デフレ脱却とは何なのか
デフレを知るために、名目成長と実質成長の意味を理解しよう。
給料が倍になったら2倍の経済成長です。
しかし、物価が2倍になったら実質の成長率はゼロ。
例えば、お給料で毎月大好きな饅頭を10個買っていた人がいるとする。
「もっと食べたいな」と思っているが、この人の給料では10個しか買えない。
そこで経済が成長してお給料が2倍になったとする。
しかし饅頭の値段も2倍になっていれば、饅頭を買える数は同じ10個。
名目成長は2倍になったが、饅頭を買える数、つまり実質成長はゼロなのです。
お給料が2倍になって、饅頭を15個買えるようになれば、
名目成長率2倍、実質成長率1・5倍となる。
饅頭を5個余分に買えるようになったのが実質成長です。
本当は給料が2倍になって、饅頭も20個買えるようになればいいのですが、
饅頭の値段まで上がると何が成長したのかよくわからないことになってしまいます。
そこで名目成長だけを見ていても、経済の実態がよくわからないので、
実質成長率という考え方があるのです。
つまり、名目成長と実質成長の差がインフレです。
実質成長率とは、経済が成長したことによって、
どれぐらいのインフレになったかということを確認するためにあるということです。
では、デフレのときに実質成長率ってどんな意味があるでしょうか。
例えば、経済は成長せず、給料は同じでも、饅頭が20個買えるようになりました。
名目成長はゼロですが、同じ給料で2倍の数の饅頭を買えるようになったので、
実質成長は2倍です。
一見問題ないように感じますが、饅頭の値段が半分になったということは、
饅頭屋さんの給料は半分になるのです。
今まで10個売っていた人は、20個売らなければ同じ給料にならない。
一方の饅頭を買っている人は嬉しいと思われるかもしれませんが、
年金生活者か生活保護受給者でないかぎり、普通はどこかで仕事をして、
某かモノやサービスを売っているわけです。
その値段も下がることから、饅頭を買う人の給料も下がり、
全体的に給料が下がっていきます。
モノの値段が下がって、給料も下がっていく。
これがデフレです。
デフレ下の実質成長率など意味がありません。
例え同じ給料で2倍の饅頭が買えるようになっても、
実質成長によって瞬間的にモノ買える量が増えただけで、
いずれは全体的に沈んでいくのです。
お金持ちの人はデフレになったら困るといいますが、その人はそれでよくても、
その子や孫の時代は、資産を食いつぶしてとんでもない時代になってしまいます。
普通はモノの値段が下がり続ければ、
いずれどこかで購買意欲が上がり、好景気に転換します。
また、低い金利であれば、そのような景気の反転を見越して、
企業が投資することによって、経済は上向くのですが、
現在の日本は長期的にデフレ状態で低迷しており、
そう簡単には上向く気配がありません。
そこで相当強力な刺激を与えて、世の中の流れを変えなくてはならないのではないか、
という考えのもと、進められようとしているのが、
第二次安倍内閣が考える「金融緩和」策となります。
基本的にやることは、一般銀行が保有している国債を
日本銀行(中央銀行)が買い上げ(買いオペ)、
銀行に新たな資金を流すことで、民間の資金流動を促すというものです。
ただし、そもそも民間企業がお金を借りないから、
銀行は国民から集まった預金の運用先に困り、国債を購入しているのだから、
単に日銀が一般銀行から国債を買い上げても、
民間企業がお金を借りない以上、資金の融資先が見つからず、
銀行は再び国債を買うことになって意味がないという意見もあります。
しかし、意味がないということにはなりません。
日銀から資金を提供された銀行が再び国債を買うということは、
政府が別の国債を発行できるということになるので、
新しい公共投資を行い、経済を刺激することができます。
その分のお金は実際に民間に流れることになります。
つまり、金融緩和と公共投資をセットで行うことによって、効果が発揮できるのです。
景気は文字通り「気」のものです。
今の状況では、民間企業は短期の景気対策では
すぐにお金を借りるということにはならないでしょう。
企業というのは5年先、10年先を見越してお金を借ります。
中長期的に経済が成長する見通しがなければ、
企業が積極的にお金を借りて投資することはありません。
政府によって、経済が好転するまで金融緩和、公共投資を続ける、
すなわちデフレ脱却まで、あらゆる経済的手立てを打つという強い決意を示すことによって、
民間企業はそれを見越して投資を行えるようになるのです。
日銀による金融緩和により通貨供給量が増え続けていけば、
いずれは必ず円安になり、株価が上がり、名目成長率が伸びることになります。
そうなれば、企業はお金を借りて投資しなければ損するので、
それを見越して設備投資を行うところが増えてきます。
冒頭の例えでいえば、饅頭の値段が上がるとなれば、
物価の安いとき、お金の価値が小さいときに、お金を借りて設備投資をしておけば、
後でお金を借りるより格段に得であるのは当たり前です。
すると、銀行は民間企業にお金を貸した方が得なので、国債を買う量が減ってきます。
国債を買う量が減少すると、長期金利は上昇します。
そうなると、次に政府は財政支出を減らし、
民間企業の活力をさらに伸ばすための構造改革が求められることになります。
その時には、必死になって抵抗する一部の既得権者と戦うことのできる
改革のリーダーが必要になるでしょう。
そのようになったら日本維新の会のような考え方の人も役割が増えると思います。
とりあえずは、これまで続いた経済低迷の流れを反転させることに
力を集中させるべきでしょう。
経済というのは所得と消費が均衡することによって成り立ちます。
誰かの消費は、誰かの所得。
私がレストランで食事して1万円を支払えば、レストランは1万円を得ることになる。
私の支出はレストランの収入。
ところが1万円を稼いだ人が、9千円を消費して、千円を貯蓄すると、
9千円は誰かの所得になりますが、千円は誰の所得にもならず、
その分だけ経済が停滞します。
日本経済というのは、その千円を企業が借りて設備投資を行い、
1万円すべてが回るという構造となっていました。
経済が成長するという前提があればこそ企業は投資することができます。
戦後、長期にわたり経済が成長するという土台があったからこそ、
企業が常に投資することで日本経済は回ってきました。
現在は二十年にわたり経済の成長が止まっているので、
企業は債務を抱えるのを恐れ、お金を使おうとしません。
これがデフレにつながっているのです。
先の例えでいえば、1万円の所得の中で貯蓄に回った千円について、
企業が借りなかった分を、政府が代わりに使うのが財政政策です。
止まっているところを動かす。
経済は成長するのだという土台を取り戻すのが金融緩和です。
20年間も成長の止まっている経済を動かすのは至難の業であり、
安倍政権の経済運営が成功するかどうかは不透明となります。
これ以上、財政出動による景気対策を行えば、
国家の財政が破綻するといわれたりしますが、
現在のままゼロ成長が続けば、
いずれにしても遅かれ早かれ債務の返済は不可能になります。
経済大国である今しかできないことはたくさんあります。
座して死を待つぐらいなら、今のうちにやれることはやっておくべきです。
景気は「気」であることから、安倍政権になって、経済に明るい空気が漂うことで、
某か展望が開けることに期待したいと思います。
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