抜粋(Excerptum) XXIV
Stobaeus I. 49. 45, vol. i, p.407 Wachsmuth.

同じ〔書〕中で。

1
 「あなたは、おお、偉大な魂の持ち主であるわが子よ、何か別のことを〔質問〕したいなら、質問しなさい」。
 するとホーロスが言った。
 「おお、誉れも高き母よ、王的魂たちはいかにして生まれるのか、わたしは知りたいのです」。
 するとイシスが言った。
 「わが子ホーロスよ、王的魂をめぐって生じる相違は、ほぼ次のようなものです。すなわち、万有(to; pa:n)には4つの場所があり、これらは逸脱できない法(novmoV)と権威(prostasiva)に服するもので、〔具体的には〕天、霊気、大気、至聖の大地であって、[そして]上方には、おお、わが子よ、天に神々が住まいし、これら〔神々〕を他のすべてもろともに支配するのが、全体の造物主。霊気圏には星辰、これを支配するのが太陽。大気圏にはダイモーン的魂たち、これを支配するのが月。地上には人間どもと自余の生き物たち、これを支配するのが、時宜を得て生まれる王です。というのは、おお、わが子よ、神々は地上の種〔を支配する〕にあたいする王たちを生むのだからです。


つまり、〔太陽、月、地上の王たちといった〕支配者たちは、〔天上の〕王の流出なのであって、そのなかであの方〔天上の王〕により近い者、この者は自余のものらよりも王的なのです。つまり、太陽は、神に近い程度に応じて、月よりもより大きく、より有力であって、月は、配置においても力においても、それに次いで第二位なのです。


そして、〔地上の〕王は、その他の神々のなかでは最末端ですが、人間どものなかでは第一位なのです。そして、地上にあるかぎりは、真の神性からは乖離していますが、人間どもの間では非凡なものを、つまり神に似たものをもっているのです。なぜなら、彼に下向させられた魂は、その他の人間どもに下向させられたあのものらを超越した領域から来たものなのですから。


魂たちがそこから王たることへと下向させられるのには、次の2つの理由があります。すなわち、〔魂たちが〕美しく、かつ、非の打ち所なく、固有の永遠を走行し、神化しようとするとき、 — それは、王になることによって、神々の権力を前もって修練するためです。<もうひとつは〔魂たちが〕>すでにかなり神的であったが、ほんの小さなことで神来の指針に違法したとき、 — それは、身体に宿ることによって懲らしめに服するけれども、価値と自然ゆえに、他のものらと等しく身体に宿るということをこうむるのではなく、解放されていたときにもっていたもの、これを束縛されてもやはり有するのです。


 しかしながら、王支配する者たちの性格に生じる相違は、魂の判別によって決定されるのではありません、というのは、〔魂は〕みな神的なのですから、そうではなくて、任命されたそれ〔魂〕の槍持ちの天使たちやダイモーンたちに対する〔判別〕によるのです。というのは、このような〔神に似た〕ものとして、このような〔王として支配する〕目的で下降してくる〔魂たち〕は、付き添いや槍持ちを連れずに下降することはありません。上方の「正義」(Divkh)は、日々好日の領域から追放されたとしても、おのおのにとっての価値を捧持することを知っているからです。


そういう次第で、彼女〔魂〕を下方へ案内する天使たちやダイモーンたちが戦闘的だと、わが子ホーロスよ、魂は自分の仕事を忘れて、というよりは、別の巡礼団の来援までは、それをよく憶えているからこそ、彼らの考え(gnwvmh)を意のままにしようとします。これに反し、平和的である場合、そのときは彼女〔魂〕も固有の走路に平和をもたらします。また、裁判官的である場合、そのときは彼女〔魂〕も裁判します。また、音楽的である場合、そのときは彼女〔魂〕も歌います。また、真理を愛するものらである場合、そのときは彼女〔魂〕も愛知者となります。というのは、これらの魂は、必然によって、下方に案内する者たちの考え(gnwvmh)にしがみついているのです。なぜなら、人間性へと、転落するとき、自分の自然と、自分がどれだけはるかに出離して来たかということは忘れ、自分たちを閉じこめた者たちの情態(diaqevsiV)だけは憶えているからです」。


 「美しく」とホーロスが云った、「すべてをわたしに〔語ってくださいました〕、おお、生みの女親よ、しかし、生まれよき魂たちはいかにして生まれるのか、まだわたしに説明してくださっていません」。
 「地上に、おお、わが子ホーロスよ、相互に異なった地位があるように、魂たちにおいても同様です。というのも、彼女〔魂〕たちは、そこから出発してきた場所を有し、より栄光ある場所から出発してきた〔魂〕は、そうではない〔魂〕よりも生まれがよいのです。というのは、人間界において、自由人が奴隷よりも生まれがよいと思われているように([魂において]超越しており、王的なものは、必然によって超越されているものを奴隷にするのだから)、まさしく同様なのです、おお、わが子よ、<魂たちにおいて>も」。


 「<では、どのようにして、おお、生みの女親よ>、男性の魂・女性の魂は生まれるのですか」。
 「魂たちは、おお、わが子ホーロスよ、互いに同本性(oJmofuhvV)ですが、それは、そこにおいて彼女〔魂〕たちを造物主が形づくる一つの領域(cwrivon)からの出自だからですから、男性も女性もありません。なぜなら、そのような情態(diavqesiV)は身体の上でのことであって、非体にはないからです。


また、一方は厳格だが、他方は繊細だという違いは、わが子ホーロスよ、そこにおいて万物が生まれる大気(ajhvr)〔にあります〕。魂の大気とは、〔魂が〕まとっている体にほかならず、〔体は〕地・水・大気・火という元素の混成物(fuvrama)です。ですから、女性の組織(suvgkrima)は、湿と冷が過剰ですが、乾と熱に不足しており、そのせいで、そのような形(plavsma)に囲いこまれた魂は、湿っぽく柔弱になるのです、ちょうど、男性の場合には、正反対になるのが見出されるように。すなわち、彼ら〔男性〕の場合は、乾と熱は過剰ですが、冷と湿に不足しています。それゆえ、このような身体に宿る魂たちは、荒っぽくて活動的なのです」。

10
 「どのようにして生まれるのですか、賢明な魂たちは、おお、生みの女親よ」。
 するとイシスが答えた。
 「視覚器官は、おお、わが子よ、外衣に覆われています。この外衣が密にして厚い場合、眼は鋭く見え<ません>が、疎にして薄い場合、そのときは最も鋭く見えます。魂についても事情は同様です。すなわち、これ〔魂〕も非体の固有の覆いを有しています、これ〔魂〕も非体であるのにふさわしく。しかし、わたしたちのあいだにある覆いは、これら大気です。これが薄く、疎にして、半透明の場合、そのとき魂は賢明です。しかし、正反対に、密にして熱く、濁っている場合、そのときは、嵐の中にあるように、見るのは遠くではなく、足許にあるだけのものです」。

11
 するとホーロスが云った。「それではどういうわけで、おお、生みの女親よ、わたしたちの至聖の領域〔エジプト〕の外の人間どもは、わたしたちとは違って、悟性において本当には賢明ではないのですか」。
 するとイシスが云った。
 「大地は、万有(to; pa:n)の真ん中に仰向けに横たわり、人間のように、天を向いて横たわり、人間が〔肢体に〕分けられているだけの諸部分に分割されています。そして、自分の父親のように天を見つめていますが、それは、それの変化に応じて、自分も固有のものらを変化させるためです。そうして、万有(to; pa:n)の南の方には、横たえられた頭を有し、東の方には、右肩を、<西の方には、左〔肩〕を>、熊座の下には両脚を — <右〔脚〕は〔熊座の〕尻尾の下に>、左〔脚〕は熊座の頭の下に。大腿は、熊座と共なる〔星辰〕のなかに。真ん中は、真ん中に。

12
そして、その証拠はといえば、 — 南方の人間たち、つまり、頭頂部に住んでいる者たちは、よいおつむと美髪の持ち主です。東方の者たちは、喧嘩に手が早く、射手であるが、その理由は右手です。西方の者たちは、たいていの場合、左利きで戦う者(ajristeromavcoV)たちで、他の者たちが右の部分で活動するかぎりのことを、彼らは左〔の部分で〕提供する者たちなので、安全です。熊座の下の者たちは、†何かを目指して†〔速い?〕脚と、他にもいい足首の持ち主たちです。この人たちに続いて、少し離れたところの人たちは、今のイタリアのクリマとヘッラスのクリマで、この人たちはみなが美しい大腿と、いい尻の持ち主ですから、その大腿のきわだった美しさのせいで、ここの人間たちは、男性との交わりに陥るのです。

13
さて、これらの部分はすべて、他の諸部分に比して無為であるので、そこの上の人間たちをも無為な者としてもたらした。しかし、わたしたちの祖先の至聖の領域は、大地の真ん中に横たわっており、人間的身体の真ん中とは、ひとり心臓だけの聖域であり、心臓は魂の司令本部ですから、この理由により、おお、わが子よ、ここの人間どもは、みなも〔持っている〕かぎりの他のことで劣らないだけでなく、誰よりも理知的で知慮深いのです、心臓の上に生まれ育ったのですから。

14
 ほかにも〔理由があります〕、南は<不精者で>、おお、坊や、包んでいる〔大気〕から凝集した雲の受容者です(例えば、じっさいまた、そうやってそこでできたそれら〔雲〕の運搬によって、霜が融けるところ、そこでわたしたちの河〔ナイル河〕も流れ出すと言われています)、そこで、雲が落ちるところで、上に乗られた大気をかすませ、ある意味で煙でいっぱいにし、煙ないし霞が、眼のみならず理性の邪魔になるのです。また、東方は、おお、誉れ高きホーロスよ、太陽の上昇に近いので混乱させられ蒸発させられて、これと反対側の西も同様に日没の方で同じことに与り、そこに生まれる人間どもに対する邪魔を何ひとつ晴らさないのです。また北は、一致した冷たさによって、身体とともに、その下にある人間どもの理性をもこごえさせるのです。

15
これに反し、これらの真ん中〔エジプト〕は、晴朗であるから、自身にとっても、そこに或る者たちすべてにとっても、乱れのなさの点ですぐれています。なぜなら、持続的な無優のおかげのもとに生み、飾り、教育して、そういう者たちとだけ争い、勝利し、固有の勝利を決めた者を、あたかも善き太守が敗北者たちに〔するように〕、任命するのです」。〔?〕

16
 「次のこともわたしに、女主人たる母よ、説明してください。いかなる理由で、長患いにかかってまだ生きている人間どものロゴスも、思量そのものも、魂そのものも、害されるときがあるのですか」。
 すると、イシスが答えた。
 「生きものたちのうち、おお、わが子よ、あるものらは火のそばに住み、あるものらは水のそばに、あるものらは大気のそばに、あるものらは地のそばに、あるものらはそれらの2つないし3つのそばに、あるものらはまたすべてのそばに〔住みます〕。逆にまたあるものらは火に疎遠であり、あるものらは水に、あるものらは地に、あるものらは大気に、あるものらはそれらの2つに、あるものらは3つに、あるものらはすべてに〔疎遠です〕。

17
例えば、バッタは、おお、わが子よ、またあらゆるハエも、火を避けます。ワシやタカや、高みを飛翔する鳥類は水を避けます。魚類は大気や地を。ヘビは晴朗な大気を敬遠します。これに反し、地を愛するのがヘビたちや爬虫類です。水は、泳ぐ者たちすべてが。大気は、そこで暮らしもする鳥類が、[火は]、飛翔し、暮らしも近いかぎりのものたちが。もちろん、いうまでもなく、生き物のなかには、例えば火トカゲのように、火を愛するものもいます、というのは、彼らは火の中にもぐりこみもするからです。

18
要するに、元素のそれぞれは、身体の覆い(peribolhv)です。そういう次第で、身体の内にあるあらゆる魂は、これら4〔元素〕に覆われ、すり減らされるのです。というのは、これ〔魂〕もまた、それらのあるものは喜び、あるものは悲しむらしいからです。だから、そういうわけで、自分の最高の幸福をもつことはありません。むしろ、自然本性的に神的なのですから、そういうものとしてそれらと争い、思惟するのですが、身体から独立していたときに思惟していたかぎりのことをではありません。しかしながら、それでも、動揺や、病気とか恐怖とからくる混乱を受ける場合、そのときはこれ〔魂〕も、海底に〔落ちた〕人間のように、揺られ、とどまることなく運ばれるのです」。

2008.11.23. 訳了。


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