プロパガンダの考察〜その1

 

 

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[田中卓]

また反対論者は、「有識者会議」のメンバーを、

皇室史や皇室法の素人ばかりと、失礼な批判をするが、

私の知る限り、委員の一人、笹山晴生氏は、東大国史学科卒の名誉教授であり、

後に学習院大学教授として、皇太子殿下に御進講された経歴をもち、

皇室史に通じた有名な学者である。

(中略)

むしろ、忌憚なく申せば、盛んに女帝・女系反対を唱える論者こそ、

それぞれ専門分野−思想・文学・政治・憲法・経済など−では

優れた業績のある人たちでもあろうけどれども、

彼らの中に少なくともこれまでに国史を専攻し、

日本史学界で、皇室関係史や氏族系譜の研究で

名の通る人はほ殆どいないのではあるまいか。

 

[小林よしのり]

最近、当時の運動の様子を収めたDVDを見たが、

名の知れた保守系知識人がオールスターで集結していてぶったまげた。

参加している言論人は口々にこう言っていた。

「専門家でもない有識者会議の報告で決めるのは間違っている!」

そういうこれらの保守言論人とて歴史の専門家はいないじゃないか!

有識者会議が門外漢ばかりだったのは事実だが、古代史の専門家も一人いた。

(『新天皇論』115頁)

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前に指摘した小林よしのり氏の信仰状態を示したときに引用したものですが、

これが女系論者がよく行う論点のすり替えの一例でもあります。

男系護持の方々は、有識者会議のメンバーが素人ばかりであることを指摘しましたが、

代わりに自分を入れるように主張しているわけではありません。

ですから、有識者会議のメンバーが素人であることを指摘した人間が、

歴史学の専門家である必要はないのです。

 

サッカー日本代表メンバーに、プロ選手ではない人間が選ばれたときに、

サポーターが「選ぶのはプロ選手にしてください」と要望すると、

「あんたはプロではないじゃないか」と反論されるのと同じです。

自分を日本代表メンバーに入れてくれと要望しているのではありません。

 

これが論点すり替え、プロパガンダの手法です。

漫画家である小林よしのり氏などはともかく、

大権威などと呼んでいる学者の田中卓氏がこういうことをやっているのです。

 

そもそもこの問題は、専門家であるかどうかということが重要なのではなく、

歴史伝統に基づいた判断ができるかどうかという問題となります。

「われわれの世代が歴史をつくるという立場で検討したい」などと公言している人間が、

座長の立場にいたことこそが、最大の過ちだったのです。




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