世代を超えて継承していく環境づくりを
報道によると、自民・公明両党が富裕層を対象に所得税と相続税の
最高税率引き上げで合意した。
相続とは時間の縦軸を守るものであり、国柄を守る保守の基本となる。
そもそも相続税とは、そういった時間の縦軸を断絶させる左翼の発想だ。
安倍政権ではこういう動きについて慎重であってもらいたい。
どんぶり勘定で総資産に相続税を課すのではなく、
例えば不動産と金融資産を区別したらどうか。
少なくとも不動産について、自宅は非課税にするべきだ。
金融資産はともかく、動産、不動産については原則として相続税は不要である。
先祖代々から相続した動産、不動産は、第三者に譲渡したときにかぎり
相続財産譲渡税を課せばいい。
代々相続していく限りにおいて非課税とする。
相続税には基礎控除がある。
「5000万円+1000万円×相続人の数」が基礎控除となる。
例えば、父親が死んで、その財産を妻と子供2人が相続したとする。
この場合、8000万円までが基礎控除となり、
8000万円を超えたところから相続税が発生する。
1回の相続財産で8000万円あるというのはなかなかのもので、
普通の一般家庭では滅多にない。
したがって、日本で相続税を負担している人は4%程度で、
ほとんどの人は相続税とは無縁である。
自民・公明の合意は富裕層を対象にしたものだが、
私はむしろ残りの96%も相続税の課税対象にするべきだと思う。
すべての相続について課税対象として、
動産・不動産については、そのままの状態で相続すれば非課税とする。
大きなお屋敷が突然、10軒程度の建て売り住宅になるケースを
ちょくちょく見かけることがあるが、
あれは相続税の問題と、もう一つは財産分与の問題である。
現在の相続制度は兄弟均等相続なので、
不動産は売却してお金に換えないと遺産分割ができない。
それによる骨肉の相続争いも増加した。
戦前には家督相続制度があって、家督相続者が一括で相続することになっていた。
いまさら家督相続制度を復活させるというのは非現実的ではあるが、
相続争いを減らし、家を継承しやすくするための税制改革はできるのではないか。
基礎控除をなくして、基本的に全員を相続税の対象者とし、
動産・不動産をそのまま引き継いだときだけ非課税とする。
「相続財産譲渡税」は累進性強くして、高税率にする。
他の相続人は、相続不動産を売却して高い譲渡税を支払うより、
話し合いで金融資産などを相続した方が得になると考えやすくなるのではないか。
高い相続税を支払うのはもったいないので、
何とかうまく分けようと考える方向に力は働くのではないか。
そのような仕組みを考えることによって、
なるべく先祖代々から受け継ぐ遺産を、
そのまま次世代に引き継ぐことがやりやすくなる。
世代を超えて継承していくことを尊重する世の中をつくることが、
保守のめざすべき政治だと思う。
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