第19話

イアシス(iasis)について


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 自然究理家はこれについて言った — 卵を産もうとする時、大気の時機を知り、大いなる暑さが大気中に生じた時、岸辺に行って産み、産んだ後、砂でそれを覆い、これを忘れはてて過ごすが、卵は太陽の炎熱に温められ、小スズメが出てくるが、「スズメ-ラクダ(strouqokavmhloV)」〔=ダチョウ〕と言われる。

 聖なる王は云った。これらは忘れっぽい種族である。自分の子どもたちを置き去りにし、これを養うことなど思いわずらうことなく、無頓着にすごす。さらに、これらは霊的な父たちであって、霊的な子どもたちを喜んで告白へと迎え入れ、次いで、そのように無頓着にすごし、祈りの時も徹宵の時も、自分たちの子どもたちのことを思い出すことはないが、自分たちの罪のためにクリストスの救いを懇願して、使徒によれば、自分たちが[自分たちの魂のために]、義なる裁き手の前で釈明しようとしていることを知らないのである。




 この話の下敷きになっているのは、エレミア、第8章7節「空のコウノトリでもその時を知り、ヤマバトと、ツバメと、ツルはその来る時を守る」である。
 七十人訳は、ヘブライ語「ハスィーダー」がコウノトリを意味するとは認識していなかった。そこでヘブライ語を音写してajsivdaとし、ギリシア語の語形変化の規則からajsivVと類推し、さらにijavsiVという語形をつくり出したらしい(綴りが同じ"ijvsiV"には「癒し」の意味がある)。point.gif第4部 第4話の註を参照。
 自然究理家は、「渡り」の時を知っている渡り鳥と対比して、飛べない鳥、しかし産卵の時を知っている走禽類を連想した。オットー・ゼールはa[siVを「ノガン(Trappe)」と考えたが、岸辺に産卵すると言っているところから、こちらをノガンと考えた方がよさそうである。

 画像出典、Konrad Gesner『Historiae Animallum』III。