TPPは日本を弱体化させるものではなかった



TPPは日本の富を吸い上げるアメリカの策略だ、という主張をよく耳にしたが、

当のアメリカでは大統領就任予定のトランプ氏が国益を考えて

いち早く離脱を表明した。

これまでのTPP反対論は何だったのか、ということになった。

日本にとってTPPは本当に不利益なのかと疑問に思っていたが、

保守系の中では圧倒的に反対派が多く、私は専門外だったこともあり、

あまり口にはしてこなかった。

ところが、TPPは国を滅ぼすと言って断固反対していた専門家・言論人が、

トランプ氏の離脱証明をのんきに歓迎する態度を示している。

トランプ氏がアメリカにとって利益にはならないと言い離脱を表明したことは、

TPPは日本にとってそんなに危ないものでもなかったということではないのか。

専門家なら根拠のない陰謀論で不安を煽ってたことを反省すべきだと思う。


それについては「TPPは日本対アメリカという構図ではなく、

グローバル派対ナショナリズム派という構図なので、

トランプがナショナリズム派としてTPPをやらないことは

両国にとって良いことなのだ」ということらしいが、

これまでさんざんアメリカの年次改革要望書などを持ち出して、

TPPを批判していたことを思い出すと、その説明は少々苦しいように感じる。

トランプ氏があっさりTPP離脱を表明したことで、

拍子抜けしたところもあるだろう。


私はTPPに反対していた人たちは、真剣に国を憂う良い人たちだと思っている。

だから批判したくない。

ただし、経済を専門としている人たちは別だ。

専門外の一読者の評価として言えば、

TPP反対派に対する信用は落ちたと言わざるをえない。


ところで、トランプ氏は強いアメリカの復活を提唱しているが、

彼の考える強いアメリカとは、

第二次世界大戦前のアメリカのことだということをここでも書いた。

TPP離脱そして二国間交渉重視ということは、

ブロック経済化を意味するのかもしれない。

まさしく第二次世界大戦前の世界だ。

だとすれば、日本の保守派はトランプ氏の大統領当選を歓迎しているが、

そんな単純な話ではないかもしれない。

経済を中心に難しい外交政策を迫られることなる可能性もある。

トランプ氏はTPPから離脱し、NAFTAなどを見直し、

新たな二国間交渉を行っていくとしているが、

はたしてそれでアメリカの雇用は改善することになるだろうか。


一番恐れることは、むしろアメリカ経済がさらに凋落し、

その影響を日本も受けて、世界同時不況に陥ることだ。

そうなると、まさしく世界は弱肉強食の帝国主義時代に逆戻りし、

そのとき日米同盟が脆弱化しているとなると、

日本は相当しっかりしなければ、諸外国のえじきになるか、

あるいは間違った方向に突き進んでいくことになるかもしれない。

トランプ大統領就任というのは、

国際政治が新たなステージに入ったことを知らせるホイッスルとなるか。

当分、国際政治から目が離せないことになりそうだ。






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