沖縄基地問題の解決策は本土と沖縄の共有意識



沖縄県は地方自治体なので、地方自治の範囲のことしかできず、

安全保障など国政にかかわる問題は国会で決めることになる。

沖縄の民意を国政に伝えるのは沖縄県知事の役割ではなく、

沖縄県選出の国会議員の仕事。


しかし、沖縄県選出の国会議員をすべて普天間基地移設反対派にしても、

国全体で見れば少数派なので、基地移設を止めることはできない。

地域住民にとって、ここが議会制民主主義のジレンマでもあるだろう。


ただし、わが国の国会議員の大多数が基地移設反対派となった場合、

基地移設は阻止できるのか。

その答えはもうわかっている。

政権交代ブームで国会のおよそ3分の2の議席を獲得した民主党政権で、

「最低でも県外」と言って総理大臣になった鳩山由紀夫は、

アメリカ大統領に対して「Trust Me」とまで言いながら、

代替案を示すことができず、

結局、辺野古への移設を容認することになった。

現状の日米安全保障条約を維持したまま、普天間基地移設をやろうとすれば、

誰がやっても同じ結果になることは、もうわかっているのだ。


では、日米安保の破棄を訴えて選挙をするか。

安保破棄を言わずとも、沖縄県からの基地全廃を公約に掲げて

沖縄県知事選挙を戦ったらどうなるか。

おそらく当選することはないだろう。

沖縄県民はそこまで愚かではない。


では、沖縄県知事選挙の本質は何なのか。

今回の普天間基地移転先となる辺野古にはもともと米軍基地は存在する。

それを海上に拡張して新しいヘリポートを増設するだけのこと。

基地を増やすわけではなく、米軍基地内の移転に過ぎない。

たったこれだけのことになぜ賛成・反対で熱狂しているのか。


基地移設反対派の人たちは、何を望んでいるのか。

辺野古への移設を中止して、危険な普天間基地をそのまま使い続けるのか。

そうではなく、辺野古への基地移設を阻止し、普天間の基地も撤廃させる。

ただし、日米安保を維持したまま、そんな都合の良い話は進まない。

必ず日米関係はぎくしゃくするだろう。

普通の県民ではなく、基地移設反対派の活動家はそれを狙っているのだ。

一方で、基地移設反対派の候補に投票した普通の沖縄県民は、

沖縄から米軍基地が減ってほしいと素朴に思っているだけ。


そもそも民主党政権が誕生していなければ、

普天間基地移設問題はとっくに終わっていた話である。

基地周辺でのヘリコプターの墜落事故などもあり、

住宅地の中にある普天間基地が危険であるということで、

政府が地道に交渉を続けて準備を進め、

普天間から辺野古への基地移設の地元合意を取りつけた。

ところが民主党政権となり、鳩山首相がそれを白紙に戻し、

「最低でも県外」と言ったばかりに、地道な合意はひっくり返された。

沖縄県民はその言葉に期待した。

結果的に鳩山首相は普天間基地の国外はもちろん県外移設も断念し、

辺野古への移設を認めるしかなかった。

鳩山首相は退陣し、その後の民主党政権は失態続きで国民からの信用を失い、

政権から陥落して、今の惨憺たる状況に至る。

しかし、自民党政権に戻って予定通り辺野古への移設を進めようとしても、

沖縄県民は納得できない。

総理大臣が一度は「最低でも県外」と言ったのだから、

その通りにしてもらわないと困る。

総理大臣が交代したのは政局の事情であり、

誰が総理大臣であろうとも、一国の総理がした約束は軽くはないということだ。

沖縄県民が納得しないのは当たり前の話である。


では、どうすればいいのか。

辺野古への移設は、地元から強く反対されても予定通り進めるしかない。

しかし、半永久的に沖縄に米軍基地が存在するなどということは、

沖縄県民に限らず、日本人として認められるはずがない。

それについて、本土の人間と沖縄県民が共有する必要がある。

憲法を改正して米軍に依存しない国防力を備えるか、

現在のように国防の一部を米軍に依存するか、

アメリカと敵対し国防力も高めず危険な状態にするか。

これらについて日本人が真剣に考える時期に来ているのだ。


日本から米軍基地がすべて撤去されても、日米同盟は成り立つ。

東アジアの安全保障は日本に任せても大丈夫だと

アメリカに思わせることができるなら、それが可能である。

欧州と同じ程度まで基地のあり方は見直せるはずだ。

ただし、欧州と違ってアジアは中国、北朝鮮などの不安定要素があるので、

それを実現するためには今よりも倍以上の国防予算が必要になるだろう。

しかし、現在でもたかだかGDP比1%程度のもので、

それが2〜3%になっても大したことではなく、

世界的にも何ら珍しいことではない。

この国はもっとわけのわからない予算をいっぱい使っている。


普通の沖縄県民はなぜ怒っているのか。

それは沖縄だけが犠牲を払い、基地問題を一手に引き受けているからだ。

押し付けられていると思っている。

彼らは反日左翼のようにイデオロギーで

米軍をすべて沖縄から叩き出せとは思っていない。

何も考えずに、当たり前のように基地問題を沖縄に押し付ける現状に

憤りを感じているのだ。

本土の人間はまずそのことを理解し、沖縄に心を向けなくてはいけない。

そして、沖縄の基地負担は永遠ではないという気持ちを共有できるか。

それができなければ沖縄県民の心は離れていくだろう。


これまで日本人は日米安保に依存し、国防安全保障を受け身で考えてきた。

しかし、これからは自主的に国防について考えていかなくてはいけない。

そのようにすることこそが、沖縄県民が納得できる唯一の道ではないか。






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