サンタクロースは実在するのか

 

先日、一二三朋子先生(筑波大学准教授)から、

大変興味深い本を教えていただきました。

 

『サンタクロースっているんでしょうか?』(偕成社)という絵本です。

 

およそ百年前(1897年)、8歳の少女がニューヨーク・サンという新聞に、

サンタクロースが本当にいるのかを尋ねる手紙を出し、

それに対して、60歳に近い記者が社説で真剣に返答を書くというものです。

 

少女は友達から「サンタはいない」と聞いたことから質問するのですが、

記者は次のように述べます。

 

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きっと、その子の心には、いまはやりの、何でも疑ってかかる、

“うたぐりや根性”というものが、しみこんでいるのでしょう。

うたぐりやは、目に見えるものしか信じません。

うたぐりやは、心のせまい人たちです。

心がせまいために、よくわからないことが、たくさんあるのです。

それなのに、自分のわからないことは、みんなウソだと決めているのです。

 

けれども、人間が考えられることなんて、

大人の場合でも、もともとたいそう限られているものなんですよ。

わたしたちの住んでいる、この限りなく広い宇宙では、

人間の智恵は、一匹の虫のように、

そう、それこそ、蟻のように、小さいのです。

 

(中略)

 

この世界で一番確かなこと、それは、

子どもの目にも、大人の目にも、見えないものなのですから。

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ごく一部を抜粋しましたが、大人も読むべき非常に的確な近代主義批判です。

この社説が掲載された20年後、ロシア革命が起こり、

世界で初めてとなる共産主義国家が誕生しました。

これを書いた記者は亡くなっていましたが、

この社説を大切に持ち続けていただろう成人した少女の目には、

どのように映っていたのでしょうか。

 

マルクス主義は崩壊しましたが、

我々は依然として近代主義思想から抜け出せてしません。

人権救済法や夫婦別姓から女性宮家まで、

虫一匹のような現代人の智恵で、決めてしまおうとしている。

 

フランス革命のジャコバン党から、ナチス、ソビエト共産党、

中国共産党、ポルポト、北朝鮮労働党など、

虫一匹の智恵で作ろうとした国は、ことごとく失敗し、

大量の死者を出す野蛮な社会となった。

 

日本が世界一美しい国であり、道義と信頼によって秩序が形成されているのは、

虫一匹の智恵などによって、けっして国を作らなかったからです。

二千年の歴史・伝統を大切にし、

それを基礎として、世の中のすべてを構築して出来上がったのが、日本の国柄です。

 

近代合理主義に毒された現代人たちは今、

8歳の少女に向けて書かれた文章からまず理解しなければならない。





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