獲得議席“数”と獲得議席“率”




「自公300議席上回る公算」(朝日新聞)。

獲得議席率と獲得票率の差は要チェック。

第三政党が多いとその差は広がる。

今回の総選挙は第三極がいっぱい出てきたことが特徴でもあるので、

死票が相当出るかもしれない。

小選挙区で3割から4割程度の得票で当選する人も出てくる。

例えば獲得票率がAさん35%、Bさん25%、Cさん20%、Dさん15%、Eさん5%

という選挙区があれば、Aさんは当選できる。

65%は死票となる。

極論をいえば、これと同じ選挙区が10あれば、

35%の得票率で100%の議席率を得ることもできる。

現実的には小選挙区制を導入した直後、

小選挙区だけでは、自民党は38%程度の得票で過半数の議席を得たこともあった。

朝日新聞の名物記者から政治学者になった故・石川真澄氏は、

これを「作られた多数派」と呼んだ。


戦後、鳩山一郎内閣のときに小選挙区制導入が議論になったことがある。

この頃は、中選挙区制では議席の3分の2を獲得することは不可能だったので、

小選挙区制を導入して憲法改正をやりたいということだった。

当時は自民党以外は弱小革新政党だったので、

小選挙区制をやれば、野党のつぶし合いになって、

自民党が圧倒的多数を獲得するだろうと考えられていた。

ところが、自民党に都合の良い選挙区割りを考えた「ハトマンダー」などと言われ

(※かつてアメリカで実際に行われた“ゲリマンダー”をもじったもの)、

自民党内からも批判があって、衆議院は通過したものの参議院では成立しなかった。


今回の総選挙は、民主党が80議席を下回るか(朝日新聞)、と言われているほど、

自民党対弱小政党の構図となっていることから、

戦後の自民党対野党と非常によく似ている。

さらに民主党は51選挙区で離党組とつぶし合いをやっている。


前回の総選挙は民主党への支持というより、自民党の失点といわれたが、

今回の総選挙は完全に民主党の自滅である。

ただし、自民党にとっては、再び明日は我が身でもある。


小選挙区制の導入に当たって、アメリカの二大政党制が模範とされたが、

アメリカではどんな逆風が吹いても当選する議員が数多くいる。

この選挙区は代々共和党・民主党それぞれの地盤という選挙区もたくさんある。

ブッシュ政権末期に中間選挙で共和党歴史的大惨敗ということもあったが、

議席数の差を見ると、日本人の感覚でいえば、たいして惨敗していないことになる。

一方、カナダやニュージーランドでは、小選挙区制の導入により、

これまでの与党が壊滅する事態も発生した。

日本もそれに近いことが起こったが、民主党があまりに無様だったので、

自民党が息を吹き返すことになった。

民主党政権が8年続いたら、自民党は消滅した可能性も高い。

フランスではそのようなことを避けるために、2回投票制を導入している。

第1回投票で過半数を獲れなかった選挙区は、

第2回投票で上位2者による決戦投票が行われる。

日本でその制度を導入することが、良いのかどうか、私にはわからない。


とにかく自民党は、最終の獲得票率を見て、

議席獲得数とかけ離れた得票しか得ていないのであれば、

新政権発足当初から、かなり気を引き締めて政権運営に臨む必要があるということを、

忘れてはらない。






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