理論よりも現実路線のアベノミクス




円安になって庶民の生活が苦しくなっているとマスコミではいわれるが、

元々円のレートは1ドル100円以上で推移してきた。

異常な状態から当たり前に戻る過程というだけのこと。

だから円安で生活が苦しいというのはマスコミのマインドコントロールに等しい。

異常な状態を当たり前と思い込まされようとしているだけだ。

レートは通常に戻りつつあるので、あとは所得が伸びることを待つだけとなっている。


貿易収支が大幅赤字でないかぎり円安による輸入と輸出は"行って来い"となる。

輸入が割高になる分、輸出で儲かっているところも同じだけある。

現在はまだ民間の輸出の利益が吐き出されていないだけだ。

それを政府の責任にするのはちゃんちゃらおかしい。


円安、株高を実現し、安倍総理は経団連など経済3団体に賃金アップを求め、

大手企業はそれに応えた。

政府は今のところよくやっている。

大手企業がお金を使い始めたらそれが必ず経済全体に回る。

やれることからどんどん着手して、後は成り行きを見守る。

それがアベノミクス。


小幡績氏や池田信夫氏らはアベノミクスを理論的側面からだけ批判している。

ケインズ経済学を支持しない私としては、彼らの主張はわからなくもない。

しかし、私に言わせればそれらは机上の空論だ。

だから現在の円安・株高について偽薬が効いているとか

言い訳がましいことしか言えない。


デフレ脱却のため、インフレ誘導政策を採用することに

文句をつけたくなる気持ちもわかる。

経済というのは、好景気だからインフレになるのであって、

インフレだから好景気になるというのは本末が転倒している。

わかりやすく例えるなら、お金持ちになりたいと強く思っている人がいて、

お金持ちになるため、実際のお金持ちを何人も調べて研究した結果、

お金持ちに統一しているのが、みんな高級外車に乗っていることがわかった。

そこで自分も無理して高級外車を購入して、お金持ちになろうとするようなもの。

しかし、当然のことながら、高級外車に乗っているからお金持ちになるのではなく、

お金持ちだから高級外車に乗るのである。

本末が転倒している。


平時に考えれば本末が転倒しているのだが、

そもそも現在の経済状態が、経済理論として想定外の事態に陥っているから

こんなことになっている。

既存の理論が正しいならゼロ金利で企業に資金需要が生まれているし、

需要が供給を下回っているのなら、価格下落のあと需要が回復している。

長期金利が長らく1%を下回り、それでも民間企業に資金需要が生まれないなど

人類が経験したことのない事態に到達しているといえる。

この状態を何とかしようとすれば、平時の常識的な方法ではどうにもならない。

経済に劇的なショックを与えて、経済の流れを変えようとするのがアベノミクスであり、

巷で雰囲気が明るくなってきたというのは、まさに狙い通りの効果なのだ。


現在の経済状況は濃霧の中を航行する船のようなものだ。

じっとしていても食料が尽きて死を待つしかなく、

手探りで最良と思われる方法を選択しながら航行していくということだ。

このまま手をこまねいて円高とデフレが継続すれば、

日本は間違いなく凋落の運命が待ち受けているだろう。

歴史的に豊かな国が没落することは珍しいことではないし、

日本自身も中世に世界で有数の先進国から、

植民地にされることを恐れなければならないまで凋落した経験を持つ。


アベノミクスに理論的な批判をしている人は例外なくロクな代案を示していない。

ここは理論よりも現実と経験で前に進んでいくしかない。

現実的にはアベノミクスを実施する条件要素が揃いすぎている。

理論を現実に当てはめるのではなく、

現実を出発点にした理論を構築しようとしているのが

いわゆる“リフレ派”ということだろう。

批判するのは簡単だが、アベノミクスは未知の領域だからより有効な策がない以上、

静かに成り行きを見守るしかない、というのが私の立場だ。

いま安倍政権は、日本のできる限られた選択肢の中で

最良の方法を選択していると考えている。

ゴリ押しにでもGDPを名目成長させなければ日本の未来はない。

細かなことは後からいくらでも修正できる。


私は経済学の素人だが、このような異常な経済状態にまで陥ってしまうと、

存外そういった人間の直観力の方が正しかったりするものだ。

そして安倍政権もまた理論だけでなく、政治の力量、経験則に基づく直観力を活かし、

この濃霧と嵐の経済状況から脱出しようとしているのだと考えている。

理論(進歩主義、共産主義)よりも現実や経験を尊重してきたのが、

人類の歴史でもあるのだ。






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