マネトーン

(ΜΑΝΕΘΩΝ)




[略歴]

 エジプトの神官,歴史家。前280頃−260活動。
 現在知られる限りではギリシア語で執筆した最初の土着エジプト人。
 北デルタ地方出身の高位神官で、その在位期間はおそらくプトレマイオス2世の治世初期にあたる。それ以前にプトレマイオス1世が、サラピス像について彼に相談したといわれる。
 エジプトの宗教的慣習を含めて、最古の時期から前323年までのエジプト史を著述した。王家の要請によるものか否かはともかくとして、新しい支配者たちに王国の歴史を詳述するために執筆したということはありうる。プトレマイオス2世に提出されたものであるという説もある。
 マネトーンはヘーロドトスとへカタイオスを利用したが、自分が入手できるエジプトの神官記録も利用した。物語形式ではあるが、その著作は年代学を強調している。
 マネトーンによるファラオたちの王名表、諸王を各王朝と各王国時代に割り当てるといった骨格は、ビザンツ帝国時代に至るまで後代のすべてのエジプト史家・年代学者たちが利用した方式の背景となっている。しかし、原作の叙述はほとんど現存していない。
(ダイアナ・バウダー編『古代ギリシア人名辞典』)




[底本]

TLG 1477
MANETHO Hist.
(3 B.C.:Aegyptius)
3 1
1477 003
Fragmenta, ed. K. Müller, FHG2. Paris: Didot, 1841-1870:
526-616.
frr. 1-85.
5
fr. 1 verba Latina solum.
(Q: 9,777:Hist.)

LCL 350
MANETHO
HISTORY OF EGYPT AND OTHER WORKS
Translated by W. G. Waddell
1940




[参照した翻訳書]

アテナイオス/柳沼重剛訳『食卓の賢人たち』(京都大学出版会、1997-2004)
フラウィウス・ヨセフス/秦剛平訳『アピオーンへの反論』(山本書店、1977.7.)
アンティオケイアのテオフィロス/今井知正訳「アウトリュコスに送る」(『中世思想原典集成1:初期ギリシア教父』平凡社、1995.2.)
プルタルコス/飯尾都人訳『イシスとオシリス』(『ディオドロス 神代地誌』龍渓書舎、1999.6.)
エウセビオス『年代記』(ギリシア語→アルメニア語→英語)
エウセビオス『年代記』(ギリシア語→アルメニア語→ラテン語→英語)


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