天国は地獄



日本人に生まれただけで1等ジャンボ宝くじに当たったようなものだ、

という意見がある。

私はそうは思わない。

確かにアフリカで飢餓に苦しんでいる人からすると日本は天国だ。

しかし、日本に生まれて絶望している人はいくらでもいる。

虐待を受けている子供や経済苦で破産した人はもちろんだが、

三食困らず普通に暮らしていても人生に絶望している人は少なくない。

アフリカの貧しい人から見れば

夢のような国で生きる意味を見失って自殺する人が後を絶たない。


すべての人間にとって幸福と不幸は平等に訪れるのかもしれない。

エリートサラリーマンが地位を失って絶望し、死を選択する場合と、

普通の一般人が病気により死ぬ場合と、どちらが辛いのか。

そんなものはすべて主観であって、どちらがどうということではない。

アフリカ人にとっての理想が、日本人にとって絶望となる。

今の状況に不満のある人は、その不満の要因が取り除かれたとしても、

また次の不満が発生する。

今の現状を満足いくものにさせられない人が、いくら上を望んでも、

それが実現したときには満足いくものにはならないのだ。

満足のいく人生を送るかどうかは本人の主観次第となる。

その意味においてすべての人はプラスとマイナスを同じだけ持っていると考えられる。


先日、陰陽座というヘヴィーメタルバンドのライブを観に行ったとき、

ボーカルの瞬火(マタタビ)さんが面白いことを言ってた。


=我々のやっていることは世の中にとって必要のないこと。

音楽がなくても死ぬことはない。

ただ人間死ななかったらそれでいいのか。

そうではない。=


そのとおりだと思う。

生物的に死ななかったらいいというのは、

ただ死ぬのを待っているだけと言っていい。

それは死んでいるのと同じだ。

社会福祉が充実したら人間はハッピーになるというのは幻想である。

人間は死ななかったらいいというわけではない。

高福祉国家でも自殺者は多い。

生物的な生命が生きながらえるだけが人生ではない。

三度の食事に困らない施設の中で一生を過ごすのは耐えられない。

この世の天国とは同時に地獄なのだ。

人間とは難しい生き物である。


保守派も革新派も理想を描けばみんな同じ。

この世に理想など存在しないのだ。

実現しようとした理想が地獄となることもある。

それが共産主義国家だ。

人間の頭で世の中を作ろうとするな。

しかし、放っておいたらサバンナと同じ。

何でもほどほど。

社会福祉もほどほど、自由経済もほどほど。

ほどほどにうまくいくように洗練されたのが、伝統ある社会である。

日本は単なる経済大国というだけなら天国であり地獄。

幸福とは主観である。

世の中に絶望したら、この言葉を思い出そう。


「おもしろきこともなき世をおもしろく」(高杉晋作)


世界で最も歴史のある日本を楽しむ生き方をオススメする。






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