小林よしのり「新天皇論」の禍毒(中川八洋著)〜を読む

 

 

一言で印象を述べるなら、中川八洋氏はインターネットをわかっていない。

それに尽きるでしょうか。

 

中川氏によると

 

「新田は、最もしつこく“マッド”に喰らいつきました。

これは評価できます。だが、勝負という点からすれば、

“新田の負け”が公平な眼で見た判定でしょう」

 

と述べ、その理由は

 

「新田の、その反駁の内容はさほど問題なく、

いわば可もなく不可もなく、無難に小林を批判していると思います」

 

という。これは『別冊正論14』のことを指している。

「可もなく不可もなく、無難な批判」というのは、どういうことなのかよくわかりませんが、

要するに、攻撃力が低いということではないかと思います。

ここが中川氏の錯誤となります。

 

今回の皇統論争における新田均先生による攻撃の破壊力は、

@コラムブログ「小林よしのり氏公認ゴーマニスト宣言」、

Aチャンネル桜「さようなら!小林よしのり・ゴーマニスト宣言」part2〜8、

そして、

B『正論』(平成22年6月、8月号)、『別冊正論14』からなります。

つまり、コラムブログ、動画、論文、という3点攻勢によって、攻撃力が完成しているのです。

3点のうち、2点はインターネットです。

 

この3点攻撃によって、女系論のおかしさに気付いた人は、どれだけ多くいることか。

そして、小林よしのり氏はまったく反論できない状態に追い込まれている。

 

一方、中川氏が述べる小林よしのり氏の攻撃力とは販売部数であるという。

それならば、中川氏はどれだけの部数を上げられるのでしょうか。

 

また、中川氏は「本には本で対抗するしかありません」と述べ、

それが戦い方の常道であるという。

それは学術論の話であって、小林氏は印象操作による宣伝工作を仕掛けているのです。

相手のプロパガンダには、戦いの常道など通用せず、

あらゆる戦術を駆使しなくてはならないことから、

3点攻撃をフル活用された新田先生が、

一番槍で、最も戦績を上げられた功労者ということになるでしょう。

特攻どころか、完勝により小林氏の言論生命すら奪う勢いとなっています。

 

中川氏による小林氏の過大評価は、ネット(光回線)普及以前になら、だいたい通用した話でしょう。

『新天皇論』10万部以上というのは、私が関係者から聞いている範囲では、

店舗や倉庫に山積みにしてあるものも含めての数字であるということです。

 

一方で、新田先生のブログの訪問者、衛星放送・動画視聴者、『正論』読者を総計すると、

それを上回ることでしょう。

残念ながら、最終的に中川氏は『新天皇論』に対しては、

一連の新田先生による破壊力の何分の一以下の攻撃力も

見せることができないだろうと思います。

おそらくこれまで中川氏のことが好きな読者は満足させることができるかもしれませんが、

『新天皇論』に納得している人を、こちらに振り向かせることは難しいでしょう。

 

僭越ながら、新田先生や不肖私の著書などは、

たとえ『新天皇論』に納得している人であっても、

少しでも読んでいただければ、

こちらに転向していただけるものであるという自負があります。

なぜなら、わざわざ相手の土俵にまで下りていって、投げ倒しているからです。

それは相手の土俵の観客を意識しているということです。

それができるのは、新田先生も、私も、かつて「ゴーマニズム宣言」のファンだったからです。

 

私は初期の頃のK−1でアンディ・フグが好きでしたが、

フランシスコ・フィリオに一撃で倒されてからは、しばらくフィリオが好きになりました。

ところが、フィリオが極真空手という枠から出てこず、

「俺の方が強い」と豪語していても、彼のことを好きになることはなかったでしょう。

 

なるほど、中川氏によると、小林氏の漫画が共感を呼ぶのは、

高森氏から洗脳を受けた内容はデタラメばかりであっても、

それでも必死に学んだ痕跡が漫画から伝わるという。

しかし、結局のところ中身で勝負ということではないならば、

それはプロパガンダ合戦のレベルの域を脱しないでしょう。

それならば、プロパガンダによる洗脳から脱却するための、

数々の材料を用意しなければならないのであり、

我々はネットメディアを駆使して、それらを潤沢に用意してきたのです。

 

それに対して、中川氏の著書は、

新田先生ほど『新天皇論』の個別事項についての具体的論考を重ねていないどころか、

女系天皇論と最前線で戦う兵士に、後ろから鉄砲で撃つに等しい行為であると思いました。

 

最後にもう一度、端的に感想を述べるということであれば、

“がっかりした”の一言に尽きるでしょう。

 

 

 

 

 

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