誰も書かなかった「反日」地方紙の正体〜を読む
(産経新聞出版)
ある年の暮れのこと、私が某市役所の広報担当の課長を訪ねたとき、
その人が一生懸命になって手帳を睨んでいた。
「何をそんなに熱心に考え込んでいるのですか?」と尋ねてみると、
「年末年始は役所が休みになるので、
その間、○○新聞の記者に提供する取材ネタを確保しているのです」
と返答された。
地方紙には、地元のあちこちを取材に訪れた記事がたくさん掲載されていますが、
そのネタ元を教えているのは、役所の広報担当課であることがよくあります。
例えば、「どこどこにこんな活動をしてる人がいる」ということを
役所の人が記者に教えて、記者が現地に向かうという構造です。
私が訪ねた広報担当課長も、記者に提供する取材ネタを確保していたのです。
つまり地方紙の記者は、取材に駆けめぐっているのではなく、
役所で口を開けてじっと待っている。
だから、役所が休みに入る期間は非常に困るのです。
朝日、読売、毎日、産経などの全国紙は、
地方では中心となる県庁所在地の役所では活動していますが、
中堅都市以下になると、ほとんど顔を出しません。
記者クラブには席が用意されていても、そこにいるのは地方紙の記者だけとなります。
地方紙というのは、各都道府県にだいたい1社しかありませんので、
中堅都市以下になると、特定の新聞社の独壇場となります。
地方の行政官や地元団体は、地方紙の記者を持ち上げ、
一つの既得権のようになっています。
役所は地元紙に嫌なことを書かれたくないので重宝し、
地元団体もPRしてもらいたいので持ち上げる。
こういう環境で勘違いしてくる記者が増えてくるのです。
市役所の記者室は、役所が用意したもので、電話やFAXも提供されている。
ある市役所では、職員が少し記者室の模様替えをやっただけで、
激怒している地方紙の記者を見たことがあります。
私がどうしても急にFAXを使わなくてはならなくなったとき、
役所の広報課の許可をとって、記者室のFAXを使わせてもらっていたら、
地方紙の記者から「何で勝手に使っているのだ」と文句を言われたこともあります。
もちろん彼らは記者室の設備について一円のお金も出していません。
またある時には、市役所前の駐車場が満車だったので、
係員から少し離れた第二駐車場に回ってくれと言われただけで、
腹を立てている記者もいました。
完全に特権意識となっているのです。
このほど産経新聞出版から、そんな地方紙の実態を明らかにした
『誰も書かなかった「反日」地方紙の正体』という本が出版されました。
中身を読んでみると、非常に納得できる内容のほか、
私も知らない事実が続々と記されており、何度も驚かされました。
例えば、地方紙の社説は、
自分で考えて書かれたものではないということは常識であるらしく、
異なる複数の新聞社で、まったく同じ内容の社説が、当たり前のようにあるという。
酷い場合は、100%同じ文章もあります。
これを書かせているのは、どのような仕組みになっているのか、
本書では詳しく記されています。
私の住んでいる地域の地元紙も、
反日地方紙として本書で詳しく指摘されていますが、かなり悪質な新聞です。
「9条の会」などの活動や、それを支持する人たちのことは、
やたらと持ち上げて紹介します。
地方紙はその地域以外の人の目にはあまり触れないので、
朝日新聞や毎日新聞より反日的で酷い場合が多い。
本書の冒頭で地方紙の劣悪さの実情を明らかにした八木秀次氏の分析は、
非常に辛辣だったし、
渡部昇一氏や日下公人氏の論考もおもしろかった。
また、新聞業界という内側から見た産経新聞論説委員や編集委員の方々による地方紙分析は、
これまで同業批判があまりなかったマスメディアの世界では、非常に新鮮であり、
かつ地方紙のデタラメさを知る上で、非常に勉強になりました。
私は常に購読した本は、どんな本であれ、とりあえず本棚にしまいますが、
“保存グループ”と、“それほどでもないグループ”に分類しています。
この本は、間違いなく保存版の一冊だと思ったので、是非みなさんにお奨めしたいと思います。
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