『ピピに寄せて』


[底本]
TLG 4110 040
Ei)j to\ pipi [Sp.], ed. P. de Lagarde, Onomastica sacra,
2nd edn. G嗾tingen: Horstmann, 1887 (repr. Hildesheim: Olms, 1966):
229-230.
5
(Cod: 211: Eccl.)





73."60t"
エウアグリオスの『ピピに寄せて』
73.61
 主に付けられたヘブライ語の通り名のために、言われるべきは以下のことである。ヘブライ人たちのもとでは、神は10の名前で呼ばれる。そのうちの一つはアドーナイと言われ、これは主(kyrios)という意味である。もうひとつはイアと〔言われ〕、これこそ、ヘッラス語の主(kyrios)という語に訳されるものである。これらのほかのもうひとつは、4文字で、ヘブライ人たちの間では発音されることのないもので、彼らの間では誤用されてアドーナイと呼ばれ、わたしたちの間では主(kyrios)と〔呼ばれている〕ものである。これは、人々の謂うところでは、大祭司の額の上なる、黄金の薄板の上に、律法に述べられているところにしたがって、「印章の浮き彫り細工で『主ピピの聖性』」と刻まれているという〔Exod. 28:32, 36:39〕。その他の名前は、以下のとおりである。エール、エローエイム、アドーン、サバオート、サッダイ、アイイエ・エセリエ〔???〕、そして上述の3つ〔の名前〕である。4文字はここに属し、イオートすなわちioth、ウゥアウすなわちouauと、これらの字母で書き表されるものである。

 ピピは神である。

主に当てられたこの発音されることのない名前は、4つの字母、イオートによって、hth.gifによって、ウゥアブによって、そしてエートhth.gifによって書き表される。これらの中に、最初の2文字とともに、ヘブライ人たちの間でセンと呼ばれる字母〔sen.gif〕が添えられるが、これは歯〔複数〕で、こういうふうに、5文字が連結しているかのごとくである。これが初め(arche)で、この中にある歯は生き物である〔???〕。4つの字母は、イオートが初め(arche)、またhth.gifによってもそれ〔初め〕、その中にあるウゥアウとエートによって生き物と解釈される。

2005.04.01. 訳了。



[「ピピ」について]
  元来、子音文字だけのへブル語でYHWHと書かれていた旧約聖書の神の固有の神名は、〈主の名をみだりに唱えてはならない〉〔出 20:7、申5:11〕という神名尊崇のいましめに従って、いつもアドナイ〔「わが主」の意〕と読まれてきた。こうして長い間にYHWHという4文字(Tetragrammaton)の本来の読み方が忘れられてしまった。
tetragrammaton1.jpg  その後、ユダヤ教のラビたちが聖書の正しい読み方を伝えるために母音符号を発明したとき、神名YHWHに「アドナイ」の母音をつけたのである。ただ第一音節をYaとしないでYeとしたのは、その当時まだ知られていたと思われるYahwehのYaを思い出せないためであったのではないかという。
 ヤハウェをエホバと発音するのは、宗教改革の頃から広く流布するようになった誤読である。(『キリスト教大事典』)

tetragrammaton2.jpg ヘブライ語神聖4文字は右から左に読むべきところ、左から右にそのまま「ピピ」と読んだと考えられる。この中央にヘブライ語字母「サン」を入れると、これは「イェホシュア」すなわちイエスという言葉ができあがる。(P・ホール『カバラと薔薇十字団』)


forward.gif師と弟子について(De magistris et discipulis)