『処女に寄せる命題集(Sententiae ad virginem)』

[底本]
TLG 4110 008
Sententiae ad virginem, ed. H. Gressmann, Nonnenspiegel und
M嗜chsspiegel des Evagrios Pontikos [Texte und Untersuchungen
39.4. Leipzig: Hinrichs, 1913]: 146-151.
5
(Cod: 841: Eccl.)





"t".
処女に寄せる勧め

1.
主を愛しなさい、そうすれば、〔主も〕あなたを愛されるであろう、
あのかたに隷従しなさい、そうすれば、あなたの心を照らされるであろう。

2.
あなたの母を、クリストスの母のように、尊びなさい、
そして、あなたを産んだひとの白髪を苛立たせてはなりません。

3.
あなたの姉妹たちを、あなたの母の娘たちのように、愛しなさい、
そして、平安の道を棄ててはなりません。

4.
昇る太陽をして、あなたの両手のなかにある聖書を見つめさせなさい、
そうして、第2刻限の後には、あなたの仕事を〔見つめさせなさい〕。

5.
たえず祈りなさい、
そうして、あなたをお産みになったクリストスを記憶なさい。

6.
人々との出会いを拒みなさい、
あなたの魂のうちに影像が生じて、
祈りのときに躓き(prokomma)があなたにうまれないように。

7.
クリストスを愛すべきかたとして持ちなさい。
あらゆる男たちをあなたから投げ捨てなさい。
そうすれば、不面目な生を生きることは決してないであろう。

8.
気性と怒りを、あなたから遠ざけなさい、
そうして、遺恨をしてあなたの内に宿らせてはなりません。

9.
云ってはなりません。「今日は食べよう、明日は食べないでおこう」と、
知慮をもってそれをなしているのではないのだから。
というのは、あなたの身体にとって有害で、
あなたの胃に苦痛がおこるからです。

10.
食肉を食べることは美しくなく、酒を飲むことは善くないが、
病弱者たちにはそれらを供すべきです。

11.
勇ましい処女は救われないだろう、
また、放蕩な〔処女〕は、自分の花婿を見られないであろう。

12.
云ってはなりません、「この召使い女がわたしを苦しめた、これを罰してやろう」と、
神の娘たちに隷従はないのだから。

13.
虚しい言葉にあなたの耳を傾けてはなりません、
また、うろつきまわる老婆たちの作り話注3)を避けなさい。

14.
飲酒の祭りを見てはなりません、
他人の結婚式にも入ってはいけません。
そういったことをなす処女はすべて、主の前では不浄なのですから。

15.
あなたの口を神の言葉に向けて開けなさい、
そうして、あなたの舌に、多言をやめさせなさい。

16.
主のみ前に、あなた自身を低くしなさい、
そうすれば、あのかたの右手があなたを高くなさるであろう。

17.
艱難の時にある貧しい人を追い返してはなりません、
そうすれば、あなたの燭台に油が足りなくなる注4)ことはありません。

18.
万事を主のためにしなさい、
そして、栄光を人間たちに求めてはなりません、
人間たちの栄光は青草の花のようなものだが、
主の栄光は永遠に存続するのだから。

19.
柔和な処女を主は愛される、
怒りっぽい処女は、憎まれるであろう。

20.
従順な処女は憐れまれようが、
抗弁する〔処女〕は、とんでもない痴女(aphron)。

21.
不平をいう処女を主は滅ぼされるが、
感謝の念をいだいた〔処女〕は、死からお救いになるだろう。

22.
笑う人は醜い、無恥(anaischyntia)は不面目、
しかしあらゆる痴女(aphron)は、そういったものと織り合わされている。

23.
自分の衣服を美飾する女は
慎みをも欠いている。

24.
在俗の女たちといっしょになってはならない、
あなたの心を歪め、
義しい決心を無効にしないために。

25.
夜、涙をもって、主に呼びかけなさい、
そうすれば、誰ひとりとして、あなたが祈っていることに気づく者はなく、あなたは恩寵を見出すであろう。

26.
歩きまわる人たちの欲望や、他人の家に対する渇望は
魂の態勢をひっくり返し、その〔魂の〕願望(prothymia)を堕落させる。

27.
信心深い処女は臆することがないが、
不信仰な〔処女〕は、自分の影からさえ逃げようとする。

28.
物惜しみ(phthonos)は魂を憔悴させ、
妬み(zelos)はそれ〔魂〕をむさぼりくう。

29.
病弱な姉妹を軽蔑する〔処女〕は
クリストスからもまた遠く隔たっている。

30.
云ってはならない、「これは、わたしのもの、それは、あなたのもの」と。
イエースゥス・クリストスにおいては、すべてのものが共有なのだから。

31.
他人の生にお節介をしてはならない、
また、あなたの姉妹の転落を喜んではならない。

32.
必要とする処女たちを援けなさい、
そして、あなたの活動を誇ってはならない。

33.
あなたの口からでる言葉を、主の教会に持ちこんではならない、
また、あなたの眼を上げてはならない。
主はあなたの心を知り、
あなたの想念のすべてを見守っておられるのだから。

34.
あらゆる悪しき欲望をあなたから追い出しなさい、
そうすれば、あなたの敵たちがあなたを苦しめることは決してないであろう。

35.
あなたの心底から詩篇を歌いなさい、
そうして、あなたの口の中であなたの舌だけを動かしてはならない。

36.
愚かな処女は、銀子を愛するだろうが、
知慮深い〔処女〕は、その一切れの食べ物さえ寄付するだろう。

37.
火の勢いは抑えがたいように、
処女の魂は、傷つくと、癒しがたい。

38.
あなたの魂を諸々の邪悪なる想念にゆだねてはならない、
〔それらの想念が〕あなたの心を穢し、
清浄な祈りをあなたから遠ざけないために。

39.
心痛(lupe)は厄介で、怯懦は堪えがたい、
しかし、神に対する涙は、その両方よりも強力である。

40.
飢えと渇きは悪しき欲望を消滅させるが、
善き徹宵は、精神(dianoia)を浄化する。

41.
怒りと気性を愛は追い返し、
遺恨を賜物ががひっくり返す。

42.
自分の姉妹をひそかにそしる〔処女〕は、
新婚の部屋から押し出され、
その扉の前で泣き叫ぶだろう
しかし耳を貸す者はいないだろう。

43.
無慈悲な処女の燭台は吹き消され、
その花婿が近づくのを見ることは決してあるまい。

44.
硝子は、石にぶつかると、粉々に砕ける、
処女も、男に触れると、報いを受けることなしにはすまないだろう。

45.
柔和な女は、
怒りっぽくて気性的な処女にまさる。

46.
男の言葉を笑いながら引き寄せる〔女〕は、
自分の首に輪なわを巻きつける女に似ている。

47.
真珠が黄金の指輪の中にやどるように、
処女は羞恥(aidos)の下に隠れている。

48.
ダイモーンたちの歌や笛は、魂を打ちくだき、
その威勢のよさを破滅させる、
これ〔魂を〕常に見張りなさい、
不面目な者にならないように。

49.
笑えることを喜んではならない、
冗談をする女たちと陽気になってはいけない、
主は彼女たちを見棄てになったのだから。

50.
あなたの姉妹が食事するのを軽んじてはいけない、
そしてあなたの節制を誇ってはいけない。
あなたは知らないのだから、主が何を計画なさっているか
あるいは、誰がそのみ前に立つのかを。

51.
両眼が青黒いことを、また自分の肉がやつれていることを嘆く女は、魂の無心をよろこぶことがないであろう。

52.
節制(enkrateia)は重く、純潔(hagneia)は達成しがたい、
しかるに、天上にある花婿より甘きものは何もなし。

53.
処女たちの魂は、照らされるであろう、
不浄な〔女〕たちの魂は、闇を見るであろう。

54.
わたしは見た、 — 教説によって処女たちを堕落させる男や、
その処女性をむなしくする男たちを。
しかし、あなたは、わが子よ、主の教会の教説を聞きなさい、
そうすれば、誰ひとりとして、あなたを説き伏せて変節させられる他人はいないであろう。
なぜなら、義しい人たちが光を相続し、
不敬な人たちは闇に住むだろうから。

55.
処女の眼は主を見るであろう。
そして処女たちの耳はその言葉を聞くであろう。
処女たちの口はその花婿に口づけするであろう。
そして処女たちの鼻は、その香木の香りに引き寄せられるであろう。
処女の手は主にさわり、
肉の純潔は神に嘉せられよう。
処女の魂は花冠をかぶせられ、
自分の花婿とともに、いつも生きるであろう。
霊的な着物が彼女に与えられ、
諸天にある天使たちとともに祝祭を執り行うであろう。
消えることなき松明に火をつけ、
彼女の容器に油が不足することはなかろう。
〔処女は〕永遠の富を受け、
神の王国を嗣ぐであろう。

56.
以上、わたしの言葉が、わが子よ、あなたに述べられた、
わたしの言辞をして、あなたの心を護らしめよ。
あなたを守護してくださるクリストスを記憶せよ、
そうして、三位一体の崇拝を忘れてはなりません。

2005.01.14. 訳了。


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