[トービト書について] 旧約外典の1書。14章よりなる。……へブル語もしくは、アラム語によって書かれたという両説がある。 【内容】 敬虔なユダヤ人トービ卜は捕囚とされ(前721)、故郷ナフタリからニネベへ行き、アンナと結婚してトビヤスを生む。善行に励み、律法に忠実、特に死者を葬る ことに熱心であった。王を恐れて一時ニネベを去るが、死後再びニネベにもどり、眼病をわずらって失明。息子トビヤスは父の使いで案内人の姿をした天使ラファエルを伴って旅に出る。旅行中、7度結婚していずれも婚礼の夜に夫を悪鬼のために失った未亡人サラと結婚、帰国後、父の失明をいやす。 【年代】 物語は前7世紀が舞台であるが、著者が《アブガルの物語と知恵》、モーセ五書の後期の部分などを知っていることから、およそ前200年頃書かれたものと推定される。 【価値】 前2世紀のユダヤ人の敬虔な家庭生活や中間時代の天使・悪霊思想の資料、清純な結婚観は教会によき教訓を与えてきた。 (『キリスト教大事典』) [底本] TLG 0527 SEPTUAGINTA Relig. vel Vetus Testamentum 3 B.C./A.D. 3 Relig. 0527 021 Tobias (Cod. Vaticanus + Cod. Alexandrinus) Apocryph., Narr. Fict., Relig. A. Rahlfs, Septuaginta, vol. 1, 9th edn., Stuttgart: Wûrttemberg Bible Society, 1935 (repr. 1971): 1002-1039. トービト1.(1) ネプタリム〔ナフタリ〕族出身アシエールの種子に属し、ガバエールの子アドゥエールの子アナニエールの子トービエールの子トービトの言葉をしるした書物、(2) この者〔トービト〕は、アッシュリア人たちの王エネメッサロス[01]の時代に、ティスべーから捕囚の身となった者である、これ〔ティスべー〕は上ガリラヤにあるネプタリムのキュディオース〔ケデシ〕の右手〔南〕[01]、アセール〔ハゾル〕の上手にある。 (3) わたしトービトは、わが生涯のすべての日々、真理と義の道を歩みつづけ、わたしとともにアッシュリア人たちの地ニネウエーへ同道したわたしの同族や同胞に対して、多くの施しを行った。(4) ところで、わたしがイスラエールの地のわたしの地方におり、わたしがまだ年若かったころ、わたしの父祖ネプタリム部族全体が、部族全体を犠牲に捧げるべく、イスラエール全部族から選ばれたヒエロソリュモーンの町を棄てた。至高者の住まいである神殿が、永遠の全世代にわたって聖別もされ、建造もされていたのにである。(5) そうして、いっしょに離教した全部族と、わが父のネプタリムの家は、若い牝牛バアル女神に供犠していたのである。(6) しかしわたし独りは、全イスラエールのために永遠の定めのうちに書かれているとおり、祭日のたびごとに足繁くヒエロソリュマに通いつづけた、作物の初穂と十分の一と羊の〔毛の〕初刈りとを持ってである。(7) そうしてそれらのものを、あらゆる産物の犠牲壇のたもとなるアアロンの息子たちである神官たちに与えた。十分の一は、ヒエルゥサレームの奉仕者たちであるレウィの息子たちに与えた。また第2の十分の一は、毎年換金し、旅をし、これをヒエロソリュマで散財した。(8) また第3の十分の一は、わが母デッボーラのいいつけどおり、然るべき人々に与えた、わが父によって孤児として遺されたからである。[03](9) そうして成人したときも、われわれの父方の家系から妻アンナンを娶り、これからトービアスをもうけた。(10) そうして、ニネウエーに捕囚の身となったときも、わが兄弟たちも、わが氏族はすべて〔異〕族民たちのパンを食した。(11) だがわたしは、喰らわないよう、わが魂を保持した、(12) わが魂の全体において、神を憶えるためである。(13) すると至高者が、エネメッサロスの面前で恩寵と形態を賜い、わたしはその商人となった。(14) そしてメーディアへ旅し、メーディアのラゴイで、ガブリの兄弟ガバエーロスに銀10タラントンを預けた。 (15) そうして、エネマッサロスが亡くなったとき、その息子センナケーリムが王位に就き、その街道は不安定となり、メーデイアへ旅行することはもはやできなくなった。(16) エネマッサロスの時代にも、わが兄弟たちに数多くの施しを行った。(17) わがパンを物乞いする者たちに、わが衣服を裸の者たちに与え、またもし、わが一族出身の誰かが死んでニネウエーの市壁の後ろに放置されているのを目撃することあらば、これを埋葬した。(18) またもし、センナケーリム王が誰かを殺害したら イウゥダイアの地から逃亡したときだが、彼ら〔の屍体を〕を盗んで埋葬した。実際、彼〔センナケーリム王〕は腹だちまぎれに多数を殺害したのである。(19) ところが、ニネウエーの住人の一人が赴いて、わたしがそれらを埋葬している王に密告した、そこでわたしは姿を隠した。しかしわたしは死刑にすべく探索されていると知り、恐れて逃亡した。(20) かくしてわが所有物はすべて没収され、我が妻アンナと、わが息子トービアス以外、わが手許に残ったものは何もなかったのである。(21) しかし、50日経たないうちに、彼〔センナケーリム王〕の二人の息子が彼を殺害した。そして彼らはアララト山へ逃れ、彼の息子サケルノドスが、彼に代わって王位に就いた。そしてわが兄弟アナエールの息子アキアカロスを、彼の王国のすべての財務と政務を司る役に任じた。(22) そうしてアキアカロスはわたしのことを〔王に〕頼んでくれ、わたしはニネウエーに帰った。ところで、アキアカロスは〔アッシリア人の王セナケリブ〕の給仕頭、指環〔印章〕の管理者、宰相、財務官であったが、サケルドノスは彼を再度その地位に任じたのである。そのうえ彼はわたしの甥であった。 2.(1) さて、わが家に帰還し、わが妻アンナとわが息子トービアスとがわたしに返されたとき、五旬節すなわち聖なる七週の祭に、わたしのために美しい正餐が催され、食事の席についた。 (2) そうして数々の馳走を見て、わが子に云った、「行って、わたしたちの兄弟のうち、神を憶えていながら、事欠いているひとを見つけたら、連れて来なさい。そして見よ、わたしはおまえを待っていよう」。(3) すると言って、云った。「父よ、われわれの族の一人が殴られて、市場に棄てられています」。(4) そこでわたしは、わたしが味わう前に跳びあがり、とある屋敷に、太陽が沈むまでこれを引き取った。(5) そうして悲しみのうちにわが食事を摂った。(6) そうしてアモースの預言を思い出した、それは次のように云った。 汝らの祝祭は悲嘆に、 そしてわたしは泣いた。(7) やがて太陽が沈んだとき、出かけて行き、〔墓穴を〕掘って彼を埋葬した。(8) すると隣人たちが嘲笑った、曰く。「この事のせいで殺されかかったのをもはや恐れない」。確かにわたしは逃亡した。「しかし見よ、またもや死人たちを埋葬している」。(9) この夜も、埋葬した上で沐浴し、穢れている者として、中庭の壁際で就寝したが、わが顔を覆うことをしなかった。(10) そして、雀が壁の中にいるのを知らず、わが両眼が開いているところに、雀が熱い糞を落とし、わが両眼に白斑となった。そこで医者たちのところに通ったが、わたしには役に立たなかった。しかしアキアカロスは、エリュマイスに赴任するまで、わたしを養ってくれた。(11) わが妻アンナも、女仕事で賃働きしてくれた。(12) そうして〔ある時〕、〔注文品を注文〕主たちに届けると、彼女に支払い、そのうえ、報酬に仔山羊をもつけてくれたのである。(13) そこで、わたしのところへ来たとき、〔仔山羊が〕鳴きだした。そこで彼女に云った。「この仔山羊はどこからか? まさか盗んだものではないだろうな? これを持ち主たちに返せ。盗んだものを喰らう法はないのだから」。(14) すると彼女が云った、「わたしに報酬としてくれたものです」。しかし彼女を信じず、これを持ち主たちに返すよう言いつづけ、彼女に対して紅くなっ〔て怒っ〕た。すると彼女は答えてわたしに云った。「あなたの憐れみはどこにあるのですか? あなたの義は? 見よ、万事はあなたとともに知られています」。 3.(1) そこでわたしは悲しくなって泣き、苦悩のうちに祈った、曰く、(2) 「主よ、御身は義しく、御身のすべての業は義しく、御身の道はすべて憐れみと真実です、真実の裁きをも義をも御身は永遠に裁きたまいます。(3) わたしを憶え、わたしに目をとめてください。わたしの罪ゆえに、またわたしとわたしの父祖の無知ゆえに、御身の前に犯した過ちについて、わたしを処罰しないでください。(4) たしかに彼らは御身の戒めに背きました。御身はわれわれを、あらゆる族民の中に散らされ、その族民による掠奪と捕囚と死と誹謗の中に渡されました。(5) 今も、わたしとわたしの父祖の諸々の罪に関して、わたしに下される御身の裁きの数々は真実です、わたしたちが御身の戒めを実行しなかったゆえに。というのは、わたしたちは御身の前に真理のうちに進まなかったからです。(6) 今も御心のままに、御身の前でわたしを扱ってください。わたしの息を取り上げるようお命じください、わたしが放免されて、土となれるように。生きるより死ぬ方がわたしには有利なのですから、その所以は、偽りの侮辱を聞き、激しい苦しみがわたしのうちにあるのですから。もはや業苦から永遠の場に解放されるようお命じください、御身の御顔をわたしから逸らさないでください」。 (7) 同じ日に、メーディアのエクバタナに住むラグゥエールの娘サッラに、彼女も自分の父親の女奴隸たちに侮辱されるということが起こった、(8) つまり、〔彼女は〕7人の男たちに与えられたのだが、女の定めに従って彼らが妻として彼女といっしょになる前に、邪悪なダイモーン的なものであるアスモダウス[05]が彼らを殺したのである。そこで〔女奴隷たちが〕彼女に云った、「あなたの夫たちを絞め殺しているのがわからないのですか? すでに7人を得ながら、そのうちのひとりの名でも呼ばれたことがない。(9) どうしてわたしたちを鞭打つのですか? 彼らが死んだのなら、あなたも彼らといっしょに行くがいい。あなたの息子とか娘とかを永遠に見ることがありませんように」。(10) これを聞いて、悲しみのあまり、首を括ろうとした。しかし云った、「わたしはわが父の一人娘。もしそんなことをしたら、非難が彼〔父〕におよび、苦悩のせいでその老年を冥府に陥らせることになるでしょう」。(11) そうして窓際で祈って云った、「讃美さるべきかな、わが主なる神よ、御身の聖なる名号は讃美さるべく、且つ永遠に尊敬されます。御身のあらゆる業をして御身を永遠に讃美せしめたまえ。(12) まさに今、主よ、わが眼とわが顔を御身に向けました。(13) わたしをこの地から解放し、わたしがもはや侮辱を聞かさぬよう云いました。(14) 御身は、主よ、わたしが男とのいかなる汚れからも清浄であり、(15) わが名も、わが父の名も、わが捕囚の地において穢れてはいないことをご存知です。わたしはわが父の一人娘であり、彼〔父〕には彼を相続する子がおらず、兄弟も近くにおらず、わたしが妻となることで成就する息子も彼にはいません。わたしの7人はすでに身罷りました。わたしに生きながらえることがどうしてできましょうや。もしもわたしを死なせることが御身によしと思われないならば、わたしに目をとめ、わたしを憐み、わたしが今後侮辱のことばを聞くことのないよういいつけてください」。 (16) そうして両者の祈りは、大いなるラパエールの栄光の面前において聞き届けられ、(17) 二人を癒やすため、すなわちトービトの白斑を剥ぎ取り、ラグゥエールの娘サッラはトービトの息子トービアスに妻として与え、邪悪なダイモーン的なものアスモダウスを縛るために〔ラパエールが〕派遣された、トービアが彼女をわがものとするようなっていたからである。まさにその時、トービトは帰って自分の家に入り、ラグゥエールの娘サッラは屋上の部屋[06]から降りた。
(1) その日トービトは、メーディアのラゴイにいるガバエールに預けておいた銀子のことを思いだし、(2) 心の中で云った、「わたしは死を懇願した。わがトービアを呼んで、わたしが死ぬ前にわが息子に指示しておかないでよかろうや」。(3) そこでこれを呼んで云った、「わが子よ、わたしが死んだら、わたしを埋葬せよ。そうして、そなたの母を敬い、そなたの生涯のすべての日々、彼女を尊び、彼女の気に入ることを為し、彼女を苦しめてはならない。(4) 記憶せよ、わが子よ、〔彼女は〕胎にあるそなたのために数多の危険をみたということを。〔彼女が〕死んだときには、ひとつ墓のわたしの傍に彼女を埋葬せよ。(5) すべての日々、わが子よ、われわれの主なる神を憶えよ、そして罪を犯し、その戒めに背くことを拒否せよ。そなたの生涯のすべての日々、義を為し、不義の道に進んではならない。(6) そなたが真理を行うとき、そなたの業に豊栄があろうゆえに。(7) そうして、義を行うすべての人たちに、そなたの持ち物から施しを為せ、しかし、そなたが施しをする時、そなたの眼をして妬ましむるな。そなたの顔をしてあらゆる物乞いから背かしむるな、神の顔をしてそなたから断じて背かしむるな。(8) そなたの持てるものに応じて、その中からたっぷりと施しを為せ。そなたの持てるものが少なければ、少ないように、施しを為すことを恐れてはならない。(9) なぜなら、艱難の日に自身に善き宝を蓄えることになるのだから。(10) 施しは死から救い、暗闇へ入ることを許さないゆえに。(11) 施しは、これを為す者たちすべてにとって、至高者の前にささげる善き供物だからである。(12) わが子よ、あらゆる姦淫から汝自身に心を傾注せよ、つまり、先ず妻はそなたの父祖の家系から得よ。余所者の(つまりそなたの部族の出でない)妻を娶ってはならない、われわれは預言者の息子なのだからだ。ノーエ、アブラアム、イサアク、イアコーブ……われわれの父祖たちをして永遠に憶えしめよ、これらの者たちはみな、おのれの兄弟たちから妻を娶り、その子どもたちにおいて祝福され、その裔も地を継ぐであろうということを。(13) 今も、わが子よ、そなたの兄弟たちを愛せ、そして、そなたの兄弟たちや、そなたの民の息子たちや娘たちに対してそなたの心に高慢となり、彼らからそなた自身に妻を娶らないということがあってはならない。???数多の滅びと不安定は高慢の内にあり、減少とひどい欠乏は無益さの内にあるがゆえに。というのは、怠惰は飢饉の母だからである。(14) いかなる人であれ、働く人であるかぎり、その人の報酬はそなたのもとに囲うことなく、すぐさまその人に支払え、そうすれば、そなたが神に隷従したとき、そなたに支払われるであろう。わが子よ、そなたのすべての業に気をつけよ、そなたのあらゆる振る舞いにおいて教育された者たれ。(15) そなたが厭なことは、何びとにも為してはならない。酩酊するまで酒を飲んではならない、また、酩酊をしてそなたの道をそなたとともに歩ましめてはならない。(16) お前のパンを飢えている者に、そなたの上衣を裸の者たちにに与えよ。そなたにとってあり余るものはすべて、施しを為せ、そしてそなたの眼をして、そなたが施しを為すことを妬ましむるな。(17) そなたのパンを、義人たちの墓に注げ、しかし罪人たちに与えてはならない。(18) 思慮あるあらゆる人に助言を求めよ、有用な助言はいかなるものも蔑ろにしてはならない。(19) いかなる時にも主なる神をほめたたえよ、そしてそなたの道がまっすぐであり、すべての歩みとはかりごとが栄えるように主に求めよ。いかなる族民も正しいはかりごとを持つことなく、主こそがあらゆる善きことをお与えになり、ご自分の望む者を、お図りどおりに低めたもう。今も、わが子よ、わが戒めを憶えよ、そうしてそなたの心から拭い去ってはならない。(20) まさに今、銀子10タラントンをそなたに教えよう、これはメーデアのラゴイにいるガブリアの子ガバエールに預けたものだ。(21) 恐れることはない、わが子よ、わたしたちが物乞い同然になったと。そなたには多くの持ち物があるのだ、もしも神を畏れ、あらゆる罪から離れ、その〔神〕の面前で喜ばれることを為すならば」。 5.(1) そこでトービアスが答えて相手に云った、「父よ、あなたがぼくにいいつけることはすべて実行しましょう。(2) とはいえ、その銀子はどうやって得られるのでしょう、ぼくは彼を知らないのに」。(3) そこで〔トービトは〕彼に証書を与え、彼に云った、「そなたといっしょに旅してくれる人を自分で探すがよい、そうしたら、その人にわたしが生きているかぎり報酬を与えよう。そうして旅して、銀子を受け取れ」。(4) かくして彼はひとを探して旅をし、ラパエールを見つけた、それは天使であったが、彼は知らなかった。(5) そこで相手に云った、「あなたといっしょにメーディアのラゴイに旅することができるかどうか、その場所に経験者かどうか」。(6) するとこれに天使が云った、「君といっしょに旅しよう、この道は経験している、われわれの兄弟ガバエールのところに泊まったことがある」。(7) そこでトービアスが相手に云った、「ぼくを待ってください、わが父に知らせます」。(8) するとこれに云った、「行け、しかし暇取るな」。(9) そこで入って父に云った、「見よ、ぼくといっしょに旅してくれるひとを見つけました。そこで彼〔父〕が云った、「そのひとをわたしのところへ呼びなさい。何部族なのか、また、そなたといっしょに旅するに信用できるひとかどうか知るために」。(10) そこで彼を呼ぶと、入って来て、互いに歓迎した。(11) そこで相手にトービトが云った、「兄弟よ、いかなる部族の出身ですか、あなたはいかなる祖国の出ですか? わたしに教えてください」。(12) すると相手に云った、「あなたが求めているのは部族と祖国ですか、それとも、あなたの息子といっしょに旅する雇い人ですか?」。するとこれにトービトが云った、「兄弟よ、あなたの生まれと名前を知りたいのです」。(13) そこで相手が云った、「わ たしは、あなたの兄弟たちのひとり、偉大なるアナニアの子アザリアスです」。(14) そこで相手に云った、「ご健勝ならんことを、兄弟よ。あなたの部族とあなたの祖国を知ろうと詮索したことでわたしに腹をお立てになりませんように。あなたこそ、美しく且つ善き生まれのわが兄弟です。というのは、わたしが偉大なセメイオスの息子たちであるアナニアとイアタンを見知っております、わたしたちは作物の初穂と十分の一を奉納するためヒエロソリュマにいっしょに旅したのですが、彼らはわたしたちの兄弟によって迷妄に踏み迷ったことはありません。あなたは美しい根株の持ち主です、兄弟よ」。(15) さあ、あなたにいかなる報酬を与えらればよいかわたしに云ってください。日に1ドラクマと、わが息子と同じだけの必要品はどうでしょうか?(16) 報酬に加えて、さらにあなたに付加しましょう、健勝にもどってこられましたなら」。(17) かくて彼らはそのとおりに同意した。そこで〔トービトは〕トービアスに向かって云った、「旅の準備をして整ったとせよ。順調な旅であるように。かくて彼の息子は旅支度を調えた。するとその父が彼に云った、「このかたといっしょに行きなさい。天にお住まいの神が、汝らの旅を首尾よく道案内し、その天使をしても、汝らに同道せしめん」。かくて両人は、また少年の犬も彼らとともに、出発すべく出て行った。 (18) しかし彼の母アンナは泣いて、トービトに向かって云った、「どうしてわたしたちの子を遣わしたりするのですか? 入るにせよ出るにせよ、彼がわたしたちの前に立つわたしたちの杖なのではありませんか? (19) 銀子に銀子を優先させることをやめ、〔その銀子は〕わたしたちの子の身代金としてください。(20) わたしたちには生きることを主から許されている、わたしたちにはそれで充分なのですから」。(21) すると彼女にトービトが云った、「つべこべいうな、姉妹よ。健勝に出かけて行き、そなたの両眼も彼を目にするであろう。(22) 善き天使がこれに同道してくれ、これの旅は首尾よくゆくであろうし、健勝に帰ってくるだろう。(23) こうして彼女は泣くのをやめた。 6.(1) さて、彼らは道を行き、夕方、ティグリス河に着き、そこに宿泊した。(2) そこで少年が沐浴するため〔河に〕降りると、河から魚が跳ね上がり、少年を呑みこもうとした。(3) すると天使が彼に云った、「その魚を捕まえろ」。そこでその魚を少年が捕まえて、これを陸に引き上げた。(4) すると彼に天使が云った、「その魚を捌いて、肝臓と胆汁を安全に取っておけ」。(5) そこで少年は、天使が自分に云ったとおりにして、魚の方は焼いて喰ってしまった。 (6) かくて両人は進んで、ついにエクバタノイに到着した。(7) そこで少年が天使に云った、「兄弟アザリアよ、魚の肝臓と心臓と胆汁は何なのですか?」。(8) すると相手に云った、「心臓と肝臓は、ダイモーン的なものとか邪悪な精霊が誰かに立腹したとき、ひとや女の前でこれを燻さねばならない、そうするともはやけっして立腹することがないのだ。(9) 胆汁の方は、眼に白斑のある人に塗りこめよ、そうすれば癒えるだろう」。 (10) さて、彼らがラゲーにちかづいたとき、(11) 天使が少年に云った、「兄弟よ、今日、われわれはラグゥエールのところに泊まることになる、彼はおまえの親類で、彼にはサッラという一人娘がいる。(12) 彼女がおまえに妻として与えられる所以を話そう、というのは、彼女の相続はおまえのものになり、おまえひとりが彼女の生まれに属するからだ。それにこの娘は美しく思慮深い。(13) 今も、わたしのいうことを聞け、そうすれば彼女の父に話してやろう、そうしてラゴイから帰ったら、結婚式を挙げよう。わたしはラグゥエールを知っているが、モーゥセースの律法に反して彼女を別の男に与えるぐらいなら、死んだ方がましだとし、相続を得るのは、どんな人間よりもおまえがふさわしいとするのだから。(14) このとき、少年が天使に云った、「兄弟アザリアよ、わたしの聞いたところでは、その娘は7人の男を与えられながら、全員が新婚の部屋で亡くなったといいます。(15) 今も、わたしは父のひとり息子であり、先の男たちと同様、入っていったら死ぬのではないかと恐ろしいのです、ダイモーン的なものが彼女を愛していて、彼女に近づく者には何びとたりと不正しないではおかないのではないかと。今もわたしは恐ろしいのです、わたしが死んで、わが父とわが母の人生を、わたしへの悲嘆を持ったままその墓へと引きずり下ろすのではないかと。しかも彼らを埋葬する者は、彼らにいないのです。(16) するとこれに天使が云った、「おまえはおまえの同族から妻を得べしと、おまえの父親がおまえにいいつけた言葉を覚えていないのか? 今もわたしのいうことを聞け、兄弟よ、おまえの妻になるのだから、そうして、今夜彼女がおまえの妻になることに、ダイモーン的なものにつべこべ言わせるな。(17) そこで、新婚の部屋に入ったら、香の灰を取って、魚の心臓と肝臓から〔の一部〕をその上に置き、燻せ、そうしたらダイモーン的なものが嗅いで、逃げ出し、永遠の永遠に、引き返してはこないだろう。(18) ただし、彼女に近づいたら、両人とも起き上がり、慈悲深い神に大声で呼ばわれ、そうすれば汝らを救い慈悲を垂れたまうであろう。恐れるな、世の始まる前から彼女はおまえに備えられており、おまえも彼女を救い、おまえとともに旅するであろう、そうして、おまえに彼女から子が生まれることを請け合おう」。(19) そこでトービアスをこれを聞くや、彼女を愛し、その魂も彼女に深く愛着した。 7.(1) こうして彼らはエクバタナに着き、ラグゥエールの家に現れ、サッラが彼らに出会い、彼らを歓迎し、彼らも彼女を〔歓迎して〕、彼らを家に招き入れた。(2) そこでラグゥエールは自分の妻エドナに云った、「この若者はわが従兄弟トービトに何と似ていることか」。(3) そこでラグゥエールは彼らに尋ねた、「どこからいらしたのか、兄弟たちよ」。そこで彼らはこれに答えた、「ニネウエーの捕囚ネプタリ族の息子たちの出身です」。(4) そこで彼らに云った、「われわれの兄弟トービトをご存知か? そこで彼らは云った、「知っています」。(5) すると彼らに云った、「ご健勝か?」。そこで彼らが云った、「ご存命ですし、ご健勝です」。さらにトービアスが云った、「わが父です」。(6) するとラグゥエールは跳びあがり、相手に接吻し、泣き、これを祝福し、これに云った、「美にして善なるひとのご子息だ」。そして、トービトはその視力を失ったと聞き、彼は悲しみ泣いた。(7) そして自分の妻エドナと自分の娘サッラを呼び、彼らを熱心にもてなした。(8) さらに羊の中から牡羊を生贄にし、たくさんの料理で饗応した。 (9) そこでトービアスがラパエールに云った、「兄弟アザリアよ、道中、あなたが言ったことを話してください、そして事をして実現せしめてください」。(10) そこでラグゥエールに話を分け与えた。するとラグゥエールガトービアスに向かって云った、「喰え、飲め、いい気分になりたまえ。君にこそわが子を得るにふさわしい。ただし、君に真実を教えよう。(11) わが子を7人の男に与えた、しかし彼女のところに入って行くたびに、その夜のうちに死んでしまった。しかし今のところはいい気分になりたまえ」。(12) しかしトービアスが云った、「ここで何も味わうことをしません、それまでに決着をつけ、わたしのもとに立たせてください」。そこでラグゥエールが云った。「今から定めどおり彼女を娶るがよい。そなたは彼女の兄弟、彼女もそなたのきょうだい。慈悲深い神がおまえたちを最美なものらで首尾よく導いてくださろう。(13) そうして自分の娘サッラを呼んで、その手を取って、彼女をトービアスに妻として与えて云った、「見よ、モーゥセースの律法にしたがって彼女を受け取れ、そしてそなたの父親のもとに連れて行け」。そうして彼らを祝福した。(14) そして自分の妻エドナを呼んだ。そして紙を取ると、手紙を書いて封印した。そして食事をはじめた。(15) さらにラグゥエールは自分の妻エドナを呼んでこれに云った、「妹よ、別の部屋を用意して、彼女を案内せよ」。(16) そこで言ったとおりにし、彼女をそこに案内し、泣いた。しかし自分の娘の涙を受け入れると彼女に云った、(17) 「元気を出しなさい、わが子よ、天と地の主が、おまえのこの悲しみに代えておまえに恩寵を与えてくださろう、元気をお出し、娘よ」。 8.(1) さて、正餐を終了したとき、彼らはトービアスを彼女のところに案内した。(2) 彼〔トービアス〕の方は、行きながらラパエールの言葉を思い出し、犠牲の灰を取り、魚の心臓と肝臓を上に置いて、燻した。(3) すると、ダイモーン的なものがその臭いを嗅ぐや、上アイギュプトスまで逃げて行き、これを天使が追いかけた。(4) 片や、両者が籠もると、トービアスは寝台から起き上がって云った、「起きなさい、妹よ、そうして祈ろう、わたしたちを主が憐れみたもうよう」。(5) そうしてトービアスは言いはじめた、「祝福されるべきかな、我らの父祖の神は、祝福さるべきかな、聖にして永遠に栄光ある御身の名号は。(6) 御身はアダムを造り、これを助け支えるものとして、彼の妻エウアを造りたもうた。これらの者たちから人間どもの種が生まれました。御身は《人がひとりでいるのは美しくない。これのためにこれに似た助け手を造ろう》〔Gen. 2:18〕と云われた。(7) 今も、主よ、わたしがこれをわが妹として娶るのは姦淫のゆえではなく、真理のためです。わたしを憐れみ、これといっしょに老いるようお命じください」。(8) そして心の中で云った、「アメーン」。(9) そうして両人はその夜眠りに就いたのである。 (10) さて、ラグゥエールは起き上がると、行って、墓を掘った、曰く、「この者も死んだにちがいない」。(11) そうしてラグゥエールは自身の家に行って、(12) 自分の妻エドナに云った、「女奴隸のひとりを遣って、生きているかどうか見させよ。もし生きていなければ、それを埋葬しよう、誰にも知られないよう」。(13) そこで女奴隷は入って、戸を開け、二人が座っているのを見出した。(14) そこで出て行って、生きていると彼らに告げた。(15) そこでラグゥエールは神を祝福した、曰く、「御身は、神よ、あらゆる清浄にして聖なる祝言で祝福さるべきかな、そうして御身の聖者たちと、御身のあらゆる被造物をして、代々のすべてにわたって御身を祝福せしめよ。(16) わたしを好機嫌にしてくださったとは祝福さるべきかな、つまり、わたしが推測したとおりにはたわしに起こらず、御身の慈悲深さによってわたしたちをあしらってくださいました。(17) 祝福さるべきかな、二人の独り子を憐れんでくださったとは。彼らに、御主人よ、憐れみを垂れたまえ、彼らの生涯に、好機嫌と憐れみとともに、健康を成就したまえ」。(18) そうして家僕たちには、墓を埋めるよう命じたのであった。 (19) そうして彼らのために、14日間にわたって結婚の儀を執り行った。(20) そしてラグゥエールは、結婚の日々が成就する前に彼に厳命して云った、結婚の14日間が満たないうちに、彼が出て行ってはならない、と、(21) そしてその時は、自分の持ち物の半分を受け取り、健勝とともに父親のもとに旅行くように、そして残りは、わたしとわが妻が亡くなったときに〔受け取るように〕、と。 9.(1) そこでトービアスはラパエールを呼んで、これに云った、(2) 「兄弟アザリアよ、少年奴隷と2頭の駱駝を伴い連れて、メーデイアのラゴイにいるラバエールのところに行き、ぼくのために銀子を運び、彼をこの結婚式に連れて来てください。(3) わたしは出かけてはならんとラグゥエールは厳命しましたし、(4) わが父も〔余命の〕日々を数えています、もしもひどく遅くなったら、あまりに悲しむでしょう」。(5) そこでラパエールが旅をし、ガバエールのところに泊まり、証文を彼に与えた。すると彼は封印のしてある金庫を持って来て、相手に与えた。(6) そうしていっしょに直行し、結婚式に参列した。こうしてトービアスは自分の妻を祝福した。 10.(1) 彼の父トービトも毎日を数えていた。しかし旅の日数が満ちても、彼らが帰ってこなかったので、(2) 云った、「まさか恥をかいたのではあるまいな? あるいは、ガバエールが亡くなって、あいつに銀子を与える者がいないのではあるまいな?」。(3) そしてひどく苦悩した。(4) そこで彼に妻が云った、「あの子は亡くなったのですわ、遅すぎますもの」。そして彼を哀悼しはじめて云った、(5) 「わたしは構やしない、わが子よ、おまえを手放すぐらいなら、わが眼の光を手放しても」。(6) そこでトービトが彼女に言う、「黙れ、つべこべ言うな、彼は健勝だ」。(7) すると彼に云った、「黙って、わたしを迷わせないで。わが子は亡くなったのよ」。そうして毎日、外へ、〔息子の〕出発した道に出かけて行き、日々パンも食さず、夜は夜で、自分の息子トービアスを嘆いてやめず、ついに彼〔トービアス〕がそこで行うことをラグゥエールが厳命した婚姻の儀の14日が成就した。 (8) そこでトービアスはラグゥエールに云った、「わたしを送り出してください、わが父とわが母とはもはやわたしを目にする希望を失っているでしょうから」。(9) すると彼の舅が彼に云った、「わたしのもとにとどまりなさい、そうしたらわたしが、そなたの父に使いを遣って、そなたに関することを彼に説明しよう」。しかしトービアスは言う、「いいえ、わたしをわが父のもとに遣わしてください」。(10) そこでラグゥエールは立ち上がり、彼にサッラをその妻として、また財産の半分、奴隷たち、家畜、銀子を与えた。(11) そして彼らを祝福したうえで送り出した、曰く、「わが子らよ、わたしが死ぬ前に、天の神が汝らの道中を首尾よく導いてくださるように」。(12) つづいて自分の娘に云った、「そなたの悲嘆に価値あれ、今や彼らがそなたの生みの親である。そなたから美しい知らせが聞けますように」。そうして彼女に接吻した。(13) エドナもトービアスに向かって云った、「妹を愛してください、天の神があなたを恢復させてくださり???、あなたと、わが娘サッラからの子供たちを見ることをわたしに許してくださいますように、主の前に喜んでいられるよう。そして見よ、預かり物のわが娘をあなたにお返しします、彼女を苦しめないでください」。(14) それから、トービアスは、自分の道中を首尾よく案内してくださるよう神を祝福しつつ旅立った、また、ラグゥエールとその妻エドナを祝福した。 11.(1) さて、彼らはニネウエーに近づくところまで進んだ。するとラパエールがトービアスに向かって云った、(2)「兄弟よ、君は知っているのではないか、君の父親を後に残してきたときの様子を? (3) われわれは君の妻に先駈けて、家を準備しよう。(4) ただし魚の胆汁は手にとれ」。そこで彼らは先駈けし、犬も彼らの後からいっしょにきた。(5) さて、アンナは道に自分の子を見廻しながら坐っていた。(6) そして彼がやって来るのに気づいて、その父に云った、「見て、あなたの息子がやって来ます、彼といっしょに出立したひとも」。(7) ところで、ラパエールが云った、「君の父親は眼が開くことをわたしは知っている。(8) そこで、胆汁を彼の両眼に塗りこめ、抱かれながら擦りこめ、そうしたら白斑を拭いとり、彼は君を見るだろう」。(9) また駆け寄ったアンナも自分の息子の首に抱きつき、彼に云った、「おまえに会えた、わが子よ、もう死んでもよい」。そうして両人とも泣いた。(10) トービトも戸口に出て行ったが躓いた、そこで息子が彼に駆け寄り、(11) その父を支え、自分の父の両眼に胆汁を当てた、曰く、「元気を出して、父さん」。(12) そして抱き合うや、その両眼をこすった、するとその両眼の眼角から白斑が剥がれ落ちた。(13) そこでおのが息子を見て、その首に抱きつき、泣き、云った、(14)「祝福さるべきかな、神は、そして御身の名号は永遠に祝福さるべきかな、また御身の聖なる天使たちもみな祝福さるべきかな。わたしを鞭打ち、慈悲を垂れ、見よ、わが息子トービアスを見られます」。(15) そこでその息子は喜びつつ入って、メーデイアで自分に起こった大事な事柄を自分の父に報告した。 (16) そこでトービトは、その花嫁に会うために出かけて行った、喜びつつ、神を祝福しつつ、ニネウエーの門へと。そうして、彼が歩いて行くのを目撃した人々は、彼が見えることに驚いた、トービトも、神が自分に慈悲を垂れたことを彼らの面前で証言した。(17) そうしてトービトが彼の花嫁に近づくや、彼女を祝福した、曰く、「健勝にやって来られた、娘よ。神は祝福さるべきかな、そなたをわれわれのもとに連れて来られた方は、そしてそなたの父御とそなたの母御と」。(18) かくてニネウエーなる彼の兄弟たち全員に歓喜が起こった。(19) 彼の甥アキアカルトナスバも来席し、トービアスの婚姻の儀は7日間、好機嫌のうちに挙行された。 12.(1) さて、トービトは自分の息子トービアスを呼んで、これに云った、「ご覧、わが子よ、そなたといっしょに行ってくれた人の報酬を、彼には増額しなければならない」。(2) するとこれに云った、「父よ、運んで来た額の半分を彼に与えても差し障りはありません、(3) ???あなたに健康とわたしの妻を???、わたしの銀子を運び、同じくあなたを治療しました」。(4) すると長老が「義しい」と彼に云った。(5) そこで天使を呼んでこれに云った、「あなたが運んで来た全体の半分を受け取ってください」。 (6) この時、二人をひそかに呼んで彼らに云った、「神を誉めたたえ、これに信仰告白しなさい、偉大さをこれに帰し、あなたがたにかかわった事柄についてあらゆる生き物の前で告白しなさい。神を祝福し、その名を高めることは美しい、神の業の言葉を尊敬をこめて示し、これに告白することに臆してはならない。(7) 王の神秘を隠すのは美しいが、神の業は輝かしく闡明するのが〔美しい〕。善を為せ、そうすれば悪がそなたたちを見出すことはない。(8) 断食と施しと義を伴う祈りは、不義を伴う富にまさる。施しを為すことは、黄金を蓄えることよりも美しい。(9) なぜなら、施しは死から救い出し、これはすべての罪を洗い清める。施しと義を行う者たちは生命に満たされる。(10) 対して罪を行う者たちは、おのれの生命の敵対者である。(11) いかなる言辞も、わたしがあなたがたから隠すことは決してない。既にわたしは述べておいた、《王の神秘は隠すのが美しいが、神の業は輝かしく闡明するのが》と。(12) 今も、そなたと、そなたの花嫁サッラとが祈るとき、そなたらの祈りの記念を聖なるかたの前に引き出しておいた。そして、死人たちを埋葬するときも、同じくそなたとともにわたしが居合わせた。(13) そなたがためらわず立ち上がり、そなたのパンを後にして、出かけて行って屍体を包んだときも、善行するそなたを????、わたしはそなたとともにいたのだ。(14) 今も神がわたしを遣わされたのは、そなたとそなたの花嫁サッラを癒やすためである。(15) わたしはラパエール、7柱の聖なる天使たちの一人、聖なる者たちの祈りを執り成し、聖者の栄光の前に参内するものである」。 (16) そこで二人は動転し、御前に身を投げだした、恐れたからである。(17) すると云った、「恐れるな、平安がそなたらにあろう。だが、永遠に神をほめたたえよ。(18) わたしの恩寵によってではなく、われわれの神のご意思によってわたしはいっしょしたのだから。だから、彼を永遠にほめたたえよ。(19) すべての日々、わたしはあなたがたに見られ、わたしは食べることはもとより、飲むこともしなかったが、あなたがたをして幻を見たとせよ。(20) 今も神に信仰告白せよ、わたしを遣わされた方のところへ昇りゆくゆえに、そして成就したことをすべて書に記せ。(21) そして彼らは立ちつくしていた。もう彼は見当たらなかった。(22) そこで、神の大いなる業と驚異と、主の天使が自分たちに見えたとおりに信仰告白したのであった。 13.(1) トービトもまた欣喜雀躍して祈りを書き記し、そして云った (2) 生ける神とその御国は永遠に祝福さるべきかな、 14. (2) ところで、彼が視力を失ったのは58歳、回復したのは8年後である。そうして施しを為し、ますます主なる神を恐れ、これに信仰告白した。(3) かくて大いに老いた。そこで自分の息子と、その息子たちを呼び、これに云った、「わが子よ、そなたの息子たちをもうけよ???。見よ、わしはすっかり老い、生を去るに近い。(4) おまえはメーディアに行け、わが子よ、預言者イオーナスがニエウエーについて、廃墟となるであろうと述べたかぎりに事を経験したが、メーディアには時期になるまでまだしも平安があろうゆえに、また、この地におけるわれわれの兄弟たちが、善き地から散らされ、ヒエロソリュマは廃墟となり、そこの神の家も灰燼に帰し、時節至るまで廃墟となるであろうゆえに。(5) そしてまた神は彼らを憐れみたまい、彼らをこの地に向かわせ、〔彼らは〕その家を建てるが、第一の家のようにはいかないであろう、永遠の期間が満ちるまでは。そうしてその後、彼らは捕囚から帰還し、ヒエルゥサレームを荘厳に建てられ、その地における神の家も、栄光の建設によって永遠の全世代にわたって建てられるであろう、あたかもそれについて預言者たちが述べたとおりに。(6) そして全族民は主なる神を真に恐れるように回心し、全族民が主を信仰告白するであろう。(7) その民も神に対して信仰告白し、主は自分の民を高めたまい、主なる神を真と義によって愛する者たちすべてが用いられるであろう、われわれの兄弟たちに憐れみを垂れつつ。(8) 今まさに、わが子よ、ニネウエーを去れ、預言者イオーナスが述べたことが完全に起こるであろうから。(9) そこでそなたは、律法と指示を守り、そなたにとって行状美しくあるために、慈悲深き者にして義なる者となれ、そしてわたしを美しく埋葬せよ、そなたの母もわしといっしょに。そしてもはやニネウエーに泊まることなかれ。(10) わが子よ、アマンが、自分を育ててくれたアキアカルに何を為しかたを見よ、光の中から暗黒の中へといかにして導き、いかほどのことを彼に報いたか。それでもアキアカロスは生きのび、前者には報復が仕返され、彼自身が暗黒の中に引き下ろされた。マナッセースは施しを為し、彼に定まっていた非業の死から生きのび、アナンの方は陥穽に落ち、破滅した。(11) 今も、子どもらよ、慈悲が何を為すかを見よ、また、義が何を救うかを。 そしてこれらのことを彼が言うや、寝台の上の彼の魂は終わった。享年185歳であった。そこでこれを丁重に埋葬した。 (12) アンナが死んだときにも、自分の父と並べてこれを埋葬した。そしてトービアスは、自分の妻と、自分の息子たちを連れて、エクバタナに、自分の舅ラグゥエールのもとに赴いた。(13) そして手厚く孝養を尽くし、自分の舅たちを丁重に埋葬し、彼らと自分の父トービトとの財産を相続した。(14) そして127歳で、メーディアのエクバタナで死んだ。(15) そして、自分が死ぬ前、ニネウエーの破滅を耳にした、それはナブゥコドノソルとアシュエーロスが捕囚としたのであった。死ぬ前、ニネウエーのために喜んだ。 2018.07.22. 訳了 |