女性宮家創設のヒアリングについて
女性宮家創設への検討を進める政府が
「皇室制度に関する有識者ヒアリング」の初会合を首相官邸で行いました。
意見陳述したのは今谷明氏(帝京大特任教授)、田原総一朗氏です。
二人とも女性宮家については賛成の立場を表明しましたが、
その内容について分析してみたいと思います。
今谷氏は女性宮家について
「幕末以前にも例があり、女性の方を宮家に立てることはありうべきことだ」と述べるが、
過去に一度、女性が宮家の当主になられたのは、生涯独身の女性であって、
皇室の歴史において夫のいる女性が主となったという例は一度もありません。
父子一系という大原則が徹底されていたからです。
田原総一朗氏は女性宮家について
「創設に基本的に賛成だ。
当主の配偶者の男性は皇族に準ずる身分とし、子供も宮家でいい。
宮家の対象は小規模にするべきだ。
旧宮家の復活に反対ではないが、
だからといって女性宮家はいらない、という意見は正しくない。
(不必要との意見は)女性差別だ。
男女共同参画社会になり、時代が変わったわけだから、
女性宮家を認めないのはアナクロニズムだ。」
と述べました。
一方で皇位継承については
「江戸時代以前は女性天皇はあった。
認めるのがむしろ伝統であり、認めないのは伝統に反する。
女系天皇の伝統はない。」
と述べる。
田原氏の主張をまとめると、女系天皇には反対だが、
男女平等の観点から女性宮家はどんどん認めるべきだということになります。
男女平等と言うからには、男系男子の皇族が増えたとしても、
「女性宮家は創設するべきだ」と主張しなければおかしいです。
そして、その子供も宮家でいいと田原氏は言う。
これは皇位継承権のない皇族がどんどん増えていって、
その人たちを税金で養っていくことになります。
何の意味があるのでしょうか、理解に苦しみます。
このような認識で有識者としてヒヤリングを受けているのが現実なのです。
田原氏は「女性宮家反対」の意見について、女性差別だと述べるが、
我々が反対する理由は、厳密にいうと女性宮家そのものではなく、
一般人の夫、その子供が皇族になることなので、
女性差別とはまったく関係がありません。
結局、論点は女系の可否であって、皇位継承の話と切り離すことなどできないのに、
女性宮家だけ賛成などという意見はまやかしであり、自己矛盾に陥ってしまうのです。
また、田原氏は、江戸時代以前は女性天皇があったのだから、
認めないのは伝統に反する、と述べるが、
かつての女帝は全員、男系男子への中継ぎでした。
皇統は男系による継承が大原則だったので、
次世代に受け継ぐことができるのは、当然に男系男子となることから、
女帝はその間の中継ぎとなり、天皇の未亡人か生涯未婚だったのです。
譲位の制度がない現在において、中継ぎの天皇は必要性がありません。
伝統を知らないのは田原氏なのです。
田原氏は女性宮家の夫について「皇族に準ずる」とし、
子の身分も「一代限りでなく子供も宮家でよい」と主張しました。
そもそも「女性宮家の夫も皇族に」という理屈は、
夫が商売か何かしていたら、結果的に妻が皇族ということで商売に利することもあって、
皇室が間接的に民間経営に関与することにもなりかねないという問題があるからです。
事業だけの問題ではなく、営業マンであっても、当然に営業成績にも影響するでしょう。
両親が皇族で子供が皇族でないならば、家族が分断されて、様々な問題が予想されるから、
当然に「子供も皇族に」ということになってくるので、田原氏の見解も自然な成り行きです。
子供に苗字があり一般戸籍があって、両親にはそれがないなどというのは困難になります。
子供も皇族ということになれば、その子供が就職する時期になればどうなるでしょうか。
商売などをはじめたらこれまた大変です。
子供も生涯皇族の身分を取得すれば、その子供はどうなるか、同じことが繰り返されます。
皇位継承権のない皇族を、末代まで皇室で養っていくのでしょうか。
このように皇位継承権のない一代限りの女性宮家など創設しようとすれば、
様々な問題が山積することになり、現実的にも困難を極めるでしょう。
そのようなことだけのためにわざわざ皇室典範を改正するようなことはせずに、
皇族女性がご結婚により皇籍離脱された後も、
引き続きご公務を負担できるような仕組みを考えれば済む話ではないでしょうか。
そもそも皇族女性は天皇の国事行為を代行したり、
海外の王族や国家元首と会われたりするようなご公務を負担する立場にはありません。
記念行事に参加されたり、福祉施設に訪問されるようなご公務であれば、
必ずしも女性宮家である必要性はなく、
特別な公務員としての地位を得て、皇女として活動されることで十分だと思います。
本当の意味で皇位継承制度と切り離した皇室活動のあり方を考えるのであれば、
最も障壁の少ないこのような方法を模索するべきではないでしょうか。
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