永続の智恵は伝統にあり

 


少し前に牛丼チェーンの「すき家」で強盗が続出しているというニュースを見ました。

24時間営業の牛丼チェーンで発生している強盗事件の8割以上が「すき家」だという。

深夜の時間帯は店員が1人なので、狙われやすいとのこと。

「すき家」の経営者がこれを放置したのは、強盗対策に人件費を使うより、

強盗にあった場合のコストが安いということでしょう。

そのしわ寄せは店員の安全にいく。

 

これはマイケル・サンデル教授のハーバード白熱教室の材料になりそうな問題です。

 

70年代、フォードで開発された車から重大な欠陥が見つかったが、

経営陣は対処しなかった。

全車リコールして修理するより、事故が起こったときに賠償した方がコストが安いということでした。

人の命より、お金を重視したのです。

数字上の企業経営としては正しくとも、倫理的には大問題となりました。

 

サンデル教授の授業は「最大多数の最大幸福」という功利主義についてまず問題提起し、

議論を公共性論に持ち込もうとする流れです。

一大旋風を巻き起こした講義ですが、保守系の知識人はほとんどスルー。

公共性と倫理を関連づけて持ち出すので、敵か味方かわからないということもあるでしょう。

 

答えは簡単。

保守主義にとっては相反する考え方です。

白い共産主義といわれるフランクフルト学派の系統となります。

マルクスやレーニンというと左翼だとわかりますが、

フランクフルト学派のハーバーマスといったらわからないのが現実。

彼らの公共性論や共同体論は、理性主義に基づくものであり、

左翼である単なる設計主義と同じです。

国柄が秩序を形成しているという観点がまったくありません。

 

美しい国柄、美徳というものは、理性では構築できません。

長い時間をかけるしかないのです。

人間の知性では及ばないのが、伝統であり、先人たちの叡智となります。

 

「すき家」が正しいか、間違っているかを判断するのは簡単。

日本人は、使用人でも家族のように扱ってきた。

従業員をモノとしか考えない企業経営者は日本人ではない。

西洋では家畜などの動物は人間のために存在する生け贄に過ぎず、

人間すら奴隷としてきた。

日本人は牛や馬も家族のように大切にしたし、奴隷など存在しなかった。

丁稚奉公も人間として大切に扱われた。

 

利潤だけを追求する世の中は必ず崩壊する。

歴史家アーノルド・トインビーによると、

歴史上、滅びたすべての文明に共通するのは「富の偏り」だそうです。

利潤だけを追求する人たちが、どんどん少数派になっていき、

いずれ多数派により滅ぼされる。

現状のマネーゲームでは、どんどん少数者が世界の富を支配する構造になっていくので、

いずれ体制がひっくりかえされることになるかもしれません。

実体と貨幣のバランスの関係がかけ離れすぎて、

虚構となっている貨幣を、ごく一部の人たちがコントロールする仕組みに限界がおとずれるということです。

 

本来の日本人による経営哲学、人間観は、繁栄を永続させる智恵でもある。

短期的な利潤を追求する世の中は続かない。

日本人の本来の姿である長期的視点を取り戻さない限り、

今の繁栄は続けることができないでしょう。








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