憲法第1条は国民主権か
評論家の三輪和雄さんから聞いた話だが、
知人に日本の皇室を非常に尊敬しているアメリカ人がいるので、
半分冗談で「君たちも王様をつくったらどうだ」と尋ねたら、
「それは無理だ。望ましい人を選んだとしても、必ず誰かが反対する。
別の人を選べば、また別の人が反対する。
全員が一致することはできない」と答えたそうだ。
途中から王制ができると、必ずそうなる。
現存する西洋の王室も、誰かによってあるとき、力によって打ち立てたものだ。
日本の皇室は、誰かがつくったものではない。
最初からあった。
あえて言うなら、日本の中から自然発生的に生み出されたものだ。
天皇と民が共に生まれ、長い時間の中で国柄が形成されてきた。
そこから二千年以上、君民一体の国体が続いている。
おかしな西洋思想に侵された人以外は、日本人全員が天皇をお守りしている。
そして天皇は国や民の安寧を祈っておられる。
「誰かが賛成すれば、誰かが必ず反対する」
これが世界の常識。
日本は誰もが天皇を敬っている。
日本国憲法第1条には以下のことが定められている。
天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、
この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。
これを国民主権と切って捨てるのは簡単だが、
「日本国民の総意」とは、西洋的な国民主権になるのだろうか。
国民主権とは、一般論としては、君主と民が対立する概念に基づくものである。
日本は、君民一体の国体であり、およそ西洋的な国民主権が適合する国家ではない。
日本の天皇は、「誰かが賛成すれば、誰かが反対する」という存在ではなく、
アメリカやその他の国では実現できない、
日本人全員による総意に基づいているのでるから、
憲法によって世界で唯一の存在であることを示していることにもなる。
「日本書紀」によると、仁徳天皇は
「天が君を立てるのは民のためである。だから民が根本である」
と仰せになったという。
民が根本で、天皇が上に立つ。
その天皇の地位が日本国民の総意ということではないか。
国体は戦前から戦後、一貫して続いている。
誰かが勝手に戦後体制を敷き、
戦前と戦後を分断しているかのように見せかけているだけだ。
日本国憲法は大きな問題を抱えているが、
少なくとも第1条で、日本の根本を示している以上、
その軸をしっかり見極めた新しい憲法をつくらなければならない。