すり替えの達人
川西正彦氏の「公共政策研究」というブログのなかに、
「朝まで生テレビの高森明勅発言批判」という記事があり、
高森氏による興味深い発言が記されていました。
------------------------------
「私が125代の系図、側室からお生まれになった天皇をずうっとチェックをしてきました。
そうすると正妻である皇后からお生まれになったのがですね。
四方続いたのが最高です。
四方続いた例がですね。おそらく二例か三例しかないですもう。
あとは一代で途絶えたり、二代で途絶えたり、よくて三代ですね。
あとはもうずうっと側室ばかりで続いていると。十代、十五代続いていると。
こういうケースなんです。
で、今現実を考えてみると、大正天皇は側室の出でいらっしゃいます。
そして‥‥(「明治天皇も」−田原と高橋が発言)もちろんそう。その前もずうっとそうです。
江戸時代の最初まで。ですから大正天皇までずうっと側室がずうっと途絶えなく続いているんです。
江戸時代の最初から。
で、考えるとですね。皇后からお生まれになったのは
昭和天皇、そして今の天皇陛下、そして皇太子、
そしてここで途絶えようとしているんです今。
これは日本の歴史ふりかえって(「三代続くのが珍しいんだ」田原が発言)珍しいんです。
(「ほう」)これは別に突飛なことでもなんでもない‥‥
要するに男系限定というのは側室とセットで機能してきた。」
------------------------------
なるほど、この発言でまた一つ合点がいきました。
『新天皇論』の以下の記述を見てください。
----------小林よしのり----------
一夫一婦制で、何世代も確実に
男子を産み続けることなど不可能なのだから!
明治天皇も大正天皇も側室の子である。
その後に昭和天皇、今上陛下、皇太子殿下と
3代も嫡男が続いたのは異例の幸運だったのであり、
逆に女子ばかり続くことだって当然起こる。
(210頁)
--------------------------------
これを読んだとき、私は「何だこりゃ」と思いました。
そして、一夫一婦制でも夫婦間に男子が誕生する確率は50%ではない。
子供が1人なら50%、2人なら75%、3人なら87.5%、4人なら93.7%。
皇子女の数では大正天皇が4人、昭和天皇が7人、今上陛下が3人。
ということは、男子誕生の確率は、93.7%⇒99.2%⇒87.5%で継承されたことになります。
これの一体どこが「異例の幸運」なのか質問したところ、
あまりにストレートに急所を突きすぎたのでしょうか、小林よしのり氏は激昂し、
「ゴー宣ネット道場」の動画で、ひたすら私を罵倒するということになってしまいました。
直系だけで「93.7%⇒99.2%⇒87.5%」と継承したのに、これに傍系が加われば、
単純に「側室制度なしに男系継承は不可能」といえるものではないと
私はごく当たり前の説明しているのです。
新田均先生も、「世襲親王家」のデータを示して、
現代医学の進歩により乳幼児死亡率が低ければ、
側室がなくても継承できるという指摘をされましたが、
それに対して小林よしのり氏は
「昔は男子を産むまで5人でも10人でも子供を産み続けるのが当然とされていたからだ!」
と反論したのです。
私の指摘に対しても「晩婚少子化」を反論に持ち出しています。
もうお解りだと思いますが、ポイントは「側室制度の有無によって男系継承の可否は決まるか」
ということであるのに、論点を「晩婚少子化」にすり替えているのです。
そもそも歴史的事実を示して、制度的に「側室がなければ男系継承は不可能」
と述べてきたのは女系論者であるのに、その論理の致命的な欠陥を指摘されると、
もはや歴史関係なしに、現在の社会的な「状況論」を持ち出して論点をすり替えました。
誤魔化すためにすり替えたという証拠は、
『新天皇論』のなかにあります。
----------小林よしのり----------
昭和天皇が側室を廃止した日、
いつか男系天皇が続かなくなることは
運命づけられたのである!
「側室による男系維持」と
「一夫一婦制」の二者択一に結論を下されたのだ!
(215頁)
------------------------------
昭和天皇と晩婚少子化は何の関係もありません。
昭和初期に平成の時代の晩婚少子化を予測していたというのは、
さすがにありえないことです。
小林よしのり氏の反論がいかに後付であるということが、
よくわかる記述となっています。
ちなみに現代社会の「晩婚少子化」は独身者の問題であって、
既婚者の出生率は低くありません。
ところで、歴代天皇のご正室と嫡子について、
私の方でも全員調べてみたところ、大変おもしろいデータを発見しました。
これについては、またの機会に公表したいと思います。
もどる