日本精神を非関税障壁に




昨年、写真フィルムの世界最大手でアメリカに本拠を置くコダックが破綻した。

デジタル写真技術の進歩による時代の流れだ。

コダックは世界のどの国でもシェア第1位だったが、

日本だけは富士フィルムに勝てなかった。

当初、これは関税に原因があると考えたが、

関税が撤廃されてもコダックの売り上げは変わらなかった。

かつての日本人は値段さえ安ければ取引をするような商売はしていなかった。

対面でしっかり営業する、信頼関係を築く相手と取引をした。

コダックはこれを非関税障壁だと考えたようだが、

日本には制度ではない目に見えない非関税障壁があった。


自動車産業を中心に起こった日米経済摩擦は平成まで続き、

関税の撤廃だけではどうにもならないアメリカは、日本に数値目標を迫るに至った。

これもまた目に見えない非関税障壁である。


TPPについて強く警戒して見ていくことは大切だが、

TPPによって日本が滅ぶと断言するのは言い過ぎだと思う。

確かにTPPに加盟すると医療看護や介護分野で

これからさらに外国人が入ってくる可能性がある。

ただ、日本人の若者がみな大学に進学し、

モノやカネを右から左に流すだけの仕事ばかりを好み、

きつい現場仕事を避ける傾向にあって、

日本人が外国人労働者の流入を防ぐも何もあったものではない。

他でもない私も町工場で仕事をしている職人こそ格好いいと気付いたのは、

三十を数える頃だ。

額に汗して働くことの美徳を日本人が思い出さないかぎり、

TPPに加盟しようがしまいが日本は滅びる方向に向かう。


安倍総理はTPPへの交渉参加を正式に表明するにあたり、

「アジア・太平洋の未来の繁栄を約束する枠組み」と位置づけ、

交渉参加を「国家百年の計」と説明した。

TPP交渉参加国のGDPを合計すると、日本とアメリカで90%を超え、

アジアからの貿易メリットは受け取れないという見解もある。

しかし、国際間の経済というのはゼロサムではない。

アジアを成長に導けば日本も成長できる。

お互いが成長していくことは可能である。

今のアジアは小さくても成長が期待される宝の山であることも事実。

しっかりした自由主義経済圏を確立すれば、中国への牽制にもなる。


安倍晋三総理のスローガン「日本を、取り戻す」とは、

形式だけの保護ではなく、内側からの日本精神の復古であると考える。

日本人が本来のあり方を取り戻すことこそ、最大、最強の非関税障壁となるだろう。

TPPに加盟しようがびくともしない日本をつくるのが安倍総理の使命である。







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