21世紀は“本物の力”の時代

 


今回は中学生にも語れる経済の基本のまた基本について

お話ししたいと思います。

 

赤字国債が将来世代へのつけ回しではないということは、

最近ではよく理解されるようになってきました。

国内で国債を調達しているということは、

負担しているのは間違いなく現在の人たちです。

国債を購入しているのは金融機関ですが、

銀行に預金している国民は、間接的に国債を取得していることになります。

つまり、将来世代は税金で国の借金を返済させられても、

国の借金の相手は国民ですから、結果的に税金は国民に返ってくることになる。

国債は政府にとっては負債であっても、国民にとっては資産となるのです。

 

将来世代に負担を残さないために増税するとなれば、

子孫は借金返済のための税金をとられないとしても、

親世代から引き継ぐ資産も減少しているので結果的には同じです。

 

どちらでも同じなのであれば、掛け捨て保険のようにお金を持っていかれるよりも、

国債という資産を子孫に残してやる方が、まだ良いように思う。

 

ちなみに通貨を大量に発行すると、貨幣の価値が下がりますので、

現在世代の人たちがその減少分を負担することになります。

貯蓄の価値が下がるのですから、これも原理的に同じです。

 

この3つは、原理は同じでも、国債を発行する場合と、通貨を発行する場合は、

市場で出回る資金量が増えることになりますから、

経済の活性化にとってはプラスとなります。

しかし、増税だけは経済にとって何のプラス要素もありません。

 

国債発行による公共投資は確実に経済にとってプラスとなります。

よくゼネコンだけ儲かるという人がいますが、それはまったく間違いです。

公共事業で雇用が創出されると、その労働者は物を買ったり、ジュースやお酒を飲んだり、

食事をしたりするわけです。

労働者が食事をすれば、食堂の人の所得が増えるわけで、

食堂の人はまたどこかで何かを買うと、次のお店で所得が増えます。

これが経済の乗数効果というものです。

 

次に通貨を発行すると、貨幣価値が下がりますので、お金が動きます。

お金の価値が下がるということは、企業の負債は縮小されることになるので、

民間の設備投資がやりやすくなります。

設備投資は、乗数効果の原理で、次の人の所得を生みます。

一般国民はお金の価値が下がると、

貯蓄をそのままにしておくと価値が減少してしまうということで、

お金をたくさん持っている人は、

不動産を購入したり、株式に投資したりするなど、お金を使おうとします。

するとまた企業の資金繰りが良くなり、経済にとってはプラスとなります。

また、お金の価値が下がると、

輸出企業にとって大幅利益が出ることになりますから、多くの企業が息を吹き返すでしょう。

経済が活性化し、輸出企業も好調となれば、

また必然的にお金の価値は高まっていきます。

通貨を発行して、お金の価値が下がった分を取り返すこともできるでしょう。

その結果、日本は単純にお金の量が増えただけとなり、富を得たことになります。

 

こう考えると、政府が今やる経済政策というのは、極めてシンプルであることは明確であり、

国債発行(財政政策)と通貨の発行(量的緩和)を合わせ技として実行することです。

なぜこんな簡単なことが実行できないのでしょうか。

 

日本は今、欧米が勝手につくったルールのなかで、貧乏くじを引かされ続けているのです。

ぼちぼちお金や経済の概念を見直す時期に来ているのではないでしょうか。

20世紀は欧米中心の帝国主義、資本主義経済システムが主流となりましたが、

21世紀は、日本発の経済システム、いや、社会のシステムが世界をリードする時代となるべきです。

お金というものの本質は、実在しない“幻想”に過ぎません。

みんながそれに価値があると信じているから、成立しているに過ぎないのです。

そこに絶対的価値は存在しません。

21世紀は“本物の力”が主流になるべきです。

  

日本は工業だけではありません。

ミシュランが認める世界一の美食の国であるし、

世界では考えられないサービスがいたるところに存在します。

宅配便の時間指定ができるという話を聞けば、先進国の人間でも驚く。

これは日本が世界最古の国であり、

その悠久の時間から作り出された国柄があって成し遂げられることでもあります。

日本の“本物の力”を支えているのは、まさに国柄です。

勤勉や努力、思いやり、人を信じる心、などが

日本の高い技術力、生産力、サービス力をつくっています。

 

二宮尊徳は「増減は器かたむく水と見よ あちらに増せばこちらが減るなり」と述べ、

一方が儲かり、他方が損をするような経済活動は、水の入った器の傾きと同じだと考えた。

一方が得をして、一方が損をするようなことは、オセロと同じゼロ・サムゲームであり、

そんなことを続けていけば、パイ(富)の奪い合いになり、いずれ社会は荒廃するだけだと。

 

高い技術力やサービス力などの“本物の力”は、消費者を満足させ、ゼロ・サムにはならない。

満足した消費者もまた“本物の力”により富を生み出し、

その流れがまた無尽蔵の富を生み出していく。

 

今、円が高騰しているのは、

世界の人たちは日本に“本物の力”が集中していることを知っているからです。

世界の信用が崩れたとき、世界中のお金は“本物の力”を頼って集まってくるのです。

ですから、日本がもっと通貨を発行しようが、国債を発行しようが、

“本物の力”が存在する以上、揺らぐことはありません。

 

現在の日本の繁栄は、二千年以上の蓄積の賜物です。

日本発の新しい時代をむかえるにあたり、やるべきことはただ一つ。

“日本”を好きになり、大切にすることです。

そして、世界最古の国に生まれた人間として、

世界を堂々と渡り歩き、誇りある日本人として堂々と決断していけばいい。

時間が経つにつれ、世界は徐々に日本についてくることになるでしょう。




もどる