パクス・アメリカーナの終焉と日本の自立



かつてジョージ・W・ブッシュが再選を決めた大統領選挙でのこと。

対立候補を選ぶ民主党予備選の世論調査で

最も人気の高かったハワード・ディーンが、

予備選の序盤戦で「ヤー!」と雄叫びをあげただけで、

「冷静さを欠く」、「大統領としてふさわしくない」と判断され、

予備選から撤退を余儀なくされた場面を思い出すと、

大統領選挙も随分と変わったと思う。

もっと言うと、ブッシュがその4年前に、大統領に当選したことそのものが、

すでに大統領選挙の変遷を感じ取ったものだ。


私は小学生の時にレーガン大統領に興味を持ち、

戦略防衛構想(SDI)について勉強するという変わった少年であった。

なので同年代の中ではアメリカ政治ウオッチャー歴は長いのだ。

その時代から考えるとトランプが大統領になるなんてあり得ないことだった。

アメリカの大統領は一国のリーダーにとどまらず、

世界の安全に影響を及ぼすと考えられていた。

その発想で頭が止まっている私はトランプが大統領になるなんて

まずないだろうと思っていたのだが、

そんな既成概念にとらわれず、柔軟な発想のできる人は

トランプ大統領の実現を冷静かつ的確に予測することができたのだろう。


余談だが、私は子供の頃にレーガン大統領の政治に興味を持ったことで、

いまの自分の思想にも影響を与えている部分もあると思っている。

小学生のときにソビエト連邦と社会主義のいかがわしさを知った。

中高生の時は日教組教育全盛時代だったが、

共産主義を賛美する教師に違和感を持った。

レーガン大統領に興味を持った当時、

米ソが激突する第三次世界大戦の可能性は少なからず現実的な問題として

よく語られた時代で、そのシミュレーションをした書籍を何冊も読んだが、

ソ連有利のものが多かった。

その内容はだいたいこういうものだ。

ソ連がまずICBM(大陸間弾道ミサイル)で

局地的な先制核攻撃をしかけると同時に、

衛星破壊兵器でアメリカの通信衛星を破壊し、

SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)を使えなくする。

すると、アメリカが全面核戦争を躊躇して引き下がる、というものだ。

自分なりに戦力分析をしたらそんなことにはならないはずだと考え、

不思議に思っていたが、

いま思えば日本の左傾化、共産主義へのシンパシーが強かったのだろう。


話を戻すと、アメリカが世界秩序に責任を負う立場になったのは

第二次世界大戦後からのこと。

いわゆるパクス・アメリカーナである。

それまではモンロー主義(孤立主義、正確には欧州に対する不介入)を貫いており、

自らが提唱した国際連盟の加盟についても国民が許さず断念したほどだった。

トランプは強いアメリカを強調するが、

それは第二次世界大戦前のアメリカのことを言っているのではないだろうか。

TPPは国際連盟の再来となるかもしれない。


アメリカが世界の警察という時代は終焉を迎え、

これから比較第1位国の路線がより鮮明になるだろう。

いやオバマ政権からすでにそうなりつつある。

今後はそれに対応した日本の姿勢が求められてくる。

その一つが憲法改正となる。

アメリカとの時代に沿った目指すべき同盟関係の手本は、

かつての日英同盟ではないだろうか。

これからまさに日本の自立が問われるのだ。






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