デート・スポット探訪
ビクターの犬(白川通)
(5.15. 1997)
左京区白川通。とある電気店前に物憂げに座っているのが、このビクターの犬。
「主人の声がレコードのスピーカーから聞こえてくる。
それが不思議で、首をかしげてスピーカーをのぞきこんでいる。」
という姿勢らしいが、この人形の前にスピーカーはない。
それで悲しそうに見えるのかも。
台座を含めると、1メートルほどの高さがある。けっこうリアルで、散歩中の犬に喧嘩を挑まれる災難もあり。
最寄りの市バス停留所は、錦林車庫前。近くには哲学の道や金戒光明寺、真如堂などがずらりと並ぶ。お勧めの散策スポットだ。
たたずむ、ビクターの犬
ミステリー
犬像の恩返し
谷口キヨさん(仮名。73歳)はこのウン十年、毎日散歩の途中、近所の電気店前に座るビクターの犬に声をかけるのが日課だった。持参した布で汚れをぬぐってやったことも数知れず、勝手にこの像にポチと名付けてさえいた。
そんなキヨさんが、ある日、買い物へ行く途中、ヒッタクリにあった。
お金持ち高校生二人組に、財布の入った手提げかばんを奪われたのだ。走り去る猿のような風袋の盗人二人組は、動転してヘナヘナとへたりこむキヨさんをあざ笑った。
だが、歩道脇のビクターの犬の前を通りすぎようとしたとき、今度は盗人二人が腰を抜かし、歩道に崩れ落ちる番だった。信じられない話だが、動かないはずのビクターの犬、ポチが立ち上がり、全身の毛を逆立てて二人に吠えかかったのだ。
「にゃーご!」
猫のように怒りを表す犬の姿。それは、なんだかとっても恐ろしい光景で、さしもの二人もあえなく失神。間もなく、キヨさんの頼みで追いかけてきた通りすがりの観光客に取り押さえられ、手提げ鞄もその中身も、無事キヨさんの元に戻った。
なんとも味な、犬像ポチの恩返しではあるまいか。
以来、キヨさんは、前にも増してポチを可愛がるようになったという。めでたし、めでたし。
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