邪悪な希望にすがって、どれほどのことをしなければならないことか、水っぽくてすぐに解体する身体に必需品をあてがうために。

36
眼は〔数が〕少なく、もはや神の魂たちを受容する余地がなく、これら〔眼〕の内にある水分と球体によって、自分たちの祖先である天を見るにはまったく小さいので、わたしたちは常に嘆き、視えないときもあるのです[ここにオルペウスのことばがある、「わたしたちが視るのは〔眼のなかの〕輝きによってであって、〔肉〕眼によっては何ものも見ない」]。というのは、惨めにもわたしたちは有罪判決を受け、じかに視ることはわたしたちに恵まれていないからです、光なしに見ることは視ることはわたしたちに認められていないのですから。そういう次第で、もはや眼に余地はないのです。そのようにまた、同族の気息〔=風〕が大気中に吹くのを聞いても、惨めでしょう、それら〔気息=風〕といっしょに息をするのではありませんから。住まいとして、上空のこの世界の代わりに、わたしたちを待ち設けているのは、心臓という小さな塊にすぎません。

37
わたしたちが下降して行くようなところからわたしたちをいつも解放して、悲しみを滅してください。主人にして父にして制作者よ、これほど素速くあなたの作品を蔑ろになさるとしても、わたしたち〔に対する罰〕に一種の限界を制定してください、まだわたしたちをわずかでもロゴスにあたいするものと認めてくださるなら、輝きわたる全世界を通してまだ視ることができるまでに』。

38
 魂たちはそう云って、わが子ホーロスよ、目的を達しました。というのは、独り支配者も来臨して、真理の王座に坐して、懇願する〔魂〕たちにこう発声したからです。
 『魂たちよ、おまえたちの主になるのは、恋情(!ErwV)と必然(=Anavgkh)である、というのは、このものたちはわたしの後の万物の主人にして部隊長(taxivarcoV)だからである。魂たちはといえば、わたしの不老の司令(skhptouciva)に仕えるかぎりは、汝ら知るがよい、過ちをおかすことがないかぎりは、天の領域に住めるであろう。だが、もしも汝らの誰かに非があれば、魂たちも死すべき内臓に〔宿るという〕有罪判決を受けて、割り当てられた領域に住することになろう。

39
おまえたちの咎がほどほどのものであれば、肉の致命的な束縛を後にして、おまえたちはもう一度嘆きなく、自分たちの天を迎え入れるであろう。しかし、何かより大きな過ちの為手となり、ふさわしい目的をもたず、形成物を逸脱すれば、もはやおまえたちは天には住めず、また人間の身体にも〔住めず〕、言葉なき動物たちとして、以後、さまよい続けることになろう』。

40
 こう云って、おお、わが子ポーロスよ、彼女〔魂〕たちすべてに気息を授け、もう一度発声しました。
 『ところで、おまえたちの変化をわたしが立法したのは、ただ漫然と思いつきでというわけではなく、おまえたちが何か見苦しいことをしでかした場合は、より悪しき方へ〔変化する〕ように、自分たちの生成に値することを何か企んだ場合は、より善い方へ〔変化する〕ようにしたのである。というのも、余人ならぬわたし自身が目撃者(ejpovpthV)にして監督者(ejpivskopoV)になるからだ。だから、おまえたちによって以前に為された行為ゆえに、身体に宿るというこういう懲らしめに服するのだと悟るがよい。

41
そういう次第で、おまえたちにとって転生(palaiggenesiva)の違いは、わたしが謂ったように、身体の違いであり、解体(diavlusiV)は恩恵(eujergesiva)であり、以前の<ような>幸福である。しかるにおまえたちの考え(frovnhsiV)は盲目であり、何かわたしに値しないことをしでかすのがよいと思うと、正反対のことを、つまり、懲らしめには恩恵として服するが、より善いことへの変化は不名誉で暴虐だと考えるのである。しかし、おまえたちのうちでより義しく、神性への変化を待望する〔魂〕たちは、

42
人間ども〔の身体〕に〔宿ると〕、義しい王たち、正真正銘の愛知者たち、<……>建設者たちや立法者たち、真の占い師たち、正真正銘の〔薬草の〕根の採取者たち、神々の最善の預言者たち、経験豊かな音楽家たち、理知的な天文学者たち、精確な鳥占い師たち、厳格な供儀師や、美にして善であるかぎりの者らにふさわしい〔魂〕となる。鳥類に〔宿ると〕、ワシになる、その所以は、同種のものを何ひとつ追い出すこともせず、御馳走にすることもなく、それらに近い別の動物でさえ、自分よりいささか弱いものに不正するのを放置しておかないからであり、ワシの自然は合法性が伴うからである。また、四足動物〔の身体〕に〔宿ると〕、ライオンになる、というのは、強力な動物で、どこかの場所で眠るということなき自然本性を得ており、腐敗する身体で不死の自然を鍛錬する〔動物〕である。倦み疲れることも眠ることもないのだから。また、爬虫類〔の身体〕に〔宿ると〕、竜になる。この動物は力強く、長生で、飼いならされもするぐらい無悪にして人間愛をもち、毒をもたないであろう。年老いても若返ること、まさしく神々の自然のごとくである。また、魚類〔の身体〕に〔宿ると〕、イルカになる。というのは、これらは海洋に落ちた者たちにも同情し、息のあるものらは陸に運び、亡くなったものたちには決して触れることがない、水棲の種族はあらゆるものの中で最も悪食であるにもかかわらず』。
 これだけのことを神は云って、不滅の理性(nou:V)となりました。

43
 事情かくのごとくになったとき、わが子ホーロスよ、強力このうえない一種の気息〔モーモス〕が大地から立ちのぼり、身体の広がりは把握しがたく、力は知慮を持ち、何を訊ねているのか〔答えが〕わかっているにもかかわらず訊くもの〔モーモス注2)〕で、 — 身体は男の型をまとい、美しく厳めしく見えるが、ものすごく粗野で恐ろしさに満たされていた — 、まさしくこれが、人型の中に入った魂たちをただちに見て、

44
 『この者たちは』と言った、『何と呼ばれるのか、おお、ヘルメース、神々の記録係よ』。
 そこで〔ヘルメースが〕『人間だ』と云うと、
 『ヘルメースよ』と謂った、『おお、ヘルメースよ、人間を制作するのは、無謀な所業だ、〔人間というものは〕眼は詮索好き、舌は饒舌、自分にふさわしくない事柄までも聞こうとするもの、嗅覚は好奇心に満ち、触覚はどこまでも誤用するものだ。こんな者を、おお、創造者よ、自然の美しい神秘を無謀にも見ようとする者を、煩いなきままにしておこうと判断したのか。こんな、大地の向こう側までもおのれの思いつきを送りこもうとする者を、悲しみなきままに放任するつもりなのか。

45
〔そんなことをすれば〕人間どもは植物の根を掘り起こし、汁液の性質を究めるであろう。鉱石の自然を考察し、ロゴスなき動物の真ん中を解剖するのみならず、自分たちをさえ〔解剖するであろう〕、どうなっているのかを究めようとして。無謀な手を海にまでも延ばし、自生する材木を伐採して〔船を造り〕、〔海の〕対岸の地までもお互いに渡りあうであろう。不可侵の聖域の内奧にいったいいかなる自然があるのか、彼らは探求するであろう。上方に至るまでの事柄を追求するであろう、天にはいかなる動きが確立しているのかを観察することを望んで。こういったことはまだしもましである。というのは、大地のほかにはもはやいかなる余地も残らないのだから。いや、それどころか、これ〔大地?〕の最後の夜〔闇〕までも、好きこのんで探ることであろう。

46
そうすると、この者たちは障害物を何ひとつもたず、悲しみがないという善の手ほどきを受けて、恐怖の難儀な刺し棒に強いられることなく、煩いのない人生にふけることであろう。次いで、この者たちは、天に至るまでものお節介な大胆さを身に帯びるのではないか。自分たちの煩いなき魂を、〔四〕元素にも延ばすのではないか。そういうわけだから、何かを熟考すること(bouleuvesqai)に対する恋情を教えよ、それによって、失敗の難儀という恐怖をももつため、望んでいたことを得損なうことで、悲しみの咬み傷に圧倒されるためである。魂たち自身のお節介をして、諸々の欲望、恐怖、苦痛、迷動する希望によって失望せしめられよ。一から他へ次々と恋情をいだく多彩な希望をして、彼らの魂を分配せしめよ、諸々の欲望が、ある時は成就し、ある時はしくじって、そうすることで、彼らにとって達成の甘美さえもが、完全な害悪の惨めさへの餌にすぎなくなるために。熱をして彼らを圧迫せしめよ、彼らが意気阻喪して、欲望を懲らしめるために』。

47
 わが子ホーロスよ、生みの女親がおまえにこんなことを述べたので、おまえは悲しむであろう。あわれな人間が、いかにして重荷を負わされたか、おまえは驚き、圧倒されるのではありませんか。もっと恐るべきことに耳を傾けなさい。

48
 モーロスが以上のことを言ったとき、ヘルメースは喜びました(というのは、述べられた事柄は、自分にとって親しく言われたからです)、まさしく〔モーロスが〕述べたかぎりのことを実行しましたが、そのさい〔次のように〕言って、  『モーロスよ、しかしながら、包摂する神の気息の自然は目にみえるものではない。というのは、わたしは万物の主人として、執事にして管理人〔にすぎない〕と云え。だから、見張り人としては、全体を鋭く見るものとして、神アドラステイア注3)が配置されるであろうし、わたしは、迷動することなき踏み越えることなき観想の働きをもつ一種の秘密の器官を工夫するつもり、これによって、地上のものらは、誕生から最後の腐敗に至るまですべて、必然的に奴隷として扱われるであろう、〔この器官は〕完成の固定を有しているからである。また、この器官には、地上の他のあらゆるものらも聴従するであろう』。じつにこういうことをわたしはモーモスに云った、とヘルメースは<謂います>、そして器官はすでに稼働しはじめました。

49
 さて、こういうことが起こり、魂たちが身体にやどり、為事の称讃を彼が得たとき、

50
再び、独り支配者が神々の最高議会(sunevdrion)を臨時招集し、神々が参集し、再び以下のことをご自身が次のように発声しました。
 『神々よ』と言って、『王冠の房に属するかぎりのものら、不滅の自然まで得たかぎりのものら、大いなる永遠〔世界〕を常に司ることに当籤したものら、汝らに引き渡されたこの全体に決して苦労させられることのないものたちよ、厳密には知られぬこの嚮導権を、おまえたちはいつまで牛耳るつもりか。いつまで、これらが太陽や月に見られることなきままなのか。汝らのおのおのは、自分の方法で生出せよ。まだ無為なこの組織をできるかぎり消去しよう。混沌(cavoV)であったことが後世の者たちにとって信じられぬ神話にすぎないと思われるようにせよ。偉大な仕事に取りかかろう、そこで先ずわたし自身が始めよう』。
 〔独り支配者は〕云いました、するとすぐに、まだ黒い合一の分離が整然と〔宇宙的に(kosmikw:V)〕起こりました。そして

51
上方に天が現れ、おのれのあらゆる神秘〔星辰〕で飾られました。<他方>地はなおも振動しつつ、輝く太陽を上の乗せ、自分〔地〕をめぐるあらゆる美しいものらに飾られました。というのは、死すべきものらにとってつまらぬとみなされるものらも、神にとっては美しいのです、神の法に隷従するよう制作されているからです。さて、すでに自分の作品が動いているのを見て神は喜びました。

52
〔神は〕包むもの〔atmosphere〕と同質の手を、自然から生まれたものら〔種子〕で満たし、その手をしっかり握りしめて、「取れ」と云いました、『おお、聖なる大地よ、取れ、あらゆる名誉にふさわしいもの、万物生出の母たらんとするものよ、これからは、何ものにも後れをとるとは思われまい』。神は云って、神が持たねばならないような手を開いて、すべてを諸有の構成体の中に放出しました。
 〔この後に、おそらく、惑星が大地から飛び出すくだりがあるはずである。 — Scott〕

53
 そして初めには、完全に無知(ajgnwsiva)が存しました。というのは、魂たちが〔身体に〕閉じこめられて間もなくは、その不名誉に我慢せず、天にある神々と勝ちを争い、自分たちの生まれのよさに固執する<とともに>、自分たちも同じ造物主を得たということを頼りに叛乱し、劣った人間どもを道具として使い、彼ら〔劣った人間〕をお互いに襲撃、対抗、互いに戦争させたからです。そして、強力は脆弱を大いに衰弱させるならいどおり、強力な者たちが不能な者たちを焼きもし、殺しもして、神域の中でも、ここでは生きたまま、そこでは屍体さえも[内奧に]投げ捨て、

54
ついに、〔四〕元素は憤慨して、人間どもの粗野な生活態度について独り支配者たる神に会うのがよいと判断しました。さて、悪はすでに多大であったので、〔四〕元素は、自分たちを制作した神に拝謁し、次のようなロゴスで苦情を申し立てました。

55
 そしてまさにこのときも、真っ先に発言権を得たのは火でした。
 『主人よ』と言いました、『この新世界の術知者、森厳な名が神々の間にも、全人類の間にも今に至るまで隠されたかたよ、いつまで、おお、ダイモーンよ、死すべきものらの人生を無神のままにするおつもりですか。

56
もはや、御身自身を現し、世界(kovsmoV)に託宣し、〔人間の〕生の野蛮さに平和を教示したまえ。生に諸々の法を授け、夜に神託を授けたまえ。万物を美しき希望で満たしたまえ。人間どもをして、神々からの報復を恐れせしめよ、そうすれば、〔過ちに〕固執する者は誰もいなくなるでしょう。過ちにふさわしい報酬を受け取るなら、自余の者たちは不正を避け、誓いを恐れ、もはやひとりとして不敬の念をいだく者はいなくなるでしょう。善行を受けることで感謝することを学ばせしめよ、そうすれば、火であるわたしは灌奠に[供儀に]喜んで仕えましょう、〔そして〕かぐわしい蒸気を炉から御身のもとに送りましょう。というのは、わたしは気がふれているのです、おお、主人よ、今まで、生まれた人間どもの無神の蛮勇のせいで、肉を溶かすことを強制され、〔人間どもは〕わたしが生まれついたままにとどまることさえ赦さず、不適切にも不滅であるように改鋳するのですから』。

57
 今度は大気が、『わたし自身も濁っております、主人よ』と言った、『そして、屍体から出る蒸発気のせいで病気になり、もはや健康ではなく、上から見渡せるのも、目にすることが神法に悖ることばかりです』。

58
 続いて水が、おお、雅量の坊や、発言の〔権利〕を得て、次のように言いました。『父にして、万物の最も驚嘆すべき制作者、自生したダイモーンにして、御身を通して万物を生出する自然の制作者よ、遠の昔のことです、おお、ダイモーンよ、河の流れは常に清浄たれ、と下命なさったのは。なぜなら、河や海は、〔今や〕あるいは殺人者たちを洗い清め、あるいは殺害された者たちを受け容れているからです』。

59
 続いて、地が悲しみに満たされながら進み出て、†〔(tavxomai th:V ajpo; tw:n lovgwn)〕†おお、誉れ高き坊や、〔地は〕次のように言いはじめました。
 『王にして、蒼穹の天の統括者にして主人よ、われら〔四〕元素の指揮者<にして>御身の前に立つものら — 万物が増大と減少の初めをここに有し、また再びここへと必然的に果てる義務を有する — の父よ、非人間的なものらの、おお、いとも尊きかた、非思量的で無神の合唱舞踏隊が、わたしに襲いかかっております。にもかかわらずわたしは、万物の自然をも包摂しているのです(なぜなら、自分は、御身が下命なさったとおり、万物を荷ないもし、殺されたものらを受け容れもするのですから)、

60
しかしもうわたしは辱められました。御身の地上の世界は万物に満たされながら、神をもちません。すなわち、恐れる対象をもちませんから、あらゆる違法をおかし、おお、主よ、あらゆる邪悪な術知によって〔殺害された者たちが〕わたしの腱に斃れるのです。それで、わたしは全身腐敗し、身体の体液でびしょ濡れです。

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ですから、主よ、価値なき者たち〔人間〕まで包含することをわたしは強制されています。わたしが荷なう万物とともに、神をも包摂したいのです。御身本人でないにしても(というのは、御身を包摂することは堪えられないでしょうから)御身自身の一種の聖なる流出を地に授けてください。地を、他の〔四〕元素の中でより尊いと作り替えてください。なぜなら、御身から生まれたものたちのうち、威張るのがふさわしいのは、ひとり万物をもたらす〔地〕だけなのですから』。

62
 これだけのことを〔四〕元素が言いました。
 すると神は、発言の聖なる音声で全体を満たして、
 『前進せよ』と云いました、『聖なる、大いなる父にふさわしいわが子たちよ、しかし、いかなる仕方でも革新を企てはならぬ、わが全世界を自分たちの奉仕をせぬままにしてもならぬ。というのは、おまえたちの間に、別の子が、わが自然の流出としてやがて〔臨在し〕、為されたことどもの敬虔なる番人にして、生者たちの甘言に弄されることなき裁判官、厳しい〔僭主〕であるばかりか、地下にある〔死〕者たちに罰を与える僭主となるであろう。さらにまた人間どものおのおのには、相応の報酬が種族を通して付き従うであろう』。

63
 じつにこういうふうにして、主の命により、〔四〕元素たちは請願をやめ、沈黙しました。そして彼らのおのおのが、固有の権利を確保し、発揮したのです」。

64
 そこでまたホーロスが云った。
 「おお、生みの女親よ、それではどのようにして、地は神の流出を得る僥倖を得たのですか」。
 するとイシスが云った。
 「生成を述べることはお断りです。というのは、おまえの播種〔出産〕の始原を、詳しく言うことは、神法に悖るからです、おお、胸広きホーロスよ、不死なる神々がいつか人間どもになることがあるなどということは決してないと。ただし、独り支配者たる神、全体の世界制作者にして術知者が、おまえの最も偉大な父オシリスと、女神イシスとを、暫しの間授けたのは、万物が必要とする世界の助けになるためだ、ということだけは別です。

65
 〔人間の〕生を〔神性の〕生で満たしたのはこの者たちです。
 相互殺戮の野蛮をやめさせたのはこの者たちです。
 祖先の神々に神域と供儀をささげたのは、この者たちです。
 死すべき者たちに法と養いと避難所を授けたのはこの者たちです。

66
 ヘルメースが謂うには、『わたしの書き物の秘密をすべてを悟り、見分け、ある部分は自分で保持し、死すべき者たちへの善行にもなる部分は、標柱やオベリスクに刻むのは、この者たちである』。

67
 初めて判決を示して、あらゆることを遵法と正義で満たしたのは、この者たちです。
 誓約と信用の創始者となって、最も偉大な〔誓いの〕神オシリスを〔人間の〕生に唱導したのは、この者たちです。
 生をやめた者たち〔死者〕を、どのように〔屍衣で〕くるむべきかを教えたのは、この者たちです。
 死の残酷さを探求して、次のように悟ったのは、この者たちです。つまり、外部〔霊圏〕から人間どもという形成物に宿った気息は、もとにもどるのがふさわしいが、不足する場合は、回復することなき気絶(leipoqumiva)をもたらす、と。
 包むもの〔大気〕はダイモーンたちに満たされていることをヘルメースから学んで、秘密の標柱に刻んだのは、この者たちです。

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 神の秘密の立法をヘルメースから学んで、人間どものために、あらゆる術知、知識、行事の導入者、立法者となったのは、ひとりこの者たちのみです。
 下界のものらは上界のものらと共感すべく造物主によっていかに配列されているかをヘルメースから学んで、天界の神秘に課せられた神事を、地上に確立したのは、この者たちです。
 身体の腐敗を認識して、預言者たちのあらゆる面での完成を工夫したのは、この者たちです。それは、神々に手を近づけようとする預言者が、諸有のについて何か無知であることの決してないように、愛知(filosofiva)やマギの学問(mageiva)が、魂を養い、何か受苦したときは、医術が身体を救うためです。

69
 これらすべてのことを実行したうえで、おお、わが子よ、オシリスとわたしは、天に住む者たちによって世界(kovsmoV)が満たされたのを見て、あとは帰昇することを願った。けれども、独り支配者(movnarcoV)が勧請されるまでは帰昇することができませんでした。包むもの(perievcon)がこの観想に満たされたものとなり、わたしたち自身が登高を受け容れやすきものとして僥倖を得るためです。というのは、神は讃美を喜ばれるからです」。

70
 「おお、生みの女親よ」とホーロスが云った、「わたしにもその讃美の知識を恵んでください」。
 するとイシスが云った。
 「心を傾注しなさい、坊や」。

2008.12.25. 訳了。


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