シビュラの託宣・第2巻(2/2)
原始キリスト教世界
シビュラの託宣
第3巻(1/4)
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3."T1"
第3巻
3."T2"
神について
3.1
高みに雷霆とどろかし、浄福にして、天にいますかた、ケルビムをもって
座となすかたよ、わたしは願います、まったき真理を語ったわたしを、
しばし休ませてください。わたしのうちで心が疲れてしまったからです。
それなのに、なぜにわたしの気性と思いはなお震え、
笞に打たれて、内側から強いられるのか、
3.6
すべての人にお告げを伝えるようにと。そこで再びすべてのことを語ろう、
神がわたしに、人々に対して語るようにとうながされることを。
人間どもは似像のなかに神に作られた型を持っていながら、
なぜに愚かしくもさ迷い、真直な道を
3.10
歩まないのか、不死なる創造者を絶えず覚えて。
ひとりの神が唯一の支配者、言い表しがたき者、霊圏に住み、
みずから生じ、見られることなく、みずからは万物をご覧になるのである。
石工の手はこのかたを作らず、また金からも、
象牙からも、人間の術による形はこのかたを示さない。
かえって、彼、永遠者みずからが、みずからを示されたのである。
在るものとして、かつて在ったものとして、そしてさらにまた在り、その後も在るものとして。
ぜなら、死ぬべき者でありながら誰が両眼で神を見ることができようか?
あるいは誰が、名だけでも聞くことに耐えられようか、
世界を支配する天の大いなる神の〔名だけでも〕?
3.20
彼は言葉によって万物を創造なさったかた、すなわち天、海、
疲れることのない太陽、満ちた月、
輝く星、強い母テーテュス、
泉、河、不滅の火、日、夜を。
またまことに彼は神ご自身であって、四文字のアダム[005]を作られたかたである。
〔このアダムは〕作られた最初の人であり、名前において
東西南北を満たす者である。
彼〔神〕みずから、声を分けて語る者ら〔人間〕の姿の型を定め、
獣と這うものと鳥とを造られたのである。
あなたがたは神を崇拝せず、畏れもせず、むなしくさ迷っている。
3.30
蛇を礼拝し、猫や、
物言わぬ像や人の石像に犠牲を献げている。
また神なき神殿の扉の前に座って、
万物を守ってくださる実在の神を*見守り*、
石の災禍を喜び、
天地を創造された、不死なる救い主の審きを忘れている。
ああ、血を好み、欺きにたけた、悪しき族民よ、不敬虔であり、
虚偽に満ち、二枚舌を用い、悪意に満ちた者、
結婚の床を盗む者、偶像に仕える者、欺きを思い計る者の族民よ、
彼らはその胸の内に悪があり、気の狂ったウシアブがおり、
3.40
自分のために奪い取り、恥知らずな気性を抱いている。
というのは、富んでいながら、また持てる者でありながら、誰も他の人に分かち与えることもなく、
すべての人の間に恐ろしい悪があり、
人々はまったく信仰を持たず、やもめ女たちは、
秘かにほかの男たちを、多くのものは利得のために、愛するだろう。
彼女らは男は手に入れるけれども、人生の綱は握っていない。
しかし、今なおためらっているローマがエジプトをも支配する時、
その時こそ不死なる王の大いなる国が
人々の上に現れるだろう。
そして聖い王が全地に、王笏を揮わんとやってくる。
3.50
迫りくる時の全時代にわたって〔王笏を揮わんと〕。
その時にはラテン人への鎮めがたい怒りがある。
三人の人[006]が悲しむべき運命をもってロ−マを犯す。
すべての人間どもが自分の〔家の〕尾根の下で滅びるだろう[007]、
天から火の洪水が下る時に。
悲しいかな、みじめな女よ、いつおとずれるのだろうか、その日は、
そして不死なる神、大いなる王の審きは。
今になってもなお、諸々の都市よ、おまえたちは建てられ、すべての〔都市〕が、
神殿や競技場や市場や、
金、銀、石の像によって飾られている。苦い日に到るために。
3.60
なぜなら、その日は、硫黄の香りが
すべての人々に広がる時におとずれるからである。しかしわたしは、個々のことがらを語り告げよう。
どれほど多くの町々で人々が災禍をこうむるかを。
3.62
* *
3.62
*
その後、セバステの輩からベリアルがやって来る[008]。
彼は山々の高みを据え、海を据え。
大きな、火の燃える太陽や、輝く月、
死人を据え、多くのしるしを人間どもの間で行うだろう。
しかし、それらは彼にあって実りなきものとなり、
かえって声をわけて語る〔人間ども〕を、多くの者ら、
すなわち信仰或る者や選ばれたへブル人や不法な者や、他の人々
3.70
つまりまだ神のことばを聞いていない者らを迷わせるだろう。
しかし、大いなる神の脅威が迫り、
大浪によって火勢が地をおとずれる時、
〔その火勢は〕ペリアルも、増上慢の人間ども
彼に信を置くすべての人々も焼くだろう。
すると世界はひとりの女の掌のもとに
服し、すべてにつけて聞き従うであろう。
さてひとりのやもめが全世界を支配し、
金も銀も、高貴な海に、
またはかなき人間どもの銅も鉄も、
3.80
〔海に〕投げ込む時には、すべての元素は
秩序を失うだろう。それは霊圏に住む神が、
物を巻くように天を巻く時である。
そして全天蓋がさまざまな形をとって高貴な地に、
また海の中に落ちるだろう。荒れ狂う火の疲れなき滝が
地を焼き、海を焼き、
天蓋と日と被造物自身とを
ひとつにとかし、より分けて清いものにするだろう。
もはや、輝く星のきらめく星座もなく、
夜も曙も、思い煩いのための多くの日々もなく、
3.90
春なく、夏なく、冬なく、秋もないだろう。
まさにその時、大いなる神の審きが
大いなる時間の中央にやって来るだろう。これらすべてが起こる時に。
3.92
* *
3.92
*
おお、おお、〔嘆かわしきかな〕船の通う海とすべての陸地よ。
ふたたび沈むことのない太陽が昇る時、
人々はふたたび全世界の上に昇るものに従うだろう。
このゆえに、彼は第一の者として己が力をも認知した。
3.96
* *
3.96
*
しかし、大いなる神の脅威が極みに達する時、
彼はかつてこれをもってはかなきらを脅迫したが、それは塔を作った時、
アッシリアの地であらゆるひとが一つのことばであって、
3.100
星の輝く天に昇りたいと思った時である。
そこでただちに不死なるおかたは、風によって大きな力を
加えられた。するとたちまち風が大きな塔を頭から
投げ倒し、死ぬべき者ら相互に争いを引き起こした。
このゆえにこそ、はかなき者らはその都市にバビロンという名をつけたのである。
その後、塔が倒れ、人々のことばは
あらゆる言語に分かれたので、やがて全
地ははかなき者たちの分かれ立つ王国で満ちた。
まさしく当時は、声を分けて語る者らの第十代目の時代であった。
まさに洪水が最初の代の人々を襲った時からして。
3.110
そして、クロノスとティーターンとイーアペトス、
すなわちガイアとウーラノスのもっともすぐれた子らが王支配した。
人間どもがガイアとウーラノスとその名をつけた所以は、
彼らが言葉を分かって語る人間どもの最初の者たちだからである。
それぞれのくじ引きに従って地の三つの部分があった。
おのおのはその部分を所有して王支配し、彼らは戦うこともしなかった。
なぜなら父の前での誓いがあって、分割は義しかったからである。
そうするうちに、年老いた父の最後の時が来て
そういう次第で死んだ。すると子供たちは誓いに対するはなはだしい違反を
犯したので、互いの争いを引き起こし、
3.120
誰がすべての死すべき者らに対して王としての誉れを得て支配するかにつき、
クロノスとティーターンは互いに戦った。
そこでレアーとガイアと、花冠も愛らしいアフロディーテーと、
デーメーテールと、ヘスティアと、結髪もみごとなディオーネーとは
彼らを友情へと導びき、
すべての王たちを兄弟また同族として一つに集め、
同じ血統、同じ親からの他の人々も集めた。
そしてクロノスがすべての者の王として治めるように定めた。
なぜなら、彼は一番年長で、姿が最善だったからである。
しかし、他方、ティーターンはクロノスに対したいへんな誓いを課した。
3.130
それは男の子のやからを育ててはならないということであった。みずからが
王となるために。老いと定めの時がクロノスをおとずれる時に。
そこで、ティーターンたちはレアーが子を生む時、彼女の側に座っていて、
男の子はすべて切り殺し、
女の子は母のもとで育てられるために生かしておいた。
しかし、女神レアーが三代目〔の子〕を生んだ時、
まずへーラを生んだ。眼で女の子であることを
見たので、粗野な男たちのティーターンらは家に帰った。
するとそのあとでレアーは男の子を生んだので、
その子を速やかに、秘かに人知れず育てられるためにプリュギアに送った。
3.140
忠誠を誓った三人のクレタ人を選りすぐって。
そこで彼らは〔その子を〕ゼウスと名づけた。なぜなら彼は送り出された(diepevmfqh)からである。
さてまた同じようにして彼女はポセイドーンを秘かに送り出した。
三番目に、いとも神々しいレアーはプルゥトーンを生んだ。
それは彼女がドードーナを越えた時のこと。そこからはエウロボス川の水路が走り、
水はペーネイオスと交わって流れていた。人々はそれをステュクスの流れと呼んでいる。
さてティーターンたちが、クロノスと奥方レアーの生んだ子らが秘かに〔生きて〕いると聞いた時、
ティーターンは七〇人もの子らを集め、
3.150
クロノスと奥方レアーを捕縛し、
地の中に隠し、*枷*のうちに拘留した。
3.152
すると力強きクロノスの息子らはこれを聞き、
彼のために大いなる戦いと喊声とを引き起こした。
これがすべての生ける者の間の戦いの初めである。
[これが死すべき者らの戦争の端緒だからである]
そのとき神はティーターンたちに悪を与えられた。
ティーターンたちとクロノスのすべての族が
死に果てた。それから時が廻って、
エジプトの王国が起こった。それからペルシア、
3.160
メーディア、エチオピア、またアッシリア、バビロン、
それからマケドニア、ふたたびエジプト、そしてローマ。
さて大いなる神のお告げがわたしの胸のうちに
生じ、全地について予言をするように、
また王たちの心の中に来たらんとすることを置くように命じた。
そして神はわたしの思いに次のことを示された。
すなわちどれほど多くの国々が集められるかを。
すなわちまず第一にソロモンの家が支配し、
アジアと他の島々の制圧者なるフェニキア人、
パンフリア人、ペルシア人、フリュギア人の族
3.170
またカリア人、ムシア人、金に富むリュディア人の族もそうする。
それから増上慢のけがれたギリシア人、
〔それからまたギリシアとは〕別のマケドニアの雑多な種族が支配するだろう。
彼らは恐ろしい戦争の乱雲として人々におとずれる。
しかし、天の神はそれを根こそぎ劫掠されるだろう。
そののち別の王国の支配があるだろう。
それは西の海から〔生じ〕、白い多頭のものである。
それは多くの地を支配し、多くの者をぐらつかせ、
のちには多くの王たちに恐ろしいことをなすであろう。
また多大の金銀を多くの町々から、劫掠[009]するだろう。
3.180再び、高貴な地中には、
金とそれから銀も飾り物も〔隠されて〕あるだろう。
また彼らは人々を苦しめるだろう。しかし大いなる災いがかの者らに臨むだろう。
彼らが思い上がった不義に手を着ける時に。
たちまち彼らの内には不敬虔の衝動が生じ、
男が男と交わり、子供を恥ずべき
大窓に立たせるだろう。その日には
人々の間に大いなる患難があり、それがすべてのものを混乱させ、
すべてのものを疲憊させ、すべてのものを悪で満たすだろう。
すなわち恥ずべき金欲とよこしまに得た富とにより、
3.190多くの地で。しかし特にマケドニアで。
それ〔患難〕は憎悪を引き起こし、人々の間にはあらゆる謀があるだろう。
〔それは第七の支配に至り、その王がエジプトに君臨する
時までである。彼はギリシア人の出である。〕
するとその時、大いなる神の種族[010]がふたたび力を得るであろう。
彼らはすべての人々にとって生活の道案内となるだろう。
しかし、なぜ神はわたしの心にこのことも置き、語らせられるのか?
すなわち何が人々に対する最初の悪であり、何がその次であり、
何が最後であるかを。またこれらのことの始まりが何であるかを。
まず神はティタンたちに悪を授けるだろう。
3.200
というのは彼らはクロノスの力強き息子らに報い(divkh)を償うからである。
ぜなら彼らはクロノスと誉れ高きその母を禁縛してしまったから。
それから第二にギリシア人は暴君と増上慢の
王たちとを載くであろう。彼らは思い上がりで汚れており、
姦淫を求め、すべてにつけて悪しき者である。だからもう死ぬべき者にとって、
戦争からの休息は無いだろう。〔その日には〕恐るべきフリュギア人が
全滅し、悪がトロイアをおとずれるだろう。
するとペルシア人にもアッシリア人にも、
全エジプト、リビア、エチオピア人、
カリア人、パンフリア人にも悪がやって来る。それは〈動かしえざる〉悪であって、
3.210すべての人におとずれる。まったくどのようにしてわたしは一つ一つ語りえようか。
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