ヒトラーから世界を救った存在とは



映画「ウィンストン・チャーチル〜ヒトラーから世界を救った男」を見た。

映画館に足を運ぶきっかけは日本人の辻一弘さんが

アカデミー賞のメイクアップ部門を受賞したことだったが、

内容もそれなりに面白かった。

議論好きな男性向けの熱い映画。


第二次世界大戦が舞台というよりも、

その前段階で弱腰のチェンバレン首相のあとを引き継いだチャーチルが、

妥協せずにドイツとの決戦に向けイギリスをまとめていくまでの話。

陸戦では当初、イギリス、フランスをはじめ、

オランダ、ベルギー、ソ連までドイツ軍に歯が立たなかったわけだが、

仮にこの時まで日英同盟が生きていて、集団的自衛権の発動により、

日本が連合艦隊と陸軍を派遣して救援に向かった場合、

どうなっていただろうかと、映画を見ていてふと思った。


連合艦隊の機動部隊の実力だとドーバー海峡周辺の制海権と

イギリス、フランスの制空権は確保できただろうし、

陸海軍の上陸によりフランスからドイツ軍を追い出すことも

できたのではないだろうか。

その場合、“世界を救った”のは日本ということになる。

まあ、妄想の話で、実際は、日本はドイツと同盟を結んだ。


第二次世界大戦で主に戦った各勢力の体制を整理すると、

・社会主義体制・・・ソ連、ドイツ、中国共産党、イタリア(一応)

・自由主義体制・・・イギリス、フランス、アメリカ、オランダ、日本、中華民国(一応)


実際に戦った陣営は、

・連合国陣営・・・アメリカ、イギリス、フランス、オランダ、

          ソ連、中華民国、中国共産党

・同盟国陣営・・・ドイツ、日本、イタリア


戦後の東西冷戦体制

・西側陣営(自由主義)・・・アメリカ、イギリス、フランス、西ドイツ、イタリア、

                日本、中華民国(台湾)

・東側陣営(共産主義)・・・ソ連、東ドイツ、旧ドイツ関係諸国、中国共産党


それでは、第二次世界大戦で結果的に誰が得をしたかを考えてみる。

【ソ連】

元々一国だった共産主義勢力の拡大に大成功。

共産主義陣営のリーダーになる。


【中国共産党】

中華民国(国民党)との内戦で風前の灯火だったところ、

第二次世界大戦で国民党軍が日本軍との戦いで疲弊し、

戦後、再び起こった内戦で勝利し、中国全土を掌握。


【アメリカ】

パクスアメリカーナと呼ばれる世界のリーダーになったが、

莫大な労力と出費をかけて強大な共産主義勢力と対峙することを強いられた。


【イギリス】

ドイツとの戦争で最終的に勝利するも、国力は疲弊した上、

日本との戦争でアジアの植民地をすべて失った。

パクスブリタニカの地位から陥落。


【フランス】

ドイツ軍に降伏してパリを占領されたうえ、

日本との戦争でアジアの植民地をすべて失った。

最終的に勝利しても国土はボロボロ。


【オランダ】

ドイツに占領されたうえ、日本との戦争でアジアの植民地を失う。

最終的に勝利しても国土はボロボロ。


【イタリア】

戦争に敗れて国土はボロボロ。


【日本】

欧州各国がもつアジアの植民地を解放したが、アメリカとの戦争に敗れ、

国土はボロボロ。

原爆まで落とされ、連合国軍に占領される。


【中華民国】

第二次世界大戦後、毛沢東の中国共産党との内戦に敗れ、台湾に逃亡。


このように第二次世界大戦で大きな利益を手にしたのは共産主義勢力のみ。

自由主義体制の日本は、当初からソ連を最も警戒していたが、

モンロー主義(一国平和主義)を貫いていたアメリカは国際政治音痴となり、

共産主義に対してまったく無警戒。

ソ連やドイツを野放しにして、日本にばかり圧力をかける。

ヨーロッパではソ連を最も警戒するも、

ドイツを野放しにして、ヨーロッパを席巻させてしまう。

結果、モスクワの冬将軍のおかけで首の皮一枚つながったソ連の反撃により

助けられるという結末。

アメリカに追い込まれた日本は、ドイツ、イタリアと同盟し、

ソ連とは不可侵条約を結んで、

アメリカ、イギリス、フランス、オランダと戦争するが大敗北を喫する。

こう見ると、第二次世界大戦前における世界の癌はアメリカではないか。

アメリカのせいで変な構図での戦争となってしまい、

日本は自由主義国同士の戦争をやってしまう。

アメリカ以外の自由主義国は、勝敗に関係なくボロボロになり、

共産主義勢力の拡大を許してしまう。

戦後、自由主義陣営を守るために、アメリカが軍備の世界展開をやったのは、

ある意味自己責任でもある。

しかし、自己責任はソ連が崩壊する冷戦終結までで、

冷戦崩壊後も同じように世界に介入し続けたので

同時多発テロという手痛いしっぺ返しを受けることになった。


歴史の教訓とは何か。

侵略戦争をやった、誤った戦争をやった、などという

視野の狭いくだらない反省などは意味がなく、

それぞれが方向性を見誤ったことの反省を活かすことが、

正しい歴史の教訓と言えるのではないか。






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