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back.gifギリシア語のエノクの黙示録(3/4)


原始キリスト教世界

ギリシア語のエノクの黙示録(4/4)






第31章
31.1.1
 そして別の山々を見た、その〔山々〕も樹木が生い茂り、その〔樹々〕からは、サッランとかカルバネーとか呼ばれる神酒(nektar)が流れ出ていた。
31.2.1
 さらにこれらの山々の向こう、日の出の方、大地の果ての別の山を見た、ありとあらゆる樹々がアーモンドに似た〔果実に〕満ち、
31.3.1
 潰すとたちまち〔香りが立ちこめた〕。だから、どんな香料よりもよい香りがした。*****

第32章
32.1.1
 北東の方に、有用な甘松やスキノスや肉桂や胡椒に満ちた7つの山を眼にした。
32.2.1
 そこからさらに、これらの山々のすべての初めの方に道を進み、大地の日の出の方角に遠く離れ、エリュトラ海の上を渡り、端に着き、さらにそこからゾーティエールの上を渡った。
32.3.1
 かくして、正義の楽園にたどり着き、遠くから、これらの樹々よりも数も多く大きな樹々を見た、そこには2本の、すこぶる大きな、美しく光り輝き偉大な樹があり、これは聖なる者たちがこれの実を食べ、大いなる分別を知った、あの分別の樹であった。
32.4.1
 その樹は高さが樅の木(strobikea)に等しかったが、その葉はイナゴマメの木に似ており、その実はブドウの房のようにすこぶるつやつやして、その匂いは樹から遠くまで行き渡っていた。
32.5.1
 そのときわたしは云った、この樹はなんと美しく、見た目になんと優美なことかと。
32.6.1
 そのとき、ラパエールが答えた、〔彼は〕聖なる天使で、わたしに同行していた、
 「これは分別の樹、汝の父祖がこれをとって喰べた」。

第89章
89.42.1
 そうして、イヌたちがヒツジたちをむさぼり食い始め、イノシシたちやキツネたちもそれ〔ヒツジたち〕をむさぼり食った、そこでついに、ヒツジたちの主は、ヒツジたちの中から、1匹の雄羊を起ちあがらせた。
89.43.1
 そしてこの雄羊〔サウル〕が、角によって突き、追いかけまわし始め、キツネたちに飛びかかり、これとともにイノシシたちにも〔飛びかかった〕。そうして、多くのイノシシたちを破滅させ、これとともにイヌたちをも痛めつけた。
89.44.1
 こうして、その両眼が開いたヒツジたちは、ヒツジたちの中にいる雄羊を眼にした、〔他方、第1の雄羊は〕ついにおのれの道を捨てて、道なき道を進み始めるようになった。
89.45.1
 そこでヒツジたちの主は、この牡を別の牡〔ダビデ〕のところに遣わし、これを、おのれの道を見捨てた雄羊に変えて、ヒツジたちを支配する雄羊に任じることにした。
89.46.1
 そこで〔第1の雄羊は〕彼〔第2の雄羊〕のところに行き、自分たちだけで、静かにこれに話しかけ、これ〔第2の雄羊〕を雄羊に、支配者に、ヒツジたちの指導者に立たせた。しかしイヌたちも、この間ずっと、ヒツジたちを悩ましつづけた。
89.47.1
 しかも、第1の雄羊が第2の雄羊を追いかけまわし、自分の前から追放した。その後で、第1の雄羊が、イヌたち〔ペリシテ人〕の前で斃れたところまでわたしは目撃した。
89.48.1
 こうして第2の雄羊が立ち上がり、ヒツジたちを導いた。
89.49.1
 こうしてヒツジたちは生長し、繁殖した。そうして、イヌたちもキツネたちもすべて彼のところから逃げ出し、彼を怖れた。

第90章
90.1.1
 ******90.6.1
 そうして、汝らの無法の言葉がすべて、大いなる聖なるかたの御前で、汝らに面と向かって、読みあげられるであろう。その後で、無法にかかわった業はすべて却下されることがない。
90.7.1
 わざわいなるかな、汝ら、海のさなかにある罪人たち、陸上にある罪人たちよ。汝らの悪は記憶される。
90.8.1
 わざわいなるかな、汝ら、正義によらぬ金や銀を所有する者らよ、汝らはいう、富はたっぷり手に入れた、持ち物は手に入れた、所有した、
90.9.1
 それでは、何でもしたいことをしよう、銀子はわれわれの金庫に、多くの善きものらはわれわれの家の中に貯めこんだから。
90.10.1
 そうして水のように注ぎこむ。汝らは惑っているのだ、汝らの富がとどまることは決してなく、
91.1.1
 汝らからたちまち飛び去るであろうから、万事を不正に所有したのだから。そして汝らは大いなる呪いの中に引き渡されるであろう。

第91章
91.1.1
 今こそ汝ら賢者たち、愚者ならざる者たちに誓っていう、汝らは地上に数多の無法を眼にすることであろうことを。
91.2.1
 男たちが、女のように、美しさを身にまとわせ、乙女たちにもましてうるわしい色を〔身にまとわせるであろう〕ことを、王権や偉大さによって、また権力によって。さらに、自分たちの手持ちの銀や金を食物のために使い、自分たちの家に水のように注ぎこむであろう。
91.3.1
 彼らは知識はもとより、分別のひとつも持っていないからである。このようにして、汝らの手持ちのものすべてと、汝らの栄光と名誉のすべてとともに、もろともに破滅し、不名誉と荒廃と大いなる殺戮によって、汝らの霊は火の炉の中に投げこまれるであろう。
 〔4行欠落〕
……地上に遣わしたのではなく、人間どもがそれ〔=罪〕を自分から創造し、それ〔=罪〕を作った者たちが大いなる呪いの中にたどりついたのだ。
91.5.1
 また、女奴隷〔の身分〕も、女たちに与えられたのではなく、両手の業によって〔生じたのだ〕。女奴隷が女奴隷であるのは定められたことではないのだから。上から与えられたのではなく、圧制によって生じたのである。
同様に、無法も上から与えられたのではなく、違法によって。同様に、不妊の女も創造されたのではなく、自分の不正から子なしに定められ、子なきまま死ぬのである。
91.6.1
 汝らに誓っていう、大いなる聖なる方に対する罪人たちよ、汝らの邪悪な業は天においてさらけだされていると。汝らの不正の業にして隠されているものははない。
91.7.1
 汝らの魂に思い描くのはもとより、汝らの心に思い描いてはならぬ、〔彼らは〕知らず、見もせず、汝らの不正事が目撃されることもなく、それが至高者の御前で書き上げられることもないなどと。今より心得よ、汝らの不正事はすべて、日々、汝らの審判〔の日〕まで、書き上げられるであろうということを。
91.9.1
 わざわいなるかな、汝ら、無分別な者らよ、汝らの愚かさのゆえに汝らは破滅し、汝らは賢者たちのいうことを決して聞かず、善きものらは汝らに出会わず、逆に悪しきものらが汝らを取りまくとは。
91.10.1
 今こそ知れ、汝らには破滅の日が用意されるであろうことを。救済を望むな、罪人たちよ。立ち去って、死ね、知るがよい、大いなる審判とより大きな艱難の日が汝らの霊に用意されることを。
91.11.1
 わざわいなるかな、汝ら、心の強情な者たち、悪をなし、血を食う者たちよ、汝らが喰うための善きものらは、汝らにとってどこにあるのか……
 〔4行欠落〕
91.12.1
 不正の業。どうして汝らに美しき希望があろうか? 今、汝らの知るべきことは、汝らは義しい人たちの手に引き渡され、彼ら〔義しき人たち〕は汝らを殺し、汝らを容赦することは決してないということである。
91.13.1
 わざわいなるかな、汝ら、義しき人たちの言葉を無効にすることを望む者たちよ。汝らに救済の希望は決してない。
91.15.1
 わざわいなるかな、汝ら、虚偽の言葉、迷妄の言葉を書き記す者たちよ。彼らは書き記し、その虚偽によって、多くの人たちを惑わすであろう。
91.16.1
 汝ら自身が惑い、汝らに喜びはなく、汝らはたちまちに破滅するであろう。

第92章
92.1.1
 わざわいなるかな、汝ら、迷妄を作る者たち、そして、虚偽の業によって名誉と栄光を手に入れる者たちよ。破滅するがよい、汝らに善きものに至る救済はない。
92.2.1
 わざわいなるかな、汝ら、真実の言葉を改変し、永遠の契約を歪め、みずからは罪なきものと思量する者らよ。彼らは大地の中に呑みこまれるであろう。
92.3.1
 そのとき、義しき者らよ、汝らは用意せられるであろう、汝らの代願(erotesis)を記憶されるよう差し出し、証言によって天使たちの前にこれを与えよ、不正者たちの罪を記憶せられるよう、彼ら〔天使たち〕が神である至高者の御前に差し出すように。
92.4.1
 そのときこそ、不正の破滅の日に当たって、彼ら〔罪人たち〕は周章狼狽するであろう。
92."5-6".1
 まさしくその時(kairos)に、産婦たちは分娩し、引きずり出し、幼ない嬰児を見捨てるであろう、そして胎の中に孕んだ女たちは堕胎し、授乳する女たちはおのが生子を投げ捨て、おのが幼児に、乳を飲む子らの世話さえすることはなく、大切にもしない……
92.7.1
 そうして、銀や金、木や石や粘土の似像を彫るものたち、幻想や精霊たちや忌まわしいものらや邪悪な霊たちやありとあらゆる迷妄に、知識によらずに仕える者たちよ、汝らはそれらから何の助けも得られないであろう。
92."8-9".1
 そして彼らはおのれの心の愚かさゆえに惑い、夢の中の光景が汝らを惑わし、汝らと、汝らがなし汝らが仕えてきた汝らの偽りの業とは、一瞬のうちに破滅するであろう。
92."10-12".1
 そのときこそ、賢者たちの言葉に耳を傾けてきた者たちは浄福にして、至高者の言いつけを実行すべしとのそれらの〔言葉〕を学び、おのれの正義の道を進み、迷妄によって惑わされることなく、救われるであろう。
92.13.1
 わざわいなるかな、自分の労苦によらずして、おのれの家を建てる者たちよ、石により煉瓦によってあらゆる家をこしらえるが、汝らに喜びはない。
92.14.1
 わざわいなるかな、永遠の昔からの、おのが父祖の土台と遺産をあなどる者たちは、迷妄の霊たちが汝らをせきたてるとは。汝らに休息はない。
92.15.1
 わざわいなるかな、汝ら、無法をなし、不正の援助をなし、おのが隣人を殺し、ついに大いなる裁きの日にいたる者たちよ。
92.16.1
 そのとき、〔神は〕汝らの栄光を破壊し、汝らに対するその怒りをかきたて、大剣でもって汝らをことごとく破滅させ、義しい者らもみな汝らの不正を思い起こすであろうから。

第93章
93."1-2".1
 そのときこそ、ひとつところに……彼らの血が流れる。そして人はその手をその息子から放さず、自分の善きものからさえ〔放さ〕ずしてこれを殺し、罪人も敬愛する者から、自分の兄弟からさえ〔手を放さずしてこれを殺す〕。夜明けから、日の沈むまで、同じ目的で殺し合う。
93.3.1
 かくして、馬はおのれの胸まで罪人たちの血につかって進み、血は車軸まで没するであろう。
93.4.1
 そしてあの日には、天使たちが隠されたところに降りたってひそむ。不正を援助した者たちはひとつ所に集められ、至高者は審判の日に、万物から大いなる審判をするようかきたてられるであろう、
93.5.1
 そうして、すべての義人たち聖者たちのために聖なる天使たちの見張りを配置し、諸悪と罪がなくなるときまで、〔彼ら天使たちは〕眼の瞳のように守護するであろう。そうしてそのときから敬虔な者たちは快い眠りにつき、彼らを怖れさせるもはもはやないであろう。
93.6.1
 そのとき、賢明なる人間どもは眼にし、大地の息子たちはこの書簡のこの言葉をとくと考え、知るであろう、自分たちの富は、不正の倒壊するとき、自分たちを助けることはできないということを。
93.7.1
 わざわいなるかな、汝ら、心頑なな者たち、悪をたくらむ不眠の者たちよ。恐怖が汝らをとらえ、汝らに手をさしのべる者はいない。
93.9.1
 わざわいなるかな、汝ら、汝らの口の業によるすべての罪人たちは。わざわいなるかな、汝ら、汝らの口の言葉による、また、汝らの両手の業による、すべての罪人たちは。聖なる業から惑い出て……するとは。
93.11.1
 ……すべての雲と桐と露と雨が、汝らの諸々の罪の上に……。
93.12.1
 されば、雨に贈り物を与えよ、汝らに雨降ることを妨げぬために、また露にも雲にも霧にも〔贈り物を与えよ〕。雨降るために金貨の無効を宣言せよ。
93.13.1
 雪や霜やその寒さが汝らの上にふりかかり、また風やその氷、またそれらのありとあらゆる鞭が〔汝らの上にふりかか〕れば、寒さとその鞭の前に汝らは堪えることはできないであろうから。

第94章
94.1.1
 されば、とくと考えよ、人間どもの息子たちよ、至高者の業を、彼の御前で邪悪をなすことを怖れよ。
94.2.1
 〔彼=至高者が〕天の窓を閉ざされたら、汝らのために露と雨が降るのを妨げられたら、どうするのか?
94.3.1
 汝らのせいで、すなわち、汝らの業のせいで、〔彼=至高者が〕その怒りを発せられたら、汝らは彼に懇願することはできまい。何ゆえ汝らは汝らの口で、彼の偉大さについて、大きな曲がったことを話すのか?
94.4.1
 海を航行する船主たちを見よ、彼らの舟は大波や嵐に揺られているのを。
94.5.1
 そして嵐にあえばみなが恐怖する、善きものらや自分たちの持ち物をすべて船外に、海の中に投げこむ、そうして、海は自分たちを呑みこむのか、その中で破滅させるのかと、自分たちの心の中で危惧する。
94.6.1
 海はすべて、またその水もすべて、至高者の業ではないか、そして彼はそれらの境界を立て、これ〔=海〕を結わえつけ、これを砂で囲いこまれたのではないか?
94.7.1
 そして彼の叱責によって、恐怖し、干上がり、魚たちも……
94.8.1
 ……大地と、彼らの中にあるものらすべてとを……か? 海の中を動くものらすべてに知識を与えたのは、いったい誰か? 船主たちは海を怖れるだろう。

第95章
95.1.1
 いったい、汝らを焼く火の大波を、〔神が〕汝らの上に浴びせかけられるとき、逃げ去って助かるところがあろうか? いったい、汝らの上にその声を〔浴びせかけられる〕とき、
95.2.1
 揺すぶられ、大いなる響きに恐怖することになろう、大地もどこもかしこも揺すぶられ、おののき、大混乱におちいる。
95.3.1
 そして天使たちは自分たちに命じられたことを成し遂げ、天と、光り輝く者(phoster)たちとは、揺すぶられ、おののく。大地の息子たちすべてと、汝ら罪人たちとは、永遠に呪われた者となる。汝らに喜びはない。
95.4.1
 元気を出せ、死んだ義人たち、義人にして敬虔な者たちの魂よ、
95.5.1
 そして、悲しむな、汝らの魂が、悲しみのうちに冥府に降るからとて、そして、汝らの肉の身体には、汝らの生前に、汝らの聖潔さに応じて、出会わぬからとて、汝らがあった日々は、地上における罪人たちの、呪われた者たちの日々であったからである。
95.6.1
 汝らが死んだとき、そのときこそ罪人たちはいうであろう、『敬虔な者たちは定めのとおりに死んでしまった、やつらの業に、いったいどんな得があったのか?
95.7.1
 やつらだって、われわれと同じく死んでしまった。だから見よ、悲しみと暗黒をともなって死ぬざまを、いったい、やつらにどんな余得があったのか?』。
95.8.1
 〔義人たちは〕蘇り、救われた、そして今からは、わたしたちが永遠に喰いかつ飲むのを眼にすることであろう。
95.9.1
 そういうわけだから、〔罪人たちは〕略奪し、罪を犯し、着物剥ぎをし、善き日々を見ているがいい。
95.10.1
 〔ところが罪人たちは云う〕
 『ところが、おまえたち、みずからに義を行う者たちよ、見るがいい、自分たちの破局(katastrophe)がどのようなものであるかを、いかなる正義も、自分たちが死に、自分たちが破滅するまで、自分たちのうちには見いだされなかった95.11.1
 そして、彼らの魂たちは、〔初めから〕いなかったもののごとくになり、苦悩のうちに冥府にくだっていった……』。

第96章
96.1.1
 わたしは汝らに誓っていう……〔3行、欠落〕……
96.2.1
 この秘義をわたしは知っている。というのは、天の石版を読みあげ、必然の書き物を見たからである。そこに書かれていたことを、汝らについて刻まれていたことをわたしは知っているからだ、
96.3.1
 死人たちのうち敬虔なる者たちの魂たちには、善きものらと恩寵と名誉が用意され、書き記されているということを。
96.4.1
 そして彼らは喜び、彼らの霊が滅びることは決してなく、大いなる方の面前から永遠の全世代にわたって記憶されないこともない。だから、彼らの罵詈雑言を怖れるな。
96.5.1
 そして汝らは、罪人たちの死体よ、死んだときに、汝らについていうであろう、浄福なるかな、罪人たちは、自分たちの〔人生の〕日々はすべて、生前に知っているかぎりの日々だった〔=天寿をまっとうした〕、しかも、栄光につつまれて
96.6.1
死んだ、自分たちの存命中に審判はなかった、と。
96.7.1
 汝らはみずから知っている、〔彼らが〕汝らの魂を冥府に連れ降るということを、
96.8.1
 しかも、そこには大いなる責め苦の中に、暗黒の中に、罠の中に、燃える炎の中に置かれ、永遠の全世代にわたって、汝らの魂たちは大いなる審判にかけられるだろうということを。わざわいなるかな、汝ら、汝らに喜びはない。
96.9.1
 だから、口にしてはならぬ、義しい人たち、存命中、敬虔な者たちよ、『われわれは苦悩の日々の労苦に疲労困憊した、破滅し、少数となった、われわれは助っ人を見なかった。
96.10.1
 すっかり打ち砕かれ破滅し、そして、日々もはや救済を知らず、絶望した。
96.11.1
 頭になることを望んだのに、尻尾となってしまった〔申命記28_13, 44〕。働いたけれど疲労困憊し、報酬も手にしなかった。罪人たちの餌食となり、無法者たちはわれわれの軛を重くした。
96.12.1
 支配者たち、われわれの敵たちは、われわれを〔家畜を刺し棒で刺すように〕刺し、われわれを囲いに入れた。一息つくために、彼らから逃げこむところも見つけられなかった……〔3行、欠落〕……
96.14.1
 われわれを倒し迫害する者たちのことを訴えたが、われわれの諸々の願い(enteuxis)は受け容れられなかった、われわれの声に彼ら〔支配者たち〕は耳を傾けようともしなかった。
96.15.1
 われわれに手をさしのべてくれなかった、われわれを迫害し食い物にする者たちに対する者はなく、むしろ、われわれに対して彼らを強くする。彼らはわれわれを殺し、数少なくさせた。殺されたわれわれについて彼ら〔支配者たち〕は明らかにすることなく、彼らの罪について彼らの罪を思い起こさない』。

第97章
97.1.1
 汝らに誓っていう、天にある天使たちは、偉大なる栄光の御前で、汝らの善を思い起こしてくれるということを。
97.2.1
 だから、元気をだせ、汝らは〔かつては〕諸々の悪に、諸々の患難にぼろぼろになった。〔しかし〕天の光り輝くものたちのように汝らは輝き、明らかとなり、天の窓は汝らのために開かれるであろう。
97."3-4".1
 そして汝らの叫び、汝らが叫ぶ汝らの審判は聞き届けられ、汝らの患難に関して、どれほどのことで汝らに手出ししたか、また、あらゆることで、汝らを迫害し食い物にした連中に手を貸したのが誰か、明らかにされるであろう。
97.5.1
 大いなる審判の日にある諸々の悪を怖れるな、汝らが罪人としてみられることは決してないが、汝らが罪人なら、汝らは引き裂かれ、汝らに起因する永遠の審判が、永遠の全世代にわたってあることになろう。
97.6.1
 汝らは怖れるな、義人たちよ、罪人たちが威勢を張り、首尾よくやっているのを見ても、彼らに手を貸してはならない、いやむしろ、彼らのすべての不正事から遠く離れているがよい。
97.7.1
 すなわち、口にしてはならない、罪人たちよ、われわれの日々の諸々の罪が追及されることは決してないなどと。
97.8.1
 今こそ汝らに明示しよう、光と暗黒、昼と夜は、汝らの罪のすべてを見届けるのだと。
97.9.1
 汝らの心に惑うな、虚言もするな、真実の言葉を改変してもならぬ、聖なるものの言葉を虚言といってもならぬ、そして、汝らの似像たちに称讃を与えるな。なぜなら、あらゆる虚言とあらゆる迷妄が導くのは、義しいことにではなく……〔2行欠落〕……
97.10.1
 真実の……を彼ら罪人たちは改変し、反論し、多数の人たちを変節させ、虚言し、大きなこしらえ話をこしらえ、自分たちの名前で書物を書きあげる。
97.11.1
 じっさい、彼らは書けばいいのに、彼らの名前で、わたしの言葉をすべて、真実ありのまま、削りもせず、これらの言葉を改変もせず、わたしが彼らに証言した事柄を真実ありのままに書けばいいのに。
97.12.1
 そうしたら、今度はわたしは第2の秘義を知っている、
すなわち、義しい人々、神法にかなった人々、賢者たちには、真実の喜びにいたるわたしの書物が与えられるだろう、
97.13.1
 そして彼らは、これら〔の書物〕を信じ、これらを喜び、義しい人たち全員が、真理の道をすべてこれら〔の書物〕から学ぶことに歓喜雀躍するだろうということを。

第106章
106.1.1
 さて、しばらくして後、〔神は?〕わたしの息子マトゥウサレクに妻を娶り、〔女は〕息子を生み、その名前をラメクと呼んだ。正義はあの日まで低くされた。そこで、年頃になったとき、これに女を娶り、これに子どもをもうけた、
106.2.1
 そしてその子が生まれたとき、身体は雪よりも白く、バラよりも赤く、髪は真っ白で、羊毛のように白く、縮れ毛で、光輝に満ちていた。しかも、眼を開けると、家は太陽のように輝いた。
106.3.1
 そして、産婆の手を離れると、口を開いて、主を祝福した。
106.4.1
 そこでラメクはこれに怖れをなし、逃げだし、自分の父マトゥウサレクのもとに赴き、これに云った、
106.5.1
 『わたしに変わった子が生まれました、人間どもに似ず、天の天使たちの子に〔似ているの〕です、形は相当変わっていて、わたしたちに似ておりません。眼は太陽の光線のようで、顔は輝いています。
106.6.1
 じっさいわたしは想像しております、わたしの子ではなく、天使の子ではと、だから、これに危惧をいだいているのです、これの〔人生の〕日々に、地上に何か起こるのではないかと。
106.7.1
 だから、どうか、お父さん、お願いです、わたしたちの父祖ヘノークのところに行ってください、そして尋ねてください……〔2行欠落〕……』。
106.8.1
 〔マトゥウサレクは〕わたしのところに、大地の極にやってきた、そのときそこにわたしがいると知ったのだ、そしてわたしに云った、
 『わが父よ、わたしの声に耳を貸してください、そしてわたしのところに来てください』。
 そこで、わたしは彼の声を聞き、彼のところに赴いて、云った。
 「見よ、わたしはここにいる、子よ。何ゆえわたしのところにやってきたのか、子よ」。
106.9.1
 すると彼が答えて言った、
 『大いなる必要性からここにやってきました、父よ。
106.10.1
 つまり、今、わたしの息子ラメクに子が生まれました、ところがその姿とその似像は人間どもに似ず、その色も雪より白く、バラより火色で、その頭の毛は白い羊毛よりも白いのです、またその眼も、太陽の光線に似ているのです、
106.11.1
 そして産婆の手を離れるや、口を開いて、永遠の主を祝福したのです。
106.12.1
 ですから、わたしの息子ラメクが怖れをなして、わたしのところに逃げこんできて、自分の子だとは信じず、天使たちの子……〔1行ない2行欠落〕……あなたが持っておられる(?)精確さと真理を……』。
106.13.1
 そのときわたしは答えて言った、
 「主は地上の配置(prostagma)を改新されるのであろう、その同じ仕方をわたしは生子に見たし、そなたに示した。というのは、わたしの父のイアレドの世代に、〔人々は〕主の言葉を、天の契約を踏み外した。
106.14.1
 そして、見よ、〔人々は〕罪を犯し、習慣を踏み外し、女たちと交わり、これとともに罪を犯し、彼女たちから子をなし、
106.14."17a"
 そして、霊にではなく、肉的なものに似たものらを産む。
106.15.1
 かくして大いなる怒りと、大洪水が地上に起こるであろう、そして大いなる破滅は1年間、続くであろう。
106.16.1
 しかし生まれたこの子は生き残るであろう、また彼の3人の生子も、地上の死ぬものらのうちで救われるであろう。
106."17b".1
 こうして、そこ〔地上〕における堕落から大地を〔神は〕やわらげられるであろう。
106.18.1
 今こそラメクに言え、義しく、神法にかなった汝の子である、その名をノーエ〔=ノア〕と呼べ。なぜなら、汝らのうち、汝らが休息するときに、彼のみが生き残り、彼の息子たちが大地の堕落から、また、罪人たち全員から、また、地上の最期を遂げるものたち全員から……〔4行欠落〕……
106.19.1.
 わたしに教示し、漏らしてくださった、そしてわたしは天の石版にそれらのことを読んだのだ。

第107章
107.1.1
 そのとき、その上に書かれていたことを眼にした、世代の世代は諸悪のもの、正義の世代が立ち上がり、悪が滅び、罪が大地から一掃され、善きものらが地上に、彼らの上に至ろう。
107.2.1
 今こそ、引き返せ、子よ、そして、そなたの息子ラメクに徴を見せよ、生まれたその子は彼の生子である、それは義しく、神法にかない、偽りではない、と」。
107.3.1
 かくして、マトゥウサレクは自分の父ヘノークの言葉を聞いたとき — というのは、〔ヘノークは〕秘義として彼に明らかにしたので — 、引き返し、彼〔ラメク〕に明らかにし、かくしてその子の名前はノーエ〔=ノア〕と呼ばれた、破滅から大地を喜ばせるからである。

2004.04.07. 訳了。

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